夢想の針鼠の夢跡

物語に隠されたもう1つの物語 『過ち』を知る物語

夢想の闇夜 第1幕 1章  王の誕生祭

注意 ・ネタバレ注意です。

   ・幻想の紅月などに関連しています。

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彼は不思議な人物だった。

俺に魔導師の道を与えてくれた壮大なる人だった。

それと同時に誰もが認める魔導師だった。

それが奴によって破滅の道に歩む事となるなんて・・・

彼らが言う魔導王国よりももっと前の魔導王国。

そこに育てられた魔導師は俺が見る限りでは一番強い、生粋の魔導師の時代。

 

俺の父親と母親がいた、1億年前の話ー。

第1幕 光と闇を持つ王族の魔導師

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レヴィアーデン『コテンア』 ウォイス

魔導王国『レヴィアーデン』。そこは壮大な魔導王国だった。魔術・魔法が出来た所でもある、とても大きな魔導王国だ。

特に俺が住んでいる『コテンア』は特に壮大で、レヴィアーデンの王も此処にいる。王の名前はアルベア・ムーンダスト。 アルベア王が魔術を作ったとされている。此処から東に位置する国『ラトルシェーン』は農業が盛んな国で二人三脚で発展してきた。今となっては商業も盛んになってきたお陰で、俺達の景気は良かった。

アルベア王の側近であったグロディア・アイラスは俺の父上で、それに対しての期待は大きかった。アルベア王に魔術を教わる事があるくらい仲が良い。何故そこまで期待されるかが俺には分からないのだが、喜ばしい事だとは思ったので心の底から笑った。

 

「よーしよーし、ウォイス元気だったか??」

「うん!とても元気だよ!!」

この時俺は7歳。レヴィアーデンが出来てから丁度20年経つ。

「お帰りなさい。さてと、食事にしましょうか」

母の名前はルフィア・アイラス。アイラス家は4人家族で妹がいる。妹の名前はディアナ。俺達は魔導師の素質を元から持っている家族だ。基本魔術は7歳で学び始めるのだが、妹のディアナでさえ20歳並の魔術を覚えている。彼女は5歳だというのにも関わらずだ。その才能を王は絶賛しており、側近の関係になった訳である。まあ、母と父はとても魔力を持っていたのでその血を引いているのだろう。

「4人で食べるのは久々ね。・・・そういえば、グロディア、明日アルベア王の誕生日でしょ?」

父は食べながら答えた。

「そうだな。此処が出来てから20年だから、壮大にやるだろうな。ガッハッハ!!」

「パパ~!!食べながら喋っちゃ駄目~!!」

「おぅ悪い、悪い。ウォイス達も呼ばれてるからな、パーティに」

「本当!? またアルベア王に会えるの?」

「ああ、会えるさ。アルベア王喜ぶだろうなぁ~!!」

父はいつもこんな感じだ。とても明るい性格で母はそんな性格が好きらしい。

「ええ。明日の服装もちゃんとするのよ、ウォイス、ディアナ?」

「はーい!!」

アルベア王に会えるのは2ヶ月ぶりだ。久々に王に会えるのは嬉しかった。何しろ色々構ってくれるのが嬉しいのだ。

「んじゃ、ちょっと行ってくる」

「・・・何処に行くの?」

「王宮さ。アルベア王に呼ばれているからな」

「準備か何かでしょうね、きっと。いってらっしゃい」

「ああ。行ってくる」

父はそう言って、外に出た。

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アルベア王宮 アルベア

「・・・そういや明日は貴方の誕生日ですね、あなた」

「そうだな。アイラス家やルビア家など世話になってる家族を始め、誕生祭りをやろうと思ってな」

実際半年前からこの企画は進んでいた。成功してもらわないと困る。

「そうですね。・・・何も無く無事に出来るといいけど・・・」

「大丈夫だろう。今日は早めに寝るぞ、良いな?」

「はい、あなた。」

妻のフロリアは優しく微笑んだ。

私の部屋に戻ろうとした時、召使の者が私の前にやってきた。

「アルベア王!!グロディア様が訪れました!!」

「ふむ。そのまま私の部屋に来いと伝えておいてくれ」

「かしこました!!」

(さてと、私も部屋に戻ろうとするか・・・)

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アルベア王宮『アルベア王の部屋』 グロディア

「よくぞ来てくれた、グロディア殿。とりあえず座りたまえ。」

「はい。では失礼して・・・」

アルベア王の真正面に座った。

「アルベア王、私に何の御用で?」

「明日誕生祭をするじゃろう?それについてだが・・・」

「何か悪い所でも見つかったのですか?」

「誕生祭の開幕宣言をグロディアに任せたいんだが、よいか?」

開幕宣言。まあ凄い所に来たなと思った。

「ええ。むしろ光栄です」

「あと、もう1つだが・・・」

ロディアは周りに誰か居ないか確認した。

「・・・何か聞かれてはマズイ事を?」

「どうも最近知ったんだが、妻の子供が出来ないらしいんだよ」

「それは・・・本当ですか??」

「ああ。医者に聞いてみたところ、子宮が不十分らしくてな。そこで次の王をお主かその息子に任したいんだ」

「俺の他にも沢山いるじゃないですか」

「側近の関係で尚且つ正義感の強いお前の家族が良いんだ。私もそろそろ年だしな」

「そんな・・・まだお若いじゃないですか」

「私も50歳だ。魔力も徐々に減ってきている。もし私が殺されて次の王になるのに戦争なんか起こしたら困るんだよ」

「・・・それもそうですな。それで万が一の事があったら私の家族が王族となり、この国をまとめあげろ、と言いたい訳だな?」

「そうだ。引き受けてくれるか?」

「・・・少し考えさせてください。」

「まあ、そうなるだろう。急に王様になれというとパニックになるだろう。・・・明日、聞こう。それまで考えてきてくれ。今日はもう遅い。4人は久々だろう?もう帰ってよいぞ」

「分かりました。では、これで失礼します。」

ゆっくりと扉を閉めた後、俺は歩きながら考えていた。

(・・・俺かウォイスが次の王に?しかしそれで不満を上げる者もいるのでは・・・?)

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アイラス家の家 2F ウォイス

「・・・何を話しているんだろう」

ディアナは気になってしょうがないみたいだ。

「確かに気になるな。・・・この際魔術で消えてみるか?」

「いいね!!そうしよう!!」

 

アイラス家の家 1F

「・・・お帰りなさい、あなた。何を話したの?」

「ああ。開会宣言をやってほしいという事と、次の王になってほしいってな」

それは驚きだ。ディアナが叫びそうだったので慌てて口を閉ざした。

「・・・え?次の王って、どうして?」

「どうやら王の妻は子供が産めないらしくてな。そこで俺かウォイスが次の王としてやって欲しいってな」

「そうなの・・・。ところで、ウォイス、ディアナ、そこにいるのは分かってるから姿を現しなさい」

「やっぱり、バレていたか・・・」

素直に姿を現した。

「王族になるのは、大変辛いでしょうけれど・・・」

「そうだよな。だが、万が一戦争になっては困る。俺は受け入れるつもりだ」

「あなた・・・」

「・・・王は父上になるのか??」

俺の問に母は答えてくれなかった。

「・・・お兄ちゃん、私達はどうなるの??」

「分からない。でも多分俺達が王様にならないか、って聞いてるんだと思う。」

「・・・。」

結局皆黙ってしまい、この場はお開きになってしまった。

だが、あれが多分俺達の運命を変えるのだろうとは薄々だが気がついていた。

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次の日 『コテンアの街』 ウォイス

次の日、俺が目覚める頃にはもう既に盛り上がっているのが俺の部屋の窓で分かった。父グロディアはあの答えを言う為に俺が起きる頃には出発していた。

「さてと。私達も今日は張り切って行くわよ~!」

「うん!!」

朝食を取った後俺達は準備をしていた。豪華な格好をした後、俺達は会場に来た。

「・・・おはようございます!!王様!!」

元気よく2人で挨拶した後、アルベア王は元気よく挨拶をしてくれた。

「おはよう、2人共また成長したねぇ~」

「おはようございます、アルベア王。彼らはまだやんちゃですよ。」

母が少し茶化すると、アルベア王は笑った。

「ホッホ。でも2人は将来立派な魔導師になるだろう。」

「そうですね。彼らの将来の姿が見たいですね。」

「それまで立派に私達も生きていこうではないか。・・・お、父が表に出てるぞ?」

「あら、ホントだわ。」

そう言って俺達は父を見た。

 

『此処の住民の代表として、我らはこの国に、王に感謝しようー これより、アルベア王誕生祭を始める!!皆、今日は盛り上げて行くぞォーー!!!』

次々に観戦が上がる。盛り上がりにも程がある。

「どうしてだろうか、彼を見るととても元気が出るんだよな・・・」

「あの性格だからこそ、あんな事が言えるんでしょうね。さてと。私達の楽しみましょうか。誕生祭を。では私達はこれで失礼します。」

「分かった。ウォイス、ディアナ、祭り楽しんで来てな」

「うん!!んじゃ、私あそこがいいー!!」

「あ、おい!!迷子になるぞ!!」

ディアナが俺を引っ張っていく。そしたら、石にぶつかってしまい、こけてしまった。

「うわぁああん!!痛いよー!ママー!!!」

「大丈夫?・・・治してあげるよ」

爽やかなお兄さんが回復魔術を唱えた。するとディアナの傷はいつの間にか消えていた。

「わぁああ!!ありがとう!!お兄さん!!」

「・・・僕はティーマ。君たちは?」

「俺はウォイス、んで妹がディアナという名前だ。宜しくな、ティーマ」

母が見えた。彼女の泣き声に気がついたのだろう。

「・・・こらこら。どうもすみません、怪我まで治してしまって・・・」

「いえ、いいんです。僕は泣いてる子を見てると手助けをする性格なので」

「ディアナ、お礼は?」

「言ったよ、ママ。ねぇ、少しだけ彼と遊びたい」

「・・・俺がいるから、安心して。ー怪しいと思ったら、守るから」

「そう・・・。んじゃお金渡しておくわ。」

そう言って俺とディアナに硬化を渡した。ありがたく受け取った後、ディアナに引っ張られた。

「行こう、お兄ちゃん!!」

「お・・・おい!!少しは手加減しろ!!」

そう言って、母にお辞儀をし、俺はディアナに引っ張られた。

「・・・?」

一瞬微笑んでいる誰かを見た。見覚えがある・・・

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??? ウォイス

随分と引っ張られた気がする。気がついたら見覚えの無い公園にいた。

当然、ティーマもついてきた。

「結構遠い所に来てしまったな、コレ」

公園。何処かの公園なのだが、何処かは分からない。

(・・・いや、此処自体は行った所はあるかも)

小さい頃、此処に来た記憶がある。でも、道とかは覚えてない。赤子の時に連れてきたのだろうか・・・。

「ティーマ、此処何処か分かるか?」

「いや、僕も行った事無いから・・・」

じゃあ、これはー・・・

「迷子になっちゃったよー!!」

色々考えた。魔術次第では戻れるんじゃないか、と。

「・・・いや、帰れる可能性はある。魔術を使えばー」

そう言って、俺はある物を持ち、ある形の物を描き始めた。

「・・・何をやってるんですか?」

「魔法陣。俺達の所はアイラス家だから、これくらい出来て当然の事だ」

だが、妹は知らないので彼女もただ見つめていた。

呪文の形式には出来た。ただ、これは覚えたてなので役に立つかは分からないが。

「・・・ちょっと魔法陣から1メートル程離れてくれないか?」

「?分かった。下がっているよ。」

下がった後、俺はブツブツと長い呪文を唱えた。

「・・・これ、大丈夫だよね?」

「僕も魔術は使えるけど、流石にアレは出来ないよ・・・」

「ールブルグロウム!!」

「!?目を閉じろ!」

ティーマはそのまま命令口調で言った。・・・術は成功したみたいだ。

「・・・凄い」

羽が出ていた。鳥になったのだ。

「・・・こうすれば、街までどれくらい掛かるかが分かる。ちょっと待っててくれ」

「うん。分かった」

空を飛んだのはこれが初めてだ。空の高さには綺麗だと思った。

(西の方角でおおよそ2キロと言ったところか・・・。道はどうも一本道だな。)

「・・・どうだった?」

「西の方角で約2キロ。案内する、来てくれ!」

「分かった。行こう、ディアナ」

「うん・・・。」

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コテンアの街 ディアナ

何とか着けた。着くのに1時間程掛かった気がする。

「・・・お腹減ったね」

「そうですね・・・。」

「でも、戻れてよかったな。」

「うん。ところでお兄ちゃん、元の姿には戻らないの?」

「・・・あ。こうやって・・・ほら。戻った?」

「とんだマジックを見たみたいだ・・・」

お見事としか言い様が無い。この魔術はいつごろ覚えたのかが気になる所だ。

「しかし、もうすぐお昼だね」

ウォイスは周りを見た後、硬貨を出しているのを見た。

「ーはい。買ってきたよ」

彼が買ったのは私の好きなアップルパイだった。

「・・・!!ありがとう!!」

「・・・ティーマもいいよ」

「ウォイスは食べなくても大丈夫なの?」

「あらかじめ用意はしていたからな。ほいっと」

人差し指でくるりと円を軽く描いた。そこからサンドイッチが落ちてきた。

「転送魔法だよ。あらかじめ作っておいたんだ」

「・・・お前の家族は凄いなぁ。」

「ティーマはどうなんだ?」

「・・・僕の家族ね、お金が足りなくてさ。食べられるの久々なんだ」

「そうなんだ・・・あっ、そうだ」

ウォイスは何かひらめいたみたいだ。

「王に頼んでみようよ」

「ええっ!?でも、そんなことしてー」

「大丈夫。俺達の家族は王とは仲が良いから。頼めば多分助けてくれるよ」

「ーありがとう・・・!!」

そう言ってティーマは泣き出した。

「ハイ、ハンカチだよ!!これで涙拭いて!!」

「うん・・・」

とりあえず私は母の元に行った。戻る前に彼の家も教えてもらった。これでいつでも会える事が出来る。

「ママー!!」

「あら、随分と遅かったわね。迷子にでもなったのかしら?」

「ああ。此処に戻るのに一苦労したよ・・・」

「お兄ちゃんね凄いよ!!鳥になって此処まで連れて行ってくれたんだよ!!」

「あらまあ。いつの間にそんな術を?」

「こうすると、ほらね」

「!!うわぁ!ビックリしたわ・・・!!」

「あ、ゴメン。戻るとホラ」

軽く姿を変えられる彼が凄いと思った。

「凄いだろ?ところでお願いがあるんだ」

「・・・?」

母は疑問を浮かべた顔になった。ウォイスは真面目な顔で言った。

「ねえ、お金に困ってる人を助けたいんだ」

「・・・。」

いきなり何を言っているの?とでも言いたげな顔をしているが、そのままウォイスは話を続けた。

「・・・俺達、困っている所の人と遊んだんだ。そしたらその人、食べる事でさえ困難な生活をしているんだって。他の所もそうかもしれないし・・・」

「ー分かったわ。一回王と相談してくるね」

「ーありがとう・・・。」

どうやらOKを貰ったみたいだ。目を閉じて私の元に行った。

「この後どうなるか分からないけれど、多分快くやってくれるよ。多分だけど」

「それでもいい事やってると思うよ!!ありがとう!お兄ちゃん!!」

これで皆に向いてくれたら、私達は幸せだ。

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続く。

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人物紹介

アイラス家

ウォイス 幻想の赤月と同一人物。当時7歳。当時から魔術の知識は良い方で、王の方でも大人になったらとても偉い方になるだろうと言われる期待の子である。

ディアナ ウォイスの妹。5歳。魔術は20歳辺りまで扱える。兄であるウォイスが大好きで、いつも『お兄ちゃん』と呼ぶ。彼女も期待の子として評判の娘である。

ロディア ウォイスとディアナの父。29歳。アルベア王の側近で王が最も信頼されている人物。とても明るく、前向きな性格である。

ルフィア ウォイスとディアナの母。28歳。子持ちとは思えないくらい美人で、求婚を求める者も少なくない(既婚者だが)。

王宮の者達

アルベア王 本名アルベア・グンアニア。50歳。レヴィアーデン王国を建てた者で、とても紳士である。

フロリア王妃 アルベアの妻。52歳。建てる前から結婚をしており、王国を支える柱になっている。彼女は子供を産むことが出来ないらしい。

???

ティーマ ディアナの怪我を治した人(?)。6歳。助けて貰った後はウォイスとディアナで遊びに行く程になり、とても仲が良い。

 

用語説明

『レヴィアーデン』・・・ウォイスの生まれ故郷である国。魔術の原点となった場所で、此処から生まれた魔導師はとても強いとされている。アルベア王がこの国を収めている。

『ラトルシェーン』・・・レヴィアーデンから西の方角にある国。農業国で、その為か魔術は生活に役に立つ物か木属性の魔術が多い。レヴィアーデンとは仲が良く、二人三脚で発展したと言っても過言では無い。

 

レヴィアーデンの魔術について

基本魔術は『お金を創造しない』『人々には不必要な物は要らない』『誰かが必要とする物を必要とする』を前提に、通常は7歳から習い始める。ただしアイラス家など貴族の者や魔術の扱いが得意な家計は生まれた当時から覚えている事もある。

 

第○幕は時を現します。1幕は1億年前、ウォイスに死があった時代の話です。

 

 

様々な事件が沢山続き、遂には心髄にまで及んで行って、己の中でそれを重く、鋭く貫くのだ。 嘘だらけの世界で信じる事が出来るのは、己自身ただ一人。痛い思いとかしても良いんだ、嘘をつくのはもうこれで最後にしよう。だからお願い。早ク逃ゲテ。