夢想の針鼠の夢跡

物語に隠されたもう1つの物語 『過ち』を知る物語

Greece plans~Epsilon

我の友人の研究を記す。

友人の科学者は人格あるいは肉体を作り、それを生きられる『人』としての計画を作った。友人は我にその為の実験体が欲しいと言ったので、我は我の友人にこの事を少し伏せて事情を話した。結果、彼は悩みながらも承知してくれた。

「ー構わないけれど約束して欲しい事がある」

彼はそう言って約束して欲しい事を言った。結果我はそれを守る事にした。今もだ。

そう言ってみたのは良い。だが、伏せてしまっているせいで肉体ごと持っていけば当然無かった事にして欲しいというだろう。なので、疲れている所を利用し彼の魂を彼の肉体を切り離す事になった。切り離せば、一切気づかれずやれる・・・そう思ったのだ。我は彼の魂を持って、友人の元へ訪れた。友人は魂を受け取り、人の形に変えた後、実験道具を用意した。

その間、我は悩んだ。言ってみれば彼を騙して、利用した事になる。我は自らの行いを後悔した。が、そんなことしても意味が無かったのだ。そう言うと悩んだ時、彼が行方不明になった事に気がついた者が現れたのだ。ー彼は実験体になっている今、阻止せねばならない。・・・友人の実験の為にも。ふと我は考えた。

『ーこいつらに守らせれば良いんだ・・・』

そうやって考えると私は簡単じゃないか、と思った。実験体が完成したら、実力調べという意味も入れて捕まえらせれば良いと。ああ、そうすればいいだろう。きっと彼らも賛同してくれるだろう。さらに言うと、我以外にもこの計画に賛同してくれた人がいるじゃないか。ああ、大丈夫だろう。

「・・・ふぅ~ん。これでも人格が分裂しているのか?」

我が見た彼の第一印象は『変わらない』だった。しかし、それは本当に一瞬だけだった。彼が目を覚ました時、気配や雰囲気、印象も彼とは全然違った。我と友人で彼を『イプシロン』と呼んだ。ーシリーズであるのは伏せておく為に『イプシオン』とあえて呼ばせ、名前を付けた。『ε』という記号を書かれた記録表は彼の情報を得るメモとなっていた。

イプシロンというのはギリシャ文字の1つらしく、他にもガンマやオメガなどがあるらしい。そういえばエッグマンという科学者が作ったロボットにこんなのがあった気がするが・・・。

しかし、此処で事件が起こった。目覚めた直後、彼は敵味方の目線が分からなくなり、攻撃してきたのだ。幸い、我がいたので被害は最小限に抑える事が出来た。友人曰く元の人格が敵視しているんだそうだ。無理もない。彼からすれば俺のした行為は『裏切る』あるいは『利用した』という事になる。イプシロン自身は人格がしっかりとはしているが、彼は必死に人格交代を見図っているのだ。

理性を持ち、元の人格の力を抑えた彼は利用するつもりだった奴らを捕らえろという令を出した。それから約2、3時間だろうか。彼は奴らの4人の内、2人捕らえる事に成功した。その後、我の力で2人を操った。・・・イプシオンと似た感じに。

この時点で暇だと感じた我は魔術で皆の天気をバラバラにさせた。異変発生だ。それをした後はあの人達は彼を探すか、天気の異変を解決するかの選択で混乱した。それを狙っていたのだから見事に掛かったという訳である。そうやって楽しんでいる間に、彼を取り戻すべく探しに行った者の内の1人が此処に入っていった。面白い事にその1人は利用する奴らの1人でもあった。しかし、この時点で予想外だった事が2つあった。

1つ目はイプシオンが彼女を知っていた事、2つ目はイプシロンの人格を引き裂き、本人の人格が表に出た事だった。

本人の人格が公の場に出たという事は我以外気づかなかった。それをきっかけにイプシロンは倒れてしまった。・・・この時既にこうしようとしていたのだろうか。利用する予定の彼『イプシロン』を本当の人の様に接していたのだ。・・・母性が働いたのかもしれない。あるいは『シルバー』があの事を言った事が原因だったのだろうか・・・?

とりあえず倒れてしまった以上、立て直す必要があった。彼を抱いて、円上のガラスに薬を入れ、彼本人の人格を薄れさせる事にした。この時元々の人格は表に出ており、僅かではあるが声を発していた。その後、彼は元の人格を打ち破り再び元の状態に戻った。

彼はそのまま残りの1人を操るべく、グループを強制的に散らばらせ、残り1人の所へ行き、倒す目的で行った。・・・ついでにあの人達を引き裂いたのは良かったかもしれない。その中でも我の作戦を見破る子がいた辺は驚いた。しかし、あの人達と私などの人が不明な事があった。それはシルバーに兄がいるという情報だ。シルバーは行方不明な上、兄が何処にいるかも不明な今、これを証明する人はいない。これを知る人はシルバー本人しかいない。何故なら、兄はいないかもしれないからだ・・・。

結局、友人がやった実験は俺のせいで事が大きくなってしまった。俺が暇である、友人の実験結果を見たいという事で作ったこの事件。ーあいつらはきっとこれらを知らず、本気で犯人探しをしているだろう。

きっとあの人も黙っていない筈だ。時期に『イプシロン』に接触し、正体を暴くだろう(おそらくあの人は伝えないだろうが)。彼は標的にされているのだ。・・・あるいは元の人格が表に出て、イプシロンのフリをするかもしれない。

・・・おそらくだが、行方不明にしたシルバーと正体不明のガナールと事件の犯人である俺の三角関係が重要になるのだと思われる。行方不明となった彼は一体何処にいるのだろうか?・・・残念ながら今彼がどうしているかなど知る由も無い。

最後に。これのまとめの記録は『ギリシア計画』の始まりを意味するが、同時にあの事件の動機を意味している事となる。実験に成功し、『ε』が生まれた記録でもある。・・・もうお分かり頂けただろうか。彼はこの計画の生贄の様なものにされたのだ。彼はこれを知らずに活動している。そして人格が分裂して、自由を失った元の人格の正体もおそらくは・・・・。

ー真相を知るのは『俺』だけでは完全では無い・・・。あいつらも同時に話を聞かないと『完全には』解決しない。

様々な事件が沢山続き、遂には心髄にまで及んで行って、己の中でそれを重く、鋭く貫くのだ。 嘘だらけの世界で信じる事が出来るのは、己自身ただ一人。痛い思いとかしても良いんだ、嘘をつくのはもうこれで最後にしよう。だからお願い。早ク逃ゲテ。