夢想の針鼠の夢跡

物語に隠されたもう1つの物語 『過ち』を知る物語

日記ノ二十五ノ巻~???

軋む。軋んで体が動かない。動けない。動かねば。動け。動け・・・ああ、ようやく動かせた。そうですよ、そうすれば良いのですよ。ああ私は幸せでございます。貴方様がようやくその気になったのですから。

そうと決まれば、貴方様は早速儀式をしてもらわねばなりません。心配は無用です。その痛みももうまもらく安らぎに変わる事でしょう。そんな顔をなさらないでください。貴方様はこの戦いの王に輝く様なお方なのですから。王ですよ、王。王がそんな顔をなさっては、他の人々が悲しんでしまいます。

ああ、私の言う王は貴方様が想像している王とはきっと異なります。王族の王様ではございません。気に留める必要も無いかと思いますが、貴方様がそんなに気になるのであれば、教えてやらねばなりません。・・・全ての結末を知る王なのですよ、貴方様は。その短い寿命よりも遥かに長い時を生きたモノの結末ですらも、貴方様は全てを理解出来るのです。まあどのみち貴方様は多分この戦いの後はもう二度とこのような表舞台には出てこない事でしょうし・・・貴方様が自ら行動を起こさない限りは、の話なのですが。まあその話は置いといて。その結末がどの様な経緯でそうなったのかも分かります。これによって、貴方様はご自由にその結末を変えてしまう事が可能なのです。

ホラ、見てください。今現在、貴方様の目の前には貴方の主がいるでしょう?いいえ、主なんて呼び方はいけませんね。だって無理矢理従っているものですもの。それは奴隷という意味が使われる筈です。その鎖から貴方様は解き放たれたい、そうは思いませんか?ええ、そう思いますでしょう。私にかかれば、それすらも簡単に解けるという訳でございます。

とはいえ、王になれるのはごく僅かの人間でございますし、王になったからと言って、寿命が増えたりする訳ではございませぬ。なので、気軽に委ねてください。簡単です、願えば良いのです。「~をやってみたい」とかでも構わないのです。心で願いを叫べば、私がその願いを叶えて差し上げましょう。

では、早速貴方様がお願いしている夢を叶えて差し上げましょう。貴方様が今願っているお願いは『~~を消してしまいたい』とですな?ええ、叶えて差し上げましょう。

・・・え?冗談で願っただけ、ですと?いえいえ、心の底でそう思ったのですから、貴方様は本当にそれを望んでいるのでしょう?問題はありません。抵抗しても無駄ですよ、貴方様の肉体を操れる事ができるのですから。

 

ホラ、この様に倒れたでしょう?これで貴方様は自由の身ですよ。・・・泣く必要なんて無いのですよ。だって主は貴方様を苦しめた張本人なのですから。問題はありません。近しい人が何になるとでも?・・・心がボロボロだ、何があったのですか?温かい液は嫌いですか。ふむふむ。であれば、貴方様は記憶を奪えばよろしいのでは?・・・冗談ですよ。幾ら私でもそんな事は出来ません。意識を奪う事位なら出来るのですが・・・。

ああ、疲れてしまいました。今日の所はこれまでにしますよ。お名前ですか?貴方様は詳細を知らないのですか?・・・ルミールの他にもいるのですよ。夢・願いを叶える人物が。それが私ですよ。今まで貴方様や10年前程にいなくなってしまったあのご友人の願いを叶えてきたではありませんか。いえ、叶えたというよりも、良い結果になる様にしたのです。薄々気付いていない訳が無いのです。貴方様はそれで富を築きましたではありませんか。あれらは全て私がやった事です。ご安心を、仮に貴方様が私の元を離れたとしても、その効力は永久に残ります。付け足しが出来なくなるだけです。きっと貴方の主も理解出来ないでしょう。そんな主も効力があるのですから。

ですがまあ、あんなのはお飾り程度にしかならないのです。本当の能力はそれすらも上回るのですから。・・・拒否するのも自由です。ですが、時間が無い事を把握してください。最も、それは貴方様が一番お分かりなのでしょうが・・・。

 

では、私はここいらで。ご武運を祈りますよ。

 

 

 

・・・・・・目を開ければ、其処には襲いかかってきた人が転がっている。そして、自分の手には、言葉に出来ない様なモノが垂れていた。色々と察した自分は悲鳴をあげてその場から逃げた。

 

様々な事件が沢山続き、遂には心髄にまで及んで行って、己の中でそれを重く、鋭く貫くのだ。 嘘だらけの世界で信じる事が出来るのは、己自身ただ一人。痛い思いとかしても良いんだ、嘘をつくのはもうこれで最後にしよう。だからお願い。早ク逃ゲテ。