日記ノ十一ノ巻~Killer smile
城の前には紅い花。闇の空には朱い星。床の下には赤い血。
全て『アカ』で彩られた此処は、綺麗だった。狂気を仰ぐのには丁度良かった。紅い目をした私は、こうして全てを『アカ』で染めるのだ。ー明るさと彩度、それぞれ違って綺麗でしょ?
今日は、自由な暗殺者とお相手しなきゃいけない。ー私の魅力に惹かれて行った者は、生きて帰らせてはくれないけれどね・・・。
「君さんがガナールと呼ぶ者かい?」
自由の暗殺者は私を呼んだ。服装はタキシード。ナイフを隠し持っている事は直ぐに分かった。おそらくは感づいているのだろう。私が暗殺者であることに。
「ええ、私ですが。ーもしかして、貴方がスコールと呼ばれる者ですか?」
スコール・・・・・・ねぇ。ー君は紅月の従者の一人だったんでしょ?きっと紅月も警戒していると思うよ?でもね、無意味だよ。私の幻術に惑わせられるのだし、死体は幾らでも処理出来るしね。死人に口はない、私の思いがままだよ。
「ーああ、良かった。・・・美しい顔だな。全身、見せて貰えないのだろうか?」
「フフ、いきなり本性を探るのですか?しかしですね、私はそう簡単に本性を明かそうとは思えないのですよ。プライバシーの侵害ですよ、それ」
少し微笑んで、私はお酒を飲む。・・・もう、私もお酒を飲める年齢になっている。私の暗殺方法が増えた訳で、嬉しいのだ。
「ガナール、お前は以前対峙したな。あの時は敵同士だったが、今日は一緒に飲もうではないか。水に流せるかは分からんがな」
「あら、嬉しい。ではそうさせて貰おうかな。ーじゃ、乾杯」
スコールは笑い、話し始めた。ーこの会話が私は大好きだ。情報が分かるから、面白いのだ。
「ーそうですか、それがああなったのですね」
「そうだ・・・・・・さて、そろそろ帰らなければ。俺にも用ってモノがある。今回はおごってやろう」
「フフフ、では遠慮なくお願いしますね。・・・ところで、この後少しだけ時間、空いてます?」
「・・・?ああ、空いているが」
そう言いながら、私が飲んだ分も入れた会計を済ませた。
「・・・此処ら辺で良いでしょうか?」
「ああ、構わないが・・・何の話だ?」
私は被っていたフードを外した。彼は動揺を隠せなかった。
『・・・ねえ、私が一体誰だか、分かります?』
「あ・・・・・・お前はッ・・・・!!」
動揺して行動出来ないのを利用し、私は即座に後ろに瞬間移動した。そして、彼が気づいた時と同時にー彼の心臓にナイフを突きつけた。
「き・・・貴様・・・・・分かっていたのか・・・」
「貴方は最初から私を警戒していた。そして、同時に私の正体を暴き、少しでも利益を得られたら、そう思っていたみたいでしたが・・・・・・残念でしたね、私も策はあるのですよ」
「ーお前・・・・・・・性では・・・なか・・のか」
「笑わせますね。まさか、『貴方も』そう見られていたとは・・・フフ、お休みなさい」
彼は抗う術も無く、息絶えた。ーさてと、死体処理は・・・どうしようかなぁ。