夢想の針鼠の夢跡

物語に隠されたもう1つの物語 『過ち』を知る物語

日記の六の巻~The eternal curse

俺はアシュアって呼ばれていた。この世界で私の名を知らぬ者は殆どいなかった。理由は、私が作ったモノが非常に人気があるからである。まあ、小説を何気に作ったのが『何故か』売れたというだけなのだが。大体若い人が読んでくれているみたいだが、俺としては『辛い気持ち』を薄めさせようとしている。この世界は悲しみばかりだ。だから、少しでも良くなりたかった。少しでも幸せになれるのなら、それで良かった。

だが、俺に強敵がいた。そう、友人のスペードだ。彼は文字を習うのを怠った為に、文字が読めないのだ。小説は『文字を知っている事を前提』で作っているのは当然だろう。わざわざ最初に『文字』を出す人はいないだろう。強いて言うのなら、難しい漢字や単語、用語に送り仮名や説明を入れるくらいだ。

以前、作っている最中の小説を彼に見せた事がある。その際何故か泣き出して、「俺、文字読めねぇんだよ・・・」と言った。

「それ、大問題だろ。どうやって伝達鳩の手紙を読んでるんだよ、俺がいない時にさ」

と、俺が発言した程であるのだ、大問題だ。特に極秘の情報が書かれたモノだったら、見せても情報として伝わってこないのだから、守護者としてどうかと思った事がある。因みに元王女で現在はスペードの奥さんになっているルシアは、読める。流石に王宮育ちの人は文字を習わされるのだろう。代弁してくれているのだろうか、それともスペードにも分かる様に、彼だけ手紙を絵で表しているのだろうか・・・等と考えると笑えてくる。だが、教える気はしなかった。理由は、彼が自由気ままな暮らしを望む事を知っているからだ。実際俺もかなり自由人だから、人の事は言えないが。

そもそも俺が特殊なのだ。守護者のグループに入っている中で、俺みたいな人は多分何処にもいない。それ以前に頻繁に海外に行っている時点(それが仕事関係のモノでも)で、珍しい筈だ。それを見て誰もそれを言わないのは、多分俺が自由に行動するタイプのアレだからだろうか。

まあ、基本それは誰にも言わないのだが。

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かつて、此処はアポトスという場所があった。神聖なる教会では、カオスエメラルドの展覧会も行われていた。実際俺はそれを見に行っていた。プライベートで、だが。

 

「~♪」

さりげなく、楽しみにしていた。多分守護者のソシアもいるだろう、そう思ったからだ。楽しみにしていたので、俺は教会に寄ってみる事にした。

「あ、アシュアさん。お元気にしてました?」

そこにいたのはソシアではなく、位が比較的上の修道女、コアルだった。

「コアル、その呼び方は止めてくれ。・・・ところで、ソシアは?」

「?ああ、彼女でしたら、今お出かけの最中ですよ」

「そうかぁ~。残念。あ、そうだ。ソシア来たら、知らせてくれないか?」

「あ、ハイ。分かりました。その、シルバーさんは何処に行くのです?」

「とりあえず、広場に行って昼食食べようかなーって思っていたけれど」

「そう、ですか。一応ソシア様からご忠告がある様ですので」

「?」

「そのー。『もしかしたら近い内に此処が荒れる』とか何とか。気をつけてくださいね」

「ああ、分かっているぜ。それじゃ、行ってくるよ」

「行ってらっしゃいませ」

いなかった事なので、とりあえず、昼食取ってから行こうと思った。歩いている最中、俺は少々不審な気配がしたのに気がついた。何だろ、この後絶対何か起こる・・・と。何となくそんな気がした。

歩いている最中、ドンと誰かとぶつかる音がした。どうやら相手は前を見ず、走っていたらしく、俺が倒れる所を見られても、ただスルーするばかりであった。

「イテテ・・・。あ、おい!!待てよ!!落し物がー」

相手は俺の声も聞こえず、ただ、走っていった。明らかに可笑しいと思った。ただ、相手の特徴は分かっているので、交番に届ければ、時期に・・・。

・・・・・・・・・・待て、それは危ないかもしれない。中を軽く見たが、これ・・・。

「・・・爆発物・・・?」

動揺を隠しきれず、ただどうすれば良いか迷った。これを届けても、明らかに不審に思われる。「落し物で」って言っても、信じてくれるかどうかは正直言って、分からない。

「・・・どう壊そうかな」

なんて思っていると、何か破裂音らしき音が聞こえた。点火させたかの様な・・・。

「ー!!何だ!!」

急に四方八方から閃光が放たれた。俺は思わず、目を閉じた。

・・・。

それから約10秒位経った後だろうか。恐怖でどれだけ経ったかは忘れたが。恐る恐る、閉じていた瞳を開けてみる。

「・・・!!何だよ・・・此処・・・・・・廃墟、なのか?」

近くにいた人がいなく、建物が沢山あった筈なのに・・・。下を見ると、近くにいた人らしき死体があった。生死を確認しなくても、理解出来る。これはどう見ても、死んでいる。建物は木材らしきものが多くあり、残ったのは石だけだろう。石でもかなり擦り切れられている。俺の身体を一回全身を見る。俺だけはどうやら無事らしい。しかも、無傷である。

「あのー・・・何があったか話してくれません?」

後ろで女性の声がした。この時点が何が起こったか、そして俺が何をしたか、把握出来た。

「・・・何があったか、俺でも分からない。ただ、これだけは言えるな。ー悲劇だよ、これは・・・・・・。大丈夫か?」

「ハイ。貴方が・・・大きな盾、何ですか?それがあったので助かりました。ありがとうございます」

どうやら、俺の思っていた通りだった。俺はあの時、破裂音がしたその瞬間から、魔術を唱えていた。ー俺が扱う防御魔術の中でもかなり守りが硬い結界魔術を。短く且丈夫であったその結界のお陰で、俺達は無傷でいられた、という訳だ。ただ、この結界魔術はそこまで広範囲に張れない。おそらくこの広場付近で生き残れたのは俺とあの女性だけだろう。ー!!じゃあ、ロセプタル教会は・・・?

「あ、ちょっと!!待ってください!!何処に向かうんですか?」

「ちょっと、教会にな。・・・多分、駄目だろうけれど・・・」

~中間~

やはり、教会は駄目になっていた。殆ど跡が残ってない。ただ、柱は残っていた為、目印程度にはなるだろう。先程ソシアの居所を教えてくれたコアルも、近くに倒れていた。

「駄目、か」

「え、どうすれば良いんです?」

「とりあえず生存者探すしか無いだろうな。・・・ところで、貴方の名前は?」

「えーと、リリアです。リリア・コーフィ」

「そう、か。俺はシルバーだ。よろしくな」

「ハイ。とりあえず、シルバーさん。探しましょう」

「そうだな」

 

結局、あの中にいた中で生き残れていたのは俺とリリアだけであった。死んでいった中には骨だけの人や、臓器が俺達の目線だけで確認出来るくらい皮膚が焼けていた人がいた。ー彼は多分、生きているだろう。

偶然ではあるが、ある意味ソシアが此処に居なくて良かったと思った。もし、いたらどうなっていただろうか。・・・奪われてしまったが、彼女が無事なだけでも十分マシであっただろう。

「最近悲劇が多いな」

俺は廃墟と化したこの街で、そう呟いた。もう、酷すぎて涙も出なかった。ただただ、虚しかった。

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もう、こんな事あっては困る。俺はそう言って、しばらく公の場には出るのを控えた。ーそして、今現在。私を狙う者がいる訳である。それがまた、悲劇に繋がる様な気がして・・・。 もう、犠牲なんて出したくなんて無かったのに。残酷な結末を迎えるのは極力抑えたかった。だからー。

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続く。

様々な事件が沢山続き、遂には心髄にまで及んで行って、己の中でそれを重く、鋭く貫くのだ。 嘘だらけの世界で信じる事が出来るのは、己自身ただ一人。痛い思いとかしても良いんだ、嘘をつくのはもうこれで最後にしよう。だからお願い。早ク逃ゲテ。