夢想の針鼠の夢跡

物語に隠されたもう1つの物語 『過ち』を知る物語

幻想の赤月 1-05章 Manifestation of madness

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発砲というと、身を守る為に撃ったか、或いは何を壊す為に撃ったかの二択になるだろう。 
それどころか、それは何に対しても同じなのではなかろうか。例えば、その嘘が身の周りにどう影響及ぼすのだろうか、と考えたとしたら。もしかしたら、守りたい人の危機を結果的にではあるが助かる事も出来るし、結果的に人を殺してしまうきっかけになってしまうかもしれない。物は考えによるものだ。その考えは皆が同じという訳でもないので、自分からすればそれは正義だと思っても、相手からすれば只の人殺しの可能性だってある。無自覚の場合すらあるという事か。
今の状況もそんな感じなのだろう。
笑いながら私は彼の元を離れる。これは守る行為でもあれば、攻める行為でもある。何故ならば、この行動は真意を考えさせる内容なのだから。
前に行った所に戻ってみると、仮面を被り、全身をローブで隠す二人の姿が見えた。私の姿を見つけると、その人達は仮面を外してニコニコと微笑んでいた。
「シルバー達が今地下で戦っているんだってね」
仮面を外した女性は、先程言ったシルバーととても似ている。まあ私は見ていたので分かるのだが、他の人からすれば分からないのだろう。彼女が外したのを見たもう一人の男性は、同じように仮面を外す。こちらはソニック似だ。男女の体格差や、目の色が少々異なるといった事を除けば、殆ど分からない。最悪すり替えても問題無いだろう。
「ええ、確かに戦ってますね。下のコアを壊す目的でやっているのでしょう」
「・・・壊して大丈夫か?」
今まで男性の方はあまり喋らなかったのだが、今回はちゃんと出してくれた様だ。隣の女性がチラリと彼を覗くと、彼はおどおどして顔を伏せた。どうやら女性の小間使いにされているらしく、彼からすれば彼女の存在はとても恐ろしいものらしい。
とはいえ、その不安の声はちゃんと拾っておかなければ、後々大変な出来事が待っている可能性がある。私は彼に優しく語りかける?
「おや、それは一体何なのですか?知りたいですね」
「・・・えっとな・・・・・・このままコア自体の破壊をやったら何か変な事起こるんじゃないか?なんかこう―コントロールする様な感じなのだったらさ、むしろ壊さない方が良いかもしれないんじゃないか?」
「コントロール?」
「例えばさ、何かニュースになっている黒い連中とか」
そう言っている時、女性は冷たい声で言い放った。折角取り繕っていた話が・・・
「・・・確証が出来ない以上難しいと思うわよ」
「で、でもさ!!万が一の事も考えたら・・・」
「コントロール出来る出来ないの問題じゃないの。このまま放置したら異変に関連する可能性も否定出来ないんでしょ。なら壊さなきゃ」
「しかしだな・・・」
そうこう口論していて所を見てただ苦笑いをしている私だが、それを一瞬で止める大きな出来事があった。それは・・・
「・・・・・・成程、貴方達だったのですね。建物に爆弾を仕掛けたあの仮面の正体は」
「・・・!!」
思わず背筋が凍った。私は無関係だが、目の前の相手が大物であったので、うろたえてしまう。・・・正直に言おう、能力を見れば私の天敵だ。
彼女はくすりと笑っているだけだったが、内心は動揺している筈だ。
「ああ、天国か地獄か決める所の裁判長のフィートさんじゃないですか。私に何か御用で?」
彼女はそう言うのだが、内心少々動揺しているのだろう。手を震えからそれが読み取れる。
「全く、私の監視も働かないでくれたのは貴方が工作したからですね?シャックさんだけでは行動は不可能ですしね。で、ウォイスの従者である貴方様は何故此処に?主人のご命令を破棄すると?」
「アハハ、私はウォイス様には自由行動を命じております故、この行動には何も問題もありませんよ?」
口こそ達者ではあるが、全体は静寂と冷たい空気が広がっている。少々呑気であるソニック似の彼は空気を読めずにいた。

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視界に捉えたモップ(という名の刀)は僕に向けて放ってくる。どうにかしてコアに当たる事が出来れば、まだ楽になれる気がする。距離は10m程だろうか。後ろを見ながら、前の気配を探りながらで大変だ。かと言ってあんな鋭利な物を胸元に当たれば死ぬ事はなくても治療に時間が掛かる。制限時間が決まっている以上、気絶するのだけは絶対に許されない。
「避けまくっても意味があるか!!」
敵がいないお陰なのだろう、振りまわしている。一応予備を持っている可能性を考慮して、近づく事はしていない。
コンッ、という音が足元から発せられた。どうやらコアまで辿り着けた様だ。僕はそのまま立っている。この時、油断していた訳ではないのだが、奥に白いハリネズミの姿が見られた。僕達の雰囲気で行動出来ないのか、僕のやろうとしている事を察して行動していないのかは分からないが、構えた状態で待機している。
「ハァッ!!」
「はっ、甘いな」
相手が機械のお陰で、僕の策略は見事に成功した。僕は上に跳び、奴が狙いすまして放ったモップはコアの中心を見事に貫いた。瞬間、赤く滲んだそのコアは光の筋を次々と数を増やし、やがて僕達の視界が見えない位の明るさとなった。それは奥にいた彼らにも同様らしく、手で目を覆い隠していた。後ろで光っているとはいえ、目くらまし出来る位の光を背後で受けると少々を熱を感じさせる。そして、真っ白になった時にピシッとガラスにヒビが入ったあの音が聞こえ、数秒もしない内にあの発していたあの光は、闇を光で照らす時間よりも早く、闇に包み込まれてしまった。
その間、奴は僕の目の前まで飛んできて殴り掛かろうとしていた。明暗の差で奴が目の前にいる事はすぐに分かったのだが、どの様な態勢で戦っているかは検討もつかず、どうやっても駄目だ。だが、心配は無用だ。
「シャドウに傷付けるな!!」
「!!」
視界が完全に回復していない状況の中で、サイコキネシスを使って奴の攻撃を封じ込めるのはお見事と言いたい。とはいえ、正確に掴み取れているかというとそうではない。あくまで『大きな塊』として操っているので、例えば今殴りかかっているその腕をへし折ると言った事は出来ない。まあ、機械なので難しいのだろうけど。
「シルバー、大丈夫か?!」
大声でそう叫ぶと、彼はパッと能力を使わなくなり、それと同時に奴は地面に吸い寄せられ激突した。
「大丈夫だ・・・悪い、なんか入りづらかった」
「そもそもお前肉弾戦其処まで強くないだろ」
「はぁ、まあ、そうだけどさ・・・」
「シャドウさ~ん、シルバーさ~ん、僕を忘れないでくださいよ~・・・」
そう言うと、しゃがみこんでいたシェイドがひょこと出てきて、僕達の所へ。
「これでコアは撃破できたか?」
シルバーはそう言うと、コアだった物をサイコキネシスで浮かばせる。シルバーから発している緑の光以外に輝いている様子はなく、ルビーの様な赤黒い色をしているただの石の様だった。この様子から見ても、もうこのコアはただの石になったのだろう。
「・・・出来た様だな」
「やった~!!とりあえずは任務完了ですね!!」

・・・いや、これで終わったとは考えにくい。確かにGUNの任務である『コアの調査及び破壊』は成功した。だが、肝心のカオスエメラルドが見当たらない。おかしいのだ、大抵この様な事件に携わった時はいつも関連していたのだが・・・
突然通信機からルージュの声が聞こえる。とてもとても焦っている様な声をしている。
『シャドウ、シャドウ!!』
「・・・聞こえている」
『ああ、ようやく繋がったわ。今すぐ入口まで戻って!!あの黒い連中が急に暴れだしたのよ!!急いで!!』
「・・・!?」

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???にて

久々にこの部屋に戻った様な気がする。埃もそれなりに溜まっている事だろう。そろそろ掃除をしなければならないのかもしれない。
古ぼけた手帳には、昔俺がこなしていたスケジュールがビッチリ詰まっている。『王女の誕生祭』、『出張会議』・・・数々のスケジュールとは少々異なるものもあったが、今となってはもうそれは俺の思い出となって色鮮やかに描かれている。
「・・・さて、様子を見るか」
普段鍵を閉めている部屋に入ってみる。此処は正直見てはいけない物が沢山ある。今は見せない方が良い物なんかもある。なので、こういった物は誰にも悟られない様に保管しておく必要がある。この鍵の掛かった部屋は、そんな目的で置いてあるのだ。
目の前には俺が一番大切にしている『アレ』があるのだ。あるのだ。・・・ある筈なのだ。
「無い・・・無い!?」
一瞬遂に自分にも老眼が来たのかと思ったのだが、そうではない。私がいつも大切にしている『アレ』が無い。無い。無い・・・?
(だが、俺はこの部屋を教えた事は無いんだぞ!?ガナールやラヌメットですら教えた事は無い、なら何故・・・)
ど忘れ、という言葉で済んでしまえばそれまでだが、今回ばかりはそういう訳にもいかない。身分が取られる上、謎が謎を呼んでしまう。
「どういう事だか、説明して貰う必要がありそうだな・・・」
友人だろうが何だろうが関係無い。駄目だ。潰すしかない。いや圧迫が良いのか?または絞殺か?いや、ここは・・・・・・・
『記憶消去か』
それしかあるまい。見られては困るのだ、そうするしか無い。副作用がどうこうなんて言っている余裕等ない。消さなくては。これを行った張本人を・・・!!
味方であろうが敵であろうが関係無い。敵だったら潰せば良いだけの事。所詮奴らなど取るに足らないのだ。

「さあ、犯人は誰だ?」

そんな声が脳裏に囁き、赤い景色が思い浮かんだ。

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「何だ、コイツら!?」
「驚く暇があったらさっさと撃て!!・・・!!グワッ」
「隊長!?」
「落ち着いて!!誰かアファレイド出身の人はいないの!?」
ルージュも少々キレ気味のご様子で、撃退させろとは命じているが、むしろこちらの方が劣勢でありそのまま俺達に襲いかかってくる。当然GUNの人達もそれに対抗するのだが、銃では中々攻撃が通じない。形がなさそうである様な存在だからであろうか。魔術を扱える者が対抗出来るであろうと判断したのは立派なのだが、場所がネイトである為に、扱える人が見当たらない。アファレイドに近い所であれば或いは・・・
「ウォイスが来るまで対抗するんだ、OK?」
ホーミングアタックを試みてもキリが無い。どうやっても難しそうだ・・・と思っていた矢先。
「キシァアアアア!!」
悲鳴があがった。人の叫び声ににも似たその悲鳴は、化物からだった。振り返ってみると、声の主と思われるその化物には白い槍がお腹に深く刺さっていた。と、同時に刺さっていた所から徐々に周りの背景から同化するかの様に消えていく。そして、その槍の先にいたのは・・・
「What!?ガナール!?シルフィやシャックもいるじゃないか!!でも一体何故・・・?」
驚きの声を出している間にもその槍は全体に刺さっていく。巻き込まれるのかと不安の表情をしているGUNの人もいたが、魔術の扱いには慣れている者なので当たる事もせず、化物にだけ刺さっているのが見えた。槍以外にも文字が刻まれているナイフがあったり、鎖があったりしている。まあその道具の多方はガナールの持ち物なのだが。そして、シルフィの手持ちにはカオスエメラルドが・・・
「一体、何が起きているんだ・・・?」

唖然としている間にガナールが俺の所まで寄って来た。色々と混乱している中、ガナールは察したのか、耳元で囁く。
「混乱しているのでしょうけれど、とりあえずはこの問題が解決してからです。貴方達が壊そうとしたコアは、壊す事が出来ました。が、そのコアは大地の震えをさせる補助の道具である同時に、あの黒い奴らの制御装置でもあったらしく、今現在はこの有様です。・・・何故此処にいるのか疑問にあるのでしょうけれど、それも後の話にしてください。・・・私は『本物の』ガナールですので大丈夫ですよ」
早口ではあったが、ガナールの言う疑問はどれも的中している様に思えた。
「あの騒動はお前達が起こしたのか!?」
「その話は終わった後で・・・このままだと死人出ますよ」
俺の話を無視され、そのまま化物をやっつける為にナイフを投げる。悲鳴を上げるや否や、刺さった化物は消え去る。三人共弱点を既に把握しているらしく、三人が現れてからは一気に形勢逆転し、10分を経つ頃には多方いなくなっていた。
「フフ、結構呆気なかったわね。魔術使えてなかったらどれほど時間が掛かることやら」
クスクスと笑うシルフィ。
「俺達が来なかったら大変な事になってたな。・・・アイツらはどうしたんだよ?」
胸を撫で下ろす様子が伺えるシャック。
「・・・アイツらなら、此処に」
階段先を見つめているガナール。
問題は山積みである。ガナールはまだしも、シャック達が来るのは正直意外だ。色々と問い詰めなければなるまい。とは言うものの、とりあえずは礼を言う。
「助かったぜ・・・、残りはGUNの奴らがどうにかしてくれるだろうな。で、色々と質問があるのだが」
「―ウォイス様の書物に行ったんです。それを行う道中でシルフィさん達と会いましたよ。『カオスエメラルド』が目的だったらしく、最終的には目的が一致するので、一緒に行動していた訳ですよ。・・・これから先はアイツらが来た時にでも」
「あ、ああ・・・・・・あ、これだけは聞いていいか?」
「何でしょうか」
「ウォイスにこの話はしてあるのか?」
「してる訳ないじゃないですか。感づかれたら私が消される可能性があるので」
「・・・?」
「まあ、そこも後でかいつまんで説明しますから・・・」
そう言って微笑んでいる姿は比較的温かな感じだった。まあそれが偽物の可能性もあるだろうけれど・・・ガナールだし。

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続く

next 1-06章  improvement

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そろそろネイト編が終わるのだけれど、長いよ・・・w 結末まで行ける様に頑張ります。

様々な事件が沢山続き、遂には心髄にまで及んで行って、己の中でそれを重く、鋭く貫くのだ。 嘘だらけの世界で信じる事が出来るのは、己自身ただ一人。痛い思いとかしても良いんだ、嘘をつくのはもうこれで最後にしよう。だからお願い。早ク逃ゲテ。