夢想の針鼠の夢跡

物語に隠されたもう1つの物語 『過ち』を知る物語

幻想の赤月 0-04章 Watch, interfere with the

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シェイドが鴉は追い払ったと言ってから約7時間経過して、もうまもらく2時になろうとした時、シルバーはようやく目が覚めた。
それまでは俺やシェイド、ソニックが交代で探したが、結局は分からないままだった。・・・ただシルバーのエメラルドが早い段階で手に入れられたので、それだけで御の文字であるのだが、もしかしたらの事もあって探したが、結局の所無意味だった。
シルバーが起きた時、俺とソニックが部屋にいたが、シェイドはエメラルド探しをしていた。
「よく眠れたか?」
俺が若干心配そうにすると、シルバーは伸びをして、その後元気そうな笑顔で俺らを見た。
「ああ、よく眠れた。ようやく、って感じだぜ。怪我も大体治ったし、多分大丈夫だろ・・・シェイドはどうしたのだ?」
「彼奴ならエメラルド探しをしてる。もうすぐ2時だから戻ってくると思うが・・・ほらよ」
ソニックが指差した時計は、長針が11と12の間にあり、短針の方はもうまもらく2にたどり着きそうな位置にあった。シルバーはそれを見て、少々驚いたが、直ぐに元に戻って、シェイドの帰りを待った。

本来ならば此処はシェイドが戻ってくるであろう。しかし、戻って来たのは・・・いや、やって来たのは・・・敵だった。

2時になったのとほぼ同時にトントン、とドアを叩く音が聞こえた。俺達はシェイドが戻って来たのだと思っていた。シルバーは呑気に奥にある扉を開けた。
「お帰りな・・・!!」
一瞬、彼は硬直した。敵が攻撃したという訳ではない。攻撃してたら既に倒れている筈だ。ならば何故? 思考を巡らせている間に相手は語尾を強めて威嚇してきた。
「アア?お前、俺に会った事あるっけ?」
相手は彼の硬直の事を全く分からなかった。というより、俺も何故彼硬直したのかは分からない。シルバーは相手が行動を起こす前に思い切り超能力で相手を拘束した。したんだと思うと、彼は少々驚いた表情で相手を見た。
「・・・あれ?この身体にしては感触が全然違う・・・」
「「「・・・ハァ?」」」
相手も、俺も、ソニックも言っている意味が全然分からなかった。当然と言えば当然だ。物を使わずに縛る感覚など、彼にしか分からないのだから。・・・ただ、縄で縛る時の事を考えてみるとその言葉も何となく分かる気がした。
シルバーは分からないまま、人差し指だけ自由に動かした。すると、相手もそれに合わせて動く。サイコキネシスが効いているという事だ。
「え、え???何だこれ・・・めちゃくちゃ軽いぞ??飢えているというとそうでも無いし・・・え、これどういう意味だ??」
変な状況が続く中、相手は悲鳴をあげながら叫んだ。
「うわあああ!!止めろ、止めろって!!ウッ・・・目が・・・」
「そーれっと」
何となく窓の外へ出る。落ちる・・・と誰もが思っていた・・・が。

「ヤバ・・・風が・・・うわわわわ!!」
結局相手は何もしないまま、風に飛ばされた。・・・色々と可笑しい事に巻き込まれた様な気がした。そして背中に「ただいま戻りましたー」と呑気な声が聞こえたが、それに気付くのに10秒位の時間を要した。

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漆黒で無類の闇を司る者。もし実際にいたならば、きっとそれはこの事件の黒幕にでもなっていたのかもしれなかった。でも実際は違った。私が予想していたよりも、この事件の真相は深く、大きかった。手当たり次第、とは言っても大きすぎてその『手当たり』が何処らへんを指すのかイマイチだった。
それは貴方も同じ事だった。私が話した出来事を信じられたのは、おそらく貴方自身が実際に体験したからであって、もしそれが無かったら絶対これを信じられていなかっただろう。

運命、という言葉を使いたいが、曲げられた道を運命と呼ぶのには不適切の様な気がするのだ。それでも私が貴方に向けてあの一言を言わなければ貴方はそれを運命だと思っていたのかもしれない。でも実際は違う。ではその回答は?そんなの私でも知ったこっちゃないのだ。

開放を望む者、捕縛を望む者とで様々な人が何かを望む訳なのだが。
貴方は一体、何を望むのだ??

「混沌まみれの世界なんてごめんだよ」
「表としての貴方は既に貴方ではなく、誰かが代理に動かしているだけだ。本来の貴方と会話出来るのは私だけしかいない。他の者が此処に干渉する道理も方法も何処にも無い。だから貴方の願いを叶えられるのは私だけなのだ」
「天からの使者みたいな言い方は止めてよ。・・・とは言ったものの、願いなんて・・・・・・たった一つしか無いよ」
「―答えてみろ。可能な限りはその願いを叶えてみせよう」

 

『元の日々に戻りたい』

 

「元の日々にか。開放され、自由になってあの時みたいに笑い合いたい。それが貴方の願いなのだな?」
「それが出来たら、幸せだよ。そういうのはお金じゃ買えないから」
「良いだろう。その願い叶えさせてやる。但し・・・おそらくその夢は今年中には終わらないであろう。最悪、叶えられないままお前の生命が終わるかもしれない。それでも構わないな?」
「十分だよ。何も関係の無い第三者にそれを頼むのは何か癪だけど・・・贅沢は言ってられないよね」
「・・・私は第三者でもないだろうな、関係者だ」
「それでも良いよ。あともう一つ。こっちはきっと簡単だよね?」
「我侭だな・・・まあいい、答えてみろ」
「二日か三日に一回は此処に来てくれるかな?君の話、興味があるんだ」
「・・・・・・努力はしよう」
「わーい」

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僕が入っていった後、周りは此処だけ竜巻が襲われたのかと思う位空気が異質だった。雰囲気が、っていう話で決して此処にいれば死ぬガスがある訳ではない。呑気に入っていったのが正直馬鹿だと思った自分が何処かにいた。
最初に口を開いたのはソニックだった。
「・・・・・・なあ、とりあえず状況、整理しようぜ?な?」
落ち着こうよという意味で言っているのだろうが、正直この空気で入ってくるとは思え難いのだが・・・と思ったらやがてウォイスがその言葉に反応にして、頷きながら僕に近づいて、言った。
「そうだな、とりあえず結果だけ聞くか」

「まず、俺の方の探索だったが・・・まあ早々見つかる訳では無いよな、見つからなかった」
ウォイスはそう言うと、報告メモを僕達に見せた。其処にはエメラルドの在処についての他に、異変の影響を受けている場所・受けていない場所についても書かれていた。
「異変の影響が及んでいる地域は今は少ない。少なくともロストタワー付近にはもう既に影響が出ている傾向だ。・・・そうだな」
僕達がいるステーションスクエアはネイトの南に位置する。ロストタワーに影響が受けている以上、東方向に向かうのは危険すぎる。なので、このままアファレイド魔導王国がある西方向に進むか、ネイトがある北に進むかの二択になる訳だが・・・
「ただ、魔導王国は秋に襲撃を受けている。もう一つ言うと今かなり混沌としてるって聞いたんだが」
「助けに行きたいけど・・・ただ今の状態で行くのは危険だと思う。行く順番としては最後の方が良いんじゃないかな?」
僕は少々弱気になっていたけど、周りは真剣に取り組んでいる。この選択で街の様子が変化するのは間違い無い。いつもは呑気だと思うソニックやシルバーも明らかに表情が違うのが見て取れる。
「だな。ウォイスが言ってたあの山・・・出来る前に渡っときたいな、俺としては。彼処に拠点があるって言ってもまだ序盤だろ?そこを避けて通れば簡単だな」
「その拠点の具体的な場所が分からないのだがな。・・・とりあえずネイトに向かうのは決定で良いか?」
ウォイスの言葉に全員賛成した。とりあえず向かう方面も決まった事で、とりあえず皆一安心した様だ。

「で、俺の方だが・・・シルバーが持って来たエメラルドを使って、エメラルドの場所を探ろうとしたが・・・・・・無理だったな。強いて言うなら、街の端・・・ネイト方向とアファレイド方向にエメラルドの反応はあった事位か。どうもエメラルド自身も異変を感じ取って、以前よりも遠い距離からでも反応が出るみたいだ」
「異変を感じ取って・・・エメラルドに意思というものがあるのか?」
それは僕も思っていた。彼は何らかの事件が起こる度に絶対とは言わないが、カオスエメラルドを使っていた。シルバーもカオスエメラルドを使えるとは言っているが、やはり使える者と使えない者とでカオスエメラルドが選択しているのだと思うのだ。
そう言うと、ソニックは少々首を傾げながら答えた。
「あー・・・そうだな。俺も感じた事が無いと言うと嘘になるが、あの言葉とかが聞こえるのは幻聴かもしれないと思っているしな」
「だよな、たまに声が聞こえる様な気がするが・・・俺達もあまり分かってないんだよな。ああ、でも意思がもしあったとするなら、俺達は認められたのかもな。上手にカオスコントロールが扱えるから、とかで」
「思いを力に変える・・・怒りが憎しみ、悲しみもそれで増幅させてしまう事が出来てしまう。ただ、カオスエメラルドに意思があったとしても、その感情が一体何なのかまでは多分判断出来ないのだろうな。それが判断出来たら、今までの出来事は起きなかった筈だ。これは確定と見ていいだろうな」
ソニックやシルバーもカオスエメラルドについてはあまりよく分かっていない様だ。・・・いずれ事故とか起こしそうで怖いのだが、まあ彼らならば多分大丈夫だろう。

「最後に僕からなんだけど・・・僕もあまり見つからなかったよ。時間があまり無かったものだから、あまり遠くへは行けなかった」
「・・・まあ仕方あるまい」
「あ、でもシャドウに会いましたよ。『僕は少々調査をしなければならなくなった』とか言ってました。で、皆に伝言を預かってきました」
シャドウの話題が上がった途端、彼らは少々驚いた様な表情をした。
「・・・何て言っていたんだ!?」
「え・・・えーと。『僕を含むGUNは紅月の取り締まりを厳しくするつもりでいる。そして、皆より一足先にネイトに行く。おそらくエメラルド反応があるだろうが、どうもそっちで暴動が起きている様なので、行く時は警戒しろ。』・・・以上です」
「どのみち何処か行けば確実に何らかの事件に巻き込まれるのか・・・あ、そういえば」
シルバーは何かを思い出したかの様な表情をして、僕達に尋ねてみた。
「・・・フィート達に会ったか?行く道中で」
「?ああ、会ったな」
「俺も会った。シェイドは?」
「え・・・僕は会ってませんが」
「・・・成程。分かった。でも何故この質問を?まるで会う事が分かっていたかの様な言い方だが」
「いや、眠っている間にフィートが現れてな。多分魔術か何かの類だと思うが。・・・イレギュラーが発生しているって言われてさ。心当たり無かったからその事を伝えると消えたけどさ」
「イレギュラー?」
「ああ、何か知らないが紅月に干渉した輩がいるみたいでさ。何があったんだ?」

 

『初対面だけど、知っているの。だってご本人がそう言っていたの。【近づかないで】って』

 

ソニックとウォイスが戦っていて、シルバーが眠っていた時の事のあの謎の人物の発した言葉を思い出した。
(・・・もしかして)
そしてそれと同時にあの言葉を思い出した。決してこの事を言うな、言ったら二人きりになった意味が無くなっちゃうと。成程、あの人はこの事を警戒していたのか。ただ、二人きりになった意味が無くなっちゃうという意味がイマイチ把握出来ていなかった。・・・言い出すのにはまだ時間が掛かるかもしれない。
「・・・なあシェイド」
「・・・!?ふぇっ!?」
ソニックが言い出した時、僕はハッとした。急に聞かれて、少々変わった声を発した。
「お前はそのイレギュラーに覚えってあるか?」
「―今のところ見当たりませんね」
これが嘘だとバレてしまわないだろうか。そういう不安を持っていたのだが、彼らは全く疑う事もせず、開き直った。
「だよな、流石にこんな短時間でイレギュラーって奴が何かなんて分からないよな」
ソニックは笑っていた。いや、イレギュラーと思われる人がいるんですよー。誰かなんて分かりませんけどー。・・・と心の何処かで叫んでいた。

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「来たわね、シャドウ」
「ルージュか・・・結構早かったな」
僕が普通の人と間違われる様に僕は服を着ていた。当然いつ襲われても良い様にジャケットの裏側には拳銃とその弾を持っているが。彼女は僕が着ている服を見て結構驚いていた。
「貴方ったら、服装さえ整えば結構カッコイイのね」
「服装さえ、とは何だ。・・・まあ良い、指令の方を聞かせろ」
「ウフフ、それならこれがあるわよ」
ルージュはそう言って、タブレットを開いた。タブレットの上には幻影が写しだされていて、隊長が其処にいた。

『ルージュ君とシャドウ君だったね?お前達にはネイトに行って、ある店の調査をして欲しい。何でも地下にコアの様な物があり、其処で異変を起こしているという情報を手に入れたので、お前らは其処の店に行って、そのコアを破壊して欲しいというものだ』

「・・・コア?」
「ええ。どうやら紅月が仕組んだもののようね。もしかしたらそのある店もその輩が営んでいる可能性もあるわね」

『お前らには一般人に馴染む様に服を用意しといた。今回の任務を遂行時刻は何時でも構わないが、警察庁にはその店が紅月の輩のものであった場合、破壊する許可も出ている。だが、なるべく夜にしといてくれ。・・・失敗すればネイト周辺に異変をもたらす。気をつけてくれたまえ』

と、此処で、隊長の長のメッセージは途切れ、その幻影も消えた。
「で、支給された服がこれと。この服装という事はバーなのか?」
「でしょうね。まあこのサイズで構わないか・・・さて、何時行きましょうか」
「・・・明日の夜12時頃だ。一気に攻めるが、構わないよな?」
「ええ」
僕は彼女の微笑んでいる顔を見ると少々頬を赤く染めるのであった。

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続く。


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様々な事件が沢山続き、遂には心髄にまで及んで行って、己の中でそれを重く、鋭く貫くのだ。 嘘だらけの世界で信じる事が出来るのは、己自身ただ一人。痛い思いとかしても良いんだ、嘘をつくのはもうこれで最後にしよう。だからお願い。早ク逃ゲテ。