日記ノ二十六ノ巻~my dreamer
風の様に自由に舞い踊る。
非日常的な日々は、いつしか日常になって、日常は非日常へと変わっていく。
私はそれで構わなかった。何度もやって慣れた事だ。
だから、牙を剥いた貴方のその姿を見ても、混乱はしない。
恐いに決まっている。命が狙われている事を知っていれば、当然の事だ。
貴方はきっとそんなの微塵にも思っていない。なのに、防衛心だけは立派に残っている。死にたくない、死にたくないと必死に抵抗している。
よく分からないのだ。
「風を操ると言ったら君の事じゃないか。シルフィ」
「知らないわ。貴方は一体何を言っているのかしらね。貴方こそ、風の意思を引き継いでいるじゃない」
「ソニックの事か?・・・確かにちょっとは前向きに考えられる様にはなったかも」
損失の恐怖を味わった貴方であるならば、きっと貴方は次の世代に伝わってくれる筈だ。私がその世代に伝える事は難しいだろうけれども、彼が伝えてくれればそれで良い。
「んー・・・でも、結局俺は俺なんだな、っていう結論に至っちゃうんだよな」
「変わろうとする心を持っているだけでも、十分素敵だと私は思うよ?そんな勇気持っている人なんて本当に稀なんだから」
変わろうとしても、恐怖で変われないままでいる人が身近にいる。私も恐怖を抱いているけど、その人はもっとだ。もしかしたら、私達の中では一番臆病者なのかもしれない。・・・その臆病者が一連の物語の鍵を握る人物の一人だったりするから、本当に物語は普通じゃない出来事が沢山詰まっているのだと言えると思う。
「勇敢に立ち向かおうとしている貴方の姿を見て、皆が真似をし始める。貴方のやった事が大勢の心を引き立っているのよ?」
「大げさだなぁ・・・シルフィは。俺はちゃんとやるべき事をやっているだけなのに。・・・まあ、誰かの心が救われたら俺は幸せだな」
そう言いながら、アネモネの花を摘んで、花飾りにした。只の花なので、しばらくすれば、枯れてしまうだろう。
「大丈夫、凍らせたから。ブリザードフラワーにしたんだ」
「・・・一応言っておくけど、ブリザードフラワーは違うの。本当は『プリザーブドフラワー』って言うの」
「え?そうなのか?」
「そうよ。瞬間的に凍らせるんじゃない。水分は完全に飛んでいるのよ。乾燥させると食物も長く持つでしょ?凍らせても意味無いわよ?」
「そ、そんな・・・」
ガックリしているその姿とほぼ同時に花びらが何枚か飛んで行ったのが見えた。どうやら今の今まで勘違いをしていたらしい。
花を飾っている中、一人紛れ込んでいる変な人がいた。
「~!!」
私達は、その存在に気付く事は無かった。
「そろそろ戻りましょ。ウォイス達がきっとパーティーを始める頃だろうから」
「ああ、そうだな・・・」
プリザーブド。保持・・・。そういえば、彼はウォイスとルナにお願いして貰って、不老(或いは不老に近い存在)になったと言っていた。つまり、何かを施した筈なのだ。もし、プリザーブドフラワーの様に乾燥させていたとしたら・・・。
(なんて、肌はちゃんと潤っているから違うよね・・・あの人に何をしたのかしら・・・)
考えるだけ無駄だ。そんなのお飾りに過ぎないのだから。あまり深く考える事はせずに、私は放置していた。