夢想の針鼠の夢跡

物語に隠されたもう1つの物語 『過ち』を知る物語

幻想の赤月 -6章 Non posso dire che io sto piangendo

シルバー ロストタワー頂上

 

「レヴィアーデンの魔術、お前らの記憶に刻み込めてやる・・・。闇暗水影ー」

ウォイスは唱えると、手を地面に置いた。そして大きな魔法陣が現れ、端の円には闇属性であろう蛇の様な物が現れた。

ダークネスシャドウ・・・。地獄の果てまで朽ちろ!!」

「チッ・・・」

紅月は避けてはいた。しかし蛇の様な物は彼(?)の影に入った。そして俺も同様に、影に入られた。

「!!しまっ・・・!!」「グッ・・・貴様・・・」

「闇の底までご案内しよう・・・。地獄の果てまで朽ち果てろ!!」

術の対応の仕方が分からない!! それは紅月同様でもあり、俺ら2人は更に首を絞められる。ヤバイ、早く対応しないと死んでしまう。考えろ、考えろ・・・。

(闇には光を・・・彼が自らそう言っていたじゃないか)

そう考えたら、直ぐに行動に出した。

『ラントニングクルーゼ!!』

俺が術を唱えると、苦しさはさほど感じなくなった。ウォイスの顔を見ても、彼は相当イラついている様だ。

紅月もこの術には何とか対応出来た。しかし、紅月も疑問に思っているだろう。

「・・・流石にバレやすかったか」

「畜生、まだ襲い掛かってくるのか。流石、永遠の魔導師だな」

俺がそうやって賞賛している間に攻撃を仕掛けてみる事にした。

「正直覚醒した俺を舐めるなよ?冗談抜きで強いんだからな。ーまぁ、死にはしないだろうけどさ、不老不死だから。・・・蝋燭種火(ランタンシードフレア)、行け!!」一応言っておくが、『ろうそくたねび』と書いてそう読む。

「貴様なんかに倒されてたまるか・・・ストリクトフレム!!

俺が放った種は燃えて、大勢の鳥がウォイスの元へ行く。紅月が放った火は地面のちょっとした隙間から一気に火が燃え上がる。

「弱い、弱すぎる・・・第一火は水が弱点だ・・・マリンコールドフリーズー凍えろ」

そう言ったその瞬間、その鳥は、その火はパタリと消えた。その代わりだろうか。鳥だったと思われるモノが、火だったと思われるモノが、氷に一瞬で変わった。俺はそれを利用した。

「ーこれなら操れる・・・サイコキネシス!!当たれッ!!」

ウォイスは動こうともしない。直撃だ、と思ったその矢先。その氷は粒になり、水になり、蒸発して消えた。何故か?ウォイスの周りには正二十面体と思われる石(?)が囲まれていた。

「・・・ダイヤモンドガードか」

「成程。咄嗟に思いついたとはいえ、対応が少し遅れた事自体、凄い事だな・・・。お前の力、見くびってたな」

ウォイスはそう言って、服についたホコリなどを軽く祓った。流石に紅月も疑問に浮かべている筈だ。俺も疑問を知らずにはいられない。

「・・・何故貴様がレヴィアーデンの魔術を扱える?お前自身言っていた筈だ、『この国の魔術は不可解な点が多すぎて自身でも一部しか唱えられない』ってさ」

「ー悪いが、紅月と同意見だ。この術は唱えられる者は誰も居ない、そう言ったのだろ?」

紅月と俺が抱いた疑問を素直に言った。すると彼はどんな反応したと思うか?答えは簡単である、悪意混じりの笑顔で軽く嘲笑う様に軽く残酷に言った。

『お前ら何かに分からないだろうな、俺が創った魔術なんてさ』

「創った・・・?」

「フフ、まあそうだよな。いいや、教えてやるよ。魔術の創生とやらをー」

 

(・・・!?消えた?)

ちょっと目を離した隙にウォイスが見当たらなくなった。

《忠告しておくが、攻撃してこの術を解こうとすれば一瞬にして貴様らを殺めてしまうぞ?》

声が脳に響き渡る。間違い無い、これはウォイスの幻術だ。

「ー卑怯な手を使いやがって・・・」

しかしこの術の解ける術も無い。ここは素直に忠告通りに従った方が良いだろう。

***********

ウォイス ???

 

何も無い世界。此処には悲しみと憎しみで満たしていた。

悲しい世界であろう地球(ここ)は俺の中では、泣いていた気がした。

そんな中で見つけた一輪の花。取ってみるとその花は枯れてしまった。

何時からか彼は言っていた。「花は朽ちていくから美しい」と。

では朽ちていかない花はどうなのだ?

その花は美しくも無く、誰からも愛されないのか?

それが俺なら、矛盾するじゃないか。

***********

ソニック ロストタワー頂上

 

「・・・シルバーと紅月が動かなくなった・・・?」

「ーお前、見ていたのか」

「ゲッ!!」

確かに3秒前にはシルバーと紅月の目の前にいた彼が今は俺の目の前にいた。

「ウォイス、お前奴らに何をしたんだ?」

「何、心配は不必要だ・・・封印するにはあえてこうした方が良いからな」

「封印する・・・?それは一体」

「紅月を・・・人柱の2人に分けて封印する」

「ーもう閉ざしてしまった扉なのにか?」

「嘘付いていたのだ。実はあの扉は『秘密の魔術』を扱える者は吸い込む力を再び得られる。・・・発狂した様に見せかけただけだ、安心しろ」

ウォイス曰くあの行動全て演技だったそうだ。完全に怒り狂っている様に見せかけ、落ち着かせていたらしい。凄いすぎる、俺達が考えた考えた内容全てが演技にあったとは・・・。完全に騙された。

「シルバーが得たあの力で、紅月を封じる・・・という訳か」

「お前鋭いな、そうだ、あの力は強力すぎるぞ・・・何しろ彼は『力加減』を操れるのだからな」

「そんな~。力加減だけでそこまで決まる訳が「人間の行動しているのは8分の1しか使えてない事を知らないのか?」

「・・・え!?8分の1しか使ってないのか?」

「事実かは不明だがな。だが、それが本当だとして、『あれ』が8分の1しか過ぎなかったら、残りの8分の7はどうした、そうなる筈だろう?」

「まぁ、そうだが。・・・そう考えたら相当凄くないか、その力?」

「ー力加減を自由に調整出来る能力を俺は『覚醒を操る能力』と言っている。一時的だが、強力すぎる力を発動出来る能力・・・俺ですら対応しきれないだろう・・・さて、俺はそろそろ封印術を掛ける必要がある・・・見ていてくれ」

「あ・・・ああ」

ウォイスが起き上がると、紅月の目の前に立った。そして幻術を見ているシルバーを左手に、紅月を右手で両者の胸辺を触った。そして彼は目を閉じて、理解しがたい言葉を発し始める。シルバーと紅月の顔は唸っている様にも見える。

「ーシルバーもよくやれるよな、それも覚醒の力なのか?」

俺が何となくそう言うと、紅月の肉体が白くなっていくのが見えた。そして、彼(?)は光の魂となり、シルバーとシャドウの胸元の人柱の印に入っていった。ウォイスの顔はとても疲労している様にも見えた。

「・・・大丈夫か?」

「ああ、大丈夫だ。ー全員を救い出せるくらいの力はあるだろうな。今の状態で戦うのは少しキツイが」

これをキツイと言うお前も相当だな。どれだけ魔力を使ったのだろうか・・・。ただ彼の量は半端無い。そのキツイ発言でも量は普通のメイジ辺あっても不思議ではない。

「ー帰るぞ」

ウォイスは何も見たくないとでも言いたげの様子。どう見ても異論は認めないとしか言ってないだろう、これは。背中を向けていたので詳しくは知らないが、おそらく泣いているのだろう。「どうして俺はこんな事をしなければならないのだ?」と小さく呟いたのが聞こえた。

耳打ちしてみる。成功だ。彼は

「ー王・・・申し訳ございません・・・」

と言っていた。その声は震えている様にも見える。そう、怯えている様な・・・。

***********

ー終わらないでよ、ねえ。

もう幻想も夢も希望も無くなってしまったの?

永遠を描く貴方も消えてしまったの?

まだ、残っている光があるじゃないの?

その光を自ら崩す事はしないで欲しいな。

 

光は薄れて消えていくのがわかるんだ。

だから嫌なんだ、また1人にしないで欲しいんだ。

1人は怖くて恐ろしい事を俺が一番知っている。

トラウマに囚われたく無い。

ー『孤独』は嫌だよ・・・『光』が欲しいよ・・・

***********

シルバー 戯言の森

「!!」

助けを求めている声が耳を突き刺したその時に俺は目を覚めた。

「シルバー、無事か?」

「あ・・・ああ」

夢・・・では無い。あれは心の底を表している様な・・・。ならその助けの声は?

浮かれている俺を見てソニックは疑問を投げた。

「ーシルバー、何か見たのか?」

「・・・ソニック、実はな」

俺は話した。2人の人物が脳内で語りかけた事、そして1人の人物が身体をボロボロにして冷たく助けを求めた事を・・・。

「お前もその夢を見たのか」

「え?お前もか?」

「ああ、俺の場合は身体がボロボロではない代わりに、手錠と足枷がしてあったが。内容も似ている」

「ーじゃあ、それは偶然とは思えないな。誰かが見せた、そう思った方が良いな」

「そう、だな。じゃあ、それを見せた人物は、紅月なんだろうか・・・?」

何かを言おうとすると、俺は口を塞いだ。理由は簡単だ、ウォイスが起きた事に気がついたからだ。

「・・・ようやく目覚めたか。大丈夫か?」

「ああ、何とか」

(ー俺達が見ていた事は3人の秘密にしといた方が良いな)

俺がこっそりと彼らの脳裏に声を掛けてみた。すると彼らは心の声で「ああ」と言ったのが俺の耳に聞こえた。本当に読心術は使えるな。

シャドウやシアンも起きていた。傷付いて筈の彼らはウォイスが回復魔術を唱えたのだろう、怪我はしていなかった。同様に俺達も怪我が治っている事に気がついた。ウォイスは何も言わず、ただただ赤く輝く月を見ていた。背を向いているのは、泣いているのを隠す為なのだろうか。

「ー大丈夫か、ウォイス」

俺はそう言っても彼は返答しなかった。何も言わず、眉一つとも動かない。

「ほっとけ」と言っているシャドウの意見も聞きたいが、残念ながら俺は無視は出来なかった。声が出していない様にしか見えないが、俺は脳裏に声を掛けていた。何故魔力によるテレパシーを使わなかったか。それは盗み聞きを防ぐ為である。シャドウ・ソニックだけなら全く聞こえないかもしれないが、此処にはアーチメイジのシアンがいる。それに今宵は満月。回復しており、偶然少々聞けて問い詰められるのも困る。

『ーシャオンがどうかしたのか』

『・・・彼は、あの子は・・・』

『?』

『ーあの子は、幼い頃から奇跡を起こしてきた。まだ死んでない筈』

『・・・生きていると信じたいさ。だが』

『分かっている・・・分かっているよ。幻想も、夢も、希望も何も無い』

『そんな酷い事、言わないでよ・・・ウォイス』

『もうこれを何度光景を見たのだろう・・・。目の前で消えないで欲しいのに・・・どうして?』

『俺が言える義理では無いと思うが、負の感情で満たさないで』

『分かっているんだ。ー王の令を守れなかったのは、これが初めてかな・・・俺が自ら壊してしまったんだ・・・俺が、全てヲ・・・?』

『ウォイス!!自分の闇には囚われるな!!』

そして俺はウォイスの頬を直接手で叩いた。

「ーっ」

「確かに、失った時の悲しみは大きいだろうさ!!実際、俺も何度もそれを経験した!!友達が、仲間が居なくなるのを何度も見てきたさ!!でも、でもっ・・・!!」

「・・・シルバー?」

『誰もが泣いて憎しんで倒して欲しいなんて誰もが願ってなんかいない!!殺して心の底で笑う人など、最初は決して無い!!純情であった人が汚される、それがとても辛い事だと分かってくれよ!!』

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

ウォイスは何も言わなかった。生きているかすら分からないくらい重度の放心状態だった。全く動じない。動かない。本当に生きているのだろうか?

***********

ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・

 

もしもこの手で受け入れる翼が無いのなら

俺の全てを、君の手で

ー『全て』を壊してよ・・・・・。

 

 覚醒した声を 俺は覚えているから。

***********

??? ???

「ー俺、夢を見たんだ」

「何をだ?」

彼は夢を見た、そう言って私の横へ座る。

「・・・城、多分歴史豊かな城の庭園で、真っ赤に染まった花が咲いていたんだ」

「ー意図が掴めないのだが?」

「そして・・・ね。真紅に染まった雫が流れてきて、他の人の悲鳴が聞こえたんだ」

「・・・?」

「つまり・・・これは『異変』を予言したんだ」

「お前が・・・?どうして」

「知らない。でも、これは間違い無く予言。時も見えたんだ。そう、丁度1世の堺目に起こる・・・。そしてその悲鳴の中に・・・彼らがいた」

「彼ら、か。何故それを俺に?」

「ーどうしても君にだけは知らせたかった。何故か知らない」

「何となく、か」

「うん。何故、俺がそんな夢を見たんだろう?彼らが知ってそうな感じは全くしなかったんだ。隠れているとか、そういうのを関係無しに」

「そうか・・・。なら、答えは1つだな」

「・・・貴方が自ら俺が見た事全て教えてあげて。ー俺が狙われたら、元も子も無いからね」

「分かった。・・・彼は?」

「ーああ。呼んでくる」

それからしばらくして彼の代わりに『彼』がやってきた。条件として、彼がこの話を聞き付けない事を約束して。

「ーお呼びでしょうか?ソニック様」

「守ってくれ。・・・必ず、彼を、助けてくれ」

「?何故彼を「彼が、お前が全てを変える力があるんだ、その異変を」

「ー承知しました。必ずや、その役目を果たしましょう。・・・失敗しても私は知りませんが」

「最期になれば良いんだ。必ず、俺が守ってあげるからさ。ー死霊だけどさ」

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英雄歴100年

シルバー とある空港

 

「せーのっ、ただいま~」

ノリで言ってみたかっただけである。此処は何となく落ち着く。やっぱり長年いた所は落ち着く。1年くらい此処に来てなかったのだから。まあ、この後は多分、俺を巡る戦いに巻き込まれるのだろうけれど。帰国直前に俺はあらかじめ現状を見ておいた。また、シルフィが俺に様々な指導を受けて貰ったのだ、抜かりはない筈だ。

(さて、帰ったらまずはエメラルドの確認でもしておいた方が良いかもな。あ、でもシルフィが数を教えていたから問題無いか)

俺は様々な事を考えている時、異名な音がした。そう、爆発音らしき音だ。

「ー紅月の奴らか、こんな事する奴は」

何て事を言っていたら、その手下と思われる人物が受付にいた。受付の人は突然の出来事に対応出来ず、アセアセと対応している。

「エメラルドは何処だ?」

「ヘ?」

カオスエメラルドは何処だ!!此処の何処かにあるのは分かっている!!」

ハイハーイ、俺がそのエメラルドを持ってますよー。と言いたくなったが、流石にそれはヤバイので言わないでおこう。背中が少々ゾクゾクする。

「ー?カオス・・・エメラルドって?」

「さっさと応えろ!!さもなくばー「エメラルドって言うのはコレの事?」」

ノリで軽くそう言う。受付人が可哀想である、無実の人物を殺されるのは勘弁だ。

「!!何故貴様が・・・まさかお前、守護者か?」

「?シュゴシャ? これ、俺が散歩していた時に偶然見つけたから俺の物にしただけだよ?そもそもカオスエメラルドって何?」

メチャクチャ大きな嘘です、本当に。俺が守護者であるなんて言ったもぶっちゃけ信じなさそうだが。明らかに旅行から帰ってきた雰囲気満々である俺自身、一般人とほぼ同化している。アシュアという別名を名乗っている時は除いて。

 「ー!!アシュア様ッ!!サ・・・・サインください!!」

て、敵が俺のファンだっただと・・・。動揺を隠しきれないのだが。

「帰国後早速サイン会か・・・。ーハイ」

「やった~♥ アシュア様のサイン貰っちゃったよ~♥」

「・・・アシュアってそんなに有名なのか?」

「え!?知らないんですか!?アシュア様はあの超有名作品『天空の招待状(ガイドブック)』の人ですよ!?此処にいるって事は・・・もしかして新作のネタ探しの帰り!!?」

「ー命令する、殺「それは絶対出来ません!!大ファンである人を殺すなんてとても出来ませんよ~♥ むしろ殺すのなら、許しませんよ」

「ーっ、撤退するぞ」

「了解、アシュア様~、また会えたら会いましょう~♥」

断言しよう、いずれ会う。ーさて、俺は後であいつらの記憶処理をする必要がある。どうするか。

「記憶魔術覚醒・・・『ロストメモリアル』・・・・」

覚醒させた状態で、彼らは『俺がカオスエメラルドを持っていた状態』を記憶処理させた。基本記憶操作は眠らせる、気絶させるなりするのだが、魔術そのものを覚醒させ、歩きながらでも違和感全く無い状態にした。

「フフフ、お帰りなさい、アシュア」

「シルフィ・・・」

すれ違う様にシルフィがやってきた。その周りには報道陣やファンが集まっていた。

「キャー!!アシュア様だわ!!」

「嘘!?どこどこ!?」

評判が評判を呼び、最終的には空港すら出られなさそうなムードになっていた。

「ゲッ・・・。こりゃ酷いな。隠れるぞ、シルフィ、ディフィア!!」

「?ディフィア??」

「とりあえず、今はこの事態を抑える事から考えろ!!」

「は、ハイ!!」

俺達3人は沢山の人達から大急ぎで逃げた。やれやれ、事件の干渉の最初がコレだと先が思いやられるな。

 

ーでも、面白そうだけどさ。

 

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 続く

next -7章 1/2 神秘たる精霊~Sacred Prince

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7000字超えだと?5000字を目安に書いたらこれである。久々の前編・後編。

様々な事件が沢山続き、遂には心髄にまで及んで行って、己の中でそれを重く、鋭く貫くのだ。 嘘だらけの世界で信じる事が出来るのは、己自身ただ一人。痛い思いとかしても良いんだ、嘘をつくのはもうこれで最後にしよう。だからお願い。早ク逃ゲテ。