夢想の針鼠の夢跡

物語に隠されたもう1つの物語 『過ち』を知る物語

夢想の闇夜 第1幕 2章 悪魔の囁き

注意 ・ネタバレ注意。

   ・『幻想の赤月』と関係があります

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・・・王にも伝わった。そして約束してくれた。『誕生祭の終盤にやってあげよう』と。それは期待だった。壮大なる王が引き受けてくれるのは嬉しかった。その時は戻ってくれないのだろうか・・・??

あれがレヴィアーデンの3大悲劇の1つとなってしまったのは・・・

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??? ディアナ

「・・・それは本当なの?」

私はティーマの言う事に驚きを隠せなかった。

「うん。さっきウォイスがやっていたのを見たんだ」

ティーマの言うからだと、ウォイスは王と母に連れてかれたと。

「ーもしかしたら、殺されるかもしれない。」

「・・・それは、無いと思うけどー」

だが、それをしない確証は持てない。実際母は私達より立場や状況で判断する人なので、場合によっては敵視する可能性だってある。

「とりあえず、2人で助けに行こう」

「・・・うん」

私は王宮の所へ向かう事にした。

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アルベア王の部屋 ウォイス

「・・・ちょっと訳を聞こうじゃないか」

王はそう言って、座った。

「俺と妹はお金が無い人の子供に助けられました。ーその人は食べ物でさえ手に入れるのが困難な人で、俺達みたいな貴族が羨ましいと言っていました」

母はややイライラとした顔をしていた。正直それがプレッシャーとなっている。

「ーんで、そう思って助けたいと思ったのだね??」

「・・・ああ。」

そう言って彼はため息を着いた。彼は右手を上げた。

「・・・母はどうされたい?」

何かされる。それも、痛い目に逢うと思ったー。

「ウォイス、確かにあなたの言う事は分かります。しかし・・・」

「・・・貴族と貧乏の違いは何?」

俺の放った言葉は怒気も兼ねて言った。2人はその発言に身体が凍ってしまうくらいの表情を浮かべているのが分かる。

「・・・単に言うならばお金が持っているかの違いだ。それ以上でもそれ以下でもない」

「それで性格の差が生じると思うけど、どうなのだ・・・?」

こうなってしまうと、年齢や身分も関係無くなってくる気がした。

「・・・それは元々からだろうに」

「意地でも渡さない気か・・・」

母は蚊帳の外だろう。母は何も言わずただ2人の様子を見ていた。

「・・・こっちにも事情があってな。お前さんには負担を掛けられても困るんだよ。なにせ、お前は王子の後継者だから」

「・・・父が言ってた事、半信半疑だったがどうやら本当の様だな・・・」

嫌な予感がするのを覚悟して、一気に攻撃する様にした。

「お前達はそうやって酷い目に遭ってる人を無視するんだな・・・? ーやはり、貧乏と貴族では差があるんだなー・・・??」

「・・・!」

流石にこれは結構心に響いただろう。アルベア王は抵抗が出来なかった。

「ーでは、これで失礼しますー・・・」

俺はそのまま退席した。

母がいる事も忘れて。

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アルベア王の部屋 アルベア

「・・・まさか彼に説教をされるとは・・・」

「ーすみません・・・。彼にはキツく叱っておきますので・・・」

「いや、いい。我にも非はある。彼は多分差を知ったのだろうな・・・。」

あの怒気を入れた鋭く冷たい気配。恐怖を覚える程の怖さだった。あの経験は久々だ。

「しかし、彼がこの後犯罪に犯す事でもしたらー」

「大丈夫だ。彼はそんな事はしない。する様なら強制的に記憶をかき消せば良い。」

「そうですね・・・」

私はそのまま窓から見える空を見た。

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??? ディアナ

ウォイスが見えた。だが、今のオーラは近づけば倒されるくらいの怖いオーラが漂っていた。

「・・・やはり大人達は気づかないんだなー。ああでもしない限りは・・・」

「ウォイス・・・?」

「ーディアナか。・・・もしかしたら、王を敵に回したかもしれない」

「え・・・?」

「言葉で抗った。ー王が抵抗出来ないくらいにな・・・」

・・・それくらい彼も本気だったのだろう。普通なら反逆罪で捕まると思うが、おそらく彼も考えているのだろう。

「とりあえず、明後日辺りに聞いてみるよー。・・・下手すれば革命なんか起こってしまう。貧乏の人がー」

「ウォイス。ありがとうー・・・。1つ教えとくよ。もしこれが成らなかったら・・・。王が殺される。殺そうとしてるって聞いたんだ」

「ー!?それは、本当なのか・・・?」

「・・・僕は全力で拒否してるけれど、まだ幼いから引っ込んでろってね・・・」

「王に伝えないとマズイ事になるー・・・」

ウォイスは動揺していた。恐怖の余りからだろうか。

「・・・。」

ウォイスはそのまま家に帰った。

「ちょ・・・!?お兄ちゃん、待って~!! 教えてくれてありがとう、ティーマ。必ずママに伝えてくるから!!」

「・・・うん」

そのまま私はウォイスを追った。

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??? ウォイス

「・・・ハァ・・・ハァ・・・」

走る先には死体が沢山あった。それと同時に家に火が燃えていた。

「!!・・・父、母・・・」

父と母の死体。俺は見ていられなくなった。

「お兄ちゃん・・・。どうしよ・・・」

「ディアナ!!無事だったか!!」

「うん・・・!!私達はまだ平気だけど、まd・・・」

「・・・!!」

ディアナが倒れた。その先にあった人は、ティーマだった。

「ティーマ・・・。貴様・・・」

「ハハハッ、ユカイユカイ~」

操られている・・・!?誰だ!!

「・・・友人と戦うなんて、到底無理でしょ?」

「貴様・・・。貴様ァアアァ!!」

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アイラス家の家2F ウォイス

「・・・!! ハァ・・・ハァ・・・」

「・・・お兄ちゃん、大丈夫?」

「夢か・・・。いや、予知夢だったらー」

「何の夢を見たの?」

「この事を王や父に伝えなくてはー・・・。このままだとこの国は滅ぶー・・・」

あの夢は、予知夢の可能性だってある。何しろ俺達の家族は強ければ強い程予知夢を見る確率が上がる・・・。否定は出来ない。

「・・・父は何処だ?」

「?下にいるよ?」

「ありがとうー・・・。行ってくる」

1F

「おっ、ようやく目覚めたか。お前3時間程唸されてたんだぞ?」

「・・・父上。予知夢か分かりませんが、恐ろしい夢を見ました」

そう言った瞬間、父の顔が鋭くなった。まあ当然の事だろう。

「ーどんな夢だ?」

「俺の友人が操られる夢、そしてその友人がこの街を壊す夢、そしてー・・・俺と友人と操っている本人以外、皆死んでいた夢をー・・・」

「・・・俺も同じ夢を見た。ティーマだったっけな?そいつが操られる瞬間の夢と、1人の女性の魔導師が一気に街を破壊する夢をー」

となると、これは1日~3ヶ月後にはほぼ確実にあの状態になるのか・・・??

「もし本当の事になったら、俺はどう動けばー」

あれは悪魔の囁きだ。絶対に歯車を狂わせないと、あの悲劇に繋がってしまうー・・・

「とりあえず、俺は王に伝えてくる。お前は家族に言ってくれ・・・」

「分かった・・・。」

俺はそのまま部屋に行き、そのまま眠りについた。

ーもう必要な睡眠は取っている筈なのにな・・・。

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 コテンアの街 ???

「・・・聞こえる?今彼が王の所に行ったよ・・・」

変な雑音と共にあの方の声が聞こえた。

「そう。んじゃ、閉会式の時、王を殺す・・・」

「了解。フフフ・・・」

「エーのフォールのグーね、分かった?」

「はいはい。分かりました~」

「では、これで」

ブッと音が鳴った後、何も聞こえなくなった。

「必ずや、仕留めてみせようー あいつらは悪魔だ・・・」

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??? ウォイス

「・・・母。」

そこに立ってたのは母だ。

「ー予知夢か分からない夢を見た。・・・見た内容が正しいかは不明だけど、父も似た夢を見たからー・・・多分間違い無いと思うけれど・・・」

「・・・どんな内容・・・??」

母は何か焦っている様な表情を浮かべた。急なのでなのか、それとも・・・??

「・・・この国が滅ぶ夢を見た」

一瞬ニヤッと笑った母は咳払いをしてこう言った。

「・・・王には伝えたの?」

「王は父に伝えているが・・・」

「そう・・・。ウォイス、とりあえず家に行ってて」

「ー分かった」

・・・あの笑顔は悪意に満ちた笑顔だと察した。つまり、これは後に敵になるでだろう相手だ。でも母が敵?殺せと命じても殺せない。ある所に書いてあった。『特別な事を除き、子孫が両親を殺すのは一番の罪』と。殺す?そんなの出来ないじゃないか・・・??

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アルベア王の部屋 グロディア

「わざわざ王の部屋まで行かされる事になって申し訳ございません」

「いや、良い。王の後継もある事だし、聞かれてはならない事があるのだろう?」

王の後継。それは貴族から王族になるという意味もある。アイラス家は予知夢という先祖代々伝わる術を持つ。自力でも予知夢は見れるらしいが、存在は殆ど見られないとも聞く。その能力を買われ、貴族となった訳なのだが王もそれは助かっており、こうなるであろうと言えば、そうならない様予知夢の内容を捻じ曲げる事も可能だ。ただし、一部はどう捻じ曲げても変えられない『運命』がある。運命の方を見た場合は大体形がハッキリしているが、運命か予知夢かを判断出来るのは目覚めた後のみで基本把握がしづらい。ただの夢なんて事もある。

「・・・運命か予知夢かは不明ですがー」

王は何かに気がついたらしい。王は従者を呼んだ。

「お呼ですか、アルベア王」

「ウォイスを呼んでこい」

「かしこまりました、王」

呼んできたのは他でも無い。俺の血を引く息子と娘も同様に見えるが、娘はまだその能力を覚醒しきれて無い。実質予知夢を見れるのは息子と俺だけだ(俺の見た限りでは)。

「まあ、呼んでる間に聞いておこう」

「・・・ウォイスと俺が同時に見たので、おそらくただの夢では済まないでしょう。ーこの世界が滅ぶ夢を見たのです」

「・・・!それは本当なのか??」

「俺は母が目の前で微笑んで火を放つ夢と燃え上がる夢。ウォイスは廃墟と化した所を見る夢、俺達が無残な姿で倒れるのを見た夢、そこに操られた友人を見る夢を見たみたいです」

「・・・これが本当だったらタダでは済まない話だ」

唐突すぎたのか、王は動揺した。

「多分元凶は側近の誰かだと俺は思うのだが、王はどういうお考えで?」

「それはー」

そう言おうとした時、コンコンと扉を叩く音が聞こえた。

「お話中失礼します。ウォイス様を連れてきました。」

「・・・王、父・・・」

ウォイスの顔はいつもとは違った。具体的にどこが?というと答えられないが、何か違った。拳を握って、震えているのが見える。

「お前には荷が重すぎたかもな。申し訳無い。ー教えておしい。予知夢の内容を」

「・・・母は、王を殺そうとしている」

「・・・え?」

彼は予知夢とは全く関係無い事を口にした。

「母は、滅ぶ夢を見たと言った途端一瞬だが微笑んだ。それも悪意に満ちた顔で・・・。滅ぶ夢を見たら基本引っ越そうとかそんな話になる筈だが、とりあえず家に戻れと言われて一応戻ったフリをして後を追ったら・・・。 ーあるお屋敷に着いてな。使ってない時に調べてみたら分かった事がある」

そう言って、彼は袋を取り出し、机の上に置いた。

「・・・通信機?」

「と見えるだろ?だが、コレ・・・爆弾兵器だ。魔力からだとおそらくコテンアの街を確実に爆破出来る程の威力がある。・・・おそらくこれで予知夢通りにする気だ」

ウォイスはそのままスイッチを押し、結界(?)の生じた所に投げた。すると爆発を起こし、結界がパキンと破れた。

「・・・俺が使う『クリスタルガード』でさえ、一発が限界だ。しかもあの術は対象の人物のみだ。・・・正直街まで守れるかと言うとそうでも無いし・・・」

それともう1つ見えた。手鏡だ。

「ところでその手鏡は・・・?」

「あ、コレ?危ないと判断したから封印しといたが、やるべきか?」

「能力を説明していただくとありがたいな、ウォイス殿」

「これ所有者の言う事を聞く為の道具だ。試しに父、見てみて」

試しに見てみた。すると声が聞こえた。

『我に従え。お前は我の従者なのだ・・・』

鏡には俺では無く、ウォイスが微笑んでいた。そしてその声が何度も響く。

(俺ハアノ方の従者ナンダ・・・)

「・・・どうされたのでしょうか?ウォイス様」

「元に戻れ・・・」

鏡を隠し、彼はブツブツと呪文を唱えた。ハッとしたら、従者では無いとハッキリした。

王は唖然としていた。まあ操られるのは分かった。どちらかというと洗脳だが。

「こ・・・これは凶器だ・・・。よく操られずにやれたな」

「誰もいなかったからだ。いたら確実に操られてたな」

「だが、この道具を採集したのは結構良い情報だ。対策がある程度取れる。ありがとうな、ウォイス。ーところで王の後継はどうだ?」

「・・・分かりました」

ウォイスは疑問の顔を浮かべたが、それを無視し俺は断言した。

「・・・王が亡くなられた時、王になろう。それが嫌なら望みを聞こうか」

「・・・いいだろう。そろそろ祭りも後半だな。楽しもうじゃないか、宴を」

「・・・ああ。ウォイス行くぞ・・・?ウォイス?大丈夫か?」

倒れている。何があったんだ?

「医者を呼んできて欲しい。お願い出来るか?」

「出来る。倒れているのを見ると放置は出来ないな。」

ドクン・・・ドクン・・・

変な心臓音が鳴り響く。気が付けば王も倒れていた。

「・・・何だ?」

そこにいたのは倒れさせた元凶の人物が微笑んだ。

・・・それは悪意に満ちた顔の美しい女性だった・・・

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続く

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予知夢は先祖代々引き継がれる能力で自力で得るには沢山の努力が必要で終わる頃には魔術は上達している程です。不老不死と幻術洗脳関係無効化は先祖代々ではありません。・・・でも一部きっかけが出た気もしなくは無いのだが・・・

地域説明

コテンアの街・・・レヴィアーデンの首都でもある(コテンア)。国の中では一番栄えており、王の王宮もこの街にある。アイラス家は中央にあり、ティーマは東に住んでいる。

アルベア王の部屋・・・レヴィベア王宮の北側にある。とても豪華な展示物が並ぶ。基本立ち入りが許されているのは上級召使(メイド)、王族の者、貴族の者のみ。

ゴリアテ館・・・ウォイスが立ち寄った、悪(?)の館。魔導王国を潰そうという考えが深く、此処を拠点としている。

???・・・ウォイス達の秘密基地。ツリーハウスになっており、中はとても過ごしやすい環境になっている。場所は不明。

レヴィベア王宮・・・アルベア王と妻がすむ王宮。とても広く、新入り召使は迷子になりやすい。何でも誰かが空間を広げているとか何だとか。

 臨時増えると思いますが、その時は新章で説明します。

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様々な事件が沢山続き、遂には心髄にまで及んで行って、己の中でそれを重く、鋭く貫くのだ。 嘘だらけの世界で信じる事が出来るのは、己自身ただ一人。痛い思いとかしても良いんだ、嘘をつくのはもうこれで最後にしよう。だからお願い。早ク逃ゲテ。