夢想の針鼠の夢跡

物語に隠されたもう1つの物語 『過ち』を知る物語

幻想の赤月 -11章 悪夢の傍らにいた者

スコール ???

紅月様は封印された。あの『永遠の魔導師』ら連中に。しかし、こっちも手柄はあった。だが、あの英雄を殺すだけでもこんなに時間を必要をするとは・・・あの友人らを殺すのならば、何程の時間が必要とするのだろうか?ガナール・・・奴の存在が、俺達をこれほどまでに苦しませたとは・・・・・奴は一体何者なのだろうか。それすら、分からなかった。

忠誠を誓っていた人達は、半分いなくなってしまった。紅月様だけを忠実従っていた人達は、奴らによって暗殺されたり、終わった後消えてしまったりとしていた。今生き残っているのはヒス、バミル、時雨、マインド、そして俺ぐらいであろう。指揮をしていたディアはシルバーにより暗殺、ティルトはガナールにより破壊された。他は何も無かったかの様に生きているくらいだろう。

俺達は『紅月の破壊者』と名付け、紅月様の復活を願うのだ。あの結界を貼らせた張本人、ウォイスを殺すのだ・・・。

 

時雨はあれ以来意欲を無くしていた。紅月様だけに忠誠だった彼女はそこまでああしようこうしようとはしなかった。だが、紅月様の為であるのなら、其処はやってくれた。結界を崩そうとしていた。

「おい、其処俺の席だぞ」

「あぁ~?アンタがそんな事を言う口はあるかい??」

「煩いな、元々はといえば・・・「貴様ら、いい加減にしろ」

マインドがそう言うと、俺と時雨は見つめた後、溜息をついた。

「・・・結界を崩す為にこうして再結集したのだが・・・・・これじゃ逆効果じゃないか」

最年長である俺、スコールは5人をまとめる事に苦労していた。

「で、ヒス。どうだったのだ?」

「『Other harf』の者、スコールの言う通りあの図書館にいた。シグという子が、資料を集めていた。でも、ガナールが下にいたから、攻撃仕掛けられた。仕方が無いから、睡眠ガス撒き散らして逃げた。だから、殺せなかった」

「そうか。ルナの存在は少々厄介だ、サブで構わないから少しずつ押し込まなければならない・・・・・・また、集めるか?」

「それは多分無理だとオレはそう思うがな」

バミルは天井に近い柱に座り込んでそう言った。だが、俺達は・・・。

「正直、今は隠れていた方が良いと思うよ、オレが周りを見てみたが、どうもウォイスら監視しているみたいだよ。やめときな」

「・・・しかしだねぇ、今がチャンスじゃないのかい?」

「その傷跡じゃ、無理だと思うけれど、どう?」

「ん?それくらい大丈夫、大丈夫」

そう言うと、ペラリと背中を見せてきた。ガナールが奇襲攻撃され、防ぎきれなかった傷跡があった。しかし、ほぼ完全に完治している様子である。強いて言うのなら、少し其処が身体よりも濃くなっている事ぐらいだろうが、それはおそらく一生治らないだろう。

「・・・なら、始めようか・・・・・・紅月様、お待ちください・・・・」

***********

英雄歴??年

ウォイス ???

「・・・・・・どうして、こうなっちゃったんだろう」

彼はそう言って、シュンと泣きそうな顔をしていた。俺はただ黙って、彼の方を叩いた。

「ねえ、ウォイスならあれを正せたんじゃないの?」

「・・・出来なかったから、こうなっているのだろう」

俺も表情には出てないが、あの時俺は後悔していたし、泣いていた。これがあの嫌な出来事に重ねて見えて・・・・・・今の彼は昔の俺と似ていた。まるで、俺があの時の父上みたいで。こんな時、父上は何をしてくれていたか、あまり覚えてなかった。生半可な温もりがかえって悲しみを増していた気がした。

「守れなかった・・・従者として、失格だよな」

「・・・・・・ウォイスは悪くないよ、だってウォイスは、ウォイスは・・・・・・だってウォイスはその場に居なかったんだよ?守れるなんて・・・出来ないよ」

「ーありがとう。だが、俺は見えていたんだよ、あの時。でも、信じられなかった。まさか彼に宿ってしまったなんて」

でも、全ては俺があの時ああしなかったからである。俺は後悔するのだ、こんな事件が起こる度に・・・。

「お前は似ている・・・・・・昔の俺みたいだ」

「?」

彼は私の言っている意味が分からなかったらしく、首を傾げている。

「今日は早く寝るぞ。今日は満月だ、悪魔が来ては困るしな」

「うん。待って、僕も行くから」

そう言って、彼は支度をし始めた。もうすぐ日が落ちる。そしたら、俺はー。

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「!!」

「あ、ウォイス起きたんだ。シャドウ、待ちくたびれてたよ。後で謝った方が良いと思うよ?」

ルファーがそう言うと、起き上がってドアを閉めた。おそらくはシャドウに伝える為であろう。

ルファーは指摘しなかったけれど、多分気づいていたのだろう。倒れていたベッドの横には少しだけ濡れていた。俺は夢を見ていたのだろうか。あの日も良い日ではあった。そう、良い思い出だった。

「まずは、このとぼけ顔をどうにかする所からか・・・」

そう呟きながら、俺は耳を塞いだ。ああ、まだ俺は捨て切れてないのだな。過去を振り捨てた筈なのに、思い出してしまう。・・・いや忘れてはいけない。だが、最も大事なのは今だ。ガナールを助ける事に専念せねば。

 

~中間~

 

「シャドウ、遅れて申し訳無いな」

「・・・貴様唸っていたぞ。大丈夫か?」

「ああ、大丈夫だ。少しだけ、過去を見ただけだ。行くぞ」

シャドウは何か言いたげだったが、俺はそれを無視し、歩み始めた。「ウォイス、何があったのかな?」という声があったが、そこまで気に留めなかった。

だが、過去を見たのは己を過ちに気付くから、まだ良いだろうか・・・。

***********

続く

様々な事件が沢山続き、遂には心髄にまで及んで行って、己の中でそれを重く、鋭く貫くのだ。 嘘だらけの世界で信じる事が出来るのは、己自身ただ一人。痛い思いとかしても良いんだ、嘘をつくのはもうこれで最後にしよう。だからお願い。早ク逃ゲテ。