Blockade of emotions of the murderous
1 0年
「逃げられたぞ!!追え!!」
獲物の声がこの森に木霊し、冷気が頬に伝っていく。そして連れている軍団を私の横を通り過ぎていく。30秒後には辺はしんと静かになる。
(・・・フフ、まだまだ)
日はまだ昇らない。・・・いや、昇ってもまた彷徨うから絶対に見つからないでしょうけど。ああ、楽しい。
「ーで、後ろに隠れているのは誰?幻術を使って私を殺そうとしたみたいだけど、無駄だよ?存在がダダ漏れだから」
私がそう言って微笑むと、隠れている声が響いた。
「・・・・・・いつから此処にいると気づいた?」
「最初からだよ、気にしないフリをしていれば、あの軍団を引き離せるし、貴方も油断する。そういうの、私得意だもん。直ぐに気づくよ・・・えーと、誰だっけ?」
「敵に対してもそんな雰囲気でいられるのだな、ガナール・・・」
私がそう言うと、相手は少し横に動いた。顔がハッキリ見えた。・・・・・・やはり、殺す気でいるのだろうか、相手の主は。
「冥土の土産に教えてやる・・・私は・・・」
瞬間、炎が私の目の前を通った。・・・相手も本気、らしい。
「殺すつもり?」
「貴様はいつもそうだ、どうしてそんなに余裕だという表情をするのだ・・・?お前は一人、こちらに向かうとは自殺行為と言っても良い筈だ。それなのにも関わらず、処分に困るのだ・・・」
相手は少し冷静さを失っている様にも見えた。ああ、あの行為はあっちにとってダメージだったのだろうな。等と容易に想像出来る。
「ーどうしてだか気になるご様子、なんだね。簡単だよ、皆私の幻術を回避しきれてないだけだよ。教えてあげるよ・・・幻術を上手に扱うとどうなるか・・・・・・代金は貴方の命そのものだけどね・・・!!」
少しだけ笑うと、私はナイフを構えた。相手を倒すつもりで攻撃する訳だ、防御魔術を破壊する位の力で投げる。相手は多少察していた為、構える時間にさほど時間は掛からなかった様だ。相手は投げたナイフをナイフで弾き返した。
「・・・そう簡単に私が倒れるとでも?」
「面白い・・・備えあれば何とやら、という訳なんだね・・・人って面白い」
「ー?何訳の分からない事をー」
「でも、もっと遊びたかったけど、こっちにも用事があるんだよね・・・貴方を殺すのは後にして、『アレ』をどうにかしようかな・・・・・・フフフ!!」
「させるかッ!!」
相手は私の首を狙って襲ってきた。だが、相手は行く直前に壁にぶつかり、そのまま地面に落っこちた。否、その壁は私が唱えたマジック
「冷静を失った時こそ、幻術に掛かる瞬間だよ・・・じゃあね、今度会う時には・・・・・・遊んであげるからね」
そう言うと、私は此処を離れた。相手も追おうとしたが、あの壁に阻まれて前に進めず、壁の破壊の行動を起こしていた。壊れるまでの時間を考えたら、確実に逃げ切れるだろう。
(しかし、ちょっと傷ついちゃったかな)
一番恐れているのは血があっちに一滴流してしまった事である。・・・細胞検査士か何かいたら、自分が何者かバレそうだ。それが、一番恐れている事である。
~中間~
「ウォイス様、終わりました」
ウォイス様は、そこに立っていた。誰もいない、この場所で。
「・・・どうだったか?」
「かなり守りが頑丈でした・・・私だけでは無理がある様です。しかし、『アレ』が何処にあるかは、掴めました。もう一度勢力を上げて攻めれば、『アレ』は再び私達の元へ戻ってくるでしょう」
跪きながら、私は冷淡に言う。質問してきたウォイス様は少し悲しげに言っていた。・・・これが一体何の意味を表すのか、私には分からない。
「ーそうか。・・・良かった、生きてて・・・・・・」
「?・・・しかし、自分も初めてですよ。下手すれば私も彼処で死んでましたね。上手く逃げ切れたのですが、ちょっと腕に傷を負ってしまいました」
そう言いながら、私は袖をめくり、傷を負った所をウォイス様に見せた。回復魔術を唱える暇も無かったものなので、放置していたんだった。
「!!大丈夫か・・・?」
「ええ、大丈夫ですよ・・・少し痛いですが、回復魔術唱えれば直ぐに・・・」
「ちょっと良いか?」
彼は私の傷ついた場所を手で覆い、小声で何かをブツブツ唱え始める。唱え終えるのに3秒弱使った。・・・その術を唱えるのに掛かる時間を考えると、短い方である。
「良いのですか?貴方の魔力の残量もそこまで・・・」
「ああ、大丈夫だ。直ぐに回復する」
確かに、ウォイス様の魔力の回復ペースは早いが・・・。私も回復ペースは早い方なのだから、わざわざ使わなくとも、とは思っていたが、そこまで気にしなくとも大丈夫だろう。私は深く考えなかった。主は私の身の安全を優先にする様だ。
「ーありがとうございます」
「お前が無事ならば良いのだ・・・・・・誰も犠牲を出さなければそれで良い・・・」
「ー?」
服を握る力が強い。そして、ウォイス様の表情は、あれほど硬かったのに、少しだけそれが砕け散って、少しだけ穏やかな笑顔を浮かべていた。
・・・分かりましたよ、貴方がそんな表情を浮かべているという事は・・・。
「・・・ええ、そうですね。ウォイス様」
私も微笑み返す。ウォイス様は少し後ろに下がって、後ろを向く。そして、少しずつ歩み始めた。
「ウォイス様、何処に行かれるのです?」
「・・・呼ばれている」
「そうですか、行ってらっしゃいませ・・・ウォイス様」
「ああ・・・」
そう言って街の方角へ歩んでいると、ふと物事を思い出したのか、途中で歩むの止めて顔を私の方向に向けた。
「命令、忘れていたから言う。彼を守ってくれ・・・・・・・」
彼、って聞いただけで誰を指すかは直ぐに分かった。私は跪いて俯いた。
「ー承知しました、ウォイス様」
「頼んだぞ・・・」
そう言うと、彼は姿を変えながら再び歩み始めた。少しだけ嬉しそうな、それでいて悲しそうな、そんな表情を浮べて。
ウォイス様が完全に見えなくなった後、私は立ち上がり、ウォイス様とは正反対の方向に歩み始めた。
「・・・ウォイス様、薄々ですが分かりましたよ。私を創った、もう一つの理由を」
それが彼のお望みであるのならば、私はそれに従おう。それが、私の手が罪という色に染まってしまうモノでも。
~中間~
2 100年前・・・
「脳内の様子は?」
「ああ、大丈夫だ。今のところは・・・な」
「ーなら良い。・・・目覚めさせてくれ」
「了解だ」
そう言うと、友人はあの人の元に立ち、起動装置をオンにした。泡が割れる音、液が吸い込まれる音が鳴り響く。
空になったその空間には、あの人が眠っていた。現実では言えないが、あの人は浮遊したまま、力を完全に抜けた状態で眠っていた。
「・・・全然変わらないな」
「構造上はな。起こせば違いが多分分かるだろう」
「起こしても平気か?」
「ああ、仮眠状態だろうから、起こせるだろう」
そう言うので、私は彼を起こしてみた。
「c・・・・・tun・・・・・・・・・・and」
「・・・?」
「!!」
あの人は近くにある柱を殴り、壊した。
「何だ!?暴走か?」
「ああ、さっき何か言葉を発した様な・・・?」
そう言う間なのにも関わらず、あの人は自力であの空間を破いて、私達の前に現れた。その表情はあの時とは違い、紅い目をしていた。
「ー誰・・・?私を呼び起こした・・・のは?」
あの人は虚ろな目で、掠れた声でそう言った。感情は分からない。
「私は誰・・・?ー「助けて」・・・??誰、声を掛けているのは・・・・?」
「助けてー?幻聴ではないのか?誰もそんな声は発してない」
すると、友人は私の耳元に囁く。
「今、あの人は奴の声を聞いている。・・・どうにかして隠してくれ」
「・・・奴?それって・・・あの・・・・の事か?」
「ああ。頼む」
「ー?ねえ、君達が私を目覚めさせてくれたの?」
「・・・ああ。そしてその声は気にしなくても大丈夫だ」
「・・・・・・貴方方のお名前をお聞かせしてよろしいでしょうか?」
先程の行動は一体何だったのだろうか?そして、今敬語をー?
「主に対しては敬語だ」
「ハァ・・・」
私は呆れたとでも言いたげに溜息をついた。
私はあの人をガナールと名付けた。
ガナールは友人と私に敬意を見せた。
しかし、友人は友人に向かってはタメ口で構わないと言った。
ガナールは友人に対しては普通の言い方をした。
私は悩み続けた挙句、ガナールを従者とした。
それが、あの関係の始まりだった。
それがこれほどまでに大切に思えたのはどうしてだろう?
~中間~
「・・・で、どうするのさ」
「いや、どうするって言われても」
「お前の判断に任せる、僕はそんなのどうでも良い事だ」
ソニック、テイルス、僕がそう言うと、ガナールは俯いた。
「・・・・・。」
「おいおい、お前此処で『NO』と言えばお前は殺されると同じなのだぞ?」
「脅迫するな、ソニック。この後どうするかはガナールが決める事だろう。・・・そろそろ答えを聞きたい。このまま覚醒させ続け、ウォイスと共に過ごすか、お前自身を封印し、実質死んだ事にするか・・・」
この選択が、貴様をどれだけ傷付けるかは分かっていた。究極の選択なのだ。ガナールは俯いたまま、小声でこう言った。
「ー・・・ウォイス様と一緒に過ごしたい」
僕の耳には直ぐにその声は聞こえた。しかし、ソニックらは聞こえなかったらしく、少しイライラした様な声で言ってくる。
「・・・もう一回言ってくれないか?大声で」
「よせ。ガナールは『主と共に過ごしたい』と言ったのだ。追い詰めるのもいい加減にしろ」
「そうか・・・おめでとう、ガナール」
「・・・・・・うん」
そう言うとガナールは泣いて、僕に寄って来た。
「・・・少しくらいは眠っても良いぞ」
「ーありがとう」
そう言うと、ガナールは倒れた。どうやら眠ってしまった様だ。
「奴も戦いの連鎖で疲れていたのだろう、休ませる場所は・・・ソニックの家が一番近いか。ーソニック、運べるか」
「ああ!!」
そう言うと、ソニックはガナールをヒョイと持ち、自分の家まで走った。ー流石に音速の速さで走ると、肉体が持たないのでかなり遅く走っているが、そう時間が掛からずに着くだろう。
「・・・まあ、これで良かったのか?」
僕は夜空を眺めた。沢山の星が散らばっており、綺麗だった。
~中間~
・・・意識が揺らめく。広い空間にいるのに、誰も気づかない。
「ー気づいてよ・・・」
日に日に彼が掛けた魔術は強くなっていく。意識も遠くなって、今じゃ本気の力を出さないと、声が出ない。
悲しい・・・悲しいよ・・・・。
そんな思いがカオスエメラルドを動かした様だ。エメラルドが光輝く。
流した涙がエメラルドに落ちて、光は私を包んだ。
誰でも良いから、私が見えて欲しい・・・・。
「ー!!」
一瞬夢を見ていたかの感覚が襲った。そして周りには、皆が戦っていた。
「・・・・・・これは、一体・・・?」
確かに半透明で幽霊の様な感じになっていたのは、間違い無かった。
しかし、何処かが違う。
「もしかして・・・半透明のまま実体化してしまった・・・?」
悲しいから、そう願った。その願いが奇跡を起こした・・・??
ますます意味が分からなくなった。
でも、この体験はある意味チャンスではないでは?
そう考えたら、行動を起こさずにはいられなかった。
この戦いを止めなければ。
そう思い、皆が戦っている場所に飛び込んだ。
*******************
end.