夢想の針鼠の夢跡

物語に隠されたもう1つの物語 『過ち』を知る物語

幻想の赤月 2-05章 Identification

 
「ウォイスという名を久々に聞きましたよ。元気にしていらっしゃいます?」
「ええ、勿論です。失礼ですが、あの方とのご関係はどうなのですか?」
「元仕事仲間と言った所でしょうか。・・・王宮に住む前は教師をしていたのですよ」
私は今、ウォイス様に関してで知っている人を偶然見かけ、そして会話している。相手は中年男性で、名はノヴァという。彼は以前高等部の教師を勤めていた魔導師で、植物魔術が得意なのだという。一応、定年退職する程の年齢は行ってないらしいのだが・・・。
だが、それよりも気になったのはウォイス様が教師をしていた所だ。彼はアファレイド人なので言ってはいけないのだが、不老不死なのでまず確実にアファレイド生まれではない。色が偶然一致しただけで此処まで行けたのであれば、相当出世した事になる。王の従者もやる事になったのだ、よほど努力したのだろう。
「ところで、貴方は教師をしていらしたと言っていましたが、何故止める事になったのですか?彼処は割と給料良かったと思うのですけど」
「・・・あんまり言いたくないんですが、まあ良いでしょう。ですが、その為には場所を変えなくてはなりません。なにせ、この情報は極秘ですから」
「・・・?」
「そうですね・・・貴方、ウォイスの従者なのでしょう?本の情報では確か幻術がお得意だとか。ならば、幻術に使う想像力を利用して空間を一時的に創り出す事も出来るかと思うのですが?」
妙に挑発的だ。確かに想像力は少しは必要だし、空間にもそれは使う。だが、どうもその言葉を聞くとあんまり使いたくなくなる。言葉のトーンを聞く限り、挑発するつもりは無いだろうし、素である事には間違いない。
「ええ、可能ですよ。しかし、あらかじめ言っておきますけど、弄り操る事が出来る私と戦う気があるならば、止めといた方が良いですよ」
「おや、変に受け止められましたか。不快に思ったのであればそこは謝りますが。これでも素なんです」
「それくらいは分かりますよ、ご安心を・・・フフフ」


~中間~


「これでよろしいでしょうか?」
「ええ、この閉鎖的空間であれば話せられます。ありがとうございます」
「・・・極秘にするという事は王宮絡みの出来事でもあったのですか?」
「王宮絡み・・・ええ、確かに身を隠して貰っている意味では王宮絡みかもしれません」
身を隠している?ならば、何故あの時普通に名乗っていたのだろうか?
「ノヴァという名前が偽名という事ですか?」
「いえ、違います。行方不明という事になっています。おそらく、ウォイスは行方不明になっていると勘違いをしている事かと」
行方不明と聞いてようやく一つ思い出した事がある。そして、ウォイスと関連している事と組み合わせると、こんな予想が出てきたのだ。
「・・・・・・もしかして、貴方は中央の高山辺で紅月の襲撃に遭った被害者なのですか?」
私がそれを言うと、彼は眉を動かした。
「ご名答です。流石ですね、ええ。そうですよ、私はあの被害に遭ったのですよ。歳が歳という事もあり、あの時は生きた心地がしませんでしたよ」
「彼処確か人少なかった筈ですし、紅月に遭遇したのであれば、ウォイス様や私位の人じゃなければ殺されてますよね・・・?」
「勿論、コテンパンにされましたよ。偶然通りかかった女性が私を見つけて治してくださったのですよ」
「・・・その人は誰です?」
「シアン・クロックリバーという人ですよ。此処の人ならきっと分かる筈ですよ、主席の人ですからね」
そういえば、アファレイド魔導学校にそんな事が書かれていた。生活魔術であればウォイス様をも超えるだろう・・・と。成程、回復魔術のスペシャリストだったという訳か。
「でもまあ、その人のおかげでこうして普通に暮らせているのですよ。身の危険を感じたので、王宮に頼んで紅月の恐怖が完全に無くなるまでこうして身を隠しながら匿って貰っている訳ですよ」
ノヴァはそう言って微笑む。しかし、不可解な点は幾つかある。
まず一つ目。コテンパンにされた等の話を聞く限り、少なくとも私の方が強いのだろう。それを踏まえた上で考えれば、決して紅月の脅威にはならない筈だ。もし戦う事になろうが、ほぼ確実に紅月に白星が上がるであろう。それを考えてみた結果、出てくる疑問は『何故其処までして彼を狙うか』、だ。其処までするからには必ず理由がある筈なのだ。
「襲撃に遭った理由に検討はつきます?」
「何となくは。・・・おそらくは過去との抹殺を図ったのでしょう。証拠に、彼が学生だったご友人等も襲撃に遭ったという情報が何件が出ています。ついでに言えば、ウォイスとも何度か衝突したとか。今年の秋と、彼らが失踪する直前辺・・・此処まではおそらく新聞でも見ればすぐに分かるでしょう。ですが、それよりも前に私とウォイスは彼に一回会ってます」
「・・・三回ですか?」
「私が見ただけでは、の話ですけどね。王が殺害されたすぐ後にも顔を合わせてます。ただ、あの時彼とウォイスはそれぞれ不可解な事を言っていたんですよ。ウォイスは彼の豹変に心覚えがあると言っていて・・・」
「心覚え・・・ですか?おかしいです、あんな事件はよほどの事が無い限り起こりえぬ出来事の筈なのですが・・・」
「そうなんですよ。それに、彼・・・紅月は今と比べたら大分穏やかでありました。これではまるで・・・」
「『何故紅月がこんなになったのか検討がついている』みたいだと・・・?検討がついているから、あんな事を・・・?」
検討がついている事で、彼自身がもう彼は助からないと判断したとすれば、大事であろう人物をその手で殺す事もきっと厭わないだろう。・・・でも、私は彼にそんな勇気があるとは思ってなかった。確かに、あの方は獣の様に暴れ回る事はあっても優しすぎる。例えどんなに憎悪や嫉妬に囚われていても、大切な人の前になればおそらくは・・・。だから、私に対して何処か遠慮がちなのだ。
(そんなだから、私は冷たくしなきゃマズいんですよね)
「検討がついていらっしゃる部分は幾つかありましたよ。あの時出ていた殺気は・・・疑いようがないですから。ああでも、ウォイスさんならやりかねない事かもしれないですね。威嚇していた訳ですし。それにしても、一体何があったのでしょうかね・・・」
何があったのかは明白だ。表面は殺人鬼、中身は助けを求めている状況の中であれば、確実に彼以外に誰かいるのだ。私みたいな人物がおそらくいる筈なのだ。私の場合は許可を得てからとり憑くが、其奴はおそらく強制的だろう。だが、私は知っている。強制的にやれば、長く持つ筈が無いのだ。私がかつて、あの人に押さえつけられた時の様に―。
「知りませんね。・・・話を戻しましょうか。リーナという人物を私は探しているのですが、知りませんか?」
正直、魂がどうのこうのというお話はする気がしなかった。幾ら此処でもそういう話は殆ど聞く事のない内容だからだ。
「!!何故探しているのです?」
「極秘の情報を教えてくれたのですから、お返しに極秘の情報を教えておきますよ。紅月の元の姿であるラヌメットに接触出来たのですよ。汚れの無い、あの悪戯ウサギとね」
「何ですって!?で、ですが、彼は今・・・」
「ええ、お察しの通りに。ですので、私は別ルートで見つけたのですよ。術は教えられませんけどね。とにかく、彼の話を聞いてみるとどうやら乗り移っている存在がいるみたいで。彼が乗り移る前に乗っ取っていたであろう人物がリーナという存在だったらしいですよ。それで、私はそのルートを探れば根本が分かるのではと思いましてね、探している訳です。・・・その反応だと知っている様なので教えてくれるとありがたいのですが」
ノヴァは若干悩んでいる様に見えた。リーナという存在を知っているのは明白だが、予想通り一筋縄ではいかない何かがあった訳である。
「良いでしょう。リーナ先生は私が初等部だった時の先生でしたよ」
「!?」
思わぬ所に宝が眠っていた様だ。正直こんな所にあるなんて微塵も思っていなかったので、ラッキーだ。
「ええ、そうです。あの時、私は見ていたのです。誰かが先生の首を絞めていた所を。そして、その誰かがバタリと倒れて、先生も倒れて・・・起こしたら何故か気絶して・・・それで起きた時に・・・ウォイスさんがいましたね。そういえばあの時が初対面でしたね。当時は彼がいた事に疑問を抱いてましたが、貴方の会話を聞いてようやく何故彼処にいたのか分かりましたよ。不老である事も何となく」
「!!・・・フフ、結構面白い事を言うのですね。それで、その解答が正しかったら、貴方は一体何をするのです?」
「変わらず私は本を読みふける事になるでしょうね」
「素晴らしい解答ですね。ええ、それが正解でしょう。これ以上首を突っ込む事はよした方が良さそうです」
「変わったお方ですね、ウォイスさんなら必ず苛立っていますよ?」
「私は基本的にポーカーフェイスを保っておりますので割と普通に出来る事なのです。・・・顔に出す事は稀なのですよ」
「それだと今苛立っている様に聞こえるのですけど」
「苛立ってませんよ?むしろ、感謝の気持ちで沢山です。フフフ・・・」
実際の所、私は何とも思ってなかった。感謝しているのは事実だが、私は一切の気持ちを切り捨てていた。それよりも、私は其奴の存在が一体何なのかが気になった。ウォイス様が執着する其奴の存在は完全に排除しないといけない。そんな様な気がしたのだ。おそらく其奴はウォイス様では敵わないのだ。私の存在がいなければ、きっと倒せない。或いは、彼はこうなる事を想起していて、其奴を倒せという本性を私に埋め込まれていた可能性もあるかもしれない。そんな事はどうでもいいのだ。其奴は敵なのだ、怯えていてはいけない。そうでなければ私はいなくなり、其奴が私をなりきってしまうのだ。
やはり、あの人と共に行動するべきなのだろう。少なくともあの人と共にいれば、あの人と共々其奴にやられる事は無いだろうし、そろそろ記憶をリンクしなければ差異を生じるきっかけになりかねない。問題はあの人が何処にいるかだ。でもまあ、其処までは難しくないだろう。
「そろそろ出ましょう。本日はありがとうございました。・・・あ。それと」
「何でしょう?」
「・・・上の階、行ける様にしておいてくれないですかね?」
「おや、行けないのですか?」
「・・・いえ、何でもないです。それではご機嫌よう」
微笑んでいる私は、彼を見送る事にした。そして、その後はあの人を探すのだ。しばらくはそれで構わない筈だ。

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「アッシュ、久しぶりだね!!元気にしていた?」
シェイドはそう言うと、アッシュと呼ばれた男性の腕をブンブン掴んで振ってくる。
「その様子だと平気の様だな・・・ウォイスはどうした?確か手紙ではそういうのあったと言っていたが・・・」
「ああ、今とある事情で離れているんだ。事情が何かは僕も分からないけど」
「・・・そうか」
そう言うと、彼は俺を睨んできた。敵視している訳ではないのは見れば分かるが、威嚇されている様な気がする。『お前は知っているのだろう?』と言っている様にすら思えた。
「あーシェイド?其奴誰なんだ?」
「あ、ゴメンね。えっと、彼はアッシュって言うの。こう睨んでいる所もあるけど、本当は優しいから大丈夫だよ」
「俺はソニック、ソニック・ザ・ヘッジホッグだ。で、白い彼がシルバー、黒い奴がシャドウだ」
「白いとか黒いとか言うのを止めろ。・・・失礼した、僕はシャドウだ。シルバーは今治療中だがな」
「へいたっ!!」
ちゃんとした言葉で話さなかったのが気に食わなかったのか、シャドウは思い切り俺に拳骨した。冗談の割には何か力が入ってて、普通に痛いのだが・・・。後で加減についてちゃんと言った方が良いのかもしれない。
「・・・ソニックって確かあのヒーローか」
「おう、よく分かったじゃないか。此処まで知れ渡っているとは・・・」
「・・・・・・英雄が何故此処に来た?わざわざ此処まで登ってきて」
「行っている最中に立ち寄っただけさ。エメラルドの反応もあれば、それも見たかったしな」
「貴様なら、多分教会の奴らも受け入れてくれるだろう。・・・夜になったらまた会おう。この事は決して人々に言ってはならないぞ、嫌われたくなければな」
「あ、おい・・・」
「シェイド、積もる話はあるだろうが後だ。何が重要かはお前も分かっているのだろう?」
「う、うん」
「・・・それでいい」
それを言ったきり、彼は宙を舞って何処かに行ってしまった。急な出会いにシェイドは喜んだ様に思えた。・・・が、一つ気になった点があった。シャドウとシルバーの表情が険しいのだ。
「・・・?シャドウとシルバー、何故そんな顔をする?」
「あまり関わるのは止めた方が良さそうだ」
「・・・アイツ、何か嫌なオーラが漂ってる」
シャドウは理由をしっかりと持った感じだが、シルバーは直感的である。とはいえ、『あまり関わりたくない』という事に意味は同じであろう。シェイドがその言葉を聞いて腹が立たないか心配だったので、俺はちらりと彼の表情を見てみた。・・・マズイ、気まずい雰囲気が完全に流れている。なんとかしないとマズそうだ。
「あー・・・彼がどんな人物であるかは、とりあえず後回しにしようぜ?人々に嫌われるって警告しているんだ、夜になったらにしようぜ?」
「・・・。」
三人はお互い顔を見合わせていていた。不服そうではあるが、彼らは受け入れた。
こうして、とりあえずはこの難を逃れたという訳だ。
「それまでは言わない様にしようぜ。元々此処に訪れたのはカオスエメラルドの回収と休憩場所として使用するからだ。アイツの言っている通りにした方が良さそうだ。住民の一人だしな。あー走りたい・・・」
俺がまとめ役になるとは正直思ってなかった。この場から離れたらギスギスした空気が更に酷くなりそうだし、実質束縛されている様な状態だ。自由になっていたのだが・・・仕方ないのか?

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ノヴァと話をしている内に、もう夕方になっていた様だ。今日はもう動かない方が良いだろう。私は何事も無く研究所に着いた。研究所の扉を開けると、其処には見るからに不機嫌そうなメルガと、睨んでいるルナがいた。まあ、やった事はどう考えてもマズイ行動だったので、こうなる事は何となく想像出来ていたのだが。
「メルガを幻術で陥れたんだな?」
「・・・ええ、しました。目的の妨げになると捉えたので。とはいえ、それは私の体を心配しての事ですし」
「そういう問題では済まない。ウォイスの命令すらお前は破ったのだぞ?」
「言葉のあやですよ。・・・まあこうなるのは目に見えていたけど」
そう溜息をつくものの、このままでは明日以降も行動が出来なくなる。何とかして今日中にこの件を片付けなければならない。・・・ウォイス様ならおそらく明日、単身で基地に突っ込んだりするだろう。囚われていたとしても、彼ならば大丈夫だろう。なにせ、あの姿に変われるのだから。
「・・・でもまあ、私に非があるのは認めますよ。すみませんでした」
深々とそうお辞儀しておいた。ルナは髪を指で絡ませながら話してくる。
「本来なら罰を付けて反省させて貰いたいところだが―お前が一番よく分かっているだろうから、これ以上は言わないでおく」
「ありがとうございます」
「・・・此処が変わってしまっては困るからな。ところで、あの人は今どうしているのだ?」
「あの人なら離れて活動していますよ。順調の様ですね」
「そうか・・・ずっとその状態にするのか?」
一瞬言おうか迷ったが、言う事にしよう。
「いいえ、その状態って私からすれば身を削っているんですよね。・・・ですので、あの人にくっついておこうかと。情報共有も兼ねてね」
「共有・・・その間は魂の状態で移動するのか?」
「違いますよ、あの人の近くにこの身体を切り離して、あの人とくっつきます。それで、それが出来れば切り離した肉体を元あった場所に戻すだけです」
「その間、あの人はどうしているのだ?」
「大抵は見ているだけですよ。・・・流石に無意味な殺生をしようとすると止められるので、それらは基本あの人が寝てから行う事にしてますよ」
「成程・・・それで、それらはウォイスに言っているのか?」
「・・・言ってないです。なにせ、今使っている肉体は・・・」
これ以上言ったらいけない。ボロを出すのは私らしくないし、言ったらウォイス様がお怒りになってしまうだろう・・・。
「まあ、そんな所ですよ。・・・質問しても良いですか?何故私の肉体を作らないのですか?」
「仮に使ったとして、お前結局あの人にくっつくのだろう?」
「・・・ああ、納得」
あの人、という言葉の認識は私とルナしか知らない。なので、メルガはただ首を傾げているだけだった。あの人と一緒にいれば、互いの弱点を埋めてくれる。そういう意味ではとても重宝するモノなのである。ただ、この事がバレたら様々な前提条件が崩れたり、信用に欠けてしまったりするので、お互い言わないという暗黙の了解をしている。周りの反応に合わせているのが殆どなので、おそらく気付いていないだろう。主ですらも・・・。
「それでは、今日は此処に泊まって、明日からはあの人と共に事件に関わりますよ。その前にコンタクト取らないと」
「お前、コンタクトしていたのか・・・」
「?ああ、コンタクトレンズですか。確かにしてますね、青色の。って、違いますよ・・・もう」
「冗談だ。あと、今使っている肉体が何かは言わないでおくが・・・他人に見せるなよ?バレるから」
「分かってますって」
「?あの、ルナ様。会話の中身が全く分からないのですが・・・」
「知らない方が幸せの事もあるさ」
「???」
意味深な発言で更に分からなくなった様だ。まあ、情報無しで考えればそうなるだろう。
そして結局、この日は何をする事もなく終わった訳である。

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・・・。
時は満ち、もうまもらく変化の時がやってくる。雨だって構わない。
さて、その時まで一体何をしようか。一日で出来る事はそう多くない。
試しにガナールを呼んでみるのも構わないだろう。だが、単独行動を起こしている以上、会うのは厳しいだろう。
「何か隠し事をしている様にも見えるからな・・・」
奴は一体何を考えているのだろう?奴程ではないが、俺も一応それなりに心理学の心得は得ているつもりだ。何かをしようとしているのは分かる。この事件に積極的に関わろうとしているのだろうか、もしくはそのどさくさに紛れて何かを探っているのか・・・。
(まあ構わない。俺の過去を探そうとしても、見つかる筈がないのだ・・・)
まあ奴の事だ、俺がアファレイド王宮の従者をしていた頃の出来事や出自は掴んでいる事だろう。そこは存じて受け入れよう。ただ、一つ疑問があった。その疑問を聞いてみるまでは、油断は出来ない。
二つ考えたのだ。一つは一方が幻で出来ている場合。もう一つはどちらかの精神が死体に乗り移っている場合だ。後者の場合、分離が出来る事を証明するので、そうすれば奴が一体何をしているのか検討がつかなくなる。術さえ知っていれば出来る事だ、交代している場合だってある。その時はもうお手上げだ。素直に負けを認めるしかないだろう。だが、俺は主。負けを認めたとて、殺される事もない。殺せない体なのだ、当然だ。
答え合わせをするのにはまだ早い。もう少し、時間が経ってからだ。いずれ、奴と共に行動する時間が来る筈だ。その時に聞けば良い。
「ガナールの残り仕事、終わらせるか」
俺はフードを深く被り、奴が行っていた場所に向かう事にした。

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続く。

next 2-06章 a venom fang

ノヴァ・アッシュはくろろ宅より。他の子もそろそろ出したいと思ってます。

一応これで長い前座は終わったつもりです。この章本番はこれからだったり。あとどれくらいやるのかも検討がつかないな・・・

様々な事件が沢山続き、遂には心髄にまで及んで行って、己の中でそれを重く、鋭く貫くのだ。 嘘だらけの世界で信じる事が出来るのは、己自身ただ一人。痛い思いとかしても良いんだ、嘘をつくのはもうこれで最後にしよう。だからお願い。早ク逃ゲテ。