夢想の針鼠の夢跡

物語に隠されたもう1つの物語 『過ち』を知る物語

日記の八の巻~Moon's troubles

「ふーん、月って簡単に欠ける事出来るのね」

シルフィはそう言って、月を見上げていた。俺からすればその月は満月なのだが、彼女からすればその月は三日月なのだろう。

無理も無い。俺はあの時、月を欠けさせたのだから。実際にそうなっているのでは無い。そういう風にしているだけだ。『回復量』もそういう風に変えただけである。魔力の回復は、月の満ち欠けで変わると聞いていた。幻術であるのだが、実際回復量も変わっているので、現実と幻の中間に位置する感じであろうか。しかし、それらは幻術に過ぎない為に、見破られこれを打ち破れて初めて元の月を見る事となる。

「ウォイスは多分簡単に見破られるが、多分他の人は苦労するんだろうな。・・・この術の解き方、かなり複雑な上、この魔術ウォイス自身が作っていたみたいだからさ」

「それ以前に、彼幻術効かなかったんじゃなかった?」

「ああ、分かっている。だが、ウォイス自身が知っているという事は、ウォイスと近い仲間のみ幻術が解ける、なんていう利点があるかな。・・・流石に紅月は覚えていないだろうが」

「何で、それが断念出来るの?盗み聞きしていたとかって無いの?」

「それは無いと思う。30や33年辺から作って、37年頃に完成した・・・と思うから・・・・・・とてもではないが、封印されていた時代の出来事を理解しきっているとは思え難いな。出来事等は側近の話で理解出来るが、おそらくウォイスの秘術等に関しては、情報が漏れてないだろう。俺ですら一部の情報を回収出来ない程だし、ウォイスの性格からしても・・・分かるだろ?」

「まあ、分からなくはないわ。・・・ディーネも連れて来なくても良いのに」

シルフィは少々呆れ顔でディーネを見た。俺が連れてきた精霊であるディーネは、俺を見て笑ってきた。

「いや、だって貴方の雰囲気気になるんだもん。何か沢山人寄ってきそう雰囲気がするし、何処か普通の人間とは違う気がするし」

「・・・あのさ、確かに俺はその・・・人気あるし、動物等にも好かれるのは自覚はあるんだが・・・・・雰囲気が違うって、何処から見ているんだよ」

「ん?私の勘や雰囲気って、大体当たっているものなのよ?」

「ディーネ~!!こんな事に首突っ込んだら、本当に殺されるかもしれないんだよ!?本当に大丈夫なの!?」

「・・・少なからず、俺の存在が知られてないからまだ良いが・・・バレたらどうするのだ?絶対紅月らの事だ、俺を最優先で殺してくるぞ?」

「その時は、サポートしますから。私の実力を舐めては困りますわ。それに、どれだけ強いか、貴方ならよ~く覚えている筈ですよね?」

そうだった、元々彼女ら(精霊は多分性別が無いので、不適切かもしれないが、今見える二人はどう見ても女性なのでそういう事にしとく)は精霊だったんだ。呑気に笑ったりしていたが、こんなんでも普通に俺といい感じに戦える相手である。特に精霊時代の能力をそのまんま使えるという点に関しては、俺はそう簡単に扱えない。

ディーネと戦った事(お遊び程度ではあるが)があるが、一般世間ではその戦いは本当にすざましいモノで、終わった後に周りの観客が絶賛していた程である。

「まあ、構わないが。だが、命までは保証しない事は承知の上で頼む。俺も命を守るだけでもかなり大変だからな」

「命消えてもまた輪廻転生で生き返るしさ、死んでも構わないんだけどね」

・・・何か変な言い方をした奴がいたが、本当に大丈夫だろうか?

「シルバーこそ、気をつけてね?本気で攻められたら、貴方だって危ないんでしょ?」

「大丈夫さ。エメラルドもあるし、それにいざとなったら守護者を呼べば良いしさ。・・・情報漏れにだけは注意しときたいな。相手は俺が人柱である事は知られてない。ーそれ以前に俺が生きている時点で色々聞かされるだろうがな、俺は大丈夫だ」

そうは言うものの、このまま行けば確実に封印が近い内に解けてしまうのは目に見えていた。正直、『解けない様に守護』ならば、『解けた場合を考えて守護』の方がおそらく分があると思う。それを解けない様にするのは、ウォイスの考えあっての事であろう。彼の事だ、おそらくは彼が考えている『紅月に取り付いた悪魔』を払おうとしているのだろう。実際100年前の結界の話でも、それを話していた。だが、あの時は「肉体を焼く」と言っていたが、今は考えが違う。どういう風の吹き回しなのかは分からないが、おそらくは100年間で色々学んだだろう。彼にとって100年はあっという間だろうが、少なからず彼自身に変化を促す事件が数多くあった事に違いない。実際、結界を貼った後彼は泣いていたし、割と最近の出来事(彼からすれば。俺からすれば何百年前とかなり遠い出来事ではある)を隠したりとする辺、そうなんだろうなと思う。・・・100年しか生きていない俺が言うと、説得力は正直言って皆無であるが。

「・・・まあ、行こう。こんな醜い争い等、必要無いんだ・・・・・」

そう言って俺は再びこの森を彷徨う事にした。ーそして、あの塔で祈りを捧げ『天使』を呼び寄せるのだ。「もう少しで成長した彼が此処を訪れる」と言って。ーソニック、もう少しだけ待っていてくれ・・・・・・終わったら、遊びに行くからさ。

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続く。

 

月の異変、覚えてますかね?作ってから半年が経つのですが、ようやく世界観が現れてきたかなぁ、って感じです。とりあえず地名・名前・立場は大体出したと思います。あとはそれを絡み合わせて複雑にすれば・・・・・と思っています。多分これがしばらく続くと思うので、宜しくお願いします。

様々な事件が沢山続き、遂には心髄にまで及んで行って、己の中でそれを重く、鋭く貫くのだ。 嘘だらけの世界で信じる事が出来るのは、己自身ただ一人。痛い思いとかしても良いんだ、嘘をつくのはもうこれで最後にしよう。だからお願い。早ク逃ゲテ。