夢想の闇夜 第3幕 1章 少女鈴吹雪~to know the past (しょうじょりんすいせつ)
1つの過去を思い描く。
私の過去は結構古い。というのも私は元々『人間』では無かった。寿命も当然長かったから、その分過去を多く持っているんだ。
君からすれば大した事では無いかもしれないけれどね。
そう、私がどうして『人間』になったか。そこら辺説明しないといけないね。君達にはそんな事全く言って無かったもんね。人間になった所は結構先の出来事だけど、そこまでの経緯に関しては、9000万年も前である。
面白い話であるよね、つまり今は『人間』じゃないんだよ。でも私は人間になった後、君達の時代にやってきたんだ。もう1人の私も目的があって過去に来たよ。
私の目的、それは『四精霊達を再び目覚めさせる事』である。いずれ起こるであろう事件に備える為に。彼は過去の旅行の際に2人会わせる事に成功した。1人目はウォイス・・・彼は厳密には精霊では無い。ただ、私達の種族に関連する人物だ。2人目はノーム・・・彼は本当の四精霊。私と同じ、精霊である。
残り3人・・・ウンディーネ、エルフ、サラマンダーである。そう思った矢先、彼は喜んでいた。何故ならそれを探している3人の1人、ウンディーネに会う事が出来たからである。
100年間、彼の役目を手伝う事をしているのと同時に、残りの人を探している。
遅くなっても良いんだ。探して、見つかればそれで良い。しかし、もうそこまで時間は無い様だ。
早く見つけなければー。『悪意の種』の開花が訪れてしまう前に・・・・・・・。
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魔導歴10000年
「お前は全てを忘れているのか?」
「ー忘れた訳では無い。・・・だが俺はそれが嫌だから覚えたく無いのだ」
「だがな、お前も分かっているだろう?彼女が再び悪事を招くと」
「・・・あの人の前にいると、気分が悪くなる・・・そう、『殺したくなる』程、な」
「お前、怖いぞ」
「すまないな。・・・だが、母上はおそらく『此処もろとも』崩壊させる事を望むだろうな・・・あるいは」
「ーあるいは?」
「『悪意の種が大きい人を増やして世界征服』。ありえそうな話だ」
「無い様にも見えないが・・・貴様は一体何を望むのだ」
「そうだな・・・大きい人を守らなければならないな。ー自然に出来てしまった者は。人工的に作られた人は人ではない。そうだろう?」
「無理矢理大きくした奴は、その元凶を潰せば良い、そういう事だな?」
「そうだ・・・神に逆らうとは、作って貰った恩はどうだった?そんな事になるだろう」
「・・・一応忠告しておくが無実の人間を殺すのは人間でも罪になるぞ?お前は『殺人罪』の容疑が実は掛かっているのだぞ?」
「!?殺人罪・・・何故」
「ー悪いが、そんなデータ何処にも無い。・・・おそらくは『ダークリシア』の連中の行った行為をお前に着せたのだろうな」
「・・・それって何時頃だ?」
「ー1ヶ月前の爆破事故だ。レヴィカルト地方のな」
「1ヶ月前・・・俺は確かアルファルット地方を散歩していた。ー別の大陸だ」
「しかしどちらも証拠が無い。どうすれば・・・」
「・・・・・・・あまりこんな手は使いたくなかったが、やるしか無いか」
「・・・?何処に行く?」
「ー本来、誰にも行かせないが・・・ついて来い」
空間の狭間
「此処は?」
「ー今まで誰も教えて無かった」
「多いな・・・これ何日分?」
「365×10000・・つまり3650000日(365万)分」
「これを見れば歴史もまる分かり、か」
「・・・この事は誰にも言うなよ?」
「ああ。分かっている・・・」
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魔導歴1000万年
シルフィード ???
――・・・。
「目覚めたか?」
「ーハイ、ネプトゥヌス様。成功した様です」
「そう・・・それは良かった」
そう言うと、ネプトゥヌスと呼ばれた男性がほっとした様な顔を浮かべた。
「連続で生まれさせるとは、俺も相当苦労人だ」
「ありゃりゃ・・・ネプトゥヌス様、可愛らしい女の子ですよ」
「精霊に性別は無いと思うが・・・まあ女性らしい体格だな」
「・・・さてはハーレム状態に「違う!!偶然そうなっただけだ!!」」
そう言って1人(?)の女性とネプトゥヌスと呼ばれた男性が茶番事を繰り広げる。目覚めた事に気がついたネプトゥヌスは、私を見てきた。
「初めまして。そして・・・おめでとう。俺はネプトゥヌスだ」
「ー?ネプ・・・ト・・・?」
「ネプトゥヌスだ。んでこっちがエルフ・・・エルフィだ」
「よろしくね、シルフィード」
「・・・エルフ・・・ネプトゥヌス・・・」
「流石に生まれた当時はそこまで覚えにくいか。子供と同じだな・・・まあ、よろしく」
ネプトゥヌスはそう言って、手を握った。とても温かった。
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ネプトゥヌス 天空庭園
「ーシルフを誕生させたのはいいが・・・」
「属性が気になる、と?」
「ああ。気配として風属性だが、念のためだ」
「シルフがこの子なら、きっと『あの事』が出来るだろうね」
「お前も出来なくは無いぞ。エルフィ」
「最低でも今の私は出来ませんって。貴方の方こそ、出来るのでしょ?」
「・・・・・・出来なく無いが、大変な事になるぞ」
俺はそう言って大空を見上げた。空は蒼く、澄んでいる。何気にこの景色は嫌いでは無かった。この庭園は神様の庭園だ。私、ネプトゥヌスもその神の一人であり、役目を果たしている訳である。そして隣にいるのがエルフ・・・俺はエルフィと呼んでいるが。彼女(女性らしいのでそうする)は俺が生み出した精霊だ。
「シルフ・・・良かったな、待望の妹じゃないか」
「まあ、そう。欲しかったんだ」
「精霊に姉妹・兄弟なんて、結構珍しい方なのだぞ?丁重に扱われるな」
「ウフフ、そうですねネプトゥヌス様。さて、そろそろ戻りましょう」
「そうだな、ランディアの所に行くか」
ネプトゥヌスは元々は神になった際に貰ったいわば二つ名である。
神世界では人間の名前は基本使わない。
というのも、この世界の者は基本『創造』が出来る種族だ。
人間は『創造』が出来ない。この世界で人間の名を呼ぶのは『外道』なのだ。
しかし彼は人間の名前を使う時が度々あった。
何故ならば、彼の使命は『人間界』に関連するからである。
人間界に行く神は大体は『元人間』である。
彼もまたその1人である。
そして精霊というのは『元人間』が生み出した霊である。
ただし肉体は大体は持つ。そして羽があり、種族によって違うのが特徴である。
シルフとエルフは後の『シルフ族』に当たる。
シルフ族、ウンディ族、サラマン族、ノーム族。四精霊が出来た際に付けられた種族の名前だ。シルフ族の羽はトンボの様な形をしているのと、目の色が基本青系であるのが特徴である。
エルフは目は水色であり、シルフは瑠璃色をしている。これは本人の目の色が生粋の蒼色だった事からだろう。
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シルフィという名前は人間になってからの名前だ。
それまでは『シルフ』と呼ばれていた。シルフィードは長いから、彼女本人が言っていた。
シルバーは精霊や妖怪など、そういう類を信じるタイプだった。初対面であった時には既にある程度種類を調べていたらしい。結果としてシルフィを理解した順番は一番最初だった。彼は薄々ではあるが気がついていたらしい。彼女が『普通の人間』ではない事に。当然、超能力・未来人であるのを差し引いて考えての結果である。自分が特殊だった。それもあり、彼は他の人より気がついている。
「もしかしたら俺以上に不思議な人物かも」
そう言った事がある程である。彼がそう言ったのだから、そうなのだろう。
そういった意味ではシルバーは些細な変化に気がつきやすいのだろう。
未来予知こそは約に立ちづらいが、能力上現実の変化は理解しやすいのだろう。
シルフィも些細な変化に気がつくのはその為である。
様々な景色の中、シルバーはシルフィに対してこんな疑問を抱いたのだそうだ。
「俺が死んだらお前も死ぬのだろう?なら、精霊は寿命が短くなるだろ」と。
そう、表世界と裏世界の生と死は一緒である。彼女はこう言った。
「そしたら、別の肉体を得て再び復活する」と。
彼女は言う。「輪廻転生を繰り返すのだけども、私の場合はその経緯はとても早いらしいの。私もそこまで詳しく無いのだけれども、覚えているのは『自分が精霊である事』と『会った人の記憶』しか無い。」
つまり勉強や生活は0の状態から再スタートとなる。成長もだ。
「精霊の人は以前に会った精霊なら、別の肉体に移動しても理解出来るわ。だから会った事のある精霊は別人でもその人なら感知出来る。嗚呼、何て素晴らしい能力なのでしょう!!」
シルフィがそう言って興奮していたのを、シルバーはハッキリ覚えているだろう。
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英雄歴100年
シルバー シルバーの家
「で、説明をお願いしていいかしら?」
シルフィは正座の状態で座っている。一方ディフィアは足を伸ばして座っている。足元を見ても美人である。シルフィとは違う意味で美人だ。
「えーと、彼女は『ディフィア・ランセンス』。ソルディー地方の『ヴェルディア』という所から来た人でソルディー地方では有名だな。ヴェルディアに訪れた時に偶然会う事に成功して。んで不思議な気配するから四精霊について話題に挙げたら当たりだったという訳だ」
とても省略しているが、実際に文にするとこうなる。
英雄歴100年ー厳密に言えば異変が起こる3ヶ月前になる。俺はアルファルット地方の奥・・・つまりクロノス都市を通り越した先を歩いていた。取材する為にも、精霊を探す為にも、紅月の攻撃から身を守る為にも。
そして流れ着いたのがヴェルディアである。此処も俺の評判が届いている地域で、一部の人は歩くだけでも気づける程だ。そんな矢先にいたのが彼女だ。
彼女は俺の評判を知っていたので、俺が接触する前に接触してきた。長い事精霊と共に生活した事がある俺だからこそ分かる事なのだが、彼女は彼女と似た様な気配を感じた。何となく『普通の人』では無いと思った俺は試しに四精霊の話をしてみた。予想通り、彼女は特殊な関心を持っていた。そして間違い無いだろうと思った俺は思い切り告白した。「その四精霊の内の1人に会っている」と。すると彼女は俺の告白を信じてくれた。そして一緒について来て欲しい、そう言って彼女はそれを了承、今に至る訳である。
「まあ気配からしても何となくそんな感じがしたけど、当たりだったみたいだな」
「うん!!久しぶり、ウンディーネ!!」
「やはり貴方も流れていたのね・・・シルフィード」
「あ、ディフィア。一応紹介はしておくよ。彼女はシルフィ・ヴィーナス。まあ分かる通りシルフの生まれ変わりだ。俺と姿は似ている理由は「裏世界の住民だから、かしら?」」
「流石~!!」
「キャッ・・・よしなさい、シルフィ!!」
「あぁ~ディーネの香りだぁ~」
「あ・・・おい、んで再開を喜ぶのは良いとしてさ・・・紅月の事件、知っているか?」
そう言うと、ディフィアは俺を見てきた。今までの陽気な気配は見当たらず、真剣な眼差しを俺は見ていた。
「確か100年前に封印だかして居なくなった子だったよね?」
「・・・ああ、元凶は封印されている・・・人柱の中でな」
「ー人柱ねぇ・・・。それが一体?」
「結論を言ってしまえば、俺がその人柱だ。つまり俺が死んでしまうと世界に闇が再び訪れてしまう。・・・いや、守れとは言っていないぜ?俺が言うのも何だが俺は強いから、実際ソニックと互角に戦えるんだからそういう心配はしなくても良いんだが。ただ私が言っているのは『それに比例して起こる出来事』に助けを求めているんだ」
「それは詳しく言うと?」
「悪いな、そこいらはシルフィに聞いてくれ」
俺はシルフィに説明を要求した。これは彼女の目的を再確認する為でもある。
「そうだな・・・まず、此処の世界はどのみち大変な事になっているわ、それは分かる?」
「ええ。紅月が異変を起こしているとか」
「そうよ。此処だけの話だけど、どうも異変の時期や結界が緩む時期、後は選ばれし者が動く時期とね、言わば物事の『交点』なのよ。100年前の事件や私達が襲われた事件等の結果が基本関わっているわ。ーそれはウォイスも理解しきっているわ。後、ウォイスはこの事件で一連の事件のケリを付けようとしているわ」
「一連・・・とは?」
「100年前の事件とその周辺もそうだし、紅月の因縁関係もそれに当たるわね。とりあえず、彼は『決着』を付けようと試みているみたい」
「・・・まあ、100年前のあの時の様子を見てもそんな気配はするな。ー問題はその『一連』だと言いたいんだろ、シルフィ?」
「・・・・・・そうだね。ディーネも分かると思うけれど、これだけじゃ私が干渉する意味も無いし、フォルカ等が動くとは思えない。まだあると思うのよ・・・そう、『まだ誰にも教えてない』過去か何かの決着も兼ねているんじゃないかなと」
「んで、私達はその決着に関連している。つまり、精霊時代の出来事も・・・?」
「そういう事になるわね」
「・・・いや、待て。紅月は100年前辺に封印したし、精霊時代って確か1万年以上前だろ?何故それが関連するんだ?」
「うーん、私も詳しくは分からないけれど・・・・・・ただ、1つ言える事があるわ」
「・・・?」
「ー今回の事件、おそらくソニックが死んだあの異変よりももっと残酷になるわ。神様が動く程だからね。守護者・所有者・選ばれし者・破壊者の行動が同時進行するなんて滅多に無いでしょ?だからね、シルバー。貴方はとても重要な立場に立っているわ。・・・・・・この世界を揺るがす程にね。貴方は分かっていると思うけれど、破壊者が君の呪縛を解かしたらそれで御終いだと思うよ?」
「・・・・・・・・・・だが、おそらくは・・・・・・・・」
「ええ、遅かれ早かれ結界は今年か来年に崩れるでしょうね。理由はどうであれ。自主的に解かしたり、殺されたりしてね。気づかれるのも時間の問題だわ」
「ーシャドウも行方不明だし、スペードも殺されてしまっている・・・もう現時点で大変な事になってる・・・・・・急いで封印するしか」
「封印してもそれの繰り返し。ー言っては悪いでしょうけど、自分・味方以外の敵全て排除しないとこの対立はおそらく続くわ。そうでも無かったら100年のも間、対立関係を保たないでしょ?」
「では、この後俺はどうすれば良い?」
「・・・あまりやりたくないけれど・・・・・・『紅月とその仲間達全員皆殺し』ぐらいしか・・・・・・」
「ーウォイスには荷が重すぎるから、俺が代わりにそれをやれ・・・・・・無理だよ、とてもじゃないけど・・・・・・」
「貴方ならそう言うと思ったわ。ー正直な所、私達も知らないの。予知があればね何か役立てないと思うの」
「・・・・・朱く光輝く月が照らし出す時、羽を伸ばした天使が舞い降りて、全てを癒すだろう」
「ーえ?」
彼はさりげなく何かを発した。まるで何かをこっそり教えている様に。この時は理解が出来なかったけれど、後になってはそれが何か分かった。
「出かけてくる」
「何処に出かけていくの?」
「アポトスだ。無事かどうか確認してくる」
「ロセプタル教会の事?そうね、教会も建設しないとね」
「シルフィ、どういう事?」
「ーああ、後で説明するわ。シルバー、待っているのでしょ?行ってあげなさいな」
シルバーは微笑した後、背中を向け此処を後にした。
「そういえば貴方の過去話はまだだったわね」
「ディーネ面倒な所まで覚えるんだね・・・良いよ。そうだな・・・・」
私はディーネに四精霊になる前の出来事を話した。
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続く
next 2章 Larmes de la lune
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