夢想の闇夜 第2幕 3章 3つの意識~Good will and malicious
この姿を維持するには、本当の不老不死になる必要がある。我が手に入れた不老不死はどちらかというと老いて死ぬ事は無いくらいで、ナイフか何かで無理矢理殺すのは出来る。しかし、我には役目がある。この魔学の黒歴史を守る役目が・・・。だから、死んではいけないのだ。感情が無くなっても、此処が壊れてしまっても・・・。
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ウォイス 王宮~客室
「おはようございます、ウォイス様」
どうやら俺は眠っていたらしい。気がつけば朝日が昇っていた。
「・・・ああ、おはよう。ランディア王は何処へ?」
「王からの伝言で此処にいておいてくれとの事です。・・・朝食がまだでしたね、お持ちします」
「あ、ああ。すまないな」
召使はそう言って調理室に行った。
さて、何が起こったのだろうか。とりあえず、蓬莱の薬とやらで俺は不老不死か、長命を得た。その後、母、リディアを魂離術(こんりじゅつ)で魂を切り捨てた。その後、リディアの肉体を腐らせ入れる事はしない様にした。そして母は・・・逃げてしまったんだ。身体に慣れずに眠ってしまったのが仇だったみたいだ。つまりこれはどういう意味を示すか。肉体をくっつけて偽名で名乗り、俺を殺そうとする『殺人鬼』と化する。多分普通の人はこう思う筈だ。「昨日までとても優しかったのに何故こうなってしまったのか」と。そして魔導師の名を聞いて、お願いされて・・・となる訳であろう。
「それはヤバイ事になってしまったな・・・。となると他の地域が滅ぶ可能性も出てくるのか」
いつ頃彼女が悪意に掛かってしまったのかは分からない。でも、俺はその血を引いている以上、俺も悪意に掛かってしまうのかもしれない。そしておそらくだが・・・『自覚症状が無い』だろう。彼女自身狂っている事にあまり気がついてない。実際俺も無意識に悪意に取り組まれていても不思議ではない。
『邪魔スルナ・・・』
不意に聞こえた言葉。煩い、煩い。
『何故、無視ヲスル・・・我ハオ前ヲ助ケル為ニ』
俺がそんなのに騙さると思うのか?単純すぎる。
『母親ヲ倒シタイノダロウ?』
耳鳴りがする、お前の・・・俺の悪意のせいだろう。
『我ニ委ネロ・・・』
「・・・邪魔だ!!俺の目の前から居なくなれ!!」
「あ、あの・・・ウォイス様?食事を用意しましたけど・・・」
「!!あ、いや。ありがとな。何でも無いから、気にしなくて、いいからな・・・?」
朝食のメニューはバターロール3個、紅茶(ミルクティー)、目玉焼きなど、洋食だった。俺は耳鳴りを無視し、食べた。高価な食べ物だったのだろう、とても美味しかった。
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フォルカ 王宮~王室
「ランディア王、ウォイスがお目覚めになりましたよ」
「そうか。・・・やはりあの家計は不思議な能力者が多いな」
ランディア王はそう言った。
「そうですよね。アイラスの血は知力が凄く、イチジクの血は魔力が凄い・・・。アイラスの血を引く者のIQは平均でも150は超える。彼長命だからおそらく伸びるだろうな。魔力と共に。」
「?ああ、そうですね。アイラスもイチジクも平均的には知力・魔力が凄いですからね。まあ、どの道歩むかは人それぞれですけれどね」
血で色々決まるとは・・・。運命も残酷だと思った。
「・・・まあ、彼は魔学を学ぶのでしょうけど。父親・母親に負けない様にね」
「そうだな」
彼は軽く言うと、扉の先を見た。ウォイスが此処へ訪れたのだ。
「使用人から出るなと言っておった筈なのだが?」
「・・・王は何でも俺達の血の種族を調べている様で」
「そうだな。お前の血の特徴が知りたくてだな。お前の家計は皆常識外れの力を持つ。もしかしたら遺伝子にあるのかなと思って調べているが、それがどうかしたのか?」
「俺は遺伝子を知らないから、俺も知りたいのだ・・・。母親の血をな」
「あれ、貴方は既に知っているのでは?」
「俺が知っているのは母上と父上の血の特徴の一部だけだ。母上の血は『悪意』が混ざっている事があって発狂する可能性があるという事、父上の血は予知夢を見る事があるという事くらいしか俺は知らないんだ・・・。」
その様子だとこれは本音っぽい。確かに決定的な違いがある特徴というと大体それくらいだし、まだ判明してない所もある為、正直言ってまだ特徴がある気がする。それこそ、冷静な判断が出来るや、比較的好戦的な人が多い、武術が得意など色々ある。数えきれない。
「-そうだな。血を調べるのなら時が必要か。・・・フォルカ、あれは無いか?」
「アレは危険じゃありません?彼は元々人間ですよ!?」
「・・・聞いてもいいか?アレって何だ?」
ウォイスは私達の「アレ」に首を突っ込んできた。
「簡単に言えば『神様』にならないか、って聞いてるの」
「・・・!?ちょっと待て、元人間の神なんているのか?第一、なれるのか??」
「まあ、急に『神』になんてなったらこうなるとは思っていたが。神の血を引けば、不完全な能力を目覚められると思うのだが、どうかな?」
「・・・俺が出来る事といえば、水を自在に作ったり操ったり・・・あれ」
「水を創る力を宿っていたなんて・・・。もう既に覚醒してますよ」
基本操るが限度である。人間なら創生能力は無い。しかし創生を手に入れた者はある意味神である。神は何かを『創生』する力があるのだから。
「まあ、お前の自由で良いがな。ただ、お前には役目があるだろう?」
「役目というと確か元々覚えているんですよね、人それぞれに」
「あの種族らだけだがな」と王は付け加えた。その役目は人によって違う。『此処を守れ』の人もいれば『此処を壊せ』というのもある。役目は果たさなければならず、役目を果たさない者は殆ど居ない。何故かというと、果たしたくなくとも身体を乗っ取られるからだ。無意識に。
「・・・俺の役目か。俺の役目は2つあった。『闇を無くせ。しかし完全には封せばなせん』、『俺を超える者を少なくさせよ』・・・。多分、善意と悪意混じっているだろうな」
「2つ目の役目が微妙だな。身分なら俺の方が上だし、殺意衝動も起こらない。となると」
「仮説は2つですね。1つ目は『身分・力問わず何かが上で数が多ければ減らす』・・・つまり殺す事。2つ目は『身分以外で何かの条件が上の時減らす』。ただし2つ目は少数でも起こるかは不明ですね」
「嫉妬に関する事もありえそうだが・・・。ただ、俺は知らないがな」
王はそう言った。確かに王が関連する事など一つも無い。
「・・・試行錯誤しないと結果見られず、か。それこそ本当に人体実験レベルじゃないか」
「=死刑宣告ですよね、それ・・・。」
「そういう事になる・・・か」
そんな話をしていたら、不穏な空気が全体に流れ始めていた。
「まあ、それは言わないでおこうよ、ね?」
私は結論を言った。この間の時間は34秒。
「・・・そうだな。ところで、フォルカ。」
「?」
「いつまで寝巻きの状態でいる?流石に普段着に着替えろ。今何時だと思っている?」
「あ・・・。色々あってね。今着替えてくるよ」
私はそう言って、王の部屋から出た。
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ランディア 王宮~王室
「ウォイス、お前は何を感じているのだ?」
「・・・嫌な空気が流れている気がする」
「?それは「それ以上言うな」」
ウォイスは俺の質問を切り捨て、睨んだ。睨み方が殺気を更に引き立っていて尚更怖く感じる。こういう所は両親らしさが出ているよな。変な形なのだが、両親はメチャクチャ殺気を放せるらしい。多分気がつかない内に気配を変える事が出来るのだろう。これは魔導師でも武道家でも共通で、強い程気配を変えられるとか、何とか。というよりパターンである。
「まあ、俺には目的がある。長年掛かってもやらなければ。・・・仕事は退屈しのぎなら良いかもな」
「・・・それはつまり」
「お前達の話、嘘ではなさそうだ。それに神の仕事をすれば多少情報が入ってくるかもしれない・・・。その話、乗ってやる」
「そうか。・・・なら、俺について来い」
「ああ」
俺はウォイスを『ある所』に連れて行った。
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ランディア ラトピエスの古城
「・・・此処は確か『ラトピエスの古城』だよな?これがどうして?」
「簡単に言えば、此処は神と人間が共存出来る、いわば共有スペースだ。基本元人間ではない人は此処から外には出られない」
「フォルカは例外なのか?」
「・・・フォルカが此処に来てる理由は『種が成った人を神にする』という役目を持っているからだ。皆神の種があるのだが、成る確率は約10万分の1。まあ才能などで多少は上がるだろうけれどな」
「・・・10万分の1、か。それは0.0001%って事か。低・・・」
「その分長命だから少々足りないくらいだ。お前はその確率で選ばれたって事だ」
「そうか」
彼は「だから神の存在を皆は空想上の種族だと感じていたのか」と言った。まあ、他の人は神の存在は知らない。あくまで空想上の人物、そう思っているのだろう。
「では、継承を始めるぞ。本当に良いな?後戻り出来ないぞ」
「・・・構わない。」
「ー今度のお前の名前は・・・」
俺が話した事を聞くと、ウォイスは珍しく感情を表に出した。
「・・・俺は元々『普通』の人間では無かったんだな。此処まで来てようやく分かったよ」
それでも17歳で普通では無いと気がついたのは比較的早いと思う。ふと俺は彼を見つめた。今微かに父親と瓜二つの顔が見えた気がする。髪(?)は今のと加え、左右対象のボサ毛が2つ出ていて、眼が鋭く、迷いの無い瞳。年齢で言うと22歳辺だろうか。一瞬、ほんの一瞬だったが22歳のウォイスを見た気がした。
「・・・?俺に何か?」
「いや、何も。若い時のあの王に似ていたからさ」
「?」と顔を曇らせるウォイス。今はそのままで良いんだよ、ウォイス。
今は夢想に包まれていても、後でそれが現実に出るのだから。
俺は確信した事が2つあった。1つ目は彼は再びこの様な経験を体験する。2つ目は俺が見た『夢』は現実に起こる。何となくだが、多分本当になるのだろう。
俺は彼の成長を見届けるとしよう。俺の楽しみがまた1つ、増えた。
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英雄歴100年
ウォイス ???
「ウォイス、どうしたんだ?」
シルバーは不安そうに俺を見ていた。
「・・・あ、シルバー。いや大丈夫だ。それより柱は大丈夫か?」
「ああ、大丈夫だ。実はさっきウォイスと同じく、意識がブッ飛んでさ」
「ブッ飛ぶって具体的に言うと?」
「不思議な事に目線や意思が柱の中に移動出来るだよな」
「俺が体験した事は無いしな。一回体験してみたいものだ」
「そうか。・・・彼の意思はそうなんだろうか」
「?彼??」
「あ、いや。何でも無いから。安心してくれ」
いやいや、絶対何かあるだろ。彼の意思ってソニックの事か??
「いいや、違う」
シルバーは俺が声に出す前に声を出した。読心術による先読みだろう。
「俺とシャドウしか知らない、ちょっと変わった子だ」
シルバー曰く結界の柱になった際、住民が1人誕生するらしくその子の意思を考えていたらしい。ただ、彼の発言。微妙に何か変だった気がするのだ。まだ、何か隠してる気が・・・。
「・・・・・・お前、何か偽ってないか?」
「いや、俺は何も隠してないが?あ、『お前の友人』にヨロシク伝えといてくれよ?」
「ハ・・・?友人?誰だ?」
「じゃ、俺は選ばれし者しか開けない扉でも開けに行こうかな」
「!?正気か?」
「ああ、正気ですとも。一回あの扉を見たが、俺でも開けられそうだし」
正直あの扉は魔術で結構魔封じされている。それなのにも関わらず、結構な魔力が溢れている。ただし、その魔封じ。元はといえばどっかの誰かが悪戯によるモノだ。本当にアイツは我侭すぎる・・・。
「・・・悪い、命令する。お前はスペードのエメラルドを探せ」
「スペードのエメラルド、か。多分ライデンかアポトスの何処かにあるよな。じゃ、行ってくる。近い方から行くか」
「万が一の場合は逃げろよ?」
「ああ、分かっているって。シャドウ・・・無事でいてくれよ」
そう言ってシルバーはアポトスの方角へ飛んでいった。俺は友人と聞いて何か考えてみた。現在生きている人物で友人・・・結構いるが事件関連なら『10人』くらいだ(安否不明含む)。ただし死んでいる筈の人間が生きている又はその逆である事も多い。
「友人というのは一体誰・・・!?」
気配を感じ取れた。この気配は何か、一瞬ですぐに分かった。
「母上・・・?まさか誰かに取り付いているのか・・・・??」
粘り強く生きる。意思を乗っ取り、自由に暴れまわる『狂人』になってしまう霊。そしてその人は、俺を恨み、俺を殺そうとする。そして憎しみで俺より強くなってしまえば・・・。
『闇ヲ滅ボセ』。『上ヲ超エル者ハイナクナレ』。2つの条件が揃ってしまう。
それだけは絶対に避けなければならなかった。だから、皆の記憶を操ったんだ。そうすれば不要な犠牲は無くなるし、本人も幸せに過ごせる。紅月もその1人だった。記憶を消した・・・幼い時に・・・生まれた当時に、君の事全てを奪った。あの時笑っている顔、俺は複雑な感情に浸されたんだよ・・・。
じゃあ何故、紅月は俺を憎む?俺が奪った記憶は何も無いし、奴は完全に眠った。その証拠に紅月は『俺の事を知らずに』俺を親しんでいたじゃないか。何故、思い出したのだ?又は、作り出したのか?それとも、母上に乗っ取られたのか?その意識もろとも。なら話は簡単だ。最終的には俺と紅月で決着つければ良い。・・・灰と化したアポトスの街で!!
「・・・アア、そうすれば良インダネ?」
こんな感触は久々だ。ああ、そうか。彼がこれを恐れていたから記憶を取ったりしていたんだ。フフ・・・ハハハ!!
「ー邪魔はしないでよ?ウォイス・・・リデァ。俺がやってあげるから、奴を殺してあげるからさ。だから、俺の存在を認めてよ、ねえ?」
今宵は綺麗な満月だ。紅色に輝く瞳が、鋭く輝く歯が、全てを覆い尽くす。
『全てを覆い尽くせ。この世界を、この空を全て。』
ーこの物語は『トラウマ』と『憎しみ』と『悲しみ』と『怒り』の話。俺はその『全て』を見た。だから、誰にも知らない。『俺と母上の戦いであったんだ』と分かっているのは俺と母上だけなんだよ。裁判長や従者、雷の子、シスターや新聞記者や管理者でも知らないんだ。・・・もしかしたら、『弟子の彼』が気づくかもしれないけれど。
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第3幕へ続く・・・。
next 第3幕 1章 Along with the sound playing~奏でる音色と共に
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あとがき
文字の変形がイマイチ掴み切れてないポルです。誰か助けて欲しいです(殴
それはさておき、ウォイスはこの後聖戦と挑む訳ですが、3幕からは彼女も絡んできます。更に複雑になってきます。彼の思考が彷徨い始めたら目標達成かなと。個人的には書き足りない所があるので、1幕・2幕の一部を書いてみたいのですが、それは別の機会に。では。