夢想の針鼠の夢跡

物語に隠されたもう1つの物語 『過ち』を知る物語

日記ノ九ノ巻~Incursioni dai ribelli

ウォイス、貴様は何を我に求めているのだ?

それが、お前が望むモノならば、何故我を殺めようとしているのだ?

ー解せぬ。我は一体誰であったか、忘れたのか?

・・・・・我は、ウォイスの・・・悪魔の弟子だ・・・・・・。

 

英雄歴0年ー冬

「紅月様、ご報告が」

マインドがそう言うと、資料を持って来てくれた。

「ウォイスらは瑠璃の森で待機中でございます。・・・現在、時雨が其処に向かっていているのですが・・・・・・どうやら罠を仕組まれていたみたいです。ガナールが奇襲攻撃を仕掛けてきた影響で、大幅に遅れている上、時雨の怪我も酷く、行っても殺されるだけだと思われます」

「・・・そうか。時雨に知らせろ、『戻って来い』とな。それにしても・・・ガナール、あの人は一体何者なのだ・・・?」

「それについては、ディアが既に情報を得ています。その資料の中に入っているかと」

そう言われ、我はその資料をパラパラと見た。そこにはガナールの研究資料があった。・・・ん、研究・・・だと・・・・・・??

内容を詳しく読むと、どうやらガナールはウォイス本人が元凶であった天気異変の際に生まれた生命体らしい。・・・だが、正直理解出来ない部分が沢山あった。『精神のみ目覚めた』や『人格を引き裂く』等、今まで触れた事の無い内容が紙一面にズラリと並べてあった。これは別の意味で闇魔術である。この事に我は興奮した。ー是非、ガナールとやらに会ってみたくなったのだ。

「・・・あの、本気なのですか?」

知らない間に顔に出ていた様だ。マインドはボーとこちらを見つめていた。

「会えたら、だが」

「ならば、それは一生出来ない事かと。彼か彼女かは分かりませんが、ガナールはウォイスの従者だとされています。ただ、あの帽子を取った様子を撮られている部分が無い上、口調もその時その時で変わるんですよ・・・、あれでは何処のガナールが同一人物なのか、全く検討がつけません」

「奇襲に成功させるとは・・・策が読まれたか?いや、ウォイスも何喰わぬ顔をしている筈だ、バレる訳が・・・」

 

『ーバレているのは、私の能力でもあるのですよ、ラヌメット』

 

「!!」

我の後ろにいたのは、ガナール張本人だった。最低でも20代に見える彼(彼女?)は、薄く微笑んで、私に歩み寄って来た。

「貴様、どうやって此処を掻い潜ったのだ!!」

「フフ、貴方方は私が潜入していた事すらも気づいて無かったのですか?道理で核とも言うべき場所を守護している人が居なかったのですか。・・・簡単ですよ、『動物』になっていただけです。何でも、貴方方の方に『スコール』って子がいるらしいですね。そしてそのスコールを眠らせて、動物を開放させた後、そのどさくさに紛れて、此処に来た訳ですよ。・・・理解、出来ました?」

そういえば、先程尾行する為の動物らがちらほど散らばっていた。・・・不覚を取られた。今回の潜入は完全に成功された。ー完敗だ。

「散らばっていたのはその為だったか・・・だが、潜入がバレたら、分かるだろう?」

我はそう言ったが、ガナールは何も動じない。ただ、既に半笑いしており、今にも馬鹿にされそうな顔をしていた。

「ーさあ、何の事でしょう?あ、貴方の言う子でしたら、既に倒れてますよ。殺してないのでご安心を。・・・ただし、気絶、してますがね・・・フフ、つまらないね」

そう言うと、我と似た様な朱い目をして、ナイフを取り出した。その目は禁忌の遊びを自由にやりたい、そういう危険な匂いが漂う目をしていた。少しずつその笑顔は狂気の笑顔に変わってくる。そして、一回顔を伏せたかの様に見せかけたその瞬間。

 

ーナイフが我の頬に突き立ててくる・・・・!!

『ねえ、遊び足りないんだ、もう少し遊ばせてよ・・・ねぇ??アハハハ・・・』

そう言うガナールは・・・敵として壊れていた。もう、誰でも良いから、殺したいのだろう。普通の玩具(おもちゃ)は、簡単に壊れてしまうから、我やウォイスの様などの強い奴と殺し合いがしたいのだろう。目的ではなく、自分の至福の為だけに。

丁度良い、面白いから我が直々に遊んでやろうじゃないか・・・当然、殺ス気デ。それに、捕らえられたら色々情報源になるだろう。・・・吐けるかはどうかは正直不明だが。

「・・・丁度良い。我も退屈だったのでな。マインド、我とガナールの邪魔はするな。命令だ」

「承知いたしました」

そう言うとマインドは一歩下がり、顔を伏せた。

「良いのですか?正直、二人で来るかと思ってましたが」

「貴様が勝っても、帰れているかは分からないがな」

「へえ・・・まあ、遊び程度に過ぎないから、殺すのは止めてあげるよ・・・・・・・その代わり、遊び程度で終わらせてね、ウォイス様に伝えずに遊びたいから。」

そう言うと、ナイフを構え始める。会話と間合いを取りながら、この戦闘態勢に至るまでの時間が非常に短い事に少々関心すると、我は同様に構える。

『いざ尋常にー勝負!!』

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続く

様々な事件が沢山続き、遂には心髄にまで及んで行って、己の中でそれを重く、鋭く貫くのだ。 嘘だらけの世界で信じる事が出来るのは、己自身ただ一人。痛い思いとかしても良いんだ、嘘をつくのはもうこれで最後にしよう。だからお願い。早ク逃ゲテ。