夢想の針鼠の夢跡

物語に隠されたもう1つの物語 『過ち』を知る物語

不明記録~Various people's thoughts

「ハァ・・・ハァ」

少年よ、何故絶望しか無い世界を受けいらないのだ?

「ー決まっているだろ、私は此処から出たい・・・出ないといけないんだ!!」

出る訳にはいかないよ。

「どうして・・・?」

・・・ウォイス様の命令だから。

「貴様!!」

無駄だよ、私は此処にはいない。君の声は届く事は無い。

「どうして・・・私の名を知っているのだ?」

どうしてだろうね?強いて言うのならば、教えてもらっただけだよ。

「・・・どうして?どウして・・・??ドウシテ・・・・???」

知らないよ。貴方の事なんて。

「どうして、君の名前ガ『分カッテ』いる・・・?」

***********

「何しに来たの?」

目の前にいる子はそう言った。

「貴様を殺す・・・」

「殺す?どうやって?」

「それは・・・ナイフで」

「貴方は本当にそんな事出来るの?」

「出来るさ」

「嘘付かなくていいよ。きっと殺したら後悔すると思うよ?」

「黙れ!!」

私はナイフを振り上げた。しかし、そのナイフの矢先にあったのは悲しげな笑顔。それが目に浮かんでしまい、手前でナイフを握る力が無くなってしまった。

「!?」

「だから言ったでしょ、貴方は私を殺す事なんて出来ないってさ」

そう言うと私の背中に立って、私を思い切り蹴った。しかしこれは本気で蹴ったのでは無いと本能的に悟った。

「次、こんな事をしたら私でも許しはしないよ?死にたくないからね・・・分かるでしょ、私の気持ち」

そう言うと笑う。軽く笑っているが、その裏が非常におぞましく、一瞬にして私の感情に恐怖を覚えたのだ。とてもではないが、勝てる気がしないのだ。先程まではとても柔らかで触れると壊れそうなくらい儚げだった筈だ。

「あ~あ。何でこんな人間がいるのかな。繊細でとても綺麗だった筈なのに、どうして人は汚れてしまうんだろう?」

そう言うと、消えていった。周りの風景と同化する様にゆっくりと。ナイフを振りかざした時には既に遅く、振りかざしたそれは何も無い空間を引き裂くだけだった。

ある意味あの人は恐ろしい人だ。他人の為ならば容赦無しで襲いかかってくるであろう。何か吹っ切れている様にすら見える。人の犠牲を悲しんでいて、なのに行動に迷いが無い事というのは人の成長ともいえる光景である。例を挙げるなら、「逃げろ」と言って目の前で他人が化物に襲われた後に取る行動がこれだろう。殆どの人が助けようとするか、そのまま逃げるかの選択を迷う筈だ。だが、あの人はおそらくだが、止めはするだろうが、1回言えば逃げてしまうだろう。「救ってくれた私を此処で死ぬ訳にはいかない」と、そう思うのだろう。それは多分、目の前にいる『その人』の願いを叶えるその為に、行動している訳である。当然、そうした事をした後は泣き叫んでしまうのだろうけれど。

これで良かったのだろうか。『きっと君は後悔する』、その言葉は本当にそうだったのかもしれない。それを分かりきってわざと手加減していたんだ。怖い・・・怖い。しばらくの間、あの人の言葉で全く動けなかった。

 

動ける様になったのは、あの方が声を掛けた時だった。現実では30分前後だが、私からすればそれは非常に短く、長く感じた。

「大丈夫か?」

「うん・・・・・。何があったんだろう・・・??」

***********

trick or treat.

お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ。

 

此処ならば、これはとても重大である。

貴方が望むのは『夢』か『現実』か。

夢を選んだ者は、眠りについて意識を眠らせる。

現実を選んだ者は、目覚めたままで意識を保ち続ける。

やがて、それは飽きてきてそれを繰り返す。

そしてそれはやがて『絶え』となり、灰とカス。

それを頂くのは、『天罰者』と呼ばれる天国か地獄かを決める者。

 

そしてその行いで『夢』か『現実』かを味わう事となる。

『夢』の様に何もかもが楽園の世界に囲まれるか

『現実』の様に何もかもが地獄の世界に囲まれるか

それは皆の行いで決める。

でもその内それに飽きてしまう。

所詮、人間は欲深い生物である。

 

結局は二所択一の法則をブチ破る事となるのだ。

盲目にしてしまえば良いのだろうか?

罪深き人間には、制裁を。罪浅き人間には、祝福を。

結局は誰が正しくて誰が間違っているのだろうか。

 

人間でない私にとっては理解不能だ。

何故、人間はこうして汚して生きていくのか。

それが友人の言う『知恵を持ちすぎた代償』なのだろうか?

だからこうして仲が引き裂くモノなのだろうか?

解せぬ、人の過ちなど。

私は人間ではない。機械でもない。

私は・・・此処を離れたくない。

***********

 「ハハハ・・・ハハハハッ」

目の前には幾多の人と機械。

誰もいない、私一人ぼっち。

「ああ、もう御終いなの??何かつまらないね」

あーあ、服が汚れちゃった。後で洗わないと。あの人に叱られちゃう。

誰も居ない此処で、私はただ嘲笑う。

そう、もう此処には『誰も』いない。

赤い花を枯らせた私と白い月を咲かせたキミ以外。

あの人は時期に戻ってくるだろう。

此処にいるのは私とキミ以外だ。

「ねえねえ、この子達、どうしようか?」

私は笑って機械の破片を拾う。もう崩れていてどんな研究者でも復活させる事は出来ない。一体誰がやったんだろう?

「此処いらにいたら流石にマズイだろ、責任擦り付ける為にもさ」

「そう・・・だね。キミの言う通りだよ~。じゃあ、行こっか」

「・・・・・・・あまりそんな事したくなかったが・・・こうするしか無いのか?」

キミは溜息をついて私の後にぴったりとくっついて行った。

後ろで小さな声で「黒い・・・・悪魔だ」なんて声がしたけれど、きっとその人は悪い悪い夢に唸されているんだよね、きっと。そりゃあ、そうだよね。そんな『海の光景』の中で眠るのは、気が引けるよね。いずれ覚ます事を期待しているよ。そしたらまた遊んであげるから。・・・最も、私を壊せられるくらいの余力が残っているのであればの話だけど。もう殆ど壊れているから、抗う術も無く、そのまま全壊してしまうのがオチかな。治っていたら、褒めてあげるよ。

『じゃあね、オモチャさん達。せいぜい良い夢を見てね』

そう言って笑って此処を離れる頃にはあの声を出した人も眠りについていた。所詮、オモチャは簡単に壊れてしまうんだね。

***********

「では、今日の修行を始めるぞ、シルバー」

「はい、ウォイス師匠」

「・・・いい加減師匠呼ばわりはよしてくれないか?堅苦しい」

「そういう訳にはいきませんよ」

目の前には一通り魔術を教えて自信に満ち溢れていたシルバーが笑顔で俺を見ていた。本当にこの人は教えると何でも吸い込むな。弟子になってから3年が経つが、既に中等部辺は超えているだろう。シルフィとシャドウは既に高等部にいるから何とも言えないのだが。

「では始めるぞ、の前に・・・・・・その紙を持ってくれ」

「?どうしてですか?」

「とりあえず、紙を何かの形にしろと念じてみろ。できれば目を閉じてくれるとありがたい」

「分かりました。形になれ形になれ・・・・」

そう念じていると紙の面積が広くなっていき、硬くなっていき、そしてパキンと割れた。その破れ方は力の入れすぎに紙が耐え切れなくなった為だろう。

「もういい」

「ハイ・・・って、何ですかこれは」

シルバーは紙切れと化した紙を見て驚いている様だ。

「これは、どんな魔術を得意とするかを判断する為に作られた紙なのだが・・・この反応は最低でも2・3種類の魔術を得意とする様だな」

「あのー。これは一体・・・?属性というか種類というか」

「あー・・・。これは『攻撃タイプか防御タイプか援助タイプか回復タイプか』を判断する為だが・・・んーこれは最低でも『援助タイプ』は確定か・・・?あと+αって形で『回復タイプ』と『防御タイプ』が混じっている気がするな。少なからず前線に立って戦うタイプではない様だ」

「そう・・・かぁ。うう・・・攻撃なら得意だと思っていたけどなぁ」

「お前の力もあるだろうな。その・・・『覚醒を操る能力』は『周りのモノ・人を無条件で強さ関係無しで強くなる』ちからだからな。それは『援助タイプ』だ。あと、お前の超能力。読心術はさておき、サイコキネシスは相手の動きを止めるなり出来るのだろう?」

「直接的に当てる力が得意なのはシャドウだから・・・彼は『攻撃タイプ』か?」

「お見事、ご名答だ。『攻撃タイプ』だな。防御・援助って形か。お前とは逆だな」

「んー。って事は俺はヒーラーの立場か?」

「そうだな。但し、面白い事に色々反応している。ある程度出来れば攻撃も出来る」

「とりあえず、援助と分かったのですが。これって確か3種類ありましたよね?」

「『相手を弱体化させる魔術』、『味方を強化させる魔術』、『敵味方全体に影響を与える魔術』の3つだな。ただ、お前の場合はどちらかと言えば強化・変化を得意とする傾向がある。まずは其処からマスターしていくぞ」

「了解です。・・・ソニック、お前の意思は俺がしかと受け止めているからな・・・」

彼は手を握った後、しっかりとお辞儀をした。良い子だな、この人は。

「・・・そうと分かれば、早速援助魔術の練習を始めるぞ」

「ハイ。了解です」

シルバーはそう言うと、本をパラパラと開く。1223ページを開けると、文字に指を当て、読み始めた。

「まずは無理の無い様に、AA辺を目標として覚えろ」

と言っても彼は反応無し。一生懸命魔術の掛かった魔導書を読んでいる。

この魔導書は少々特殊で、読む人がどれだけ魔術を編み出せるかで読める量が変わってくるのだ。ページの程は基礎要素をたっぷり詰め込んでいる為に3000ページを軽く越す。俺はその全てを既に暗記済み(ページ数・ポイント等も全て暗記済み)なので、その気になればこの魔導書全て術を唱えられる。因みにこれはASランクまで対応しており、S~Xの奴は別書である。教科書に沿っている為、実質学校と同じだ。

「ん~、ギリギリで読めるラインがABかぁ。半年でAA゜は行きたいかなぁ」

「そうだな。とりあえずはそこからだな。では始めるぞ」

「ハイ!!宜しくお願いします、ウォイス師匠!!」

「師匠と敬語はプライベートの時はよせ。堅苦しい上、俺としては非常に違和感を感じるのでな」

「・・・分かった」

公の場で行動している彼は、異国民なのにも関わらず、アファレイドで活動する。小説の事もあり、よく移動しているが・・・。最悪半年帰って来ない。更に、基本留まらない。レヴィカルト地方とかそういうのは基本関係無い。基本思いだったら直ちに行ってしまう。それが俺と同じ守護者なのだと言うと、かなり温度差がある様な気がするが・・・。するなと言ってはいけない。それは『仕事』の為でもある為だ。公の場としてもとても人気ある為に、全く救われない様な気もするのだが。

「・・・と、こうなる訳だ」

「成程・・・。あ、電話だ。ちょっと待っててください。ーハイ、もしもし。成程・・・それで?・・・・・・本当ですかっ!?ありがとうございます!!ちょっと待っててください、今から向かいます!!では、失礼します!!」

プッと切れた後には彼はとても笑顔で俺の手を握ってきた。

「な・・・何だ?」

「やったよ、遂にミリオン行っちゃった!!今日の夜お祝いパーティするから皆でどうかだって!!行こうよ!!お祝いパーティ!!会場も貸切しているって!!」

突然の朗報の為なのか、非常にハキハキとした声で早口で言っている。ブンブンと俺の手を握っている手を上下に振り回しているのはおそらくオマケ要素だろう。

「ミリオンは凄いな・・・。作家の夢とも言うべき壁を易々と・・・」

「とりあえず、そういう訳なので修行は明日で良いですよね!?」

「あ・・・ああ。それは素晴らしい成果だし、わざわざ会場も貸切してくれているのだ、行ってやれ」

「いや、ウォイス『も』行こうって話!!友人沢山読んで構わないって言うから!!あ、テイルスやシャドウ、シルフィにシアンとかも言わないと!!」

「ああ、コレは明日ニュースになっているなコレ・・・」

半分呆れて言ったが、俺は幸せであった。まさか、友人の小説がミリオンを越すとは全く思っていなかったのだから。俺は引っ張られるまま、シルバーに連れてかれた。

***********

「ソシアよ、こっちに来るがよい」

「ハイ、父様」

「お前は拾われてこうして生きている事は分かっているのだろう?」

「そうですね。母が笑顔で出迎えてくれたのを覚えています」

実際の所、私は転生で生まれた。目覚めた時には後継書みたいな本が置いてあった。それとこれで私は普通ではない事に気がついた。

「私もそろそろ年だ・・・そこで、お前にこの教会を任せたいのだ」

「・・・分かりました。父様が立派に育て上げてきたこの教会を私は引き継ぎます。でも・・・私、立派に育て上げられるかなぁ・・・・」

「大丈夫だ、お前なら出来る。・・・それにリーダーとは言っても、他人をまとめるだけではなく、助けを求めるのもまた役目と言えよう。何でも自分で解決する様な人にならなくて良いのだよ」

「うん・・・・・・父様、私、頑張ります」

 

その日、私は父様の持つ修道院と教会を引き継ぐ事になった。誰も非は唱えず、心から祝福した。初めての経験だったので、皆にサポートしていく様に努力しなくては。私も気持ちを入れ替えて、それを務めようとした。

けれど、まさかあんな事が起ころうなんて、父様も私も予測してなかった。私はその時に買い物に来ていた。しかし、戻ってきた時には全てが灰と化していた。父様もその爆撃(?)によって亡くなった。いや、この際言っておこう。『ほぼ全員』亡くなった。

それを体験したのはシルバーだった。偶然、運悪く此処でネタ探しをしていたのだそうだ。ただ、行く前から不吉な気配はしていたらしく、常に警戒していたのだそうだ。そう、気がついた時には此処が滅ぶ10秒前だった。外れでは無かった為、逃げるのはほぼ無理だと悟った彼は防御策として、周りの人と自分を『ダイヤモンドガード』で守りを固めたのだそうだ。結果としてその周りの人と自分は無事だったという。

「俺の最強防御術を貼っても、少し痛かったぜ。あれはどんだけ強かったのだ?」

と彼は少し苦情を言う様にパンパンと服を叩いていた。流石に凄かった為に彼もいつもと違って真剣な顔をしていた。「これは大変な事になったな」と言って、ウォイスに連絡した。

シルバーはウォイスの指摘により、基本的に事件に携わる事をしない。まあ、立場からしてもそれが妥当なのだろうけれど。私はある意味九死に一生を得た訳である。この事件を知る権利は当然ある。

アポトス崩落事件。シルバーが体験した、一瞬で塵と化した崩落事件。犯人は分かってない。そしてあの人もー・・・・。

***********

聞こえていますか?見えていますか?

 

私が誰だか、分かる?

 

まあ、そうだよね。

 

私はとある子のお友達だよ。

 

あ、私は死んでいた筈の存在だからね。

 

貴方の意思に眠っているんだ。

 

お友達がこっそり仕掛けたみたいだね。

 

うん、まあ私は3割くらいしか生き返られなかったけれど。

 

面白い事を聞くね。うん、私は中途半端に死んでる事になる。

 

だから、面白い事をしようかと思ってね。

 

そう。だから『ディスペア神殿』に来て欲しいんだ。

 

行けば、面白いのが見れるからさ。

 

***********

続く

***********

様々な人を書いた気がしますよ。

誰が、誰かは何となく分かると思うので割合。

では。

様々な事件が沢山続き、遂には心髄にまで及んで行って、己の中でそれを重く、鋭く貫くのだ。 嘘だらけの世界で信じる事が出来るのは、己自身ただ一人。痛い思いとかしても良いんだ、嘘をつくのはもうこれで最後にしよう。だからお願い。早ク逃ゲテ。