夢想の針鼠の夢跡

物語に隠されたもう1つの物語 『過ち』を知る物語

日記ノ二十三ノ巻~The collapse of the ego

「軍事事情は全く分からないよ。だってシャドウと違って俺は一般人だぜ?」

軍事事情。僕からすれば事件が起こった時必ずお世話になる言葉だが、彼からすれば全くその内容も分かっていないだろう。

「・・・お前はそのままで良いんだよ。軍事に関しては僕とウォイスで十分だ」

ウォイスも無関係ではない。王族の血筋が途切れてしまっている以上、誰かが代わりに王にならねばならない。位が高く、王の政治の様子を間近で見ていたウォイスもその候補の一つであった。民衆も彼の王位を継ぐ事を願っていたが、彼はそれを拒否した。

『王の遺言を果たす為にも王になる訳にはいかない』

これがどういう意味かは殆どの人が分からなかったが、とりあえずウォイスは王位を継ぐ事を拒否して、他の人に回した。僕からすれば、それは正しい判断だったと思っている。守護者としての役目の事も考えると、彼処に滞在し続けるのは危険だからだ。

現在は別の人が王を継いでいるが、実際の所彼も裏で干渉している。

「でも、ウォイスはアファレイドだけだろ?」

「基本的には、な。ただ大事件が起きるとなると支援が入るだろうから、周りの情報も少なからず収集しているだろう。ニュースで得られる情報よりかは詳しい筈だ」

「・・・じゃあシャドウはどうなんだよ」

「僕は全体の情報が手に入れられる。これでも位は高いからな、多方の情報は確実に手に入れられる」

「それを利用して、紅月の行動を監視しているんだ」

「ああ、だが当然デメリットもある。相手からすればGUNやエージェントは非常に厄介だ。僕が守護者である事を知らずに襲ってくる奴もいるだろうな」

まあ僕は基本的には自由なので、僕に直接被害が及ぶとは思え難いが・・・。

「まあ僕が捕まっても、ウォイスのコネがあれば十分補えるだろう。まあ当然彼の負担は重くなるが」

「でもさ、お前の情報が一番早く来るんだろ?結構痛くないか?」

「それはそうだが・・・まあ僕は死なないから安心しろ。お前はお前の安全を優先にした方が良い。お前は守護者の中で一番一般人に近い。つまり、何か事件が起こった時、まずお前は犯人扱いされない筈だ。あっても証言者位であろう?」

「・・・でもさ、俺結構有名だが?本とかで」

「そういう意味じゃない。確かに有名だが、誰も本の作家さんが守護者だとは思えないだろう?問題は情報提供する側がいなくなった時の話だ。一般人に近い以上、守護者が潰される順番は絶対後半になってくる。逆に僕やウォイスは結構早い段階で抜かれると考えるのが普通であろう」

「てことは俺は確実に一人ぼっちになっちゃう、のか?寂しいな」

「そんな事件が起これば言う暇も無くなるぞ?一般人らしく振舞わないといけなくなる」

彼は「?」といた表情をしていた。特殊な位置に存在する彼にそれを言ってもそこまで把握出来てないのだろう。というよりよくそれで・・・

「意味が分からないが、とりあえず普通に過ごしとけって事だろ?正義感が強いからと言って、無理に突っ込まない方が良い。突っ込めば逆効果になって返ってくる・・・違うか?」

「ああ、そうだ。だからよろしくな」

彼は無邪気に「うん」と言って、そのまま笑った。怒っていないのか、少々不安だったが、どうもそうでもない様だ。・・・怒っている事自体、もう見られないのだろうか?

「?どうしたの?俺に何か?」

「・・・怒っていたのか、お前は」

「意味が分からないよ。怒っていたって??」

「何でもない。さ、行くぞ」

「うん・・・」

怒っている事を口実しても、彼は何言っているんだとでも言うかの様に首を傾げるだけであるのは分かっていた。もう彼にそんな事を求めてはいけないのだ。分かっていた筈だった。だが何処かでまたあの時と同じ様に過ごせたらと思っている僕がいる。ソニックと共に、三人で何処かに散歩したり、買い物したり・・・いや、もうそれは無いか。僕もだが、皆変わってしまった。もうあの時を共に過ごし、交わる事はおそらく無いだろう。天国に行ったとしても、変わってしまった僕達を見てソニックはきっと驚くだろう。ああ、でも彼も変わっているかもしれない。

(フォローする役がいたとしたら、僕はそれに努められているだろうか?それを尋ねてもきっと本人は分かっていないだろうな)

誰もが知る筈も無い答えを僕自身で考えこみながら、一日中彼を介護していた。彼の様子は大丈夫か?それを確かめる術はただ一つ。彼を見守る事だけだ。守り続かなければならない。僕がやるべき事はそれだけだ。・・・そうだろう?

様々な事件が沢山続き、遂には心髄にまで及んで行って、己の中でそれを重く、鋭く貫くのだ。 嘘だらけの世界で信じる事が出来るのは、己自身ただ一人。痛い思いとかしても良いんだ、嘘をつくのはもうこれで最後にしよう。だからお願い。早ク逃ゲテ。