夢想の針鼠の夢跡

物語に隠されたもう1つの物語 『過ち』を知る物語

『夢』と『現実』を司るモノの切実な願い。

夢に抱かれている俺は、現実を彷徨う。

最初の記憶を司ってみても、結構時が経っているのが実感出来る。

もう何年経つのだろうか?・・・あの異変、あの事件から。記憶が遠くなる程、俺の中に眠る、闇か光か分からない何かが込み上げてくるのだ。純情なる心は私を見逃さないのだろう。時々頭が痛くなったりするから、これが相当大きな負担だったんだな、と改めてそう感じた。

闇の中で抱かれていた俺は1つの希望の光が微かに光ったのを見逃さなかった。闇に見慣れていたのか、少し眩しいくらいだった。闇は私の足元にひっそりと暮らし、光は私の全体を包む。希望を持った俺は、全てが新しく見えた。心の鎖から解き放たれたかの様な感じがした。

世界の果てに立っていた、この場所で手を差し伸べた。『始まり』の『始まり』を作った、この場所でー。またあの体験をさせてよー。

 

目の前にある景色が暁になり変わっている。もうすぐ朝だ。心の闇も、身体の呪いも、全てが蒸発するかの様に目覚める様な気がする。今日はよく眠れていなかった。ーあの夢を見たからなのかもしれない。

昨日の『明日』が怖いのだ、残酷なあの夢を見たせいで、俺は怯えているのかもしてないのだ。夢という言葉はきっと俺にとっては免罪符にしかならないんだろう。気を紛らわす、その程度にしかならないのだと、本能的に悟った。

人は科学で生き延びても130年以上生きるのは不可能だという。私からすれば130年は容易く通り抜けてしまう訳なのだが、人にとっては相当長い期間だと、俺は思う。実際、その時まではそれを覚えているのだから。

 

あの光景を見て、俺は掠れた声で叫ぶ。友人はそれほど叫んだ事が無かったから、少々驚いていたみたいだけれど。希望の1つが失うのが嫌だった。失ってしまえば、孤独になってしまうー。それだけは絶対に嫌だった。

俺が差し伸ばした手は空間だけを描き、希望の光は届かなかった。光は消えてしまった。私は泣いた。その光は私を導いてくれたのだから、長年愛してきたモノだったから。ーお願い、もう1人にしないで・・・。

目の前にある光景、全て『返して』よ。そう強く願ったのはどれほど前になるのだろうか。許せないのではない。気がついたら俺は囚われていたのかもしれない。その光にある偽りの幸せを本当の幸せと思っていたのかもしれない。

それでも私は決して、諦めなかった。その光はまだ何処かにあるかもしれない。私は、それが大好きであった様に、必死に探した。ーこの先の未来できっと会えるだろうから。・・・そう言ったのは、別の光だった。

 

深く眠るこの世界で。時は一刻を忘れずに切り刻んでゆく。それは私にも変化を促すのかというと、そうでもないのだ。眠る世界、それはきっと形に表す事が出来ない『夢』を作る世界なのだろう。私はそれを隠せないまま、それを心に切り刻んだ。

そっと進む時。ーもう、同じ事は繰り返させない。そう心の底で決意した私は、時を止めた。私の様な気分になるのは、私だけで十分である。他人にそんな気持ちを抱いて欲しくない。狂って欲しくない・・・!!

そう思ったその時、そっと私の耳元で目覚めを囁かれた。目が覚めた時、そこは見覚えのある世界だった。でも、私は意識を変えていて、見覚えの世界ではなくなった。希望の世界の夢を私は描いた。ーそして、呪われた時はパキンと割れて、そして消えていった。

ーそれが私にとって、『目覚め』の瞬間だった。

 

記憶は徐々に手前まで迫っていた。描いた『其れ』に向かったその先に向かって走り出す。動き出した『其れ』に身を委ねると、それは私の描いた世界だったのは言うまでもないだろう。

動き出したセカイ。神ぞ知る世界。私は自らの足で、此処まで来たんだ。どんなに歪で他人にどうこう言われようが、構わない。私の世界を、理解出来ない人がいても良かった。賛同してくれる人がいると分かっていたから。

偽りの永遠を俺は拒み、その続きを全て消し去った。友人がそうした様に、彼女がそれを望んだように。ーそして私は歩む事にした。散々私を嘲り笑ったあの過去を今なら知れる、そんな感じがしたから。私は世界を尋ねた。「ねえ、君達はそれを幸せに思っているのですか?」

でも、それは目の前にして断たれた。また別の光が消えそうになった。しかも、それは近い内、1ヶ月にも満たない内に消えた。もう、どうする事も出来なかった。ー幻想で誤魔化したり、それは嘘なのだと願ったり、希望論の未来に救われる、そう思っていても、現実は幻想も夢も未来を突き破り、私の目に染み渡る。悲しみに囚われた様な気すらしたのだから、相当辛かったのかもしれない。

 

あまりにも遠すぎて、分からなかったかもしれない。未来でいずれ起こる事件なんて理解できなかった。いや、厳密に言えば知っていた。けれども、忘れ去ろうとした。私の意見を正当化したかったのかもしれなかったけれどさ。

貴方が見た世界はあの人に引き継いでいって、少々違う形だけれども、似ている形がある。これは私以外誰も知らない。・・・当の本人が知らないから、其処ら辺は偽らなければならない。知っていたら、あの人の事だ、問い詰められると思った。

次に来た永遠とやらは、私の闇を拒んだ。正当化したのが悪かったのか、それとも未だに闇を密かに持っているからなのだろうか・・・?

 

此処300年近くは永く感じた気がする。激動したというか、変化が急に成長したのだ。大切な人がこんなにも出来たのは初めての事だったのかもしれない。私はそれに慣れたのかーいや、元々だったのだろうー孤独が嫌いだった。孤独になった気分になった。泣き叫んだのは、あれ以来の事である。そんな理由で一時期死にたいと願った時期も無かったというと、それは嘘になるだろう。それを乗り越えられたのは、私が新しい『出会い』があるからと思ったからなのか、それとも私自身の宿命をしかと受け入れていたからだろうか?中途半端なその心は私にとっては許さないで欲しいものである。

とある人がそっと手を差し伸ばした。「同じ様な時なんて、全く存在しないんだ」と言ったとある人はニッコリと明るい笑顔で俺の手を引っ張った。少々カッコつけたかったのかもしれなかったけれど、私は求められているんだ。とはっきりしたのが、肌で直接感じられた。私は心の底から笑った。闇を切り抜け、そして光の元へちゃんと行けたんだと思った。そして私は言った。「ありがとう」って。

 

永遠の果ての果てに来ていた。そして『終わり』と『始まり』を握って、祈りを捧げた。此処にはもう骨すら無いけれど、此処にお墓があるのを、俺は知っていた。此処も今では立派な花畑になって、祈りを捧げるのにはちょっと照れくさいけれど、それでも、此処にはあの人達が眠っているんだ。

「ーもう何万年も生きてしまったけれど、希望はあるんだ。終わりがあれば、始まりがあるんだ。ディアナ、父上、俺はもう大丈夫だよ。今までありがとう。そして、また会えたら、また・・・会いたいな。レヴィアーデン元王子である、俺ーウォイス・アイラスがそう答えているから。・・・これから決着を着けてくるね。長い因縁を今なら切れる気がしたんだ。友達も沢山出来たんだよ。だから心配は要らないって思っているよ。でも、友達を引き込むなんて、最低だよね。其処らは俺も自重しているけれどね・・・。悲劇は、もう懲り懲りだから。悲しくなるから、ーごめんなさい。ディアナも父上も、そしてラネリウス王も、スペードも、ルシアも・・・。俺が頼りなかったから、こんな事になってしまったんだよね。これもあの事件と関連していたんだから、3人・・・の他にも色々いるけれど、巻き込まれてしまったんだよね。・・・3人の意思は今、此処にあるよ。ラネリウス王、安心してください。此処にちゃんと王子はいますよ、そしてあの役目もきちんと果たしてますから。スペード、あいつが愚痴っていたぞ。ちゃんと謝ったらどうなのだ?ルシア、あの時に教えた言葉は未だに覚えている。安心して眠ってくれ・・・。今まで、本当にごめん。けれど、その死は無駄にしてないから・・・。それを理解しきっての・・・行為だから・・・許して。もしかしたら・・・・私、このまま・・・死んでいちゃうのかも・・・しれない。死を・・・覚悟して・・・・・いるから。もし、天界に行った・・・・・・・としても、皆、笑顔で・・・・迎えてくれないかな?顔の知らない子も・・・・いるだろう・・・けれどね・・・。ねえ・・・聞こえて・・・・・いる・・・・でしょ?悲しい・・・どうすれば・・・良いの??ねえ・・・ねえ・・・・・」

私は其処で懺悔をした。途中から涙が溢れて(こぼれて)、声が震えているのが実感した。

『ー泣いちゃ駄目だよ、お兄ちゃん!!泣いちゃったら、王子様っぽくないよ!!』

無邪気で、聞き覚えのある声。一瞬、そんな声がして振り向いても、その方向には誰もいなかった。多分幻聴だろう。

しかしそれで別に構わない。今こうして立っているのは、他でも無い。皆がこうして私を支えてくれたからだ。だから・・・我侭言って悪いけれどお願いだ。『最後まで温かく見守って欲しい』んだ。まだ死ぬ訳にはいかないから、きっと長い時を再び過ごす事になるだろうけれど・・・。皆大好きだから。

 

私はそう言って、此処を後にした。

『ーまた、永遠の果てへ連れて行って。』

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短編小説でし。とある曲をベースに2時間半くらいで制作しました。5時半に起きて、1時間はブログを、2時間半は無題とこれを進めていた感じです。

あの人が普段感情に出さない事でも、実際はこんな感じに思っているかと。・・・2時間くらいベースの曲を流しっぱなしですww 不思議な事に作業するのにさほど苦にはならないんです。そういう話ってありますよね・・・?

では。

様々な事件が沢山続き、遂には心髄にまで及んで行って、己の中でそれを重く、鋭く貫くのだ。 嘘だらけの世界で信じる事が出来るのは、己自身ただ一人。痛い思いとかしても良いんだ、嘘をつくのはもうこれで最後にしよう。だからお願い。早ク逃ゲテ。