夢想の針鼠の夢跡

物語に隠されたもう1つの物語 『過ち』を知る物語

夢想の闇夜 第2幕 1章 科学と魔学

第2幕 理性を封じる者

俺はあの時に様々な事件を見た。悲しみに囚われた俺は目の前で最愛の妹を殺されたのを見てしまった。・・・でもその先の事は覚えていない。気が付けば、そこには俺以外生の気配を感じず、皆安らかに倒れて眠っていた。覚えていないが最後はこう思った。

ーこんな事件はもう沢山だ。・・・戦いたくない。誰も、誰も。

 

その時に彼女は「会いたい人がいる」と言って俺は隣国のあの国に行った。ーそして俺は隣国の王にこう告げられた。ーまさか、こんな事になるとは思わなかったのだから・・・

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ラトルシェーン国 ウォイス

「・・・久しぶりに見るな。まさかあの国が滅んだとは思っていない、よな?」

隣国なのだが、隣国が滅んだ事に気がついた所はさらさら無かった。そうでなかったら、こうやって歌を歌ったり踊ったりしてこんなに活気な訳が無いのだから。

「ーまあ、いずれ気がつくと思うのですけれど。王は気がついてますよ」

「・・・俺は何をしたかあまり覚えていないんだ、正直」

「でも生きているの貴方だけでしたよね?」

どうやら彼女は俺に会う前にあの国を周ったらしい。殺されなかったのはおそらく来る頃には全員全滅していたからだろう。あるいは彼女が相当の手馴れであいつらを簡単にやっつけたか・・・?でも外見とオーラからでは強い印象は無い。ー前者の方が納得するだろう。

「うん。妹が殺された後の事が覚えていない・・・。」

「とりあえず、王にこの事を話すのが先だね」

「まぁ、そうだな」

彼女は「馬車は用意してますから」と言って、馬車を呼んだ。ー外見からだと1つの部屋らしい雰囲気がする。

「これは凄いな」

「ハイ。とりあえず行きましょう!!」

「あ、うん・・・」

ここで少々気がついたが感情が少し薄れた感じがした気がする。あまり変化は無いのだが・・・。

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ラトルシェーン国 王宮 ウォイス

「待っていたぞ、ウォイス殿」

「お久しぶりですね、ランディア王」

ランディア・グリフェンブルク。彼は13歳の時に一時期お世話になった人だ。確かこの時までは父が王になっていて、ランディア王は貴族だった。しかし知らぬ間に後継をしたらしく、父はサポートしながらやっている、らしい。

「・・・結構成長したな」

「いやいや、まだ1年しか経ってないじゃないか」

そう茶化すると王は豪快に笑った。

「ガッハッハ!!そうだったな・・・。ハハハ・・・」

ここいらは父と似ているなと思う。父もこんな笑い方をしていたので、不快感よりかは心地良かった。

「・・・話を変えるが、何故俺を呼んだんだ?」

正直言ってそれなりに長い付き合って(お世話になる数年前から)いる。王は敬語を使わなくとも不快感を与えない。ーいや、2人共王子という意味で付き合っているから敬語を使わないといけないかもしれないが、色々考えるのもどうかと思っている。

「ーお前さんの国について聞きたくてな」

「・・・もうあそこは廃墟と化しています。荒廃とした魔導王国に?」

「フォルカに頼んで、お前さんの国を調べて貰ったよ。少々手遅れだったが」

どうやらフォルカは生存している人を数える為に来たらしい。そしてテロ組織がいたら全滅させるという役目を持っていたらしい。が、時は既に遅し。俺があの秘術を使いテロ組織(おそらく無実の人も巻沿いになっている)は母以外全滅、その後、理由が不明だが母は殺された(おそらく俺がやったが覚えていない)。

「あの術・・・。私達にはあんな術は無いと聞いたけれど、ウォイスあの術は?」

「秘術だ。父上、母上などには扱えない術・・・。ただ俺自身完全に操れてなかったからな・・・。」

「格闘技などでいう『必殺技』か?」

「まあ、そう考えれば良い。・・・テロ組織は母以外あの術で全滅だろうな。ーおそらく父上も・・・」

「・・・その母はどうなった?」

「その後俺が意識が飛んだ時に何かあったんだろうが・・・。気がついたら血まみれで倒れていた」

そう言った時周りの景色が歪んで見えた。ーもしかしてこうやって記憶が失った時に・・・?

「・・・意識が・・・遠く・・・」

揺らめく意識の中、なにか遠くで小さな声が響く。

『眠レ。俺ガヤルカラ・・・』

俺の意識はそこで途切れた。

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王宮 フォルカ

「・・・ウォイス、大丈夫か?」

王はウォイスを揺らすが、反応が無い。ただ、彼は小声で何か喋っている様だった。

この前ある人のを見るとこれは何を意味するか分かった。・・・この時私は彼自身が気がついて無いのだと察した。

『・・・覚えていないんだ。まるで記憶が取られたみたいに』

彼がそう言ったのと私の仮説が正しいのなら・・・?

「!!王!!」

むくりとゆっくりと起き上がった彼は、ウォイスではないと一目で見て分かった。目つきが変わっている上、目の色も少々違う。

「・・・お前、人格が分かれていると考えた人か・・・?」

声のトーンも少々低い。間違い無い。彼は人格が分かれている。

「・・・貴方、ウォイスじゃないよね?誰・・・?」

「・・・。ただ、此処にいるってことはそいゆうことだよな・・・」

「え・・・?何を言ってー」

「俺は彼の絶望を切り離す為に生まれた存在・・・。彼はあの時確かに望んた筈だ・・・」

「日頃のストレスと幼い頃のトラウマ、そして目の前で起きた抱えきれない悲しみと憎しみで生まれた存在・・・?彼はこれを逃れようと・・・?」

彼は何も言わず目を閉じた。そして軽くこう言った。

「母は・・・俺が殺した。ー殺めざるを得なかったのだ・・・」

「ー彼が覚えてないのも納得だな。・・・だがこれをどう伝えるべきか」

それが問題だった。彼は人格が分裂した事に気がついて無い。もし目の前に「お前は多重人格だ」なんて事を言えば冗談だろうと思うかあまりのショックに自傷行為なんてやる可能性も否定出来ないだろう。ただ放置すれば、確実に不自然に思うだろうし、下手すればコントロール出来ず暴走を起こすかもしれない・・・。色々考えたが、やはり教えるべきだろう。それが例え冗談だと言っても、ショックで色々な影響を与える事になっても。

「やはり教えるべきですよ。放っておくのもどうかと思うのですが」

「・・・同化は出来ないのだろうか・・・」

「同化・・・。ーそうだ。知り合いに聞いてみるか」

「ええっ!?あの人ですか??」

「あの人はきっと眠っている・・・。起こしてこの事を話してくれ・・・。じゃ、俺は眠るよ。あ、彼が起きている時も俺は見ているからそのつもりで。」

「せめて教えてください。貴方の名前を・・・」

「ー俺の名前はリデァ・・・」

そう言って彼は眠り(睡眠ではなく人格交代の意味で)についた。

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??? ランディア

「・・・此処か?その割には結構近未来風だな」

「名前からして暗黒っていうイメージがって痛い痛い・・・!!」

「お前は過去に何度か入っとるだろうに」

俺はそう言ってフォルカの頬をつねった。

「此処で何をするんだ・・・?」

ウォイスはそう言ってキョロキョロと周りを見ていた。

結局彼には何も言わずに導いてしまった。彼は人格を同化させるなんて事を言ったが、実際に完全にリンクする事は出来ない。分かれてしまった以上、元には戻らない。が、多少ならリンクする事は可能だ。

「此処でお前の人体実験をしようとな」

「・・・!?人体実験・・・か?」

「ーウォイス。信じてもらえるか分からないけれど、聞いて。・・・貴方はあの殺されたショックをきっかけに人格が分かれてしまったの。途中意識を失ってしまって記憶が無いのはこの為なの。証拠もあるから、否定しきれないけれどね・・・」

そう言ってフォルカは彼に光の玉を見える。ウォイスは何も言わずに内容を見ていた。

「・・・。そうなんだな」

彼自身否定したいが否定しきれない状態なのだろう。そうでなかったら現実逃避みたいな顔をして2人の顔を見ようとしない筈だ。

「出来るならやって欲しい。彼が、そう望むなら」

「・・・分かった。ただし、1つ条件がある」

「・・・?」

「そうなんです。リンクするのは簡単です。しかし、おそらくそれなりの副作用が起こると思うのです。副作用としては記憶喪失や霊力が上がったり、姿が変わる・・・などの変化が起こると思うのですが・・・宜しいですか??」

「それでも良い。死ななければーだが」

軽くそう言って空を見つめている。彼の心はきっとそう簡単に左右されない筈だ。そうやって軽く空を見てる彼も相当の覚悟を持っての事だろう。

「ー数年掛かるかもしれないが・・・。始めるか」

「って、今から!?」

「ああ。今から。友人にも協力して貰うよ」

「・・・というわけで、横になっていてね?」

「はぁ・・・」

そう言って彼は横になった。最初あまりの光の強さでクラっとしたが問題無い。

「始めるぞ。しばらく、本当に長く眠る事になるが、我慢してくれ」

「ーうん」

「フォルカ、アレを用意しろ」

「ハイ」

睡眠薬投入っと」

ウォイスは針に触れると少しピクリと動いた後、眠りについた。深い深い眠りに・・・。

「ーんじゃ、始めるか。外見は変えずにリンクしてみるぞ」

「ハイ。」

数年にも及ぶ人体実験が、今幕を開けた。

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続く

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人物紹介

フォルカ ランディアの側近。後にウォイスと共に世界を創る事となる。当時の彼女は出来事を実際にする事は不可能だが、魔術が出来ていたので基本それで戦っていた。

ランディア ウォイスが13歳の時にお世話になった人物。その後父の王の座を引き継ぎ王となる。が、まだ少々幼い為父の力を借りながらの政治を行なっている。

リデァ ウォイスの様々な負の感情から生まれた人格。彼が表に出ている時は目つきが鋭くなり、目の色も赤に変わる(ウォイスの場合は水色・青)。ウォイスより比較的冷静だが、時期に本音がポロリと出たりと人間らしさは出ている事があるらしい。

 

ようやく2幕です・・・w 企画から3ヶ月経っているが、まだこんな所とは・・・w

黒羽s曰く3年掛かるかもしれない なんて事言ってますが、細かい設定も兼ねて入れると本当に3年掛かる気がします・・・。ーというかそろそろうごの方で集めるべきと察したのだが・・・。

一応0話は闇夜の最後の最後にでると思います。ちなみに赤月は0話以降で話を進めています。正直後悔したのですけれど、まあ大丈夫だと思います(殴

0話が行方不明なので、1話のみオープンを。

幻想の紅月 1話 異変

では。

様々な事件が沢山続き、遂には心髄にまで及んで行って、己の中でそれを重く、鋭く貫くのだ。 嘘だらけの世界で信じる事が出来るのは、己自身ただ一人。痛い思いとかしても良いんだ、嘘をつくのはもうこれで最後にしよう。だからお願い。早ク逃ゲテ。