夢想の針鼠の夢跡

物語に隠されたもう1つの物語 『過ち』を知る物語

夢想の闇夜 第1幕 5章 全ての原点

??? ウォイス

「・・・はぐれてしまったか」

谷の奥深く、俺達は迷子となっていた。

ただ、ドゥームが近くいた事が不幸中の幸いだろうか。

「ドゥーム、大丈夫か?」

「痛・・・。ちくしょー・・・」

「一応出来る限りの回復をしておくが・・・」

ドゥームの怪我は命に関わる怪我は少なかったものの、外はボロボロだった。俺自身も大分怪我をしてるが、それでもドゥームのと比べたらまだマシな方だったみたいだ。

「・・・しかし、此処は何処なんだ?」

「そんな事俺に聞かれても・・・。ただ食料は大丈夫みたいだ」

「・・・ああ、実が沢山生っているからな。」

これも不幸中の幸いである。

どうやら俺達は植物が多くある地域に落ちた様だ。水もそれなりある為、とりあえず最低源の物は揃っている。野宿が可能なのはありがたい。

「仲間達を探さないとな」

「・・・ああ」

俺達はそのまま歩き出した。

***********

??? ディアナ

「・・・いてて・・・」

「・・・プハッ!!」

「ルアナ!!良かった~!!」

「僕の事も忘れないでくださいよ~ ディアナ王女~」

「アインもいた!!とりあえず協力は出来るね」

「でもウォイスさんやブルックさん、ティーマさんがいませんね」

ルアナはそう言って周りを見渡した。

「・・・不気味で怖い・・・」

アインの言うとおりだ。此処は洞窟付近なのだろうか、暑い。暑いのに物騒とした木が沢山生えている。本当に奇妙だ。

「・・・さてと。探さないとね」

「うん」

「ルアナ、ここら辺を変化させてくれない?」

「いいけど・・・どの様に?」

「なんかこうー 何処にいるか分かる様な形にしたいからー」

「・・・了解!!んじゃ行くよー・・・」

彼女が術を唱えた瞬間、天地が揺らいだ。木は形を歪め花と化し、暑さは徐々に和らいでいき、最終的には秋を感じさせる様な気温となった。

「・・・完了、と」

「これで少しは探しやすいね。よし!!行こう、ルアナ、ディアナ!!」

「うん!!」

***********

??? ティーマ

「ブルック、大丈夫?」

「・・・!!此処は」

「幸い、入口の所だったよ。一応帰れはするね」

「スタートからやり直しかよ・・・」

ブルックは溜息をついた。まあ、それもそうなのだが。

「ティーマこそ大丈夫か?」

「怪我は大丈夫です。あ、回復しますね」

「おぅ、ありがとな」

僕はブルックの右腕に手を乗せて術を唱えた。

唱えている間彼は空を見ていた。

「・・・あの時は、ドラゴンの奇襲攻撃を受けて離れ離れになったのか。覚えている限りでは確か湿った森に2人、洞窟辺りに3人の人影が飛んでいったな。・・・さてはあの人影ってあいつらか?」

「おそらくはそうでしょうね・・・。あ、終わりましたよ」

「お、サンキュー。とりあえずどうする?」

「・・・彼らの事でしょう、僕達を探していると思います。ただ、全員が探しに行くと遭遇する確率が減ると思います。此処で待ってましょう。」

「ティーマ、魔術でどうにか出来ないか?」

「・・・やってみますね。」

***********

??? ???

「・・・ああ、あいつらか」

今邪魔者は居ない。やるなら今だ。

『とりあえず、やっておいてくれ。お前なら出来ると思うのだが』

「・・・そうですね。この世界は滅ぶべき存在ですから」

『やってしまえ。』

「了解。」

私はそのまま手投げ爆弾を投げた。

 

「・・・これで魔導王国は滅ぶ・・・。理学こそが我らの望む道なのだ!!」

レヴィアーデンが燃えていく。全ては彼が望むがままに。

***********

??? ウォイス

「・・・!!」

「どうしたんだ?ウォイス??険しい顔をして」

「・・・王の悲鳴が聞こえる。!!まさか!!」

俺は眼鏡を掛けた。

「嘘だろ・・・。まさかこんなタイミングで・・・」

「・・・まさか、あの街が崩壊したというのか!?」

「そのまさか、だ・・・ いずれ起こるは思っていたが・・・」

あまり考えたくないが、事実なのだ。どんな歪めようとしても、変えようの無い真実なのだ。

「・・・こうしてはいられない。入口に行くぞ」

「そうだな」

此処までそこまで遠くない。2人で出来る限り走った。

***********

ドラゴンマウンテン入口 ティーマ

「・・・あ、まさか入口に来たなんて」

「・・・良かったぜ。ウォイス、ドゥーム」

「今それどころじゃなくなったんだぞ!!」

「・・・は?」

ウォイスの慌てている様子はどうも本当に様に見える。ただ、それどころでは無くなったというと王子としての役目があるからなのだろうか?

「えっと、それどころじゃないって一体」

「落ち着いて聞いてくれ・・・。お前は予知夢通りになるなら、お前はこの後操られる。そして、今滅びの歯車が回り始めた」

「え!?操られるって!?」

「だから、集団で行動する。とりあえず急いで行かないとー」

「・・・お兄ちゃんも見たの!?」

「ディアナ!!ルアナもアインも無事で良かった!」

「私も見たのよ。不吉な気配を感じたからね」

・・・おそらく彼女自身の能力『現実』からだろう。現実を受け止める能力で感知したのだろう。

「とりあえず、王国に向かうぞ。術使うぞ」

「はい!!」

訳も分からないまま、僕達は移動するハメとなった。

***********

??? ウォイス

「・・・此処も全滅、か」

ドゥームはそのまま周りを見渡した。本当に無様な景色だ。周りの家は燃やされているし、周りの人は血を流して倒れている。普段見ていた都市は、荒廃した都市となっていた。

「・・・ウォイス!!」

「ああ・・・分かっている。マリンフリーズ・・・」

 俺の周りは氷の世界と化した。・・・そこから輝く月は、満月だった。

「母上・・・。此処の破壊を望んだ者とは・・・」

「・・・?」

皆驚いた顔をしていた。特にディアナは。

「・・・いずれ戦わないと分かっていた。だから、本気で行かせて貰う・・・!!此処にいるのは分かっている!!出てこい!!!」

「・・・ほう、此処にいることを分かっているとは・・・流石王子だな」

「破壊者の者が・・・。貴様らだろ?此処を壊したのは!!」

「そうだと言ったら?」

「貴様がそうだと言うのなら・・・。貴様を倒す!!」

俺は術を唱え、剣を構えた。剣術は魔術程上手くはないが、それなりに出来る。

「・・・すげぇ・・・人がやれる業では無いな、コレ」

ブルックはただ見つめている。他の人は武器こそは構えているものの、攻撃しようとしない。

「水竜流星群!!」

破壊者は避け続けた。ただ、流星群は一部の攻撃を受けていた。俺はこのタイミングを見逃さなかった。

「行け!!ゴーストリーブ!!」

「!!」

・・・亡霊はその破壊者を捕らえた。破壊者はそのまま息を止めた。

「ーこいつ、やるな・・・」

もう1人の破壊者は連絡を取ろうとした。が、パキンと壊れた音が聞こえた。そこから真逆の方向に炎の弓の様な物を構えたドゥームがいた。

「・・・増衛はさせないぞ」

「花柱絡化!!」

どうこう言ってる内にアインが草魔術で破壊者の足を縛っている。少なからず此処から広い範囲で動く事は不可能だ。

「ディアナ!!父を探すぞ!!」

「うん・・・。お兄ちゃん、もしかしてこれら全て隠していたの・・・?」

「・・・ごめん。言えば母に言うだろうと父が口封じされていた。当時これを知るのには俺でさえも幼すぎたんだ・・・」

「急げ!!こうしている間にも生存確率が減っているのは確かだぞ!!」

「ーそうだな。急ぐぞ」

「分かった」

俺とディアナは他の人がやってくれる事を信じ、王宮へ向かった。

***********

王宮 グロディア

「・・・テロが起きただと!?」

「ハッ、何でも我らの行動が許せず行った様です」

「ー魔学を認めず、理学を受け入れようとしてるあの軍団か」

「そのようです。確か貴方の母も・・・」

召使の話の最後辺りを言おうとしたその時だった。

ドンという変な音が鳴った。

「ー来るぞ。気をつけろ。おそらく軍団も必死だろう」

「そうですね。王」

武器を構えたその直後に天井の壁は壊れた。そこに黒いローブを覆った者5名が俺の王宮の部屋に落ちてきた。

・・・そこにはニッコリと笑う妻の姿があった。

「・・・やはり、そうだったか」

「フフ・・・。この時を私は待っていたのよ。」

「お前らは何を企んでいるッ・・・!!」

「・・・貴様は此処で死んで貰うよ。王子と王女・・・ウォイスとディアナもね」

完全に敵だ。下手に動けば捕らえられる。2対5で叶う相手ではない。

「王子が邪魔だな・・・。鏡を奪いよって」

・・・どうやら7年前にウォイスが取った鏡は相手にとってそれなりに大事だったらしい。そうでも無かったら邪魔など言わない筈だ。

「・・・父上!!」

扉が開いたこの瞬間が戦いの始まりを意味した。

ウォイスが扉を開けた直後、妻はウォイスに攻撃を仕掛けてきた。それを察知した彼は防御魔術で固く守った。その後、後に入ってきたディアナが光魔術で相手をひるませ、俺は炎魔術で壁を作った。

「・・・我らの魔族の血を舐めないで欲しいな」

「ー少し舐めてたわ。ディアナとウォイスは生粋の魔導師だったな・・・」

「・・・?」

「その力、利用しようかしら・・・?」

そう言った直後、ディアナにナイフを投げつけた。不意打ちを狙った為、俺達は避けたり、かばったりする事が出来なかった。

「・・・!!グッ・・・」

「ディアナ!!」

「避けて!!父上!!」

それこそ相手の思うがままだった。助けに行こうとした矢先にあったのはーナイフだ。

「圧縮空間!!」

・・・死ぬかと思ったその時、ウォイスはナイフを圧縮し小さくなって消えた。

「・・・失いたくはないんだよ。」

ウォイスは本音を吐いた。ただこれは普通では聞こえない音波だった。

だがディアナがナイフに刺さったのは事実だ。

「・・・うぅ・・・」

「大丈夫か?回復するからウォイス守れ」

「・・・無理だった時は勘弁してくれよ? ホーリーダーク!!」

ウォイスが時間稼ぎをしてる間に回復魔術を唱える。

「ー痛・・・」

「落ち着け・・・。」

ディアナは落ち着いたかの様に眠りについた。息を確認するが、生きている様だ。

「・・・とりあえず生きている事が分かればそれでいい。回復に専念せれば」

***********

??? ドゥーム

「畜生・・・多過ぎる」

5人で100人以上いる魔導師を倒すのは無理があった。ウォイス達が帰ってくるまで、ここいらの相手をするのは流石に限界があった。

「もぅ・・・無理」

アインはそのまま倒れた。そこに魔導師が複数囲まれ・・・。

「・・・!!アインッ・・・」

ルアナが叫んだ頃には彼は血まみれになって死んでいた。

「ー貴様・・・!! !!」

一気に攻撃を仕掛けて来たみたいだ。避けようとしたが無理・・・!!

「ぐはっ・・・ 悪ぃ、ウォイス、ディアナ・・・ 後は・・・」

目の前に誰か分からない人が大きな剣を振り上げ

 

そして俺の意識はブッ飛んだ。

***********

王宮 ウォイス

「・・・氷結瀧山!!」

これで3人。あと2人となっている。

「ーどうしたんだ?まだまだだ・・・。ブラットボイズンチェーン!!」

少々余裕が生まれたので父上の顔を見てみた。

ほぼ完全に回復が終わっていた。少々安心した。

どうこう言っている間にもドレイン効果で怪我も癒え始めている。このままで行くなら完全勝利となるだろう。

「弱いな。・・・本気出してないだろ?」

「ンフフ・・・」

相当本気で言っているのだが、母上は笑顔で満ちている。・・・おそらくだが、この笑顔は何か切り札があるのだろう・・・

「絶対に・・・許さない・・・」

「!!やめろ!!ウォイス・・・!!」

そんな父の声も俺の耳には届かず、本気の攻撃を仕掛けた。

「・・・clockdarkfreeze」

 

気が付けば俺の周りは氷が貼られていた。

・・・怒りを感情に攻撃してしまった。彼女達も巻沿いにした可能性もあった。

「ー終わらない、か」

あの術にも当然リスクがあった。今の俺はあまり魔力を持ってない。

「相当ダメージデカかった・・・。流石、生粋の魔導師」

俺自体も少々ボロボロだが、母上はそれを超えるくらいボロボロだ。服が破け、もはや布切れと化していた。

「・・・しかしそこまで凄いと無理でしょ?」

その通りだ。今戦えばおそらく負ける。魔力もアレで結構消費してしまった。

「ーでも此処まで追い込んだのは凄いな・・・。褒美として話をしてあげるよ」

「・・・話?」

「・・・周りを見てみな」

周りを見てみる。そこには沢山の人が倒れている。生気は無いと一目で分かった。

「貴様、何をした・・・?」

「簡単だよ。他の奴らでこの人を殺したのさ」

「・・・!!」

・・・この人は、怖い人だ。実行するその為ならば、殺すのだ。

この人は狂っている。そう思わないともはや正気ではいられなくなる。

 

「・・・王を殺したのは・・・他でも無い、私でもある」

彼女の告白も聞こえない。もはや声も届かない。もう誰もいない。ー怖イ。

***********

??? ルフィア

「・・・どうかしら?こうすれば貴方ですら正常に考えないでしょ?」

「・・・では、あの時の笑みはー」

「作り笑いに決まっているじゃない。・・・とっておきはコレかしら」

「・・・!!ディアナ!」

右手に持っているのは彼にとっては最愛の妹、ディアナ。

「お・・・兄ちゃ・・・ん」

「止めろ・・・!!」

いくら彼でも流石にこうなると平常心を乱すだろう。私は彼の静止を無視した。

「・・・さよなら、王女ディアナ」

そう言って私は彼女の心臓を潰し、殺した。

「・・・・・」

「さあて、次は貴方の番・・・」

「・・・お前が・・・全てを・・・」

「?それがどうした・・・??」

そう言った時彼の異変に気がついた。確か彼は魔力も残っておらず、平和を望む戦争を嫌う者だ。それなのに今の彼は魔力が溢れ、心も読めなくなっている。

・・・まさか、彼は覚醒をしたのか・・・??

「・・・許さない。全てを壊れていても全てを作れば良い・・・?人はもう二度と帰ってこない・・・それなのに作る?」

「所詮人は人。代わりはいくらでも存在するじゃないか」

「ー代わりは、存在しないのだから」

そう言った瞬間、彼は相当なスピードに私に近づく。気がついた時、そこには彼がいた。目が赤く、彼とは別の表情をしている。覚醒ではない。これは・・・

「グッ・・・。まさか、殺されたトラウマと悲しみと憎しみで人格が分離したー・・・?」

「・・・我は『リデァ・アイラス』!!ー悲しみを封じた者・・・」

そうこう言っている間にも完全に追い詰められていた。リデァはそのまま攻撃を繰り返す。その度に攻撃を避けるが少々掠れてしまう。

(・・・ヤバイ!!)

「エデンズゴースト!!」

霧が晴れた時彼の目が見えた。これから後の事はー・・・覚えていない。

 

「・・・!!どうして・・・こうなったんだ・・・?」

涙堪えて放ったウォイスの泣き声が最後に聞こえた音だった。

***********

??? ウォイス

此処にはどこにもない。

孤独と言っていい。もう誰もいない。

「ーウォイスというのは貴方の事?」

「そうだが、誰だ?」

「私はフォルカ・ルアナ。ー信じてくれないと思うけれど、神様」

「・・・俺の罪を裁く為に来たとかじゃないよな・・・?」

それを発した時、重大な事に気がついた。裁くとか死後の話は死神がやる筈・・・。

「いいえ。貴方に会いたい人がいてね」

そこから我の長い長い時を得る事となったのはこの時知る由も無かったー。

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2幕に続く・・・

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夢想の闇夜第1幕は生があったウォイスの話でした。何故人格が分かれた筈なのに人格が1つになっているのは2幕になって分かると思います。ちなみに此処のフォルカは紅月のフォルカと同一人物です。

では。番外編としてちょっと出てくるかもしれません。

 

様々な事件が沢山続き、遂には心髄にまで及んで行って、己の中でそれを重く、鋭く貫くのだ。 嘘だらけの世界で信じる事が出来るのは、己自身ただ一人。痛い思いとかしても良いんだ、嘘をつくのはもうこれで最後にしよう。だからお願い。早ク逃ゲテ。