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こんなんだったら、いっそ捨てれば良いんじゃない?そんな声が聞こえる。
「煩いなぁ」
軽くそう言うものの、私がそんな簡単に君を切り離す事など出来なかった。私が分かっている範囲はとても小さかった。目覚めた時には私に似た印象を持つ君がいたんだ。いつからいたの、そう言っても君は全く答えてくれない。それなのに君となると、私を知っている、そんな感じで喋っているんだ。
私という『君』は君の『私』である。
だから痛みも『一緒』だし、記憶も『イッショ』である。
だから私と君が一緒にいる事は『無く』、一緒にいる事が『絶対』である。
見るのも『一緒』で、『一人』である。
私が見る世界は君と見ている世界と同じで、全く違う。
こんな世界の価値観や考え方は違うのに、何で一緒なの?
私は私に言い聞かせる。 「何故この世界で生きないといけないのだ」と。
そしたら君はこう答える。「それが君の役目なんだよ」と。
私が考えていても、君は疑問を抱かない。
そう、君は本来なら『生まれる事が無い筈の』存在だ。
今の言葉では表せないが、言ってみれば『肉体の無い生命体』だ。
私がいなければ、君は存在しなくなるのだ。
どちらかがいなくなれば、両方消えてしまう。
だから・・・・ダカラ・・・
「ー消えてしまわない様、私が『君』を守るんだ」
君はいつから此処にいたのだろうか?
子供の時は遊んだ子供の名が大人になると忘れていたり。
そんな感じの君であり、私である。
皆、そうだ。
何かを覆ってしまえば分からなくなる。
それが、心の鎖を繋げた親友でも・・・。
『私』という存在は、覆えば直ぐに分からなくなる。
誰も知らない、絶対に気づかない。
もう、分からないのなら『偽り』で埋め尽くせば良い。
私と君は『同じ』で『違う』存在なんだ。
誰もが理解しきれない、私と君の法則。
私が知れば君も知る。
私が忘れたら君が教えてくれる。
その逆もありえる話だ。
記憶、それは実物が無く代わりが無い、不思議な存在である。
それを操るというと、生き様を見失う事を意味する。
つまりこれはどういう事か?
『全てを奪えば、実質それは『死』を意味する』のだ。
生き様が分からない、それは死んだ時に起こる効果である。
それを知らない彼は、平気で『記憶』を取る。
それはもしかしたら『殺人』よりも重い罪なのかもしれない。
そして記憶を奪われる事なく事を進められた私は薄々感じてはいた。
結局、この一連の事件の黒幕、引き金は誰が引いたのだろう?
それが紅月となるとどうしても疑問を抱いてしまうのだ。
確かに紅月は君の大切な友達を失わせた張本人だ。
しかし、紅月が何故こんな行為に至ったのだろうか?
発狂する人には発狂する理由が必ず存在する。
その理由に適する人間がいる筈だ。
私はその人間が誰かという候補が近くにいる。
悲劇となってしまったアファレイドの殺人事件。
魔導師の気まぐれで起こった天気の異変。
科学者と政治家が襲われた襲撃の事件。
世界に壊滅的被害を齎した(もたらした)天地の異変。
その異変の道中で暗殺された英雄の事件。
そしてこれらの事件の真相を司る従者の事件。
これらの結末と真相が、あの予言された異変と繋がっていく。
それらの真実は、『私』は関わった。そしてそれを胸に焼き付けた。
『貴方はそれらの異変をどう思いでしょうか?』