不明記録~Last sacrifice
チリチリチリチリ・・・・。
何かが燃える音がこの部屋に木霊する。それと同時に妙な心臓の音が聞こえる。
何かがくる・・・。それも相当恐ろしい何かが来る・・・。
何も言わず奥へ行く。奥に答えがあると分かっている以上、行かなければならない。でも変な音のせいで戻りたいという気持ちも少なからずあった。
沢山の本。そして蝋燭が並べられていた。ミステリアスな雰囲気だ。
此処は何処だろう?彼の話からだと此処は不思議な図書館だと言われたが、館の様にすら見える。
「此処は結構邪気と魔力が凄いよ・・・。」
「いくら俺でも分かる。此処は魔女か何かの魔導師がいるなこりゃ」
彼は半分呆れ顔で呟いた。呆れるのも無理もない。近くの本には読んだ跡があったし、おそらく侵入者(僕達のこと)が入ったことに気がついていても不思議ではない。なら何故、襲ってこないのだろうか?そこいらも考えると本当に主は不気味だ。
「・・・確かに魔導師がいても不思議じゃないかも。ーいや、彼の話からするとおそらく・・・」
僕がそう言った時、此処の主と思われる人物がいた。
「・・・!!」
ここの雰囲気とは対照的な雰囲気を持った人が宙に浮いていた。僕達の存在に気がついた人は何も言わず、周りの景色と同化するように消えた。
「・・・あの人を探した方が良さそうだな」
「そうみたい。奥の方にいるかもしれないね。」
僕は彼と共に奥にすすんだ。その際には心臓音、火花の音の他に歯車の音も聞こえていた。
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「どうしたんですか?」
シルフィは何か察知したかの様に話しかけてきた。
「・・・あの人、見覚えがあるな。誰だっけな・・・?」
「?ああ、先程お茶会でおしゃべりしていた彼女ですか」
「そう。シルフィ、彼女を知っているか?」
「彼女は、この世界の住民ですよ?私以外に知っている人なんているのでしょうか?」
「その筈だが。彼女は面影があるんだ。誰だか分からないけれど」
「彼女に連絡してみますね」
そう言ってシルフィは携帯を持ってメールを打ち始めた。
「・・・お前、メアド交換をしてたのか」
「そう。そうすれば簡単でしょ?」
いつ頃したのだろうか。まあ、それで構わない様ならいいが。
「・・・まあいい。彼女は放置しても大丈夫だ。さてと」
「?何かする気ですか?」
「・・・彼女につけられたアレを取り外すか。紅月に何か細工されているみたいだし、それに我を見ても驚かないだろうし」
「はぁ・・・。」
「お前も行くか?光の国に」
「そうします。その前に、準備させてください」
「我もしないといけないしな。30分以内に終わらせようか」
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「ウググ・・・」
「・・・お前達は狂っている。お前達は他の人達を騙してまでも世界を救いたいのか?壊したいのか?」
俺は2匹の狼を見てそう言った。2匹というより『2人』といった方が正しい。
「ーお前達のせいだ。一連の事件で、俺達を引き込ませ、ソニックを殺し、人々は悲しみ、平和という秩序を壊し、怒りを覚え、2人で集団を作り戦う。俺はもううんざりだよ」
「ウググ・・・ウー・・・」
2匹は俺の事を敵かエサとしか見てないだろう。2匹とも普通の状態とは違うのだから。
「・・・ああ、そうだな。確かにそれに乗っかった俺も悪い。だが、罪の比率を考えてもお前らの方が多い。それにお前らの戦いのせいで犠牲者は沢山出ている。もうこれ以上犠牲者を出さないでよ。」
「ウゥウゥゥ・・・・」
「それ以上お前らが暴れる様なら・・・。俺は全力で止めるぞ?」
「ウグォオオオ!!」
『―ガナール、許してくれ・・・』
俺はそう言って『能力』を開放した。彼らは開放した力に恐れていた。
目の上としたには横長の長方形の印が3つ。その印が体のいたる所にあり、髪も長くなり、身体も大きくなっていく。
『・・・貴様、いつその力を』
『ーあいつ、あれで本気では無いのか?』
あいつらの声が聞こえる。 ・・・あいつらは知らないのだ。俺の『真』の力に。
「・・・少し、反省して貰おうか・・・。紅月・・・ウォイス!!!」
「!!」
2匹はあまりの力に守備しきれてないようにすら見えた。
(・・・ウォイス、紅月、目を覚ましてよ。過去に囚われてはいけないんだ・・・)
銀のナイフを術で唱えて、攻撃する。そうすれば・・・きっと・・・。
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狼男や吸血鬼、フランケンなど物語で恐れられているモンスターはおおよそ共通の弱点があった。それは、『銀』に非常に弱いのだ。日光を嫌う、水に弱いなどと色々あるが、調べてみてもこれが一番共通していたのだ。
元々白銀の身体をしていたシルバーは正直身についていなくても『銀色』なので襲っても意味がなく、尚更弱るのだ。さらに名前もシルバー。つまり『銀』を表すので、彼の近くにいれば襲われる確率は低くなるのはもはや言うまでも無いだろう。何でも『吸血鬼化事件』の際、殆どの人が襲われたが本人は全く襲われておらず、吸血鬼化事件が嘘付いているかと思われるくらいだという。当時銀製のナイフを持ってなかった為、彼本人の特徴で恐れているという事が分かる。
ーここまで言えば分かるだろう。ウォイスは『狼男』では無いのだ。狼男なら銀で攻撃し傷がついただけで致命傷だという。人間姿でも怯えるという。一方、彼は狼の姿になっていても銀に動じない。さらに絶対狼になるという訳でもない。おそらく狼男ではなく、別の理由でこんな形になっていると思った方が良いだろう。
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吸血鬼化事件。ソニックの死後から70~71年の時に流行った事件である。ある一匹の吸血鬼が人の血を飲み、飲まれた人が吸血鬼になり・・・という最悪な事件であった。当時守護者を勤めていた人はこれを怯えていた。ーシルバーを除く、全員は。
シルバーはこれを見てもびくともしなかった。彼は「あれは嘘じゃねーのか?俺の周りで襲われた回数0回なんだが」と言ったぐらいである。ウォイスやシャドウ、フィーナなど守護者は完全に『嘘っぽい』と感じていた。が。シルバーを付け狙ってみても、彼の言う通り、全く襲う気配が無かった。『彼自身の特徴が吸血鬼を恐れているのでは』。そう考えた守護者達は本で調べた。
シャドウ目線
「だから俺は何もしてないんだって。普通にあるいているだけだぞ?」
シルバーは睨んでいる。ーお前が可笑しいだよ。ほぼ壊滅状態の街だってあるのに、シルバーは全く襲われない。絶対何かあるとしか思えない。
「・・・吸血鬼は確かニンニクと十字架が苦手なんでしたっけ」
フィーナは十字架を持って、不安そうに言った。
「ああ。そうだ。ちょっと待ってろ」
ウォイスはそう答え、吸血鬼の本をペラペラと捲っている。僕自体が本の内容が殆ど分からない。正直フィーナもそんな顔をしている。シルバーは文が読める・・・様に見える。
「なぁ、ウォイス。それ以前にあの事件は本当なのか?」
「本当だ。ーおそらくお前以外1回は襲われているぞ」
発言内容から察するに、ウォイスも1回襲われたらしい。多分ウォイスが勝ったのだろう、余裕の表情を浮かべていた。
「あの時は日光があったから良かったが・・・。ー下手すれば僕やウォイスですら適わない。・・・恐ろしいのは夜だからな」
「そうですよ。十字架を常に持っている様にしてます。実践してみたところ、十字架に弱い事は分かっているのです。」
「・・・俺が常識外れなんだな」
「お前は気配すらしない。相当怯えているか、自然かは不明だが」
僕がハッキリ言うとシルバーは「吸血鬼じゃないぞ」と言う。
「・・・見つけた。此処だ」
「えーと何々・・・。吸血鬼は以下の通りが弱点である。1、日光に弱く、浴びると灰になるか焦げていくかのどちらになる。2、水を横切る事が出来ない。ただし川などの場合、船を使うなどをすれば大丈夫だという。3、十字架・ニンニクに弱くやれば致命傷を与えられる。4、特に銀製の物に弱い。見るだけでも効果が大きく、当たり方次第では一撃で倒せる。・・・もしかして4の奴が俺を指しているのか?」
「他にも5、キリスト教に関する日は動かない。例としてクリスマス、復活祭(イースター)など。6、豆に弱く当たるだけで皮膚が焼ける。などだそうだ」
ウォイスは補足を足してそう言った。・・・吸血鬼の弱点は実は多いらしい。ぶっちゃけ言うとシルバー自体が吸血鬼にとって毒の存在なのだ。
「ーお前の近くにいればひとまず安心だな」
僕はそう言った。
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心が見えなくとも、僕には分かった。
そうやって笑っているのは『偽り』なんだと。
長い間一緒にいた僕なら分かる。
決してお前自身が平気でいられるとは思えない。
感情が薄い、僕ですら平気じゃなかったのだから。
きっとお前の心は、狭く深い。心を完全に開く人がいなければ、お前は自ら口にしない。そしてそれを悲しみに抱き、表に出さない。
ガナールはこれを知っていたのだろう。だからあの人はお前の代わりに行動していたのだ。
『・・・貴様らなんかに此処を渡す訳にはいかない。-それが彼の『意思』だから』
僕はその『意思』に疑問を感じるのだ。その意思は『敵』だけではない。『味方』にも向いている。つまり、『全員』に向けてその『意思』を伝えているのだ。その時は味方敵問わず、無差別全体攻撃だった。・・・全員が『敵』だと思ったのかもしれない。
しかし僕はそれが何の意味を示していたのか分かっていた。敵だとも思わなかった。それが合っているかは分からない。だが、あの人は必ず彼の意思を通しているとは思えないのだ。「彼の意思」、そこにあの人自身の意思も少なからず入っていると思うのだ。詳しい事は聞いてないので不明なのだが。
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ソレガ『意思』ダトイウノナラ・・・。
我ハソレヲ助ケテアゲル・・・。
ソレハ我ノ『意思』デモアルカラ・・・。
彼の声が俺の頭の中で木霊する。ああ、分かっているよ。
でも、しばらくは此処にいさせてよ・・・。
それが、俺の『意思』だから。
空ニ輝クノハアノ人ナノカナ?
そうだよ。あの人は空に輝いているよ。
星に広がるのは望んでなかった人達?
アッテイル。無実ナ人達ガ眠ッテイルンダヨ。
何かを失いたくはない。
ソノ為ニ我ラハ戦イ続ケル。
「そうなんでしょ?」『ダカラヤルンデショ?』
ーそう言って、俺は彼の名を呼ぶ。
ー我ハ彼ノ名前ヲイウ。 目ヲ閉ジテ。
『それが我らの「願い」なのだから』
二人ノ意見が揃っタ時、真ノ力を発すルのダ。
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彼が消えた話である。
彼は3人を結ぶ人であった。
1人目は彼の父にあたる、大魔導師だった。
2人目は父より強い、裏切り者だった。
3人目は父を慕い、隠れた神だった。
この3人は誰もが羨ましいと感じる魔導師達だった。
そして皆は3人の事を『三大魔導師』と呼んだ。彼はその卵だった。
誰もが期待していた。ー裏切られるまでは・・・。
裏切られた父は真の意味を知った後、逝ってしまう。
裏切った人は愉快すぎて、狂人に変わってしまう。
それをみていた神は、悲しみで己を満たしてしまう。
その様子を見ていた彼と従者は、これが何の意味を示すか分かった。
その話をするには、様々な事を知らなければならない。神の過去、裏切り者の真意、父が作った此処、此処のルール、3人の関係などをしなくてはならない。きっと今はそれを理解するのは不可能だろう。
理解するのは、もう少し、時間が必要のようだ・・・
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「・・・これで、最後だな」
ウォイスは口元から血がスッーと流れる。死にはしない。あの人は不老不死だから。
生霊(せいりょう、生きている人の霊)になっている俺はこの様子を見ていた。当然、皆には見えない。ウォイスからは見えるかもしれないが。
奴らは彼の懐のポケットを見ている。が。エメラルドが無いのだ。
「・・・可笑しい、奴はエメラルド守護者の筈」
そう。普通ならそうなるだろう。しかし、そのエメラルドとやらは既にシャオンに渡しておいたのだ。・・・あいつらはウォイスの幻術にまんまと掛かったという訳である。以前、スペードが彼女を連れ逃げる際にもこの様な手を使ったが、まんまと掛かる。ウォイスの魔術が凄いのか、あいつらが油断しすぎているかは不明だが、とりあえず、単純すぎるのは確かだ。
「・・・ウォイス、無事か?」
「シルバ・・・か?今まで・・・何処に?」
ウォイスは息を切らした状態でそう言う。テレパシーの様だ。
「ー色々察してみな。・・・作戦は成功」
「そう・・・な。フフッ」
彼は変なタイミングで笑う。あいつらはどうやらこの事を報告しに戻った様だ。
「・・・ウォイス。1つ言いたい事がある」
「・・・?」
疑問を浮かべた彼を見て、静かに言った。
『ー俺は、操り人形じゃない』
静か。しかし熱く感じるかの様に言った。
俺は操り人形ではない。彼の意思も尊重はする。しかし、時々彼の言う時はストレートすぎて逆に悪い事がある。彼の欠点は、『夢』に関して全くと言って良いくらい関係無い様に話す事だ。そこにはちゃんとした理由がある事を、俺は分かっている。しかし、それでも少しくらいは『夢』を持たせてもらいたいものだ。
簡単に言えば、現実を見すぎている。少しは理想の世界を描いて欲しい。
そういった意味も込めて言っているのだ。
が。ウォイスはどうやら普通に考えたらしい。
「・・・操り人形。俺はお前をそんな風にはしていないのだが・・・・」
「では、もし俺が何かしらの事情で結界を外すとしたら、お前はどうするのだ?」
「ーさあな。もし結界に必要な条件があるのなら、外せるが、あるいは・・・ おい、行くなよ・・・」
「ー最後のエメラルドは俺が持っている。それは俺の守護するエメラルドだから自由にしても構わないだろ?」
白のカオスエメラルドをウォイスの前に差し出す。
「・・・構わないさ。でも、死ぬなよ。お前は最後のエメラルド守護者でありながら、最後の所有者なのだ。死ねば・・・言うまでもないだろ?」
「分かっているよ。きっと全員来るだろうね、あの館に」
「・・・?」
ウォイスは疑問を浮かべた顔をした。
「まあ、お前は俺の本当の名前を言うなよー?」
そう言って俺は生霊を元々の肉体に戻した。
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「おかえりなさい。どうだった?」
「あれは酷かったな。アーチメイジ1人にアーチメイジ数名は明らかに難しかったのだろうな・・・」
彼女は「そうですよね」と言って、読みかけの本に栞を入れ、パタンと本を閉じた後、
「今度はアレを相手にしなければなりませんしね」
「相手にとって不足は無いな。きっと此処の館は選ばれし者、闇の住民、闇の破壊者、守護者・・・そして、死霊が集まるだろうな。英雄ソニックも」
「総勢でどれくらいかしら?しかし、戦いなんでしょ?久々に本気を出せるわ」
彼女は『いち』の指の形をした右手をクルクルと回している。その間にピンクと紫の間の色の光を感じた。
「・・・少し準備が必要だから、準備をするぞ」
「了解。・・・フフ」
「?何だ」
「久々に見たからさ。貴方の本気になった顔を見るの」
「・・・いじらないでくれ、シルフィ」
「ウフフ、可愛らしいわね、シルバー」
彼女は俺を見てクスクスと笑った。その笑顔は昔の俺と似ていて、まるで天使の様な顔で笑っていた。
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続く。
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これであの方が誰かが分かるであろう記録集。