夢想の針鼠の夢跡

物語に隠されたもう1つの物語 『過ち』を知る物語

正体の目~The identity of the white child 前編

手に腕、胸に背、首や顔。様々な所に管が幾つもある。

そしてその管の集まりは巨大な丸い筒にある訳なのだが、その筒は密閉空間であり、その中に赤い『液』がある。

その中に眠っているのは白い子。

その白い子は微かに目を開いた。そして、その筒を割ろうと殴り始めた。此処にいるのは窮屈だから、と。やがて其処に亀裂が発生する訳だが、白い子はそんなの分からなかった。そして、それが割れた時、沢山の液がタラタラと垂れ下がって、管もあちらこちらに散らばる。

その中の内、真ん中にいる白い子は、笑い始めた。

『ーようやく、外に出られる』

その時の白い子は、全く未来の事など知らずにただ、哂っていた。狂気に満ちたその声が、この空間に響いた。その時、誰も知らなかった。白い子が『アレホド』になるなんて。皆がアレホドになったと気がついた時には既に遅かった。白い子は既に・・・。

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「あーあ、暇だなぁ」

私は暇つぶしに散歩していた。理由は先程もあったが、暇つぶし。私にとってはそれくらいにしかならないのか。私は単純に眠る日々を過ごしていた。

「あ、グレファだ。ーありゃ、ガナールもいる」

ただ、呑気でそう呟くと、私はあの人達の元に寄った。

「ねえ、何しているの?」

「お前か。いや、単純に『これ』をどうにかしたいと思ってだな」

「そうなんですよね、『これ』って一体何ですかね?グレファさん、分かります?」

「分からないからどうにかしたいのだろう」

グレファとガナールの持っている『これ』を見てみる。何やら不気味な形をしている。私はそれに触れてみて、適当にカシャカシャと構造を組み替えた。軽く10分は経っただろうか。簡単に形が完成した。

「・・・凄い、しかもかなり複雑なのに、簡単に」

「これくらいなら、口ほどにもならないね。でも、何で『これ』を作っていたの?見た感じ、かなり古いよね?正直これ動くの?」

「さあな?」

「ーいや、待ってくださいよ。多分を此処をこうしてやれば・・・ホラ」

ガナールが軽く構造を変えた上に何かを唱えると、光を発した。最初は軽いモノであったが、やがて目が眩むくらいまばゆい光を発してきた。

その光は複雑だった形を軽く触れられない『何か』になって、宙を一回転する。

「な・・・何だコレは」

「さ・・・さあ?私もさっぱり」

「というより、これは一体・・・」

触れようとすると、光はさっと避けて、勢い良くガナールの頭にぶつかる。すると、どういう訳かスーと見えなくなった。

見えなくなった途端、ガナールが頭を抱え、何かを否定している様に見えたが、やがて何も言わずに俯いた。

「ねぇ、大丈夫?」

私がそう言ってガナールの身体を揺さぶろうとした。その時だった。パシッと私の手を取り払う様にガナールが私の手を避けた。

「大丈夫・・・私は一体何を」

あの人は軽くそう言って笑う。何となくだが、ガナールではあるが、ガナールでは無いと察した。

「・・・ねえ、君は誰?君、ガナールじゃないよね?」

「ー何でそれを分かるのかな?」

「私だけしか分からないよ。私以外、多分分からないけれど」

グレファはそれを聞くと、少し私とガナールを見た。そして、グレファは溜息をついた。

「・・・ああ、成程。だから言えるのか」

「そういう事、だから教えてよ」

「不思議だなぁ、何か此処に来るのは一体どれくらい前なんだろ」

「私達の質問に答えてよ」

「・・・初めまして、なのかな?私はガラル。確か90年前に死んじゃった筈なんだけれど、何故か此処にやって来たんだよね。何か探そうとしたら、肉体が無くてさ。んで主を探したけれど・・・まさか使われていたとは」

「え・・・えーと、んじゃ今のガナールの肉体の主は君なの?」

「ご名答。よく分かるね。でも、どうして分かったの?」

「まあ、色々不可思議な事件を経験している身なので、こういうのは慣れていた。って言えば、納得出来る?」

「成程ね~。・・・でも、意外だなぁ。まさか本当にやってしまうなんて」

「まあ・・・今ガナールは仮の身体で動いているから。本当の身体なんて、実際無いんだけどね」

「無い、かあ。じゃあ、魂だけあっても困るから、こうして私の肉体を借りて行動しているんだ」

「まあ、そう言った事だろう。ーところで、『やってしまう』とは何だ?」

「そのまんまだよ。友達が死ぬ間際に『生き返らせてやる』と言ってね。その後死んじゃったから分からないけれど・・・多分、本気だったんだろうなぁ。友達、真剣に泣いていたから」

「・・・もしかして、その友達って・・・ウォイス?」

「あれ、聞いた事あるの?」

「知っているも何も・・・僕ら、友人だぞ?」

「やっぱり、あの人は普通の人じゃなかったんだ・・・天使様だったとか、その辺も」

「?」

「詳しくは彼に聞いてみて」

「なら、その服装するのはマズイぞ」

「?何で?」

「ーその服装はガナールの服装だ。この状態で会ったら彼、ガナールと思われる」

「むしろ姿を隠して、私達2人でガナールについて尋ねた方が良い。そういう事?」

「成程ね。私の存在は伏せておきたいなら、それで良いよ」

「それに・・・お前の存在を知ってしまったら、明らかにウォイスの考えを変えてくるだろうしな。すまない」

「いや、それで良いよ」

じゃあ、と言って、グレファと私はウォイスの家に行った。ガラルは近くの宿で休む様指示した。

 

「まさか、幽霊に会うとはな」

「まあ、私もそこまで考えてなかったけれどさ。・・・やっぱり、アレなのかな?ガナールとガラルって名前似てない?」

「さあな。それを知っているのは、ウォイスしかいないだろうな。それにルナが知っている様な感じもしないしな」

「そっか。確かにあの態度だと、考えづらいね。彼も37歳だけど、大丈夫かなぁ?」

「まあ、それくらいの歳なら大丈夫だと思うのだが」

「そう・・・だよね。あ、着いたよ」

「やっぱり、此処を知るのには、色々疲れるな」

そう言って、私達はウォイスの元に訪れた。

 

「・・・お前らか。一体どうしたのだ?」

「まあ、少し話がしたくて、黙って欲しいから部屋の中良いかな?」

「いいぞ」と部屋に案内をされた。

部屋はとても豪華な装飾品で彩られていた。急にお客様が入ってくる事が多いのだろうか?

「んで?何なのだ?」

「・・・ガナールの名前の由来について、聞きたくて」

「んー、って。お前に話さなかったか?」

「いや、全然。というより知っていたらわざわざ此処まで来なくても」

「・・・まあ、そうだろうな」

愚問だったか、とでも言いたげに彼は紅茶を飲んだ。どうも彼は紅茶好きの様だ。

「まあ、簡単に言えばガナールはガーナから来ている。まあ、寒くて甘いというイメージがあってな」

「それは『公の場』としての発言でしょ?」

「・・・どういう意味だ?」

「私ね、幽霊に会ったんだよ。ガラルって子。その子、ウォイスの友達だったって子だからね。もしかしたら、繋がっているのでは、って思ったの」

「!!ガラル・・・??ちょっと待て、ガラルは今何処にいる!?」

「まずは私の質問に答えて。答えたら教えてあげるよ」

「・・・。ああ。ガナールは其処から取ってる。無論、ガーナの所も少しあるがな。まあ、ちょっと話すと長くなるから、覚悟して聞いてくれ」

「ああ」

「まあ、時代の方は90年くらい前・・・いや、付き合い始めたのは実際の所は95年か。何か気がついたら傍にいた感じか。本格的に付き合ったのは俺が彼を助けたからだな。・・・一応言うが、付き合うと言っても『親友』としてだぞ?気がついたら、仲良くなったが、ガラルはそこまで長生き出来なかった。14歳で当時不治の病であった病気に罹って亡くなった。かなり凄い事だったがな、最悪罹って1ヶ月しない内に死ぬのにも関わらず、彼は1年だった。その後、俺は彼の死を完全に否定していたのだろうか。ー俺は狂ってしまった。結果として、何十年も彼を生き返らせようとした。結果を言うと、失敗だったがな。だが、魂を少し掴めたのだ。そして、その魂を何かで埋める必要があった。ーそして、それを埋めたモノが・・・」

「ガナール・イプシオン・・・。そしてあの方の魂の一部・・・つまり、埋める元があの方・・・?」

「ご名答。これは俺だけしか知らないがな」

「・・・ガナールが出来る前の過程が相当重かったとは・・・」

グレファはそう言うと、軽く空を見た。

「今のガナールの30%がガラルの意思を持っている。それだけでも十分な成果だった。30%も出来たのだから。俺はそれで物欲が絶えた。だが」

「だが・・・?」

「20年付き合うとガナールとはいえ気がつくだろう。『何故か扱い方が変わる時がある』という点は。お前なら分かると思うが、長年付き合うと何となく感じ方が変わる時があるだろう?気がついたら輪から外れていたり、知らない間に友達になったりと」

ウォイスは真剣な顔で私に向けてきた。

何となくだが、分からなくもないのだ。

けれど、何故かモヤモヤするのだ。

私の扱い方が可笑しい様な・・・・??

「・・・分からなくは無いです」

それを答えるのが限界であった。

「そうか」と言って、私の感情をある程度察してくれたのか、それ以上突っつくといった行為はしなかった。

「まあ、それくらいと言えばそれくらいだが。何処にいるのだ?」

「・・・私の家にいます。ただ、察して逃げちゃう可能性があるのですが」

「構わない」

「んーじゃあ、伝えに行ってきますね、グレファ、10分くらいしたらウォイスと一緒に」

「・・・分かった」

 

「あ、おかえり」

「ガラル、ひとまず魂を抜いて貰っていいか?」

「ん、何で?」

私は此処であった事を軽く教える。

「そっか。肉体あったら不気味に思われるもんね」

ガラルは納得してくれた様だ。そして、「いつでもいいよ」って言って座った。

「んじゃ、悪いがやるぞ。・・・魂離術!!」

 

「連れてきたぞ」

8分後、グレファとウォイスは部屋に入ってきた。

「ん、随分早かったね?」

「まあ、それくらいは・・・ガラル、いるか?」

『此処にいるよ』

「・・・!!」

『やだなあ、いつでも君の隣にいるよ。ウォイス』

「ーガラル・・・?」

ウォイスは少し横を向いた。そして、ガラルの魂を見つけたらしく、軽く撫でた。

「・・・会いたかった。ゴメン。」

『大丈夫だよ、ウォイス。やっぱり、私を生き返らせたかったんだ・・・』

「あの後、70年間お前を生き返らせようと研究した。だが、どうしても生き返る事は無かった。・・・だが、ルナという子が、私の願いを叶えたのだ。魂の30%だけ、手に入れたのだ」

『ーそっか。それがガナール・・・なんだね』

「・・・何処でそれを?」

「いや、単純にいたからさ。その後用事があるからって言って、行っちゃったよ?」

「そうか。やはり、長くいられないのか?」

『うん。そこまで長くはいられないと思う。でも、少しだけでも良いから、君に会いたかった』

「・・・ああ。グレファ、アッシュ。申し訳無いが、2人きりで話がしたい」

「まあ、70年ぶりの再開だ、積もる話もあるだろう。2人きりの時間を楽しんで来い。行くぞ」

「うん。ーガラル、良かったね」

そう言って私は部屋を出た。

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続く

next 正体の目~The identity of the white child 中編

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あとがき

お久しぶりです、ポルです。多分、今回初ですよね。こういう話は。

今回はウォイスとガラルとガナールの話にしました。

グレファとアッシュについてはいつか話を出せたらなぁ、って思ってます。特にグレファ。

メタ話を言うと、ウォイスの設定多すぎて、困ってますww 満月姿のウォイス君、出番欲しいな、って言うのが現状であるww

では。 キャラ紹介は後編でやろうかと。

様々な事件が沢山続き、遂には心髄にまで及んで行って、己の中でそれを重く、鋭く貫くのだ。 嘘だらけの世界で信じる事が出来るのは、己自身ただ一人。痛い思いとかしても良いんだ、嘘をつくのはもうこれで最後にしよう。だからお願い。早ク逃ゲテ。