夢想の針鼠の夢跡

物語に隠されたもう1つの物語 『過ち』を知る物語

Me and my

 

・・・今いるのが、私で、ワタシは眠っている。

私がこうして行動していられるのは限度がある。精神だけだったら、余り疲れを感じないんだけどね。でも、精神だけ彷徨う様になると、いずれ消滅するなり、天界の使者に連れてかれたりする。ー既に死んでいると勘違いするからだ。

私は口を持つ訳だが、精神だと特定の人にしか声は届かない訳であり、肉体を持つというのは、それが出来ない者との干渉が出来る訳で、決してデメリットだけが溢れかえるモノでは無いのだ。だが、その状態で火災とかで亡くなれば、それは直ぐに天界行きになっちゃう。

私は歌を歌って舞う。此処いらの魂に祈りを捧げる為に、憎しみばかりで全く天界に行こうとしない者を浄土させる為に。死んでしまった者に出来る事というと、それくらいしか無いけれど。それは私の友人に頼めば、後は連れてくれるだろう。せめて・・・こういう日々が過ごせられたら、私はそれで良い。

「~♪」

この歌は、その友人に教えてもらった天界の歌なんだそうだ。この歌は浄化させる能力があるらしく、聞いた者は負の感情から解き放たれる、らしい。でも詳しい話はあまり分からない。友人はそれを天界で学んだらしく、今度はこれに関する話をしてあげると、約束してくれた。

私はそれ以降、言霊が宿るという噂を信じた。あの曲を聴いた時、心が晴れた様な感じがしたからだ。私にも、何か出来る筈。そう思って、私は図書館に行って調べた。当然、コンピュータも使った。信憑性はそれなりに減ってしまうが、それでも助けたいのだ。結果として、成功した。私は言霊を利用して、精神に安らぎを与える魔術を創った。それは、人間界では初めてであった。度々私は広場とかで羽を伸ばそうとして、たまにその歌を歌ってみるのだが、その歌は何故か歩く人々の心に残るという奇妙な現象も起こった。ー正直、私も理由が分からないんだけど。

その魔術は色々特殊だった。そもそも精神に関わる魔術は数少ないので、この魔術を得ている者は基本メイジ位の実力はある、と聞いた事がある。実際、転身の術はそう簡単に唱えられる代物ではない。だが、私が使うその魔術は誰でも出来る事であった。特定された音を歌えば、それで唱えた事になるから。これが音痴の人ならば、少々苦戦するかもしれないが。魔術、というかは魔法とも言うべきだ。かなりメルヘンである。

という訳で、今私はこうして歌を歌っている訳なのだが、また今日も歩む人々の足を止め、歌に惚れ惚れさせていた。そして、歌い終わると盛大な拍手が起こって、中には涙流す人もいた。最近では『謎の少年が突如現れて、皆の心を奪う』等と、風の噂になっていたりしている。私が歌う場所は、何処なのか分からない。というより、気分次第で歌っているのだから、予定の場所なんて無い。・・・あったら、既にオファーが来る筈だ。

それは海外に出てもそうだ。言語は違うので、この歌の歌詞の意味は分からないが、知らなくとも「いい声だ」等と、声そのものに関心する人もいるだろう。ー歌詞を知らないのに、この曲の特徴で好きになった、という経験はあるのではないだろうか。そういう意味では文章だけで伝わりきれない事も伝えられる。文章は文章並に良い所もあるんだけども。

「見てよ、あの子だわ・・・」

「え、何の事?」

「ホラ、最近風の噂で聞くじゃない」

歌っている間にもポソポソと呟く人の声が聞こえる。どうしても、歌を歌っていると発表している様な気分になって、少々恥ずかしくなる。・・・ある程度は慣れてしまったけれども。

 

『少しでも多くの人が笑顔に咲きます様にー』

 

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ワタシはこの世界にいる。私は歌い疲れてしまったのか、今日は少々早めに眠った様である。

私は笑顔に満ち溢れていて、気づかぬ内に人が集まってくる。そんな雰囲気の持ち主で、ワタシにとっては羨ましいななんて思った事もある。まあ、ワタシが私として出てくれば、同じ効果を得られるので、そこまで嫉妬はしなかったけれど。

ワタシは逆に人を惹きつけない様に心がけている。惹きつけてはいけないのだ。なので、ワタシはなるべく冷たく接しようとするのだが、少し自分でも気づかぬ内に温かい印象を与えている部分がある。別にそれでも構わないのだが。第一友人に向けてだから、それで結構であるであろう。

今日は貴方が料理を振るってくれる様で、貴方は張り切っていた。そういえば、友人は「とても美味しい」って言っていたな。具体的に何処が?というと、友人はとにかく美味しいの、と流してきた。まあ、貴方の作る料理は基本ハズレが無いから、不安に思わなくて良い。夕食の準備が進んでいた。

「お待ちどうさま」

そう言うと、料理がテーブルの上に並べられた。どうやら今日は鯨の肉を使った料理らしい。かなり高級である料理である筈なのに、こんな所で食べられるとは・・・貴方も相当お金持っているんだと改めて実感した。貴方は「こんな料理が普通だ」と言っていたが、一般市民からすればそれは豪華料理だと思う。実際ワタシはそう思った。

と、まあ見た感じの感想はそのへんにして、私は調理された鯨の肉を食べる。噛みごたえを感じた後、独特の味がする。美味しい。使っている素材も相当高価な物であろうが、それを差し引いても美味しい。ついワタシは夢中になっていたらしく、貴方は笑って「少しゆっくり食べたらどうだ?」と言われた。

そして、ワタシは貴方と共に一夜を過ごそうとしていた。しかし、とある理由でワタシは外に出ないといけなくなった。ワタシはいつもの場所で、君を待った。

数分後、君はやってきた。

「悪い、少し忙しくて」

「大丈夫だよ、それくらい」

君はあまり寝てないからか、少しクマが出来ていた。「少し寝る時間増やしたら?」と言ってみると、「そうかも」って言って笑ってくれた。きっとワタシは私に見られているのだろう。ワタシはその事を伝えると、君は「お前も大変だな」と、少し苦笑いをしてきた。

たまにワタシはこう思う。こんな時間が大好きなんだな、と。普通に会話して、普通に過ごす。そして「ずっと一緒にいようね」とか言って、有限のある時を、無限という言葉で飾る。その有限の時を隠そうとするのは、悲しみを抑える為だと、ワタシは思う。そして、有限の最期は『絶望』だ。でも、それを抱えて生きていかないといけない。それが、人間なのだ。

それを言うと、君は「今は有限の後の有限だが」と普通の人が言うと、「?」が思い浮かびそうな事を言ってきた。

ーあ、もう時間だ。

そう言って、君は「また明日」と言って、君の家に戻った。ワタシは手を振って、「うん、じゃあね」と言って笑った。君が完全に見えなくなったのを確認して、ワタシは貴方の家に戻った。

 

『明日が希望に溢れた世界であります様にー』

 

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様々な事件が沢山続き、遂には心髄にまで及んで行って、己の中でそれを重く、鋭く貫くのだ。 嘘だらけの世界で信じる事が出来るのは、己自身ただ一人。痛い思いとかしても良いんだ、嘘をつくのはもうこれで最後にしよう。だからお願い。早ク逃ゲテ。