夢想の針鼠の夢跡

物語に隠されたもう1つの物語 『過ち』を知る物語

幻想の赤月 1-03章 core

破裂音は全体に響き渡った。
「誰だ!?」
「・・・やっぱり」
見覚えのある顔が映る。声、警戒しているその顔も何もかもが似ている。やっぱり、彼らが爆発させた様だ。目的が何かは私の知ったこっちゃないのだが。ただ、明らかに変ではある。以前までは、彼らと一緒に過ごした仲だったのに。
口を開いたのは相手の方だった。
「何故、お前は其処にいるんだよ!?」
「フフ、私はさっきから此処にいましたよ?それがどうしたのです?」
「チッ、引き上げるか」
相手は私を見ながら、逃げ出そうとした。しかし、逃げた先に別の人物がいた。私はその人物を見て多少は動揺した。普通に考えればそういう事もありえるのだが。立場が逆転すると、人はこういう動きをするものなのだろう。
「何となく来るとは思っていたわ」
「・・・裏世界で問題でも起きているとは思えないのですが?」
「問題が起きたっていう程でも無いけど・・・ちょっと用事があってね。あの人に代わってくれないかしら?」
「―無理ですね。用事ってなんです?」
そう問い詰めると、彼女は微笑する。何も言わないで、ある物を取り出す。ある物を見ると、私は目を疑った。
「貴方が今欲しがっているカオスエメラルド。それで交渉しようかな、ってね。私が差し出すのはもちろんこれ。で、貴方は・・・」
私の身体の全体を見てくる。気持ちが悪い。
「―その帽子、脱いでくれないかしら?」
「・・・それは」
「勿論、人の目には触れない様にね。ウォイスやフィートに感づかれたら色々とマズイしね」
「マズイ?何をしたって言うのです?」
彼女は何も言おうとはしなかった。知りたいならその交渉に飲んでもらおうか、そういった事であろう。別に彼女が知ってもデメリットは少ない。追われている(?)立場に立っている以上、言いふらす事も多分しないだろう。
「・・・良いですよ。しかし、絶対に他人に告げ口しない様にするのが条件ですが」
「それに関しては問題無いさ、単純に今後の話の謎の『回答』だけを知っときたいだけだし。お前自身のアイデンティティは失わせないから安心しろ。というかいなきゃ困る立場だしな」
「そういう事、だから別の所に移動しましょ」
「・・・。」
何も言わず、彼女に同行する。歩いた先は裏世界へと繋がるドアだった。歪んだ階段を下りていくと、裏世界にたどり着いた。・・・いや、厳密に言うと、あと三歩程踏み出せば、裏世界にたどり着く所で立ち止まった。古臭い感じのパイプが通っており、階段の手すりや床も少々掠れている部分があったりして、此処だけ見ればカジュアルな雰囲気だ。
「さ、見せて」
「―分かりましたよ」
彼女の言う通りに、私は帽子を脱ぐ。ファサと髪が風になびくと、私は微笑んだ。彼女は少々目を丸くしていた。
「ちょっと待って、何でそれを使っているの?!」
「偶然、見つけただけですよ。気になる様であれば、あの子に尋ねれば良いじゃないですか。リアルタイムで見ていますよ」
「・・・ありがと、もう良いわ。ハイ、カオスエメラルド
私はカオスエメラルドを受け取った後、再び帽子を深く被った。毛が出ていないか鏡で隅々まで確認した後、彼女の前でお辞儀をした。
「ありがとうございます。ところで、ウォイスやフィートに感づかれたらマズイとは一体何のことでしょうか?」
「・・・そのまんまの意味よ。カオスエメラルドを取られた事、きっとフィートなら黙っている訳が無いわ。あと爆破した犯人が私達だってバレたら色々面倒でしょう?」
「そうまでして破壊しなければならない理由が分からないのですが」
「あら、分からなかった?なら言っておいてあげるよ」
そう言うと、耳辺に声が聞こえてきた。

「        」

「―へえ、成程。まあ、黙っておいてあげますよ。貴方も必死なのですね」
「本来なら紅月やウォイスに取って貰っても良かったのだけど、彼奴が情報不足のまんま帰っちゃったから、こうならざるを得なかったっていう訳。まあ、シャドウは黙っていないでしょうけど」
「・・・彼、狙ってましたからね。ってことは奥のコアも破壊されたのですか?」
私の質問に彼女はぽかんとして口を開けていた。気のせいか、焦り汗がタラタラと流れ落ちている。
「え、まさか・・・気づかなかったのです?」
「ええ、全く」
「あれ、伝え忘れてたか?」
此処で彼も知らなかったと言えば、全く疑われずに済んだものなのに。彼女は彼の頬をビンタした。
「馬鹿!!それ早く言いなさいよ!!外壁が無くなって、暴れやすくなっちゃったじゃない!!」
「イデデデデ!!地下室があったなんて俺も知らなかったんだよ!!」
「だから何!?貴方、調べ忘れていたのかしら?『上下に行けそうな所はちゃんと調べておく』、これ注意して行ったわよね・・・? ・・・もう良いわ。こうなったら危険を承知で突っ込むしか無いわね。貴方はそのエメラルドをしばらく隠し持ってなさい。多分、知られたら排除に向かうのだろうし」
「言われなくてもそうするつもりですよ。・・・ご心配なく、エメラルドは渡しませんから」
笑顔を見て、少し安心したのか、彼女は振り返った。そして、右手に彼の腕を持って、階段を上がっていった。それを見送くると、私は少しだけホッとして、エメラルドを見た。
「・・・ソニックの方にも確か一個あったかな。確かシルバーが・・・ね。じゃあ今後は交渉と行きますか」
「―?交渉ですか?」
此処は私達以外誰もいない。此処の連絡通路は普通なら使われないのだから。

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「!?」
「え、何よコレ!?」
僕達が驚いて見た先には、黒煙と火災で満ちている建物がある。それが全く関係の無いモノであれば、僕達はある程度影響を受けつつも、普通に作戦を実行するつもりであった。しかし、その建物が『目的の建物』であったのであれば、話は別だ。
周りは色々と混雑している。近くに警察がいたので、その人から話を聞いた。
爆発が起きたのは17時32分42秒頃。まだ開店時間を迎えていなかった為、客が巻き込まれる様な事は報告されなかったが、準備をしていたと思われる女性一人と、男性二人が火傷を負い、重症である。おそらく女性の方は僕とルージュが見たあの女性と同一人物であろう。今現在、消火中であり、警察は立ち入りの制限をしたりするのに精一杯であるという。
・・・とここまで話を聞いただけでも疑問に思う所は幾つかある。まず、何故そこを爆破させたのか。
紅月がやったとは考えられない。情報では賛同している者の集団だと聞いている。捨て駒だと思ってやったにしては、明らかにそれに該当する理由が見当たらない。・・・あったとしたら内部で喧嘩だろうか?
「しかし、犯人が誰であろうと手口が酷いな」
警察の取り調べだと、爆発する前、仮面を被った人らが周りを調べていたとは言っていたが、多分その仮面も処分されているだろう。完全に狙っているのがよく分かる。
「突っ込むことは出来ないのか?」
「不可能よ、というか今入ったら大火傷して私達にも支障が出るから駄目よ」
「・・・地下にコアがあるのだ、その部分が処理出来ているとは思え難いのだが」
「処理する以前、突っ込んだら私が死ぬわよ!?」
「それもそうか・・・」
ルージュの言っている事はごもっともだ。しかし、コアがあってその周辺にあの変な怪物がいるという話があれば、僕だけでも行くのが一番だ。
「・・・行ってやる。貴様はあの怪物を見かけたら攻撃しとけ」
「あ、ちょっ!!」
彼女の話を聞かずに僕は炎の中を潜った。視界は烟り、前が全く見えない。それでも手探りで奥の方を探す。
「・・・見つけた」
引っ張り口の所に手が届いたのを確認すると、僕はその部分を引っ張り、開けた。予想通り、開けた先には地下へと続く階段が続いており、真っ暗だ。
僕はライトを取り出し、奥の方へ向かった。

「コアは何処だ!!」
辺一面を探してもそれらしいのは見当たらない。気持ちが悪くなりそうな悪臭は、長い間使われていなかっただけでは済まされない程強烈だ。そのせいでまともに捜査も出来やしない。
「・・・コロス」
機械音が微かながら響き渡る。そして、確かにそう聞こえた。機械ならば、この悪臭も、毒も関係無い。圧倒的に不利だ。だが・・・。
「―貴様が出る幕等何処にも無い!!」
機械音が聞こえた所よりも、コアを捜した方が良い。僕はその音を無視し、奥の方へと足を運ぶ。謎の機械も僕を追おうと必死だ。とはいえ、此処は地下だ。部屋に入れば確実に奴を叩く必要があるだろう。
・・・奴が此処のカオスエメラルドを持っている事はありえないだろう。奪った第三者とは考えにくいし、そもそもこの機械がそれらを把握しているのかすら曖昧なのだ。コアを壊したら隙を見つけて逃げよう。
そして、僕はお目当ての物が眠っている部屋に突入した。

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「!!ルージュ!!」
爆発場所に行ってみると、其処にはルージュがいた。爆発したのもあり、その建物は黒く焦げており、所々柱が崩れ落ちていて少々危険だ。
彼女は質問される事が何となく分かりきっていたのだろう。俺達に気付いた時には、建物に指差していた。
「シャドウならもう突っ込んだわよ」
「それって一体・・・!!」
「消火が終わる前にね・・・今は大丈夫よ、貴方位の実力ならすんなりと入れてくれる筈よ」
「でも何故、突っ込んだ?よほど重要な何かがあったんだろ?」
「あー、コアの破壊なのよ・・・どうしましょ」
ルージュもシャドウの対処で頭を抱えていたらしい。俺が言える事ではないが、無理をする奴だ。
「ソニックさん、地下で何か大変な事が起きているっぽいですよ・・・変な物が彷徨いてます」
シェイドは地面にコンコン、と突っついている。『此処らへんから』という意味合いで使っているのは言うまでもないが、この状況で下に向かうのも危険すぎる様な気もする。
「突っ込んでみるか?」
何故かシルバーも乗り気である。非現実な事に直面して興奮しているのか、はたまた未来世界の生活を思い出されたのか。地面に手を乗せて感覚を探っている。何をしているのか、そう聞いてみれば「サイコショックを弱らせた物で地下があるかどうか調べている」そうだ。俺にはさっぱり分からないが、割とすぐ下に部屋の様な物があるらしい。ただ、その下はどのような構造になっているのかは分かっていないらしく、結局は収穫無しである。
地面に一気に突撃するならあるいは・・・
「其処に部屋があるの?」
唐突にシェイドがシルバーの前に立って笑っている。嫌な予感がする。
「?ああ、まあそうだが・・・」
「人の気配はある?」
「多分無いな、此処の地下に繋がっている所は多分其処のバーだけだし、あったとしたらシャドウ位か?だが、何をする気なんだ?」
「じゃあ、突入しよっか」
「ハ?!ちょ、ちょっと待て・・・!!此処で穴開けたりしたらヤバくないか!?」
「いやいや、穴は開けないよ?だからこうやって・・・」
半ば強制的に手を繋がれたのが見れたが、その直後、二人がドロドロになって消えた。・・・土が水を吸収する時みたいに。二人は液体化でもしたのだろうか。
・・・ちょっと待て。二人・・・?
「!!彼奴、俺を忘れているな!!待て!!」
俺は地下に繋がる隠し階段を探し、其処から突入する事にした。

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徐々にこの世界が大きく、揺らめいている様な視界になっていく。鋭い閃光は幾つも放っていて目が眩みそうだ。その瞬間、明るかった筈の青空や建物が急に見えなくなり、ぶつぶつとした物だけが見える暗い空間の中にいた。下から上に流れている事に気付いた時、今自分が何処にいるのか、どんな状態であるのかが分かった。
「もうすぐで地下に着きますよ」
其処には誰もいない筈なのだが、聞き覚えのある声がこの空間に木霊する。あるのは透明な雫だけだ。・・・そんなに浸透するのが早いのか。少々驚いていると、大きな壁が目の前にそびえ立っている。これを突っ切るのか、ぶつかったりしたらどうするのだろう?
「大丈夫、今僕達は水と同類ですからぶつかって怪我をする事は無いですよ」
そんな声を聞いた時には既にその壁に吸い込まれていた。何が何だかよく分からないが、先程よりももっと暗く、遮断されている様にすら思えた。だが、それもそこまで長くなかった。ハッと気付いた時には、地面が出てきて、そのまま大きくなってぶつかる。あの状態で落ちたりしたら骨折しそうな位高かったが、不思議な事に痛みは感じなかった。
「到着~、体を元に戻すよ~」
と言った声と同時に視線が徐々に高くなっていく。それと同時に揺らめいてた視界も徐々にしっかりと映る様になり、30秒もしない内に普通の視界に戻った。手足を見るが、元通りに戻っているのが見て取れた。
「な、何があったんだ・・・」
「水になる魔法ですよ。それで土を伝って、此処に落ちてきました。水なら其処まで痛くないってウォイス様が仰ってましたから」
「そ、そうか・・・ただ、思ったより広いな。ソニックは・・・あ」
完全に忘れていた。しかも広い感じがして余計駄目の様な気がする。シェイドも完全に忘れていたらしく、少々焦っている様だ。
「・・・ど、どうしよ!!でも染み込んじゃった以上、戻れないし・・・」
「!!カオスエメラルド・・・ホッ、なら帰れるな・・・?」
先に何かいる。・・・ステーションスクエアで見たあの化物そっくりだ。何か変な物を持っているが・・・?彼を見ると、険しい顔で先を見ている。部屋である以上、此処を出るには奴らを倒さねばならないのは、俺でも分かる。
「・・・大量発生している、切り崩してても元を崩さない限り、再生されている様にも思えるんだ」
「再生するかは別だが、見た感じ彼処にいた時よりも強くなっているだろ・・・ただ放し飼いか?操れていない状態で此処離していないなら無意味なんじゃ・・・」
推理等している余裕など無かったのは承知。・・・奴らは俺達の存在に気付いた様で、見つけた瞬間に間合いを取って構えていた。俺は周りに物が無いか確かめて、それらを手に取るのであった。

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彼は驚いていた。何せ彼奴だけが扱えると思えていたその能力を、私が使っていたのだから。 
「何故、それを」
殺されては意味が無い。私だって死にたくないのだ。それくらいの力は使うつもりだ。
「驚いているらしいな、誰もシルバーだけが扱える訳ではないのでな」
「―上等じゃないか。そのまま襲って、英雄呼ばわりしてみるが良いさ。殺せるものならな」
「殺すつもりは無いさ、お前は大切な物なのだしな」
「・・・?」
相手は襲いかかろうとしない。あくまで追っているだけの様に見える。とはいえ、この状態をいつまでも続ける訳にはいかないし、コア部分にあった建物が壊れてしまったのでたまったものじゃない。
「ハッ、もしかしてだが、あの爆発はお前らのではないな?俺達でも無いのだが」
「・・・ご名答だな。それにしても誰がこんな事を―」
その場所を見た瞬間、そこから鎖が狙ったかの様に飛んできた。距離があったので避ける事は簡単だったが一体誰が・・・
「ウォイス様、急いだ方が良いですよ」
その方向から奴がやってくる。黒い服に身を纏った危険人物。会ったら逃げる様にと言われていた奴だ。しかし、ウォイスも唐突な登場に驚いており、心なしか警戒している様にも見える。罠か何かか?
「爆発したの、その人の建物でしてね。―二人方にとっても不都合な出来事があったでしょう?フフ、そうですよね・・・?だって『この中にいる奴ら全員やっていない』ですものねぇ・・・?」
「ガナール、お前は一体何をした・・・?第一お前は・・・」
「そんな事はどうでもいいじゃない話ですか」
ガナールと呼ばれた者は笑うが、完全にウォイスを敵視している様に見える。彼も承知なのだろう、あの笑みの時点で構えていた。
「爆破しろという命令はしてないぞ」
「いえいえ、私が爆破したのでは無いんですよ。ウォイス様にとってその爆破の利点なんて何処にも無いですし、それに・・・あ、これは言わなくてもいい事ですよね。貴方様には把握しているでしょうし。―で、貴方は誰です?」
突然私の方に顔を向けて笑いかけてきた。敵なのにも関わらず、緊張感の素振りも全く見せずに普通に接している。その普通が逆に恐怖を抱くのだが、きっと彼はそれを分かりきっているのだろう。単純にそう接する事が彼なりの接し方なのだろうか。
あと、性別不明の人は彼なので使っているだけで、実際ガナールの性別なんて私にも分からない。声も中性的でどちらでも別に違和感の無いのだ。
「・・・マインド、何故名前を聞く?」
「いや、だって分からないと呼びにくいじゃないですか。・・・私はガナール・イプシオンと申します」
自己紹介やマナーの様子は完全に紳士的だ。しかし、時々無意識に行う仕草自体は女性的だ。これを演じているとしたら相当凄いだろう。
「フフ、ではマインドさんには選択を三つあげますね。一つ目は『今回は何も無かった事にして、騒動を抑える』。二つ目は『このままコアの所まで逃げて解決されて紅月全体の目論見もろとも公の場に露出する』。三つ目は『この場で戦って殺される』。どれが良いです?他の選択をした場合、交換条件で飲んでもらいますけど」

究極の選択を強いられた。この時点でぼくは彼が敷かれた線路を進んでいた。他の選択なんて、出来る訳無かったのだ。

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続く。


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サランダー様よりマインド君お借りしました。

様々な事件が沢山続き、遂には心髄にまで及んで行って、己の中でそれを重く、鋭く貫くのだ。 嘘だらけの世界で信じる事が出来るのは、己自身ただ一人。痛い思いとかしても良いんだ、嘘をつくのはもうこれで最後にしよう。だからお願い。早ク逃ゲテ。