夢想の針鼠の夢跡

物語に隠されたもう1つの物語 『過ち』を知る物語

幻想の赤月 -1章 Sorrow's friends

「・・・幻想の赤月の先をお話しよう。しかし、皆が区別する様、この世界ではこう呼んでいるのだ。覚えて欲しい」

 

・赤月では大きく分けて3つの話がある。一つは事件発生からソニックの死までを。一つはソニックの死から闇の破壊者が活動開始されるまでを。一つは事件発生前・・・天気異変やラリネウス王殺害事件などを。事件からソニックの死を●章と、ソニックの死から活動開始を-●章と、過去の話を+●章と呼ぶ。

・尚、ソニックが死んだ年を英雄歴0年と記し、それより前を英雄歴-●年と呼ぶ。

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英雄歴90年ー冬

??? 廃墟アポトス

 

ウォイスは不明な人だ。冷たい事を言う割には殺す際には思い留めてしまう。ー彼も辛かったのだろう、彼は結構前から生きているから・・・。

あの人は過去に関しては全く口にしない。しいて言うのなら、ラリネウス王暗殺事件を俺は見ていたのでそれに関する事くらいだ。

彼は『永遠』を共に生きていくんだ。これまでも、これからも・・・。

 

俺はたまらなく嫌になっていたみたいだ。彼が俺を利用している、そんな恐怖に怯えているのかもしれない。

でももう良いんだ。ーあいつは俺を見くびっている。『紅月』の計画もきっと俺みたいな感じ方によるものだろう。でも紅月。そんな罪悪感を他人に押し付ければ、後悔する事を覚えて欲しい。

・・・きっと俺とあの人は似た者同士だから・・・

ー俺はその罪悪感で暴走を引き起こしたから。

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封印した日から1週間後

 

シルバー シルバーの家

「・・・。」

俺はずっと眠っている。でも眠れない。眠れないのは何故だろうか?

時々激痛が走る。そしてその後に声が響く。それが俺にとっては苦痛であり、シャドウも同様だった。

「うぅん」

病院行っても意味が無い事を知っていた。不安だった。

あの日以来俺は結界を施した。誰にも見られたくなかった。

 

こんな酷い顔を他人に見せたくなかった。

 

どうせ俺自身もあいつらと同じ、不老不死に近いんだ。食事を取らなくても、しばらくは生きていけるさ。

(来ないで・・・来ないでよ)

俺は心の底でそう呟く。結局皆誰もがそうだ。自分が良い方向に進めば良い、それなら切り捨ててしまえ。そんな考えが俺は認めなかった。だからウォイスを恐れたんだ。いずれ切り捨てられるのでは、と。

ただひたすら泣いている。ソニックは「笑って生きて欲しい」と言っていた。でもそれを叶うのは今は到底適わなかった。心にスキマが出来た気がした。もう、あの時には戻れない。無理なんだ。何もかも・・・。

「・・・・・来ないでって言っただろ、ウォイス」

ウォイスの気配がした。シャドウの気配も。

「ーなぁ、そろそろ落ち着いたらどうだ?」

「そうだ。そんなのでは不老不死のリスクも覚悟しきってなかった様だな」

そう。不老不死。皆は朽ちていくのが当然。・・・つまり死をいずれ受けなければならないのだ。

 

「・・・来ないでよ」

気が付けば右手が震えていた。布団を握って、小さく震えていた。

「そうは言ってもだな、ほら、テイルス達も誘っているぞ」

「・・・皆、皆・・・・」

「シルバー?」

「皆、そうやって感情を誤魔化すのか?それが善い行いなのか!?」

「シ・・・シルバー落ち着「それでソニックの事を忘れるのか?そもそも「やめろ!!」」」

ウォイスは大声で言った。

「・・・いずれ訪れる『死』を受けなければいけないのは分かる!!だが、それを超えなければ人は生きていけないのだ!!」

「なら・・・なら、その人を忘れるのか?」

「人は皆、いずれ全てを忘れるさ」

「・・・いい加減にしろ・・・永遠に生きる者に俺の感情など分かる訳が無い!!」

それを言った直後、2人共は驚いていた。

目の前が歪んで見える。俺自身が放心状態だったのだ。

「・・・出て行ってよ」

長い空白が続いた後、俺は小さくそう言った。

ウォイスとシャドウは「静かにしておく」と言って出て行った。

 

「・・・。」

 

彼はきっとこれを見ている筈だ。忘れていて欲しい記憶である。

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ウォイス ステーションスクエア

「・・・何故俺達を攻める」

「しょうがないだろ。1人にして欲しい時だってあるだろう」

「ーしかし、あいつがあんな状態では」

「そうだよな。」

シャドウと共に俺は街中を歩いていた。

「・・・あまり良い気分じゃないな」

「それはそうだよな、だって」

「違う、そいゆう意味ではない」

シャドウは首を傾げた。シャドウはきっとシルバーのあの態度で良い気分では無いと思っているのだろう。

・・・でも、実際は違う。

「・・・時々思うのだ。何故、こんな事が起きるかを」

これは色々な意味でそう言っている。今回の事件、不老不死のきっかけとなった事件、ラリネウス王暗殺事件等と、全て原因がある様にしか見えなかった。

紅月が封印されたという出来事を知っていたのは俺だけだった。ソニック達の目線では今回の目的は『闇の住民を封印する』という目的だった。つまり、色々と勘違いが起こってしまっている訳である。復活する為には闇の住民を解き放さなければならない。それは紅月を復活しようとしても自分にも攻撃を受けてしまうという意味もあった。

・・・俺の過去を全て知る人など何処にもいない。誰も、誰も。

「・・・ウォイス?」

「あ、いや・・・。少し考え事を」

「ー怪しいな。貴様、本当にこの世界を好きだと思うのか?」

「・・・好きだよ。でも」

目を閉じて、過去を思い出す。

「ー此処のルールはちょっとどうにかしたいが」

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シルバー シルバーの家

「・・・今度は誰だよ」

「ーシルバー」

「・・・シルフィ。何故此処に来た?」

シルフィはニッコリ微笑む。本来ならそれが良いと見えるのだが、今はそうではなかった。

「ちょっと話をしたかったからね。良いかな?」

「結界を貼った意味をお前理解しているだろ?」

「その意味についてちょっと分かった事があったからね」

「・・・?」

「とりあえず、影の国へ行こ。話はそこから」

「・・・ああ」

それが何の意味を持つかは薄々だが分かっていた。それはきっとウォイスの事だろう。

 

影の国 とある図書館

「・・・あった、この本よ」

シルフィはそう言って彼女自身の手に本を乗せた。・・・超能力だ。

「見てみても普通の本ではないか?」

影の国と光の国の文字は共通だ。シルバーはこの本のタイトルを見ている。

「・・・ウフフ、これを見てみて」

彼女はこの言葉に呪文を乗せていたみたいだ。そして本の内容を読んでみる。

「・・・!?これは」

「そう、これ実は」

「・・・ウォイスに関する情報だ・・・」

筆記者はルナと書かれている。・・・ルナ・ロプルヌス。あの人はガナールを作った人の一人だと聞く。

「何でもルナはウォイスの友達らしくてね。一時期は魔導王国で理学を教えていたそうだよ」

「・・・ルナって奴、それほど凄い人だったのか」

ガナールは普通にタメ口だが、それらを知ってしまうと本当にタメ口で大丈夫なのかと思った。

「まあ、ちょっとこの本を借りて行きましょ」

「・・・そうだな、ついでにメモか何かも」

彼女は彼女のカードを見せ、この本を借りた。

 

「・・・さてと、座っていいよ」

「ああ。とりあえず読んでみるか」

「そうですわね。では・・・」

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『秘術を持つ魔導師』

ようこそ。ーこれを読める人はおそらく相当強い魔導師であるだろう。

・・・まずコレを見る前には約束がある。

一つ、まず取り上げている魔導師は『不死』を持つ。一部訳の分からない過去もある。

二つ、これを見た者は決してこの本に記される内容を言ってはならない。言えば、後悔する結果となろう。

三つ、嘘か本当かは知る由も無い。信じるかはどうかは君たち次第であろう。

 

ー以下を守って読んで貰いたい。 ルナ

 

まずこの本は私の友人の魔導師の謎と解釈、答えを書いた物である。事情上答えが記されてないのがあるが、気にしないで欲しい。

 

・・・私の友人の魔導師。名を『ウォイス・アイラス』と言う。外見年齢は17歳。しかし実際の年齢は最低でも名が確認されている最古の記録でも最低3000年は生きている。しかし、それはあくまでも最低。最高であれば1兆年程生きている可能性も否定しきれない。・・・そんな彼だが、前に書かれている通り、不老不死であるのはほぼ間違い無いだろう。そんな理由で別名『永遠の魔導師』と呼ばれる。おそらくアファレイド魔導王国出身の人は知らない人はいないだろう。彼はラリネウス王の側近だったという記録もある。

弟子は持たない主義らしく、弟子に育てられたいと願っていても、アファレイドの魔術などしか知れないのは残念である。・・・しかし数名だが弟子を持っているという。その弟子の多くは才能を持っている人達で、彼が教えた弟子は基本的にはSSくらいの術を操れるらしい。

 ・・・しかし未だに疑問に思っている事が私にはあった。そう、彼の唱える魔術だ。私は過去にアファレイド魔導王国で魔学を学んでいたので分かるのだが、ウォイスが唱える術、いわゆる『術式』と言うべきだろうか。術式の種類が明らかに多過ぎる。アファレイド基準では種類は10種類程度の筈。しかし彼は明らかに違う術式を操る。おそらくだが、他の魔導王国の魔術も覚えているのだろう。不老不死であるのだ、可能性は十分にある。

(・・・シルバーは一回シルフィを見つめた)

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シルバー 影の国 とある館

「・・・しかし、これを調べるとは」

「私達の情報を照らし合わせると、答えは出てきます。」

「そうだな。まずは・・・。神々の神殿の事、覚えているか?」

「はい、知ってますよ。ー私達2人で初めて行った所、そしてウォイスと会った所」

「・・・あの時ウォイスは8000年前に建てられた。そう言っていただろ?おそらく8000年前は生きているだろう。フォルカも生きているしな」

「そして、術式が違うのはー。ウォイスの生まれ故郷がアファレイドではない、別の魔導王国の住民。それも紅月くらいの才能があった状態でね。」

「それでも少ない。まだいくつかの国に行っているのだろうか?」

「多分。噂ではアファレイド建設の際にも関わったとか」

「・・・あいつは一体何者なんだ?」

俺はぽつりとそう呟いた。

 

あいつが一体何者なのか。確かに不老不死でアファレイド王国に関わる人物、アーチメイジである事は皆分かる。しかし、いつ頃生まれたか?アファレイドで何があったか?何故不老不死なのか?そう言った情報に関してはまるで仕組んでるかの様に全く書かれてないのだ。それを知らずに扱っているのだ。彼女も、俺も、ガナールも、ソニックも、紅月も、シャオンも、誰もが知らずにいる。知っていてもアファレイドで何があったかくらいでそれより前は知らない。

 

「・・・シルバー?」

「ーいや、何でもない」

知らない間に時間が経っていたみたいだ。

「・・・でも不明という事は知られたくないのかも」

「ー例えば?」

「そうだな・・・。あ、実際にあったかは不明だぞ?」

「うん」

「例えばだな、ほら、今ウォイスは誰もが憧れる先輩か?とりあえず人気があるだろ?それを崩すのがあったりするんじゃないかと」

「・・・具体的に言うと何なの?」

「そうだな。自分がお世話になっている国を俺達が知らない魔術でその国を滅ぼした、とかかな?」

半分冗談、半分本気である。彼の強さは計り知れない。その気になれば全体を氷河期にさせたり、此処を水だけにして圧縮死や窒息死にさせたり、記憶を全て操り、存在意義を無くしたりする事だって可能だろう。闇だけにするのも光だけにするのも可能だろう。彼は此処が好きだからしてないだけで、もし操ってしまえば、それこそ世界を滅ぼせるのではと思う。どうやら俺が使うサイコキネシスは魔術も制御出来るらしい。ー万が一暴走が起こってもどうにかできる。・・・しかしそれもおそらく・・・。

「・・・そうですね。しかし貴方はそれは出来ないのでは?」

「ー言われてみれば・・・」

「大丈夫だよ。シルバー。貴方は読心術で透明や偽っている相手を見破れるし、幻術などに掛かっても彼が起こしてくれるでしょ? 正々堂々、勝負しないと倒れない人じゃない」

「・・・ウォイスですら抗えない、超能力の力、か」

「そういう事。ウォイスや紅月には無い能力で倒せば良い。少なからず裏を読めないでしょ?」

「・・・。」

そう。俺は皆が扱えない能力があるじゃないか。俺と彼女だけが扱える力。彼女と俺は・・・。

「ーそうだな。それに新しい能力は出来るしな」

「・・・そうだね、フフ」

予測回避不可能な能力を使って、彼らの関係を元に戻す。絶対に・・・絶対に。

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続く

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幻想の赤月第2幕開幕宣言。2幕はあの事件までを書いていきます。

ウォイス』『シャドウ』『シルバー』『シアン』『シルフィ』『ガナール』2幕は6人メインで進めていこうと思います。

next -2章 鎖術師の事情~Silver knihe

様々な事件が沢山続き、遂には心髄にまで及んで行って、己の中でそれを重く、鋭く貫くのだ。 嘘だらけの世界で信じる事が出来るのは、己自身ただ一人。痛い思いとかしても良いんだ、嘘をつくのはもうこれで最後にしよう。だからお願い。早ク逃ゲテ。