夢想の針鼠の夢跡

物語に隠されたもう1つの物語 『過ち』を知る物語

幻想の赤月 2-01章 Justice is sometimes become evil

『訂正 朝になって気付いた事なのだが、カオスエメラルドの所在が分かっていたのは2個だ。だから、32日を5個分集めなくてはならない。最も、カオスエメラルドのみでどうにかなる様な問題では無いのだろうが・・・。とにかく、本当にすまない。
謝罪とは言うのがなんだが、少しだけ教えておこう。今、我の身の周りに起きているのは正直に言ってしまえばただの茶番に過ぎない。カオスエメラルドが必要である、これは厳密に言うと間違いである。この際、言ってしまうと、最悪カオスエメラルドを手に入れてなくとも問題無い話であり、代わりに『奇跡』の代わりとなる物さえあれば良いのだ。これは偶然の奇跡でも、必然の奇跡でも構わない。・・・人工物でさえも、きっとこの事件は解決してしまうだろう。
我は遠回りにさせながらも、この作業に取り組んでいる。最も、早く解決する事に越した事は無いのだが・・・・・・彼奴の殺意はとてつもなく酷かった物だから、その殺意を和らげると同時に、その真意を我は知らなければならない。例え彼奴がそれを望まなかったとしても、だ。

・・・ああ、話が逸れてしまって申し訳無い。話に矛盾があったのは事実だ、其処は本当に申し訳無い。謹んでお詫びを申し上げる。』

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『あ、今日は来てくれたんだね』
「・・・約束は約束。確かにその環境は辛そうだな」
『辛いっていうよりも・・・ますます干渉出来なくてね。そのせいかな、怖いんだ、あの人の顔が』
「顔ねぇ・・・・・・あの方は元々顔がキツいからなぁ・・・」
『あ、分かります?そうなんですよね、いつもああやって他人をどうこう注意するんですよね』
「ああ・・・やりそうだ」
『あ、でも非があれば彼も謝りますよ、一応』
「一応とは・・・ああ、感情込めて言うのは苦手そうだな」
『アハハ、そうかも』
「その欠点は貴方が抑えていたのか?」
『ご名答!!そうです、僕が全てカバーしたんですよ!!』
「・・・抑えていたのは事実だが、全ては嘘だな。我に嘘をつこうとは、笑止」
『ああもう、そんな事言わないで!!君ってあの人以上に白黒はっきりつけたがりますね!!』
「あの方程我は固くない。あと、嘘か否かは心理学を学べば多方身につく事だ。ごもっとも、態度に出る事から悟るから、読み間違えも無くはないが・・・貴方はすぐに顔に出る。あの方も大層苦戦させられたのだろう」
『えへへ~・・・』
「よくこんな環境なのに呑気でいられるな。ある意味羨ましい事だな」
『へえ、君は呑気でいられないんだ?』
「我の環境は、貴方以上に冷たい空気が流れている。故に、今の状況がある」
『硬いねぇ、君。もう少し、こう、深呼吸してリラックスしていいのに。君の言葉を信用するなら、此処は誰でも入れないんでしょ?あの人ですらも』
「・・・あの方は、君が見えていない。皮肉だな、まさかあの方が君は愚か我ですらしっかりと見通せてないのだ、完璧に見えて、な。それがかえってこの環境を悪くしている。無論、あの方はそんなの気にも留めてないだろうし、『貴方を助ける為に』と言いながらも、その貴方を殺そうとしているという、完全に理論が破綻している事もきっと気付いてない。気付くのは、あの方が信頼している人からその事を指摘し、怒らせる必要がある。エゴだって気づかないと本当に貴方を殺めてしまうに違いない。殺意位は貴方も感じたんでしょう?」
『う、うん。一時的にね、正気に戻れる事が出来た時にね、あの人は激怒していたんだ。何かに取り憑かれたかの様に。まるで別の人に会ったかの様な・・・?』
「?どうした」
『・・・・・・別、人?』
「何か思い出せそうなのか?」
『僕、ずっと不可解な事があるんだよ。あの人の行動に』
「行動・・・もしかしてだが、激怒していた時のあの人の様子がおかしかったのか?」
『いや、そうじゃないんだ。・・・分からなかった事が、何かを思い出しそうで・・・よく分からないのです』
「思い出したら我に言えば良い。他に言って欲しい奴がいれば、我がその事を伝えるから」
『―今は敵になっているから僕の耳には届いちゃ悪用されそうでマズイんだけど、死ぬかもしれないから、この事を伝えておいた方が良いかも』
「・・・?」
『友達に会って、話を聞いて欲しい。名前と特徴、何処にいるかは教えるからさ』
「・・・難しいな、あの人達の監視をしなくてはならないのがな。とはいえ、聞ける事は聞いておいておこう。何だ?」
『まあ期待はしないでおいて。この話自体、信ぴょう性に欠けているから。しかも、相手は・・・ねぇ』
「もったいぶる様なら止めておくぞ?」
『ああ冗談だって!赤いコウモリで黒い服を着ている子なんだ!!』
「・・・?」
『名前は、そうアッシュ!!アッシュっていうの!!翻訳を頼んだけど、結局言ってくれなかったの!!』

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コツン、コツンと音を立ててながら彼は歩く。腕には血が少々流れており、彼は気に留める事をしない。歩くその姿は、こちら側の人々には悪魔の使いの様に感じられるのだろうか。どうやら本当に忌み嫌われているらしい。
子どもは無邪気に彼の近くに行ってきたりするのだが、大人が静止させ、「触れちゃ駄目だよ」って言う。これが後にあんなになってしまうのだろう。子どもの時は親の教育は悪いって言っているのに、大人になってみると、その性格の根本を叩こう事はしない。まあ、大人になれば善悪の判断は出来るだろうから、そういう処置なのだろうけど。
彼はいつも通り教会の上から世界を眺める。すると、彼は若干目を凝らした様に見えた。どうやら、西の方角に異物を発見したらしい。それも、この辺の者でなくとも、地図を見ればすぐに分かる位大きい程のだ。・・・平になっていた筈の草原が、まるで星が動く過程をビデオで倍速した様な早さで、山の様な形になっていくのだ。ゆっくりではあったものの、誰もがこの光景を見れば早い筈なのだ。地を形成するのに、どれほどの時間を要するのかは誰もが知っている事なのだから。
勿論だが彼にとっても、この出来事は想定外であった。本来ならば、誰かが調査に向かって調べるべきのだが、彼は珍しく重い腰を上げて、黒い翼を舞った。忌み嫌われていて、移動なんて殆どしない人が行動するその光景はどうやら他の人にとっては意外らしく、「一体何が起こるのかしら?」と首を傾げている人もいた。そんな事を見ていながらも、夢中で空を飛ぶ彼は一体どんな事を思っているのだろうか。
これはまだ、序章に過ぎない事を彼は知らない。

~中間~

「・・・一体何があったという?」
辺一面の斜面が明らかに可笑しい。何度くらいあるかはあるかは彼は分からなかったが、こんな斜めになっているのはどう考えても変なのは、すぐに分かった。彼には複雑な事はよく分からなかったけど、一つだけ疑問に思った事があった。
(もしも、この出来事が誰かの陰謀だとしたらー?)
それを頷ける根拠も、彼には存在した。友人が言っていた『魔術』、まるでその為に残された唯一持っている本。この本が一体何処の本か、それが存在する意味等彼がそれを知っている訳が無かったのだが、きっとこれが役に立ってくれる筈だ。彼はそう信じた。
そして、それは同時に疑問を呼ぶのだ。何故この本は存在しているのだろう?、と。保存状態が明らかに良すぎたのだ。何がどうなっているのだろうか。そんな事は分からない。頭がよろしくないからなんかではなく、存在している事自体が奇跡と言っていいからだ。ごもっとも、それは彼にはきっと分からないのだろうが・・・。

それを見て、奴の事を思い浮かぶのだ。もし、あの出来事さえ無ければきっと此処はもう少しはマシになっていたのだろう。未だに死にきれていない、不器用な少年のお話である。その話を語るのは、まだ早い。

episode2 困惑的な月は一時を揺蕩う

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The 3rd day

ガナールの予測を聴き終えた俺達は、特にする事は無かったので、そのまま泊まっていた部屋でゴロゴロとくつろいでいた。気がついたら朝日はもう昇っていた。昨日の爆破事件は、表向きは事故として扱われたらしく、テレビのニュースで2人が重症を負って現在も治療をしているとあった。
此処にいるのは、俺・ソニック、シルバー、シェイド、ウォイスの四人。ウォイスは紅月一味が此処を去った為、脅迫の意味を失ったので此処には問題なく入れたし、妨害する事は無くなったので安全だ。シャドウとルージュはGUNにその事件の処理をお願いする為に、今日一日は行けないらしい。その後は、シャドウは俺達と共にカオスエメラルドを、ルージュは情報を探り始めるとの事だ。シルフィとシェイドはエメラルドを託した後は、俺達とは違う方向へ向かっていくのらしい。カオスエメラルドには触れずに、ガナールの言っていた『闇の住民』を調査するとの事だ。
皆が偶然バッタリってなってしまったけれども、この事件は皆が取り掛からなければ、絶対に解決しない事を皆はきっと知っている。だから、今すぐにでも出発して、解決したかったのだが・・・。
「今日はシャドウの合流があるから出来ないだろう」
ウォイスがそう言って、キッパリと断った。
「それにな、今移動した所で、昨日の疲れや怪我で維持が出来なくなるぞ。それは一番やってはいけないのは、お前も分かっている筈だ」
「でも・・・」
「うーん、流石に今回はウォイスさんの言うとおりだと思いますよ。僕もうクタクタですもん・・・」
そう言うとシェイドは伸びをする。シルバーも同様らしく、ゆっくりしている。
「同感だな、この様子だと結構時間掛かりそうだしな。1~2日休んでから出発しようぜ?」
「お前ら少しは危機感を持てよ!!」
「まあまあ、とりあえずゆっくりしましょうよ・・・」
シェイドとシルバーはそんな感じで、ゆっくりとしていた。俺は苛立って行くべきだって言い張るのだが、ウォイスが抑えてくるので、諦めるしかない。お願いを聞いて貰いたいのだが、今回は諦めるしかないのだろう。


「ところでさ、ガナールはどうしたのだ?」
不意にガナールの所在が気になった。普通ならこんなに気にする事は無かったのだが、どうもこの状況で放置するのはいささか不安を伴う。いつぞやの笑みを浮べて、また俺達に襲いかかったとしたら―そんな考えが止んでやまない。
「ガナールなら、自由に行動して貰っている。自由に行動したい、って言い出してな」
「・・・え?自由に行動ってマズイんじゃないか?こんな時に行動したら、最悪俺達の首を絞める結果になるんじゃ・・・」
「自己責任でやれって注意したから、考慮はするだろう。切り落とす事はまず無いから安心しろ」
「お前は結構抜け目無い様に見えて荒い時があるよな・・・」
「そうか?不完全要素は普通あるものだぞ?」
・・・不完全要素はなるべく取っておけるのはウォイスだけだろうが。なんて言いたい気持ちを抑え、俺は近くにあったお菓子を食べた。・・・この場には似合わない、とてもとても甘く、美味しいもの。ああ、こんなに簡単であればまだ良かったのかもしれない。

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「申し訳ありませんでした、紅月様」
そう言って跪くと紅月様は振り返って笑っている。
「仕方ない事だ。ガナールとの接触が出来ただけまだ良かったと言えるだろう。主従関係では済まされない関係・・・か」
「知りませんよ、そんな関係。というよりガナールは一体何者かも・・・」
「・・・・・・それについてなんだが」
「?」
「天気異変は知っているか?」
「?え、ええ。我が宿敵ウォイス・アイラスが起こした、人によって天気が異なってしまう事件・・・でしたよね。紅月様が干渉しなかったあの・・・」
「そうだ。ガナールはその時からいる事になる。・・・我が考えた可能性は3つだ。1つは、単純に我らが見過ごしていた他人の存在が何らかの方法でガナールとして活動を始めた事。2つは、ウォイスが作り出した木偶人形。3つ、そもそもガナールの存在自体が無い」
「・・・存在自体が無い・・・?」
「例えば、ウォイスや我ですらも簡単に欺けてしまう様な幻術で存在している様に見せかけている、とかな。本人が気づいているかは分からないが」
「で、ですが・・・私が見たガナールはどう見ても人間のそれでした。時々無意識起こる癖もあったのですよ?」
「・・・我にもよく分からない。根拠もあまり無いものだ。気にしない方が良い。殺してしまうのが、一番なのだろうが・・・」
「殺せる自信が無いのですか?」
「・・・・・・正直に言うとだな、ウォイスを殺すよりもガナールを殺す方が難しい気がする。化けの皮を剥がさない限り、どう攻めれば良いかも分からん」
「あと、帽子が無ければ存在意義が消えてしまう、なんて事も言っておりました」
「何だと?」
「意味が分からないですよね、それ」
「紅月様―!!大変だ!!」
私と紅月様の間に緑色の竜が入ってきた。近くには鷲がいるのが確認出来た。彼は息を切らしていたが、息を整えると、叫んだ。
「大変です、幹部の一人が殺されました!!犯人はガナールだと思われます!!」
「・・・!?」

~中間~

現場を見てみると、其処には幹部の者が殺されていた。腹部辺にナイフの刺し口があり、其処から大量出血をして死亡したと見られている。心臓部分はどうやら刺されていなかったのが少々疑問に思ったのだが・・・
「―どういう事だ?スコール」
「・・・ウサギをこれを知らせて、行ってみたら殺されていたよ。どうやら、夜歩いている最中に襲われたらしい。寝ぼけ眼で見ていたらしいから詳しい情報は分からないが、こんな場所で殺されるのは明らかに変だと思うぞ」
今までガナールが起こした事件は計り知れない。ウォイスの従者であると同時に殺人鬼でもあるガナールは、ウォイスが脅威だと感じた奴を排除する事は愚か、何も命じていなくとも全く関係の無いと思われる人物が奴の手によって殺されている所もあるらしく、普通に捕まれば終身刑・死刑はきっと免れないだろう。にも関わらず、こうして尻尾を掴まれる事なく、普通に過ごせているのは、ほかならぬウォイスが一部を隠しているからだ。但し、それだけで済むと思ったら大間違いだ。何もかもがメチャクチャにされる。こうして、まるで普通の様に振る舞えるのは、能力が働いている事への証明へと繋がると思うのだ。事実、奴は幻術を得意としている。
「これでは、いつまで私達の命が持つか分かりませんね。気をつけなければ」
「ああ、そうだな・・・・・・ところで、だ。ガナール、何故見ている?」
「え・・・?」
「滑稽だね、うん。とっても滑稽だよ」
ハッとなって死体を見ると、笑いながら死体をいじっているガナールの姿が見られた。神出鬼没というのはまさにこういう事か・・・ガナールは笑い続ける。
「未だに気付いてないんだ?私はいつでも貴方達を見ているよ?キャハハ」
今までの大人の雰囲気とは全然違う、子どもの様な言い方。ますます意味が分からない。
「貴様!!」
「おっと」
懐からナイフを取り出して振ってみるのだが、ガナールは易々とそれをかわした。
「宣戦布告って事?幾ら何でも早すぎじゃない?それとも・・・やられたい?あの子の様に」
「!!」
そう言うと、ガナールの周辺に闇が覆った。闇が晴れた時、もう既にガナールはいなかった。
『・・・フフフ、驚いた?これはね、幻術なの。気付けなかったでしょう?死体を見たら発動する様にしといたんだ~♪ああ、もう時間だ。やっぱり設置型は面倒くさいなぁ・・・』
それ以後、ガナールの声は消えたし、姿も勿論現れなかった。その声を聞く限りだと、本物だろう。紅月は怒りを露にしていた。
「あ、紅月様・・・?」
「幻術を、見通せなかっただと?そんな馬鹿な。非現実的な出来事だったのにか・・・?侮辱したな・・・許せぬ・・・・・・」
見通せなかった事がどれほど屈辱に感じているのかは私にはよく分からないのだが、上には上がいるっていう事だろうか。敵ではあるのだが、あの騙しは怒りを通り越して敬意を払いたくなる位のレベルであったが、あの方は・・・。
(完璧だと思っていれば、侮辱と思われるのか)
勿論この事は口にしない。口にすればきっと半殺しにされる。それでも、苛立って乱れたらそれこそ相手の思うツボだ。そう告げると、あの方は冷静を取り戻した。・・・装っているだけかもしれないが。
「・・・そう、だな」
なるべく感情的にさせない様に仕組まなければ・・・スコールに目配せをすると、彼も頷いた。

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「ぷはー、死ぬかと思った。奇襲だけでどうにかなるかな~って思った私が馬鹿だったか。・・・でもまあ、これは尻尾に過ぎないか」
返り血を浴びたので、服を洗わざるを得ない状況になっていた。服の漂白をすれば、黒が薄れてしまう。これでもちゃんと管理をしている方だ。何度も洗う内に、自分のスキルも若干伸びた様な気がする。これのお陰で、洗濯も簡単に出来るのだが・・・。
「・・・あの子を守らなくては」
奴の毒牙に引っかかるその前に、薄汚れたその手で私はあの子を守る。あの子はそれを望まなくても、エゴを通し続ける。あの子は多分この事を知らなくても・・・。


結果を言えば、それは失敗した。私は守ったけれども、私一人に出来る事には限界があったという訳だ。ボロボロになって、私だけではどうしようもない。きっと戻ったとしても、もうあの時の姿ではない別の存在になっている事だろう。別の存在とは何か、それは私達にでも知りえない情報だし、誰も知らないだろう。そう、誰もだ。もしかしたらあの子は慈悲深い女神様を気取っているのかもしれない。愛情しか知らないあの子ならば。


鍵は今、私の手の平に。

 

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続く。
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上記の通り、エメラルドの個数に問題がありました。すみませんでした。現在ソニック達が持っているエメラルドの数は2個です。

様々な事件が沢山続き、遂には心髄にまで及んで行って、己の中でそれを重く、鋭く貫くのだ。 嘘だらけの世界で信じる事が出来るのは、己自身ただ一人。痛い思いとかしても良いんだ、嘘をつくのはもうこれで最後にしよう。だからお願い。早ク逃ゲテ。