夢想の針鼠の夢跡

物語に隠されたもう1つの物語 『過ち』を知る物語

日記ノ十四ノ巻~Al mio amore

この世界は悲しい世界だ。この草原はそれが痛い程分かるんだ。

誰もが嫌うあの悲鳴と、剣がぶつかる音が聞こえる。

嗚呼、この世界は何も変わってない。

我侭づくしの人達が醜い戦いをしているよ。貴方は其れをどう見るんだろうね?

蒼い花と紅い花、どっちも綺麗だね。こんな風に、混ざり合う事が出来れば良いのにな。

 

「ソニック、此処にいるんだろ?出てこいよ」

私の声に反応したかの様に、草花が風で揺れる音がした。心地よい音色と共に、白く輝く珠が現れた。珠が落ちたかと思うと、光の珠の周りに蒼い光を弾けさせ、それは私のよく知る彼の姿となった。

「よく、分かったな。此処にいるって事」

「何となく分かるんだよ。分かっているだろ、この街の状態」

私がそう言うと、街を見る。この草原は良いな、こんな風景をどんな物にも邪魔されずに見れるのだから。

「ああ、アファレイド・・・王宮の近くにいるのだろ?シャドウ達」

「ーそこに紅月やシャオン、それとスパークがいるかな。・・・凄いよね、100年前と現在が混ざり合っているよ」

「だが、シャドウは・・・」

「・・・俺の存在は、この世界を、この状態を、動かしてしまう。それならば、ウォイスなりソシアなりに教えた方が良いだろうな。そもそも、お前が此処に来ている事は俺以外誰も知らないだろ」

「そうだったな。で、エメラルドは無事なのか?」

「無事だよ、だってホラ」

入れ物の中にうっすら見えるカオスエメラルドを見て、ソニックは笑った。

「ずっと持っているんだな」

「いや、もう1人同じ色の守護者がいるから、二人で・・・ね。「お前が持っといた方が何かと心強い」と言われて、半ば強制だけどな」

少し微笑むと、ソニックはそれを考えたのか苦笑いしてきた。

「ああ、何か分かる気がする・・・。で、新しい小説のネタ、決まったか?」

「決めた。ー紅月の悲劇の続編、書こうかなって。あの事件の後は確か天気異変だったよな?それを書こうかなって。俺の体験談を少し・・・な」

「久々に聞いたな。確か、お前が行方が分からなくなって、皆で探したんだっけな。お前がまさかあんな事をしているとは全く予想がつかなかったけどさ」

「あの時はゴメン。謝っても許すかどうか分からないけどさ・・・」

ハァ・・・と溜息をついた後、ソニックは立ち上がった。

「ーそろそろだな。この事件も後半戦に突入ーって感じか?」

「さあな。だがエメラルドの存在も相手にも分かってきている。分からないというと、ウォイスのエメラルドと俺のエメラルド・・・だけだと思う。まあ、あいつが持っていた筈のエメラルドは??ってなってはいるだろうがな」

「あー、もう1人のカオスエメラルド守護者の事か?」

「そうだ、スパークらが着く前に渡して来てさ、この有様だ」

「しかしお前、帰国後シルフィと共に裏世界に行ったんだろ?確かディーネって奴を連れてさ」

「あの後大変だったんだぞ・・・そして戻ったらあの様だしさ、混乱ばっかりだったな。まあ、あんな事になるくらいならまた行こうかな、とは思っているが」

最も、相手が俺を狙うなら尚更なのだが。ソニックに心は読めないから、漏れる事は無いだろうが。目を閉じて、少しだけ心の声が聞きたくなっていた。

「ん、どうしたのだ?」

『あー、テイルス達は元気にしてるのかな』

「・・・なあ、テイルス達に会ってないのか?」

「お前、読心術使っただろ。俺は最近天界の方で使命を渡されてな、この世界にやってきたんだよ。肉体も持っているから、外の世界と干渉は出来る。だが・・・」

「ー?」

「俺の能力は引き継がれている。そして、こんな能力を得たんだ」

彼は指を上に挙げる。すると、周りに風が生まれた気がした。ーシルフィと同じ能力だ。草花があったから尚更分かりやすかった。

「そうか、お前風を創生する能力を手に入れたのか」

「いや、俺の場合は操るまでだが。今になって思うが、シルフィは凄いな。無から風を生み出す力があるなんてな。ウォイスの場合は水らしいが」

ソニック曰くこんなんでも結構苦労したらしい。でも、『伝説の風使い』はある意味本当になったという訳である。

「ーまあ、その能力は基本誰にも見せないって言われたが」

「じゃあ、俺に見せるのはマズイん「それは大丈夫だ、実際創生を見たことがあるんだろ?ウォイスやシルフィとかそういう人物は見ても大丈夫だ」

既に不可思議な事件に立ち会っているから、大丈夫らしい。確かに俺は幽体離脱を経験したし、伝説に記されてあった覚醒を操る能力も手に入れた。ーもうこの時点で普通の人間が体験する様な品物ではないであろう。と、伝えたい訳なのだな。

「そうか。なら安心だな・・・・・うう。またかよ・・・」

「シルバー?」

「結界、崩れかかっているからさ。たまに起こるんだよ、こんな事が・・・少し、良いか?」

「ああ、大丈夫だ」

「ありがとな・・・ふわぁ・・・・」

そう言うと、シルバーは眠った。そして、あの時の光を出していた。

 

「さてと、俺も用事があるから、戻らないとな」

そう思ってその場から離れようとした。

「ー止めて、もうこんなの嫌だよ・・・」

譫言(うわごと)の様に、彼はそう言っていた。その意味が一体何なのか、俺には分からなかった。

様々な事件が沢山続き、遂には心髄にまで及んで行って、己の中でそれを重く、鋭く貫くのだ。 嘘だらけの世界で信じる事が出来るのは、己自身ただ一人。痛い思いとかしても良いんだ、嘘をつくのはもうこれで最後にしよう。だからお願い。早ク逃ゲテ。