夢想の針鼠の夢跡

物語に隠されたもう1つの物語 『過ち』を知る物語

幻想の赤月 0-03章 誰かの声

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眠れない。周りの音がノイズになって全く寝れない。はっきり言うと、邪魔だ。かと言って大声で煩いと言うと周りがどうこう言うのだろうし・・・。
「煩いな、もうっ!!」
苛立ちが止まらない。窓を開けて大声で叫ぼうとした。そしたら、黒い物体がうじゃうじゃいた。しかも量がおかしい。シャドウが曰く、術者が操っているというが、不規則に動きすぎて正直操っているとは思えない。指示して動いている様には見えない・・・。

・・・そうだ、さっき俺自身が思っていた事と見えた事を見れば分かるじゃないか。少なくともこれは悪魔の契約等で発生したものとは考えづらい・・・と思う。正直そういう類は知らない事ばかりだから、言えるものじゃないが。
まあそんな事はどうでもいい。この苛立ちを晴らせる相手が出来た。此奴らが暴れまわったから、眠れないのは事実。ならば・・・。

「・・・不眠にしたのは彼奴ら。そして彼奴らは迷惑を掛けている。多少なりともお仕置きは必要だな!! それでどうこう言う奴はいないし・・・・・・仕返ししてやる!!」

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『ねえ、聞いてる??』
「何?」
『終末だか何だか分からないけど、何を目的にしてるの??』
「分からないの、これだよこれ」
『これは・・・鍵?』
「フフ・・・私は遂に見つけた!!これで干渉出来る!!」
『・・・えーと、干渉出来るって誰と??』
「すぐに分かる事だよ。まあ貴方からすれば敵と思われるかもしれないけど」
『えー!?教えてくれたって良いじゃん!!』
「いずれにせよ、一緒に行動する時が来ると思うからその時に干渉させるよ。まあまずは私の存在を認めてもらわないと元も子も無いからまずは私だけで干渉してみるよ」
『危険じゃないの?精神の中とかを覗くとかって・・・敵とかだったら尚更』
「私も最初はそう思っていたんだけどねぇ・・・どうやらその心配は無いみたい。正直意外だったけどね」
『それが彼奴らと関係する可能性は?』
「無いと思うけどな・・・あ、でも過去に何があったかを知っている人だから、もしかしたら彼に関する過去を聞ける可能性もあるかも」
『・・・。』
「まあ貴方は皆に付いていった方が良いんじゃないかな?探索を任されているのは私の方なんだから、貴方が事を起こすと何かと大変だよ?隔離している事がバレるのは何かと面倒だからね」
『分かったよ。とりあえず私は引き続き自由に行動して良いんでしょ?下手に事を起こさない様、貴方がやってそうな事はやらないでおけば良い。それでOK?』
「・・・うん、それで大丈夫。私は干渉を続けるよ。分かったらまた会いましょう」
『絶対に死ぬなよ?死んだ事を公表したら俺の立場も危うくなる』
「分かってますってじゃあ、行ってきまーす」

『・・・軽い気持ちじゃないの分かっているけど、あんな態度で接したら不安になっちゃうよ』

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煩い声は鳴り響く。そしてその途中、その煩い声に混じって何かが割れたりしたのだが、とりあえず夜中の中で煩い声や破裂音は周りにとってはかなり迷惑だった。・・・が、それは起こされた人のみの感想で、実際の所、この出来事ですら覚えてない人が大半だったという。

夜が明けた。日がまた登っていく。そしてあの人が言う結末へまた一歩進んだのである。

The 2nd day

「起きろ。朝だぞ」
眠っているのにも関わらず、俺は布団を取り上げられ、無理矢理目が覚めた。幾ら部屋だからと言って、冬にそれをやらされたらたまったものじゃない。どうこう言っても「もう10時間以上寝てるじゃないか」と言ってバッサリ切り捨てられる。・・・本当に彼は煩い人だ。
「・・・ふあ~おはようウォイス・・・??あれ、シルバーとシャイドは?」
「ああ・・・彼奴らなら」

ドン

何かを待っていたかの様に、何かが叩きつけられる音が此処まで聞こえてきた。何か不吉な出来事が起きたのだろうかー等と思ってウォイスを見たら、彼は苦笑いをしていた。
「深夜から下の変な化物と乱闘中だ。入ろうとしたらシルバーがあまりにも必死だったものでな、『黙って見てろ!!』と言われて渋々引き返した訳だ」
「深夜!?」
「何か知らんが、化物が暴れているせいで全く寝れなかったから、その苛立ちをそいつにぶつけているみたいだ。此処を守る為でもあろうが、大半の目的がストレス発散だな。寝ていないからかなり苛立っている」
シルバーが苛立っている・・・確かにほぼ不眠だったら今もの凄く眠りたいと思っているだろうし、その不眠のせいが騒音なのだから、苛立つとは思うが・・・その状態で戦う辺が少々恐ろしい。
「ちょっと見てくる!!」
「!?窓からだと危なくないか!?」
窓を開けるのを見た彼は冗談抜きで焦っていた様だったが、俺には関係の話だ。・・・走れば良いのだ!!
「お前も行けよ!!シェイドも多分其処にいるんだろ??」
「・・・ハァ・・・・・・」
また止められるのが面倒だったのか、彼は溜息をついた。そして、俺が開けた窓から文字通り落ちた。同時にその鍵もガチャリとしまった音が聞こえた。おそらく魔術で閉じたのであろう。そのまま閉じた後は、着地態勢をとってそのまま着地した。普通なら確実に自殺行為に近いのだが、彼は平気だった。

「シルバー!!」
「!!危なっ!!」
彼は黒い物体をサイコキネシスで自由に浮かばせ、それを誤って俺達の所へ向けて投げた。俺は反射したかの様な早さでそれを上で蹴飛ばした。それを見ていたシルバーとウォイスは少々驚きながらも、別の相手を倒しにぶつけた。
「シェイドは?」
「早朝起きて、俺の元まで来てもらってそのまま俺のサポートをしてもらってる。これでも8割程は削れたんだぞ??眠い・・・」
「頑張ってください!!あと少しですから!!」
眠っていない上運動をしていたのもあり、彼は既に疲労困憊の状態だった。顔を見ても疲れているのが見て取れる。それとは別に、ウォイスは光の槍で数匹(人なのか体なのか分からないが)の化物を貫かせていた。
「シルバーはもう寝てろ!!俺がやっとく」
「・・・そうしてもらうと助かる」
もう既に寝そうな彼を少し見つめた後、閃光の如く走り抜けて速攻で倒していく。切り刻むスピードもそうだが、どうも光に関連するものが苦手の様で、通り越したと思われる場所にはもう誰もいなかった。
「そういや、朝日が登り始めた時に彼奴らの動き、鈍くなっていた・・・かも。・・・気のせい、だと思うが・・・・・・・zzz・・・・・」
それを最後に彼はそのまま眠った。俺は彼を背負い、シェイドを連れてそのままホテルへと引き返した。多分この状態なら、ウォイス一人でも十分に対処出来るであろう。いて助かる。

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「・・・ねえ、どういう事かしら?」
「ハハ、悪いな」
私が問い詰めても彼はもはや開き直っていた様で、満面の笑みで私の機嫌取りをしていた。一方、私の方はというと、私の指示を完全に無視して行動した為、あと少しで堪忍袋の緒が切れそうだ。
そしたら彼はその事を適当に弁解してきたのである。
「いや、だって仕方ないだろ。あんな事するなんて思わなかったしよ・・・それにそっちの俺もどうにかなるんだろ?」
「貴方、呑気に言っている場合じゃないわよ・・・良いかしら?こっちの世界とあっちの世界は一緒なの。貴方が死んだら彼も死にかけるのよ?未来の事なんか私でも分からないけど、とりあえず死なない様努力するのが貴方の役目でしょう!?」
「だったらお前も来いよ!!」
「・・・来る訳にもいかないの。精霊、っていう種族持ちである以上、神様とかのご命令や許可を得る必要あるし。面倒だわ。何よりウォイスに気づかれやすいしさ」
「何でウォイスに警戒しているんだよ」
「ハァ・・・貴方って子は。―良いわ、最初から説明してあげる」
私は彼の目の前に立って、演説をするかの如く周りをぶらぶらと軽く歩きながら、説明を始める。彼は苛立っていながらも、私の話を聞く態勢になって、「良いから早く言え」と言ってあくびをした。・・・聞く態度とは思え難いがそこはスルーする事にした。言ってもまた言い合い喧嘩になるだけだ。
「まず、紅月について考えると、紅月からすればウォイスが一番邪魔なワケ。理由は簡単、過去を知っている人物だから。あとその隣の子・・・シェイド、だっけ?その子に関してはグレーだけど、彼らよりかは理解しているのは明らかでしょうね」
「その根拠はあるのか?」
「秋の襲撃事件よ。シルバーが言っていたわ、『何か知らないが少なくとも縁はある』って。実際彼は戦闘の補助をしていたから、間違い無いでしょ?それに襲われた場所は例の彼処周り。・・・証拠隠滅を図っている様にも見える。多分過去を無理矢理消し去ろうとしてるんじゃないかしら?となれば必然的にウォイスは何か隠し事をしているのはほぼ間違いない。ただ、それが何かは分からないけど。そしてその過去を、彼も嫌っている。彼も過去を捨てようとしているんじゃないかしら?『友人など作らなければ良かった』、なんて思っても別に不思議ではないと思うわよ?・・・まあ他にも根拠はあるけど、一番それが大きいかな」
「・・・。」
「それが正しい事を前提に話を進めると、この流れを作っているのは彼らになるって事。凄く単純に言えば二人の喧嘩に皆が巻き込まれているって感じかしら?まあウォイスがそれを望んでいる訳では無いけどさ。ああ、でもそれが正しい保証なんて何処にもない。これを話す事は殆ど無いでしょうし、あったとしても・・・」

「語るのは止めたらどうじゃ?」
語っていた時、後ろから若々しい声が聞こえた。後ろを振り向くと、昔の殿様や陰陽師が着てそうな服を纏った男がいた。口調も何処か古臭く、老人臭がするが、こんなんでも結構若い。・・・外見だけではの話だが。
「・・・別に良いじゃない、フィートのお弟子さん」
「私しゃ弟子という名前ではないぞ!!私はノトじゃ!!」
「ああ、そうでしたっけ?・・・シャック、とりあえず、これお願いね」
私は彼、シャックに向けて彼処の世界に行ける鍵を投げた。シャックはそれをかっこよく受け取って、キメ顔を決めてきた。
「よし、俺がやってやるぜ!!」
「空振りしないでねー」
私の言葉を聞いていたか否か、彼は「よっしゃー!!」と言ってそのまま此処を出て行った。・・・不安で仕方ない。後で彼にお願いして貰って彼の様子を見ていて貰おうか少々迷った。

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「結構痛いな・・・っ」
「はい、これで大丈夫ですよ。しばらくは動かない方が良いですね」
「そういう訳にもいかないさ。こういう時に限って動けない状況は結構痛いし・・・支障が出るくらい傷は出来てないし」
腕を包帯で巻かれ、睡眠欲と痛みが入り混じってて気味が悪い状態の中、シルバーは元気に腕を振り回していた。シェイドも傷を消毒し、絆創膏を貼っている。他の奴らがどうなっているかは分からないが、とりあえず二人共疲労困憊の状態であったのは間違いない。辺はあの騒ぎがあってか、しんとしていて足音が響き渡る位である。
「・・・ふわぁ~」
あくびをしながら、ベッドで横になったのを見たかと思うと、彼はあっという間に夢の世界に飛び込んでいってしまった。
「寝ないでくださいよ・・・って言っても仕方ないですか。寝てないんだっけ、彼。それにしても・・・何ですかあの化物」
シェイドは眠ったシルバーを横切って、窓を開けて見下ろしてみた。黒い物体を見ていた。彼自身がそれを知っている訳でもなく、分かっている事というとウォイスが唱えた光が弱点だということ。闇の塊が具現化して魂が宿ったもの、なのかもしれないと思ったが、正直それを生まれる魔術がある訳でも無ければ、別の物質の塊に魂が宿る魔術も無い。あったら大変な事になるから、禁忌とされている・・・と本で書かれていた。―最も、あの黒い物体が魔術で誕生したという根拠も無いので、単なる予想に過ぎないというだけではあるが。悩みの種が増えた。
「ん~苦戦しているけど、絶対ウォイスなら『休んでろ』って言われるよな・・・でも彼が来てから圧倒的な早さで数が減っているのは事実だし、多分弱点を知っているのかな。見た感じでもそんな気はしてたけど」

バサッ

開けた窓から、鴉が中に入ってきた。驚いて一歩か二歩遠ざかったシェイドは、何をすれば良いか分からず、とりあえず近くにあった棒を持って構えた。
「く・・・来るなら来てよ!!」
『やれやれ、鴉で来たらこの有様・・・なんだ』
一瞬疑った。どう考えてもその鴉からその声を発している。尋ねようとした瞬間、鴉周辺に闇が発生してそれが晴れた時には鴉の姿は無く、シェイドと同じ位の背丈の子がそこに立っていた。敵意は無いらしく、気だるそうな目をして笑っていた。
「鴉で来たらこうだし、鳩だったら餌が~って言われるし。どうすれば良いのかな?・・・なんて冗談はさておき。『貴方誰?』って言いそうだから言っておこうかな」
「その通りだよ。君は誰?」
「ん~・・・生命体の一種って言っとこうかな?何者かって言われても何も言えない。専門的な知識の塊とだけ覚えとけばそれで良いよ」
専門的な知識とは一体何か、と普段なら言いたいが、少々特殊な状況の中それを言い出す空気にはならなかった。
「名前は?」
「そういうのは知らない方が良いよ?結構大変な事になるから。まあ私はどうでもいい事だけど・・・ああ、君の名前は分かっているんだ。シェイド君だよね?実際の名前は多分あの子・・・だろうけど。言わないから安心して良いよ?」
「何から何まで調べ上げて・・・紅月の仲間?」
「違う。でも君の味方でもない。中間の立場に立っている人。まあ自己紹介はこれくらいで良いでしょう今日はね、忠告しに来たの。君に対してで」
「それって一体・・・」
「『今の紅月は完全に洗脳されているから、迂闊に近づくな』。それだけ。簡単でしょ?」
全く訳の分からない人が、上から目線で『近づくな』と言われると流石の彼も笑顔では済まされない。しかも彼の過去に関連する事項をまるで知っているかの様な物言い・・・事情をよく知らない第三者が干渉するな等と、言いたい事が積もってきた。
「何で君に言われないといけないの!?第一、貴方は初対面でしょ!?貴方がそれでどうこう言うのは明らかに可笑しくない!?」
彼はそう言ったが、その人は何も臆する事もなくその回答を言ってきた。冷淡に、である。
「初対面だけど、知っているの。だってご本人がそう言っていたの。『近づかないで』って」
「ご本人って!?」
「決まっているじゃないか、紅月の本来の姿の魂の子だよ。干渉出来て、あの子に言ってと言ってきたから言っておいたの。・・・運良く『彼奴』もいない事だし」
「それは一体・・・」
遠くから「シェイド!!シルバー!!」と叫ぶ声が聞こえた。それが聞こえると、目の前の人物はシェイドに背を向けて、そのまま窓に落ちようとした。
「そろそろ時間だから。・・・あ、これ誰にも言わないでね。言ったら二人きりになったのが無駄になっちゃうから」
「この・・・!!」
「じゃあね」
手を掴もうと伸ばそうとするが、その人はそのまま落ちて、あの時と同じ鴉の姿になって何処かに飛んで行ってしまった。

「シェイド!?大丈夫か?」
彼が扉を開くと、シェイドは彼の方向に向き、笑顔で笑った。
「大丈夫です、鴉は追い払いましたから」

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end.

next  0-04章  Watch, interfere with the

様々な事件が沢山続き、遂には心髄にまで及んで行って、己の中でそれを重く、鋭く貫くのだ。 嘘だらけの世界で信じる事が出来るのは、己自身ただ一人。痛い思いとかしても良いんだ、嘘をつくのはもうこれで最後にしよう。だからお願い。早ク逃ゲテ。