夢想の針鼠の夢跡

物語に隠されたもう1つの物語 『過ち』を知る物語

日記ノ十八ノ巻~Fantasy

満月の時のみ鳴り出す幻想曲。様々な可能性を奏でて、この世界を満たしていく。可能性しか奏でないから、誰かがそれを表に出して現実にしなければならない。表にどう出すか。それは皆の考え次第である。そのままその事を伝えたり、同じ音を奏でたり、絵に描いて表したりすれば良い。幻想曲は3曲しか流れない。だが、その3曲は未来の中で、実現することが多々あるのだ。

大きなホールの真ん中に、私は立っていた。此処だけ切り取られたかの様な世界をしていた。闇の中でとりあえず、歌を歌い始める。誰もいない様に見えるこの空間を、温かな空気で満たすのだ。歌っていると、少しずつ集まってくるのだ。それは人とかの存在じゃない。現実とかけ離れている。お化けとかそういう類だ。

ペコリとお辞儀をする。すると、そのヒト達は割れんばかりの拍手が私に向けて送られてきた。拍手なんて、してないけど。

「どうだったかな、今日の歌」

私がそう尋ねてみると、とあるヒトは顔を真っ赤にしていた。そして、私の元に寄り添って来た。

「・・・そうなんだ、それは良かった」

そのヒトは私の耳を引っ張って、風に紛れて何かを発した。

「ーーーー」

「ん?良いけど、私の元寄り添ってても、歌とか歌ってあげられないよ?」

「あくまで私は趣味でやってるだけだから」と付け加えても、そのヒトは「連れて行って」と連呼していた。・・・きっと他の人から見れば、その光景は私が独り言をしているだけにしか見えないのだろうけど、違う。

「まあ、別に構わないけど・・・・・・幽霊これで何人目なんだろ。幽霊達、此処に居座ってから何年経つんだろ。ソニックに送り届けるべきかな」

幽霊が私の元に連れて行った原因は多分、趣味で歌ったあの歌が原因だろう。あの歌は、精神に響く魔術でもある。で、悪霊が浄化されて、無害(あまり言いたくないが、危害を加えないので)な幽霊になる。その一部に私の事を好きになって、知らない間に連れて行っている状態になった。私もその歌を歌わない限り、その幽霊の魂を目視する事が出来ない。

「目視出来なくても、声は聞こえるんだけどね」

少し溜息をついて、夜空を見上げた。最近は空気が澄んでいて、お星様が私達を見守ってくれている。ただ、そのせいで足元がひんやりするのだけども。

「あ、シャドウ!!ゴメン、この出来事はまた後で!!」

私がそう言うと、幽霊達は姿を消した。これは私とソニックしか干渉出来ない幻なのだ。幻想とも言うべきだろうか。

 

 

数年後

 

 

 

電話が終わった後、私はとある人に伝えたい事があったので、筆を手に取って、手紙を送ってみる事にした。

『ー最近、元気にしてる?こっちは元気だけどね、様々な出来事に巻き込まれちゃったみたいだよ。

あ、あの件は大丈夫だから。ちゃんと処理しといたよ。・・・ただ、結構相手強かったから、今度はそうはいかないかも。そろそろそっちも注意しといて。嫌な予感がするんだ。もしかしたら、あの悲劇が再び訪れるかも。アレを守ると共に、此処を訪れて欲しいんだ。この手紙と共にアレの瘴気を消す箱を送るから、お願い。

彼が警告した通り、最近あっちの行動が激しいんだ。私もたまに偵察しにこそこそと行動しているけれど、確かにメンバーが揃ってきてるかも。・・・アレ、大丈夫かな。

とりあえず私はあの子の気持ちをフォローする様に試みるよ。出来るかどうか分からないけれど、あの子と似た様な人を何度も見ているから、多分あの子は私を気に入る筈だから。だから・・・は、エメラルドをお願い。少なからず、あの子が自立出来る環境を作るまでは、こっちに来れないと思って良いよ。エメラルドは隠しておいて自由に行動しておいて。当然、瘴気はちゃんと消しておいてね?私が持っているのが一番安全だと思うけど、状況が色々特殊だからね。最悪、私がああなるかもしれないから、念のためだと思って。まあ、私がああなったら御終いだけどね。せめて、全体で私達が持つ『最後の』エメラルドの所在が知られて、私が最後の守護者として、迎えるまでは、解いてはいけないと思う。

シャドウについては、救いたいけど・・・私が其処に突っ込むのは幾ら何でも危ないと思うから、止めとくよ。シャドウには申し訳無いけれどね。

・・・もし私が望む出来事が発生した場合、おそらく真の黒幕が出てくるだろうから、ヨロシクね。』

誤字が無いか確認した後、私は伝達鳩を呼んだ。宛先を特殊な文字で書いて、伝達鳩の足に巻きつけた。

「お願いね」

そう言うと、鳩はその宛先に向けて飛び始めた。鳩が無事届けてくれるまでに、こっちも準備しなければ。大体半日足らずにあの人の手元に送られるだろう。あの人が、自由に旅していなければの話だが。

とりあえず、眠る事にしよう。・・・さて、今日は幻想曲が流れる日だ。どんな音色を奏でてくれるだろうか。私はその美しい音色を楽しみにしている事にしよう。

様々な事件が沢山続き、遂には心髄にまで及んで行って、己の中でそれを重く、鋭く貫くのだ。 嘘だらけの世界で信じる事が出来るのは、己自身ただ一人。痛い思いとかしても良いんだ、嘘をつくのはもうこれで最後にしよう。だからお願い。早ク逃ゲテ。