夢想の闇夜 第2~3幕 0.5章 Along with the sound playing~奏でる音色と共に
英雄歴100年
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遠い遠い過去の話をしようか。星が沢山輝く夜空に下弦の月が照らすこんな風景なら、こんな過去を話した方が雰囲気が良いから。
思い出してみて。君は昔々こんな事をしていたとー。
・・・君は思い浮かべた?僕?僕はそんなに良い過去なんて無いんだ。だって、僕は元々は生まれない筈の人なんだから。自然と人工の堺目に生きる僕は、此処を100年見守ったんだ。僕はもう1人の僕と共に、此処を、世界を、未来を、宝石を守ってきたんだ。誰も僕の事を知らずに。
「人の言う事なんて聞いてしまえば手駒にしかならないのだ」
彼はそう言った。確かに操ってしまえば手駒にしかならない。その真意も何となく分かっていたよ。でもね、僕は心から彼を慕っているんだ。それが作られた心でも・・・。
『今回の喧騒(けんそう)も正しく終わらせる・・・必ず』
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魔導歴1000年
ウォイス Forests of hope
此処は『Foresuts of hope』という。直訳すると『希望の森』である。神が此処に集うと言われる森である。人間界と神の世界が干渉出来る所の場所でもあり、とある信者の信仰場所でもある。どうして『希望の森』という名があるか。それはその中心にある『ホープの聖樹』と呼ばれる大きな樹木があるからである。ホープの聖樹は、此処でお願いをすると願いが叶うという噂が流れている。否、それはあながち間違ってはいない。ただ、その『願い』というのは、そのチャンスを作るくらいである。それに気が付けばその願いを叶えられるという訳である。当然、人間の人々はそれを知らない。それどころかホープの聖樹に『人』が眠っている事すら知らない。『元』人間であった俺もそれを知るのは随分と後になってしまった。
そういう意味では1000年近く経ってもあまり変わってなかったと思う。ただ、俺が意外だなと思ったのは、その『人』が俺にとある事を聞いてきた事だ。
他人なので詳しくは言わないが、その『人』は元々俺より以前(俺に近い年齢。約1010年前)に生まれていた人間だったそうだ。ただ、『人』はとある病によりこの森に住んでいたらしい。そしてその病が深刻になると『人』はある術を使って自らを樹木にして、今に至るという。俺とは別の方法で神(聖樹のこと)になった元人間である。
『この森もすっかり成長したな』
「ああ、そうだな。ホープ」
俺はその『人』、ホープと話をしていた。とは言っても彼は樹木。基本喋れないし、喋っていても基本声は届かない。俺は王子の時に使っていた『植物会話術』を利用して話しているのだ。
「・・・それで?願いというのは?」
『お前は『悪意の種』を知っているか?』
悪意の種。俺が神になってから最初に覚えた言葉でもある。それは皆が持つ小さな種である。名前で分かると思うが、損害しか出てこない。この種は負の感情で大きくなり、花が開けば発狂を意味し、枯れれば自分を見失った事を意味する。この種は人によって大きさが違い、咲いても口調が変わる程度の軽度の種もあれば、母上の様に国を崩壊させる力を持つ重度の種がある。この種、神でも見れなく一部の人しか感じる事が出来ないのだ。比較的大きい種がある人程見れるのだが、当然大きい程発狂する確率が増える。俺も少々大きいらしいが、『役目』の影響もあり芽生える事すら無いという。発狂時は満開になる。枯れる事はもう無いだろう。
ーもうあの時に一回枯れてしまったから。
「悪意の種・・・母上が大きい種を持っていたあの?」
『そうだ。お前もあるが基本実らない不思議な種になっているから頼めるのだ』
「?ああ、そういう事か。んでそれがどうしたんだ?」
『君なら感じるのだろう?未来の種も』
「邪悪な気配であるのなら、ある程度は」
『君に頼みたい。『種』を花咲かないで欲しいのだ』
「ーあれって咲かせない事が出来るのか?」
『ああ、出来る。その花は精神で決まる』
「・・・つまり、アレだな?その大きな種を持つ人間の精神を落ち着かせれば良いんだな?」
『記憶を消す、従者にさせる、友人関係にするなどやり方は何でも良い。ただし暗殺はあくまで最終手段として使って欲しい』
「記憶を・・・な。記憶を操るくらいどうという事もない」
『恐ろしい奴だな、ウォイス王子は』
王子・・・久々に聞いた響きだ。今レヴィアーデンは多少ではあるが歴史書に書かれている。俺が王子だという事も書かれている。
「ならやってあげようじゃないか。しばらく居なくなりそうだけどさ」
『フフフ、ありがとう。動けないからね、助かるよ。ところで今悪意の種の鼓動は感じるの?』
「・・・微かではあるが聞こえる。そうだな・・・東の方向にあると思う」
アレを探すのにこれくらいの力は多分十分だ。おおよその位置が分かれば、後はその人に会うしか状態は分からない。・・・ただし例外もあるが。
『東の方向か。確かロストタワー付近だったか?』
「ロストタワー・・・か。そうだったな、東の方角は敵対していた国があったな。俺が来ても果たして大丈夫だろうか?」
『それは安心していいと思うが。もう千年も前の話だぞ?』
「そうか。・・・なら探さなければならないな。『悪意の種』を・・・。じゃ俺は行ってくるよ」
『気をつけろよ。悪意の種をばらまこうとする奴らもいるからな』
「『永遠の魔導師』の名を持つ俺が、殺されるとでも?」
『いいや、念の為。行ってらっしゃい』
俺は溜息をついて、東の方角を見る。普通は見えないが、集中して見ると黒い瘴気が漂っていているのが分かる。この黒い瘴気を放つ者が・・・。
『ー俺が守らなければならない『種』の主・・・か』
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第3幕ー空人が見た理想郷の世界
~プロローグ~
昔々、本当に昔の話。
とある人は失った物を取り戻す為に自ら『人』を作ったんだ。人といっても今の人間とかではないけれど。
その人は2人を誕生させた。その2人はとても強く、優しかった。
この3人は皆好かれていたんだ。
でもね、その3人の幸せは長く続かなかったんだ。
ある時にお城に舞踏会を行うと知らせが来たんだ。
そこに行って3人は幸せに過ごしていたんだって。
でもね、途中巨大な黒い竜が襲ってきたんだ。
その竜のせいで、3人は離れ離れになってしまったんだって。その友達も巻沿いになったんだよ・・・。
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嗚呼、聞コエル。
皆ノ歓喜ニ包マレタ音ガスル。
眠ッテイタノヲ覚マシテクレタンダネ。
私ハ此処ヲ作ル人ニナッタンダ。
嗚呼、聞こえる。
皆の悲鳴に包まれた音がする。
覚ましていたのに眠らせたんだね。
私は此処から逃げてしまったんだ。
聞こえているよ。
皆が喜んでいるのが目に映っているよ。
貴方はもう1人の私なんだね。
私は再び『家族』を探す事にしたんだ。
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俺は目の前で見ていた。
不老不死の辛さを乗り越えなければならないのだ。
俺は悲しみを『背負っては』いけない。そうしてしまえば目覚めてしまうから。
目覚めてしまった以上、俺は役目を果たすだけだー。
俺は俺にそう言い聞かせた。「感情を表に出すな」と。
感情を閉ざしてもう何千万年経つだろうか。最後に感情が表に出たのは、そう、あの時、王が殺されたのを聞いて、駆けつけた時だ。
もう王はいないんだ・・・。幼い頃からのんびりしていて、何だろうか。憎みに憎めないという感じの感覚が俺は嫌いでは無かった。そんな王はもういないんだ・・・。もう二度と笑っている王は見られない・・・
そう思うと涙が止まらなかった。涙なんて枯れてしまったと思っていたのに。一晩中泣いていた気がする。この時王子は泣かないでと言って、俺を慰めてくれた。この時久々に『温もり』を感じられたんだ。その王子も俺のせいで行方不明にしてしまった。
俺は必死に探した。生きている確証は無くとも俺は探し続けた。生きている確率が少しでもあるのなら、と。結界の事も詳しかったから尚更生きている筈と思いは強くなった。
そして俺はついにその王子を見つける事に成功したんだ。でもその王子は記憶が無くなっていた。でも口調などは当時のままだった。そして彼は俺の名を呼んだ。悟られただけなのだが、「記憶が失っている筈なのに何故俺の名を」と思いうろたえてしまった。始末には会話を投げ出した程である。
彼は多分俺の事を知らない。覚えているのは自分の簡単なプロフィールと俺の名前くらいだろう。早急に思い出して貰いたいが、今此処でやってしまうと完全に狙われる。それもそうだよな。あの人が殺そうとした『王子』と『側近』が2人一緒にいるのだ。普通に考えてあの人目線、絶好のチャンスとしか思えない。というよりこれは紅月に問わず皆共通でそう思う筈だ。実際俺もそう思う。
ただ、俺は足跡があまり付いて欲しくない。あの人が目覚めている以上、俺が狙われるのは当然である。師匠且側近の立場に俺は立っているのだから。むしろそうじゃないと奇妙である。断言しよう、俺はあの人の早急に排除すべき人物リストに載っている。縁を切りたい訳だが、その為には彼の封印を解かないといけない。身体が無い以上普通の暗殺法ではあの世行きは無理である(別の人の身体を使っているのなら別なのだが)。俺が使う魔術であの世行きなら大丈夫だが、生憎あの人は強い。これを実行するのは難しいだろう。ただし今回の目的はあくまで『人柱を殺されない様守備する事』だ。本当に戦うのは最後だ。司令塔が崩れてしまうのは勘弁だ。
ではこの後はどうするべきか?簡単だ、他の守護者と直接会って、現状報告を聞いた方が良いだろう。彼は自由気ままにフラフラと世界のあちこちを舞っているので、何処にいるかは分からないが、他の守護者ならおおよその位置は分かる。
彼が自由に気ままに行動する理由、それは狙われない為でもあるが、最大の理由は他の人に遭わない為である。彼が最後の人柱且エメラルド守護者でもある以上、最も狙われてはいけない人物だ。なのでセンサーか何かに付けられない様、様々な地方を旅している。多分そろそろレヴィカルト地方へ来ると思うが、危険を察し、元人柱である彼の声も聞こえなくはないらしい。面白い事に元人柱である彼も結界が崩れない限りは2人きりで話が出来るそうだ。どれだけ凄いんだろうか、あの共鳴反応は・・・。
俺は守るべき物を守れば良いだけだ。なのに何故、俺は守る物を彷徨う?
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英雄歴99年ー冬
シルフィ シルバーの家
「何をしているんだ、お前は」
「ウフフ、面白いゲームをしたくてね。一緒にやろう?」
「悪いけど俺は明日から旅に行ってくるよ、今日は早めに寝たいし」
白い子ーシルバーはそう言って準備を進めていた。ソニックが死んでから2年~3年おきに彼は単身で世界一周の旅に行く。旅行に掛かる時間は不安定で早くても1ヶ月は帰ってこない。遅ければ1年経っても帰ってこない場合もある。今回で38回目になるのだが、私が「何故何回も旅行するの?」と訪ねたら彼曰く変化していく世界が見たいからだそうだ。その度に様々な国の写真を撮っては本を作って他の人に紹介(販売形式)している。実はこれが結構好評らしく、「2~3年ではなく毎年出して欲しい」や「実際に行ってみたい」といった声も殺到している。
つまり、38号の写真付きガイドブックを作成しにネタ集めをする訳である。ただし、この旅行。上記の通りは理由の1つにしか過ぎず、本当の理由があるのは私でも分かっていた。裏の情報だが、紅月らの破壊者の中にシルバーのガイドブックを愛読している人がいるらしい。ペンネームは違うので本当の名前を呼ぶ事は無いが、おそらくその人が彼に会ったら本当に興奮すると思う。
「旅行から帰ってくるのは大体どれくらい?」
「う~ん、そうだな・・・。最低6ヶ月は帰ってこないかな。でも、ウォイスが予言している時くらいには帰るよ。大体エメラルドが半分以上回収した時辺に帰ってくるよ」
「羨ましいわ。忙しい時期にのんびり旅行するなんて」
「帰ったら土産話でもしてあげるよ。まあウォイスやお前の場合テレパシーが出来るから危険を察知したらテレパシーでお願いな。伝達鳩でも構わない」
「分かったわ。んで、旅行先はどこから?」
「そうだな、アルファルット地方から行こうかな。パティアから適当に一周してこようか・・・。アルファルット地方のテュリネイトって感じで食文化が発展してるしな。それに金はいい感じに稼げるんだよな、これが」
「『ガイドブックでお馴染みのアシュアが記念すべき37号発売!!』。売り場に行ってありますかって聞いたら売り切れ。売る度にブームになる。何故毎回こんなに売れるかが気になるわ」
「お便りを見ると『女性にも読みやすくて且楽しめる』って書かれている。まあ、俺はいつも通りに書いているだけだが」
「・・・フフ、あれ、これは何?」
「?ああ、これ?ウォイスと友達に聞いてアファレイドの悲劇をまとめた小説の原稿だ。『紅月の悲劇』って俺が勝手に名付けてるけどさ」
「おお、完成はいつ頃を目安に?」
「少なくとも帰ってくる前には発売すると思うよ。当然ペンネームは『アシュア』だが」
「流石に仮名は使いませんか。あくまでアシュアはアシュアなんですね」
「・・・自ら本名語る奴がいる方が可笑しいだろ」
「そうですわね。あ、私の仲間探しも手伝ってくれる?」
「それらしい人物がいたらテレパシーで教えてやるよ。確か声でも判別出来るんだっけ?」
「うん。多分貴方魔導師だから気配を感じ取れると思うんだけど、微妙なら呼んで欲しいわ。それらしい人物がいたら連絡お願い」
「そうか。頑張って探してみるよ。・・・ふわ~ぁ、明日は早いからさっさと寝よ・・・。神殿はお前に任せたぞ、シルフィ」
「了解です!!」
精霊の時私達は離れ離れになってしまっていた。しかし、私は親に会う事が出来た。後はお姉様だ。ついでに言うと四精霊の内あと3人(?)会っていない。探さないと。
ーあの時の真実を確かめる為に・・・。
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1章へ続く・・・
next 1章 少女鈴吹雪~to know the past (しょうじょりんすいせつ)
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あとがき~PostScript
1章にする予定でしたが、ちょっと補足もしたかったので0.5章作らせて頂きました。本当にスミマセン!!Forests of hopeはレヴィカルト方面にあると思って結構です。「ちょっと旅行してくる」って言った理由はもはや言うまでもない。当時は残っているという設定でしたが手違いがあってこうなりました。永遠の月光花に出ているシルバーは旅行から帰った直後です。よく対応出来るなw
さて、本題は次回からの予定です。流石に入らないというのは避けたいですね。では!!
一応PostScriptはあとがきという意味ですあとが(あとがき~あとがきって何ぞ)
追記 重要な所以外を一回り小さいサイズの文字にしました。