夢想の針鼠の夢跡

物語に隠されたもう1つの物語 『過ち』を知る物語

幻想の赤月 -8章 王と魔導師と科学者と・・・

今回は少々グロいです。注意を。

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シャドウ アポトス~食事所

「ディアネス、お前はこんな所で飲んでいて良いのか?」

「ああ。今回は調査が終わったからな。お前もどうだ?」

「頂く。・・・しかし、此処は本当に不可思議な事件が多いものだ」

「ほう、何か調査をしているのか?」

「ちょっとな。俺の友人のルナの調子が可笑しくなってな、俺らは調査しているって訳だ」

「そうか。・・・・・・ところで、シルバー殿とガナール殿が見当たりませんね」

「シルバーは小説のネタ集めという訳で旅行に行っている。そしてガナールは・・・・・・ちょっと大変な事になっていてな。どうにかせねば・・・」

ウォイスはそう言うと、酒を飲む。飲んでいる為からなのか、少し感情が顕(あらわ)になっていた。少しイライラしている様にも見える。多分、彼なりに役目を努めていて疲れているのだろう。

「シャドウ、お前は役目を果たしているのか?」

「王宮の警備は完璧になっております。此処の所、不吉な事件が多い様ですが、あの人らに任せていれば問題は無いでしょう」

「そうか・・・あと、この場はタメ口で良い。友人の仲なのだろう?」

「・・・王が言うのであれば、遠慮なく」

ディアネスはそう言うと、ウォイスに視線を移した。そして、雑談が始まった。完全に酔っているぞ、この2人は。

ルファーはミルクティーを上品に飲んでいた。何でも紅茶が大好物なのだと聞いている。

「あ、シャドウ~。見て見て~♪」

ルファーは何かを見せた。綺麗なネックレスである。おそらくは手作りだろう、真ん中にはアクアマリンの宝石がはめてあった。

「・・・これはネックレスか。誰にあげるのだ?」

「えへへ~。ソドム君だよ~♥大好きの証!!」

ソドムというのは彼女の恋人だ。正直言うと、2人共天然である。一緒にいるとのほほんとしている為なのか、彼女と彼がいる時のムードは結構メルヘンチックだとガナールが言っていた。詳しい事はガナールかウォイスに聞かなければ、分からないのだろうが。

「結構自信あるの!!あげたらとっても喜んでくれると思うの!!」

この人が生命体だと思えないくらい、笑顔で飛び跳ねている。よほどソドムの事が好きなのだろう。その好み具合は僕はあまり理解出来ないのだが・・・。

 

さて、視点を変えて、ウォイスらの方を見る。

ウォイスは既に酔っている様で、話をしては笑っている。どうやら彼は笑い上戸になる人らしい。普段全く笑顔を見せないので、この表情を見るのは久々・・・もしかしたら初めてかもしれない。ガナールに話したらどんな顔をするだろうか。

一方、ディアネスも同様で、こっちは感情の変化が激しい。誰かの真似をしては、笑って、冗談で怒る等としていて、苦労してそうだ。ウォイスの話を面白半分で聞いている様だ。

だが、酒に酔っていない僕にとっては結構話に謎が出来ていた。ディアネスは「それで?」と言って先に進めている様だが、内容からしても殺戮(さつりく)等のイメージが多々見られる。「変な音が大きくしたから見たら、そりゃあもう魔導師が~」なんて言っているが、これを普段のウォイスで言うと、おそらくは「全てが焼き付くかの様な音がしたので、向かってみると、殺戮の魔導師がいて~」となるだろう。酔っている時は事軽く言っているが、内容は残酷である。そもそもウォイスの言う「小さな」や「弱そうな」は大体世間の中では基本「大きい」・「強そう」に当たる事が多い。それが「大きな」だったら、国が崩壊する程度のモノだと思った方が良いだろう。

それもあって、ガナールの言う事の一部も似た様な現象があるが、それは別の話で話すとしよう。

「おいおい、俺はなこうして飲める事に感謝しているんだぞ」

「まあまあ、そうでございましょうね~。こうやって飲むのは何年ぶりだろうか?」

「約8年ぶりか?そうそう、8年前と言えば王子が幼くてだな~」

「その時の貴方は相当メロメロでしたよな。何でも弟子に王子の可愛さについて1時間以上語っていたそうで」

「ああ、あれか?そりゃあ、あの初々しい顔を見たらたまらないのでな。それに俺によく懐いていたしな、言葉も俺の名前を始めの内から呼んでいたのだぞ?あ~、あの時は嬉しかったなぁ~「パパ」とか言って」

「パ・・・パパ!?え、あれお前の嫁さんが」

「いやいや。ちゃんと王の嫁が生んだ。しかしだな、何故か俺に「パパ」って言ってきてな・・・まあ、物心付いた時にはちゃんと「ウォイス」って言っていたがな」

「ガッハッハ、お前の方が大好きだったのではないのか?」

「だ・・・黙ってくれ。俺だって、ちゃんと仕事を務めていたのだぞ。お前に言われたくないな、あの時俺に掃除を背負った事は今でも忘れて無いのだぞ?」

「おお、恐ろしい恐ろしい。あの時は俺も青二才だったのだ、そういう事がしたい時期だったんだよ」

「・・・嘘くさい」

ウォイスはそう言うと、また飲み始める。この人達、相当の苦労人なのだな。

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シルバー ???

シルフィと共にある所へ来ていた。

俺達はとある書物を見るべく、此処にやってきた。きちんとした証拠を探す為に。

未来から来た俺達にとって、『彼処』が何処なのかが分からないのだ。

ウォイスに変化を促した場所を知る為に・・・。

書物をかき集めた結果、『彼はアファレイドに来たのには理由があった』というのを知った。となると、何故か気になるのだ。

それにウォイスを知るのにはもう1つ理由があった。それは、あの人が語る話が仮に全て本当だったとして考えると、やはり何かを隠している様にも見えるのだ。実際、アファレイドより過去の話になるとあまり話しなくなる。まあ、最初はアファレイドにいた事ですら、否定していたのだが。

何を隠しているのかは分からない。だが・・・。

「知らなければならない事がある気がする。知ってはいけない内容であっても」

「私は知らないわよ。精霊だったとはいえ、知っているのは神様としてのウォイスだからね・・・人間事情はそこまで詳しく無いわよ」

シルフィ曰くウォイスは人間界と天界をよく行き来していたという。何でも人間界を見守り、報告するのが彼の役目なのだとか。しかし、人間界に携われる者は上位の者がやる仕事であるらしい。話からするにウォイスは天界の方でも偉い方の様である。俺達が普通に接しているのは極めて異例らしいが、大丈夫なのだろうか、そう聞くと「まあ彼本人が望んでいる事だから大丈夫だと思うよ?」とクスクスと小さく笑った。

シルフィだけではない。ガナールやシャドウも手伝ってもらっている。皆気になるのだ、ウォイスの過去が。彼はあまり気にしていない様子だが、口を開く気配は一向に見当たらない。ならばこちらから攻めてやる、という感じだろうな。

まあ、此処に来たのは単純に『歴史』を知る為だから、そこまで関係無いだろう。

それに、フォルカに頼んで空間の狭間にあるウォイスの倉庫の鍵を手に入れた。頑張れば、見つかると思う。・・・おそらくだが。

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ガナール ???

邪魔だ・・・邪魔だ。

あの時、あんな事をしなければ良かったのだ。私の判断ミスである。

あまりにもアレだったのを私は予想しきれてなかった訳である。最悪、私は消える事が出来る。理性を封じ、眠らせる方法。だが、それは私を殺す事と同じの様な気がして、嫌なのだ。その権利を持つのはウォイス・ルナの2人ではない。あの人だ。今の私では、あの人に頼んで一時期封印してもらうしか無い。分かっている。でも、行動してしまうのだ。あの人らに制裁を加えなくてはならない。無論、私に歯向かえば、即座に攻撃である。今の私に止める声は無駄である。力づくで構わないのだ、私の場合は。あの時とは訳が違う。

あの手この手でこうして心だけは目が覚めたが・・・。

ルナが知っているのは、能力の真実である。

ウォイスが知っているのは、私の何処かに『誰か』いる事である。

私が知っているのはその『誰か』の肉体が存在している事である。

それぞれ知っている事。2人の秘密は全て私に向けられていた。結果として、真実を知る人は私だけとなった訳である。誰にも言えず、ただそれを教えずに生きてきた。でもこの際だから・・・ね。

 

今日はルナ達の様子が慌ただしい。

「どうしたのですか?」

「ガナールか。これを見ろ」

「・・・何ですか、コレ。歪なミサイルの様な・・・」

「コレは爆弾兵器だ。おそらくアファレイドの付近だ」

アファレイド。という事は瑠璃の森にいるシャドウらでは無いみたいだ。

「このミサイルには引火性がある」

「!!では火を放せば・・・爆発ですか?」

「いや、爆発はしないだろう。だが、火災がな」

「・・・これは始末しなければ・・・」

「ポフィル、これの資料ってある?」

「ハイ。これが構成、それが中の物質。但し可能性がある程度だけれども。ガナール、これは処理しないで欲しいわ」

「?どうしてです?」

「他の子を使いたいのよ。それに今はウォイスらにこの事がバレたら困るしね。ガナール、貴方はウォイスらが此処に来るのを抑えてもらいたい。時間稼ぎって言えばそうなんだけれどね」

「言われた通り、作ってみたが。ただコレ本当に不老不死を解毒出来るのか?」

ルナが持っている注射には澄んだ青色の液体が入っていた。その液体の中に赤い粒が幾つもある。

「ウォイスの特注だったっけ?」

「いや、これは実験だ。ウォイスが望んでいても作る気がしないな、幾ら友人とはいえ。不老不死関連に関する魔術及び薬の製造・創生は基本禁じられている。解毒するのは普通の人間では猛毒だ。刺されば一発で即死だ。不老不死を無くすくらいの威力だからな。血管が持たないだろう。実際にやってみるぞ」

そこには犬がいた。ルナの持つ注射を打ったその3秒後には、苦しみに満ちた挙句、ピクリと動かなくなった。

「・・・不老不死の場合は、解除するだけだ。2度連続で打ったら・・・言うまでもないだろう?」

「しかし、そうやってこれを?」

「この本を参照にしたまでだ」

近くに本がある。文字がズラリとあるのだが、何の文字か全く分からない。

「これは一体・・・何の文字なんですか?」

「レヴィアーデンと呼ばれてらしい国の文字。だが、これを解読するのには色々大変だったな。・・・3年掛かった」

「解読だけで・・・」

「だが、これ効くのか?不完全な薬だからな、作るのは止めておこう」

「ー奥深くの図書館に潜入して、封印しましょうよ」

「そうだな。シグとガナールは夜2人で図書館に潜入して、封印してくれ。なるべく誰もが人目に付かない所にな」

「了解です」

シグはΣ(シグマ)の『Other hafe』の者である。時系列からすれば3番目の『人工生命体』である。今私含め5人いるが、人格の人は2人、生命体が2人、アンドロイドが1人である。全て心を持つ。普通、生命体も朽ちる為に不老不死は実際の所、アンドロイドの1人と私だけである。私は近いだけだが。

私は後天性の不老不死に近い者だ。ウォイスに手渡された薬を少し頂いたまでである。分かると思うが、コレは国によっては違反行為である。だが、違反以前に私はこうまでしてやらなければならない事があったのだ。薬を飲んだのは全体の80%辺というべきだろうか。結果として、私は不老になった。不死ではないので、殺せはする。但し、致命傷受けても(即死になる様なモノでも)1週間は生きていける為、再生させればゾンビ状態となる訳であるのだが・・・。私も詳しく知らない。ウォイスに聞いてください。

 

「ねえねえ、シグは気配とか消せるんでしょ?」

「あ、うん。ガナールは体内に関する事が得意なんだっけ?」

「そうだね、幽体離脱とか出来るかな。ウォイス様の教えによるのだけれども」

「ウォイスって結構カッコイイよね!!流石『永遠の魔導師』の従者を努めているだけあって、魔術とか得意なんだよね~。僕さ、結構頑張っているけれど、メイジ止まりなんだよなぁ」

「メイジでも結構凄いと思うよ?良いなあ、今度気配消す魔術教えてよ~」

と、一部冗談混じりでシグと話しながら、此処を後にした。

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続く ソドムはsky様にお借りしました。

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ソドム(sky様)アイスをよく食べているハリネズミ。ルファーの恋人(公式設定)。

様々な事件が沢山続き、遂には心髄にまで及んで行って、己の中でそれを重く、鋭く貫くのだ。 嘘だらけの世界で信じる事が出来るのは、己自身ただ一人。痛い思いとかしても良いんだ、嘘をつくのはもうこれで最後にしよう。だからお願い。早ク逃ゲテ。