夢想の針鼠の夢跡

物語に隠されたもう1つの物語 『過ち』を知る物語

幻想の赤月 0-02章 Onslaught

「エメラルドを探せって言われてもな・・・持ってない以上、反応が分からないな・・・」
何となくで見つかったらそれはもう素晴らしい事なのだが、流石にそう簡単に見つかる訳ではない様だ。3時間、街のあちらこちらを見渡しては其処に行って探したが、無駄だった様だ。最も、カオスエメラルドが街にあるとは思え難いが・・・。
途中皆で手分けして探したが、その探しも無駄だった様で、誰もカオスエメラルドは愚か、情報すら得られなかった。今は皆で集まって結果報告を待つだけなのだが、シルバーとシャドウはソニックらとは合流出来ていないままだった。
「シルバー、何処に行ったんだ?」
ソニックは苛立ちながら、辺を見渡した。目の前に噴水があり、周りは草花があって恋人や仕事仲間であろう人達が歩いていた。
「ウォイス、見つけたか??」
「・・・いた。いたが・・・シャドウ、魔物みたいのと戦っているぞ」
魔物。最近・・・いや、3ヶ月位前は全く魔物が出なかったのに、今に至っては街や村でも魔物がいる様だ。ウォイスらがある程度退治しているとはいえ、増え続けているので全体が怯えていた。なので、軍の人らも放っておく事が出来なく、いつ魔物に襲われても良い様に守りに入っている。シャドウも例外ではなく、彼は比較的強い魔物を退治する事を命じられている。プライベート、仕事にも関わらず、である。なので、こうして退治している事は可笑しい事ではない(軍に入っていなくても退治はしているだろうが)。
ウォイスは何も言わずにただ見つめていた。「・・・加勢するつもりは無い」と言っていたが、ソニックはそれを理解出来なかった。
「何故、加勢しないのだ!?」
「・・・親玉がいる。下手に加勢すると相手も加勢するだろう?」
「そういう事か・・・事を大きくしてしまえば、相手の思い通り、という事だな?」
「ああ。・・・まあ、危ないと思ったら助けるが。大丈夫だろう、彼なら」
ウォイスはそう言って、今度はシルバーの捜索を始めた。ウォイスが使っている魔術は、相手を探す時に便利な魔術で、一定距離内の所ならその辺を防犯カメラの様に見れるというもの。ただし、それをしている間は周りが無防備になるので安全な時に行うのだが・・・街なので、その可能性は低い。盗まれるという事も無いだろう、見ているのだから。
「俺が何でも出来ると言ったら大間違いだ。出来ない事の方が多いさ。」
彼はさらりと己自身を否定する様な言い方をして、彼の捜索を再開した。

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「・・・これは酷いな」
僕が見たのは、明らかに誰かに荒らされた跡が沢山あった。しかもこの荒れ具合、これはどう考えてもテロか何かに巻き込まれたとしか考えられない。というかそうじゃないと可笑しい様な気がする。
黒い物体ーおそらくこの世にあってはならない様なものであろうがーが鉄柱を怖そうとしているじゃないか。此処で引き返したら汚名着せられそうだ、やってやろうじゃないか・・・。

ガン

一瞬の出来事だ。黒い物体は僕に全く気付かれずに華麗に、ブッ飛んだ。脚を思い切り振り回しすぎたのだろうか?ただ、弱いのは間違い無かった。となると考えられるのが・・・。
「手下だけとは考えらない、誰かいるな」
単純に考えて、そうなった。ゲームのやりすぎだ等と思われるかもしれないが、何となくそんな気がした。というより黒い物体がいた時点で、現実離れをしていると思った。・・・アファレイド以外でそれは珍しいのだ。
「魔女狩りみたいな状態の中に、力でねじ伏せようとしている奴がいる。こんな事すると言ったら、紅月らの他にいるとは思えない・・・」
適当に渡されたリストを見て、ウォイスらが言っていた集団以外にアファレイドの集団を徹底的に調べ上げた。テロ集団や貴族等を見ていた。

「貴方ね?私のペットを蹴散らそうとしているのは?」
調べていると、背後に誰かがやってきた様だ。ペット、というとあれはやはり雑魚に過ぎなかったか。僕は振り向かず、少し脅してみることにした。
「ペット?ああ、貴様、あの醜くて汚いあんなモノを扱っていたのか」
「何故邪魔をした」
「当然であろう?貴様は社会のルールを知らないのか?『街を破壊してはならない』、子供でも理解出来るぞ?」
僕がリストの次のページをめくろうとすると、急に刃が首筋に当ててきた。
「・・・承知の上で、やっているのだ。それで?お前は何しに来た?シャドウ・ザ・ヘッジホッグ
「貴様を捕らえる様命じられただけだ。だから、邪魔をするな」
僕はそのまま、彼女の足元を蹴った。

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「あれ、彼奴ら何処に行ったんだ?」
何となく此処にやって来たのに、誰もいないんじゃ元も子も無い。折角美味しそうな店に行って美味しい物買ったというのに、誰もいないんじゃ・・・
「意味無いじゃないか~!!あー!!」
「・・・あれ、シルバーさんじゃないですか」
聞き覚えのある人物が俺の叫び声に反応した様だ。声がした方向に向いてみると、シマシマ模様の尻尾が見えた。流石に街という事もあって、普段の作業着は着ていない様だ。
「フィート、久しぶりだな!!元気にしてたか!!」
「ええ、元気ですよ・・・迷子になったんですか??」
「ん、ああー・・・多分、そうなの・・・か??」
此処に来てもうじき1年位経つというのに、未だに此処のルールを把握しきれてなかった。迷子、って確か子供と両親が離れ離れになっちゃって、で・・・で・・・!?
(・・・いや、親子じゃないよな親子じゃないよな親子じゃないよな!?)
「何自問自答しているんですか・・・で、カオスエメラルドか何か集めているんですか?」
「ご名答だな、何故分かったんだ?」
「いや、何かカオスエメラルド持っていますし・・・」
そういえば、何故か屋台でカオスエメラルドがあった。その人の話を聞く限りでは「何かしんねーが、夜歩いていたらキラキラ光る石を見つけたからそのまま持って帰った」とか。俺が事情を話すと、その人は少し安心してカオスエメラルドを渡した。
『いやー助かったよ。何かしんねーが機械とかの調子が良すぎてさ、これでめでたしめでたしだな!!』
その人はガッハッハと高笑いをしていたのが、彼の頭の中で再現されて、苦笑いをせざるを得ない状態になっていた。
「・・・カオスエメラルド、何気に近くにあったから・・・・・・あ、そうだ」
閃いた。フィートは何かをお願いされるのだろうと思ったのだろうか、肩を組んだ。
「・・・??」
「お願いがあるんだ。急で悪いんだけど」
「内容にもよりますけど、何が目的なのです?」
「それは・・・」

俺がそれを話すと、彼は少々驚きながらも「約束します」と言ってくれた。
安心して、そのまま皆を探す事にした。


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静寂。

ゆらりゆらりと揺らめく炎が、ポツンとあるだけの部屋だった。が、寂しい感じはしなく、逆に親しみやすかった。此処で過ごす事になると思うと、何とも言えない。

後に彼奴と10年間話す事になった部屋と同じ部屋である。

「お前は牢獄の見張りをしてくれ」
「俺様のペットを、離さない様にしてくれよ?俺様の大事な戦力だから」
彼と彼奴の言う事を、ただ従うのみである。俺が彼奴らの言う事を聞くのは、当然の事なのだ。辛くなどない。

「・・・にしても、煩いな」
ペットを見張れって言われても、数が尋常じゃない。カラスやコマドリ、リスと言った森とかで見かけそうな動物ばかりが揃っていて、いつも鳴き声が鳴り止まない。紅月様が「牢屋だとバレない様に」と言って防音魔術を唱えてくれたが、それでも鳴き声は耳を貫く程大きかった。防音の意味が殆ど失われている。
「だが、こんなに動物を匿って、一体何をしようとしているんだか」
とにかく、俺がやるべきことは此処を見張る事。此処に邪魔者がいれば排除すれば良い。それだけの事だ。他の事は他の人がやってくれているだろう。

地形を変える、というのは一体どんなものであろうか。島を創るのか、あるいは崩すのか、山が出来るのか・・・色々と大変そうなのは何となく予測がつく。それを行おうとした紅月様も流石なのだが、それを食い止めようとするウォイスの意思もいささか疑問に思った。止める手段など全く無いのに、止めようとしている。まあ、紅月様が警戒している程だから何か企んでいるのは間違い無いが、始まったばかりで意図が読めない。彼奴の思っている事が正しければ、あるいはー。

・・・深く考えるのはよそう。今は待つまでだ。

「おい、紅月様から皆に話す事があるってさ」
彼は目の前のドアを勢いよく蹴ったと思ったら、急に俺に向けてそう言ってきた。
「・・・話す事?ああ、お前の処分か」
「違う!!というより紅月様も「仕方ない」って言っていただろ!!そうじゃなくてだな、今回の件について言いたい事があるからって言われて、此処まで来たって訳だよ!!そう何度も言わせるな!!」
「何度もって、一回しか言ってないじゃないか・・・まあ良い、紅月様がそう仰るのであるのなら、そっちに行くか」
俺は彼に「ありがとな」と言って、階段を上がっていった。
「・・・お前も大変だろ?あの大声を毎日聞いているんだろ?」
「ああ。耳栓してても聞こえてくるもんだから排除したいが・・・」
「スコールが怒るんだな。まあ彼奴らのペットは偵察には丁度良いんだが、あれだよな。何だっけ?命令を自由に聞かせる道具を使っているんだっけ?」
俺として独り言に過ぎなかったのだが、彼はその答えを知っていたからか、俺の言葉に反応した。
「ああ、それもあるけど、洗脳しているらしいぜ。自ら抜け出さない様に仕組んでるってスコールが言っていたぞ」
「カース、お前はよく知っているな」
俺が褒めると、彼は「そりゃどうも」と言って先を見つめた。ようやく1階に着いた。此処までに登るのが大変なのは、いつもと変わらないものなのだろう。
「んじゃ、指定先の紙渡しとくから行ってくれよ?俺は他の人を集めるから」
俺が返事する前に彼は何処かに走って行ってしまった。俺は指定先の紙を見て、其処に向かう事にした。
(ま、熱心でいいな・・・)
紅月様の為ならば、誰でも殺すつもりだ。例えそれが家族や恋人であっても、だ。

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「次の次の満月の日の次の日が終焉の日」
今は上弦の月。もうあと5日程で満月になってそれで一回目。そして再び満月になって日が昇ったら御終い。そしたら大勢の犠牲が出る事だろう。
「と、なると彼が本気を出せるのは6日しか無いという事になる。しかも序盤と終盤だけ・・・辛いですね」
当然満月は皆が見れるから、彼らが強くなれば、相手も強くなる。それ自体は構わないが・・・。
「5日ごとに何かが起こるって事で大丈夫ですよね?」
当然此処には誰もいない。特別な空間の中で誰も入れる訳がない。

私は皆に幻術を掛けた。皆殺し等をするのではなく、皆を助ける為にやる事だ。術のリスクも殆ど無いから、大丈夫であろう。
「・・・二日三日は下手に動けないのが残念かな」
でもそれくらいの事をしないといけない事がある筈なのだ。それらを守ろうとしないのはどうしてなのだろう?考えても無意味だった様な気がしてならないが、一応考えておく必要があるかもしれない。もしかしたら良いものが手に入るかもしれない。

で、だ。

この異変に設けられた制限時間は35日。増えたり減ったりするかもしれないが、それくらいが妥当だと思う。無理矢理変化の早さを遅めてもせいぜい40日が限界であろう。なので私はその異変の最後の日を数えてみる事にした。いつ終わっても構わない様に。

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『1日目~Beginning of the end
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ウォイスは異変に気付いた様だ。誰がやったのかも大体は把握している様だ。しかし普通の人とは反応が地味に違うので、実際の所は微妙である。ただ、早い段階で気づけたのもあって、始めとしては良いスタートを切ったのではないだろうか。・・・それが吉と出るかは別として。
紅月はウォイスが異変に気づいた事をまだ知らない様だ。対策は考えてあるだろうが、今此処を特攻したら収穫が豊富か?ただ分かってない事が多過ぎるので、止めるべきであろうか。

とりあえず、始まったばかりという事もあり、各自情報を集めている様だ。彼らが欲している物、それはカオスエメラルドであろう。集めても無意味だが、序盤の内はそれを主目的にしても構わないだろう。副目的が情報収集なのだろうから、後になっていくにつれて副目的が主目的を追い越して、副目的が主目的になるであろう。少なくとも私はそう思う。

私は、あの人の心に潜入する事に成功した。彼が彼処まで追い求めているというのは極めて珍しい事で、あれらの出来事の動機よりも重要な動機があると考えてみると、結構納得いく様な事も沢山ある。・・・果たして、彼はあの人を本当に殺すつもりでいるのだろうか??それはあの人と親しくならないと、分からない事だろう。なので、35日をかけてなるべく多く来れる様にしようと思う。・・・仲間が見つかれば、そっちにも聞けるのだが、王の関係に携わるので、場合によっては拒否されるかもしれない。・・・まあその時はその時で考えることにしよう。』

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「ようやく見つけた・・・フィートの助け無かったら俺今頃・・・」
彼が息を切らせて、先を見つめた。あの人達が立っていた。
「で、シャドウはどうしたのだ?」
彼の質問を、誰も答えようとしなかった。ただ、一人だけは冷静に答えた。
「・・・敵と戦っているらしい。GUNとして。連絡が入った、しばらく彼はGUNの方に行って軍人として助ける様だ」
その人の回答を聞いて、彼は一安心した様だ。敵と戦っている所は聞き漏らしたかの性があるが、そこまで考える程でもないだろう。彼はそう思っていた様だ。
「ふわぁ~・・・泊まる場所決まってますか~??」
「決まっているから安心しろ・・・」
眠たそうにしている子をその人は撫でて、「今日の所はこれで終わりにするか」と言って、今日の探索は終える様だ。
4人はそのままホテルの中に入ったきり、夜が明けるまで出る事は無かった。

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Day eyes exit...

next 0-03章 誰かの声

様々な事件が沢山続き、遂には心髄にまで及んで行って、己の中でそれを重く、鋭く貫くのだ。 嘘だらけの世界で信じる事が出来るのは、己自身ただ一人。痛い思いとかしても良いんだ、嘘をつくのはもうこれで最後にしよう。だからお願い。早ク逃ゲテ。