夢想の針鼠の夢跡

物語に隠されたもう1つの物語 『過ち』を知る物語

日記ノ二十五ノ巻~???

軋む。軋んで体が動かない。動けない。動かねば。動け。動け・・・ああ、ようやく動かせた。そうですよ、そうすれば良いのですよ。ああ私は幸せでございます。貴方様がようやくその気になったのですから。

そうと決まれば、貴方様は早速儀式をしてもらわねばなりません。心配は無用です。その痛みももうまもらく安らぎに変わる事でしょう。そんな顔をなさらないでください。貴方様はこの戦いの王に輝く様なお方なのですから。王ですよ、王。王がそんな顔をなさっては、他の人々が悲しんでしまいます。

ああ、私の言う王は貴方様が想像している王とはきっと異なります。王族の王様ではございません。気に留める必要も無いかと思いますが、貴方様がそんなに気になるのであれば、教えてやらねばなりません。・・・全ての結末を知る王なのですよ、貴方様は。その短い寿命よりも遥かに長い時を生きたモノの結末ですらも、貴方様は全てを理解出来るのです。まあどのみち貴方様は多分この戦いの後はもう二度とこのような表舞台には出てこない事でしょうし・・・貴方様が自ら行動を起こさない限りは、の話なのですが。まあその話は置いといて。その結末がどの様な経緯でそうなったのかも分かります。これによって、貴方様はご自由にその結末を変えてしまう事が可能なのです。

ホラ、見てください。今現在、貴方様の目の前には貴方の主がいるでしょう?いいえ、主なんて呼び方はいけませんね。だって無理矢理従っているものですもの。それは奴隷という意味が使われる筈です。その鎖から貴方様は解き放たれたい、そうは思いませんか?ええ、そう思いますでしょう。私にかかれば、それすらも簡単に解けるという訳でございます。

とはいえ、王になれるのはごく僅かの人間でございますし、王になったからと言って、寿命が増えたりする訳ではございませぬ。なので、気軽に委ねてください。簡単です、願えば良いのです。「~をやってみたい」とかでも構わないのです。心で願いを叫べば、私がその願いを叶えて差し上げましょう。

では、早速貴方様がお願いしている夢を叶えて差し上げましょう。貴方様が今願っているお願いは『~~を消してしまいたい』とですな?ええ、叶えて差し上げましょう。

・・・え?冗談で願っただけ、ですと?いえいえ、心の底でそう思ったのですから、貴方様は本当にそれを望んでいるのでしょう?問題はありません。抵抗しても無駄ですよ、貴方様の肉体を操れる事ができるのですから。

 

ホラ、この様に倒れたでしょう?これで貴方様は自由の身ですよ。・・・泣く必要なんて無いのですよ。だって主は貴方様を苦しめた張本人なのですから。問題はありません。近しい人が何になるとでも?・・・心がボロボロだ、何があったのですか?温かい液は嫌いですか。ふむふむ。であれば、貴方様は記憶を奪えばよろしいのでは?・・・冗談ですよ。幾ら私でもそんな事は出来ません。意識を奪う事位なら出来るのですが・・・。

ああ、疲れてしまいました。今日の所はこれまでにしますよ。お名前ですか?貴方様は詳細を知らないのですか?・・・ルミールの他にもいるのですよ。夢・願いを叶える人物が。それが私ですよ。今まで貴方様や10年前程にいなくなってしまったあのご友人の願いを叶えてきたではありませんか。いえ、叶えたというよりも、良い結果になる様にしたのです。薄々気付いていない訳が無いのです。貴方様はそれで富を築きましたではありませんか。あれらは全て私がやった事です。ご安心を、仮に貴方様が私の元を離れたとしても、その効力は永久に残ります。付け足しが出来なくなるだけです。きっと貴方の主も理解出来ないでしょう。そんな主も効力があるのですから。

ですがまあ、あんなのはお飾り程度にしかならないのです。本当の能力はそれすらも上回るのですから。・・・拒否するのも自由です。ですが、時間が無い事を把握してください。最も、それは貴方様が一番お分かりなのでしょうが・・・。

 

では、私はここいらで。ご武運を祈りますよ。

 

 

 

・・・・・・目を開ければ、其処には襲いかかってきた人が転がっている。そして、自分の手には、言葉に出来ない様なモノが垂れていた。色々と察した自分は悲鳴をあげてその場から逃げた。

 

幻想の赤月 2-01章 Justice is sometimes become evil

『訂正 朝になって気付いた事なのだが、カオスエメラルドの所在が分かっていたのは2個だ。だから、32日を5個分集めなくてはならない。最も、カオスエメラルドのみでどうにかなる様な問題では無いのだろうが・・・。とにかく、本当にすまない。
謝罪とは言うのがなんだが、少しだけ教えておこう。今、我の身の周りに起きているのは正直に言ってしまえばただの茶番に過ぎない。カオスエメラルドが必要である、これは厳密に言うと間違いである。この際、言ってしまうと、最悪カオスエメラルドを手に入れてなくとも問題無い話であり、代わりに『奇跡』の代わりとなる物さえあれば良いのだ。これは偶然の奇跡でも、必然の奇跡でも構わない。・・・人工物でさえも、きっとこの事件は解決してしまうだろう。
我は遠回りにさせながらも、この作業に取り組んでいる。最も、早く解決する事に越した事は無いのだが・・・・・・彼奴の殺意はとてつもなく酷かった物だから、その殺意を和らげると同時に、その真意を我は知らなければならない。例え彼奴がそれを望まなかったとしても、だ。

・・・ああ、話が逸れてしまって申し訳無い。話に矛盾があったのは事実だ、其処は本当に申し訳無い。謹んでお詫びを申し上げる。』

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『あ、今日は来てくれたんだね』
「・・・約束は約束。確かにその環境は辛そうだな」
『辛いっていうよりも・・・ますます干渉出来なくてね。そのせいかな、怖いんだ、あの人の顔が』
「顔ねぇ・・・・・・あの方は元々顔がキツいからなぁ・・・」
『あ、分かります?そうなんですよね、いつもああやって他人をどうこう注意するんですよね』
「ああ・・・やりそうだ」
『あ、でも非があれば彼も謝りますよ、一応』
「一応とは・・・ああ、感情込めて言うのは苦手そうだな」
『アハハ、そうかも』
「その欠点は貴方が抑えていたのか?」
『ご名答!!そうです、僕が全てカバーしたんですよ!!』
「・・・抑えていたのは事実だが、全ては嘘だな。我に嘘をつこうとは、笑止」
『ああもう、そんな事言わないで!!君ってあの人以上に白黒はっきりつけたがりますね!!』
「あの方程我は固くない。あと、嘘か否かは心理学を学べば多方身につく事だ。ごもっとも、態度に出る事から悟るから、読み間違えも無くはないが・・・貴方はすぐに顔に出る。あの方も大層苦戦させられたのだろう」
『えへへ~・・・』
「よくこんな環境なのに呑気でいられるな。ある意味羨ましい事だな」
『へえ、君は呑気でいられないんだ?』
「我の環境は、貴方以上に冷たい空気が流れている。故に、今の状況がある」
『硬いねぇ、君。もう少し、こう、深呼吸してリラックスしていいのに。君の言葉を信用するなら、此処は誰でも入れないんでしょ?あの人ですらも』
「・・・あの方は、君が見えていない。皮肉だな、まさかあの方が君は愚か我ですらしっかりと見通せてないのだ、完璧に見えて、な。それがかえってこの環境を悪くしている。無論、あの方はそんなの気にも留めてないだろうし、『貴方を助ける為に』と言いながらも、その貴方を殺そうとしているという、完全に理論が破綻している事もきっと気付いてない。気付くのは、あの方が信頼している人からその事を指摘し、怒らせる必要がある。エゴだって気づかないと本当に貴方を殺めてしまうに違いない。殺意位は貴方も感じたんでしょう?」
『う、うん。一時的にね、正気に戻れる事が出来た時にね、あの人は激怒していたんだ。何かに取り憑かれたかの様に。まるで別の人に会ったかの様な・・・?』
「?どうした」
『・・・・・・別、人?』
「何か思い出せそうなのか?」
『僕、ずっと不可解な事があるんだよ。あの人の行動に』
「行動・・・もしかしてだが、激怒していた時のあの人の様子がおかしかったのか?」
『いや、そうじゃないんだ。・・・分からなかった事が、何かを思い出しそうで・・・よく分からないのです』
「思い出したら我に言えば良い。他に言って欲しい奴がいれば、我がその事を伝えるから」
『―今は敵になっているから僕の耳には届いちゃ悪用されそうでマズイんだけど、死ぬかもしれないから、この事を伝えておいた方が良いかも』
「・・・?」
『友達に会って、話を聞いて欲しい。名前と特徴、何処にいるかは教えるからさ』
「・・・難しいな、あの人達の監視をしなくてはならないのがな。とはいえ、聞ける事は聞いておいておこう。何だ?」
『まあ期待はしないでおいて。この話自体、信ぴょう性に欠けているから。しかも、相手は・・・ねぇ』
「もったいぶる様なら止めておくぞ?」
『ああ冗談だって!赤いコウモリで黒い服を着ている子なんだ!!』
「・・・?」
『名前は、そうアッシュ!!アッシュっていうの!!翻訳を頼んだけど、結局言ってくれなかったの!!』

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コツン、コツンと音を立ててながら彼は歩く。腕には血が少々流れており、彼は気に留める事をしない。歩くその姿は、こちら側の人々には悪魔の使いの様に感じられるのだろうか。どうやら本当に忌み嫌われているらしい。
子どもは無邪気に彼の近くに行ってきたりするのだが、大人が静止させ、「触れちゃ駄目だよ」って言う。これが後にあんなになってしまうのだろう。子どもの時は親の教育は悪いって言っているのに、大人になってみると、その性格の根本を叩こう事はしない。まあ、大人になれば善悪の判断は出来るだろうから、そういう処置なのだろうけど。
彼はいつも通り教会の上から世界を眺める。すると、彼は若干目を凝らした様に見えた。どうやら、西の方角に異物を発見したらしい。それも、この辺の者でなくとも、地図を見ればすぐに分かる位大きい程のだ。・・・平になっていた筈の草原が、まるで星が動く過程をビデオで倍速した様な早さで、山の様な形になっていくのだ。ゆっくりではあったものの、誰もがこの光景を見れば早い筈なのだ。地を形成するのに、どれほどの時間を要するのかは誰もが知っている事なのだから。
勿論だが彼にとっても、この出来事は想定外であった。本来ならば、誰かが調査に向かって調べるべきのだが、彼は珍しく重い腰を上げて、黒い翼を舞った。忌み嫌われていて、移動なんて殆どしない人が行動するその光景はどうやら他の人にとっては意外らしく、「一体何が起こるのかしら?」と首を傾げている人もいた。そんな事を見ていながらも、夢中で空を飛ぶ彼は一体どんな事を思っているのだろうか。
これはまだ、序章に過ぎない事を彼は知らない。

~中間~

「・・・一体何があったという?」
辺一面の斜面が明らかに可笑しい。何度くらいあるかはあるかは彼は分からなかったが、こんな斜めになっているのはどう考えても変なのは、すぐに分かった。彼には複雑な事はよく分からなかったけど、一つだけ疑問に思った事があった。
(もしも、この出来事が誰かの陰謀だとしたらー?)
それを頷ける根拠も、彼には存在した。友人が言っていた『魔術』、まるでその為に残された唯一持っている本。この本が一体何処の本か、それが存在する意味等彼がそれを知っている訳が無かったのだが、きっとこれが役に立ってくれる筈だ。彼はそう信じた。
そして、それは同時に疑問を呼ぶのだ。何故この本は存在しているのだろう?、と。保存状態が明らかに良すぎたのだ。何がどうなっているのだろうか。そんな事は分からない。頭がよろしくないからなんかではなく、存在している事自体が奇跡と言っていいからだ。ごもっとも、それは彼にはきっと分からないのだろうが・・・。

それを見て、奴の事を思い浮かぶのだ。もし、あの出来事さえ無ければきっと此処はもう少しはマシになっていたのだろう。未だに死にきれていない、不器用な少年のお話である。その話を語るのは、まだ早い。

episode2 困惑的な月は一時を揺蕩う

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The 3rd day

ガナールの予測を聴き終えた俺達は、特にする事は無かったので、そのまま泊まっていた部屋でゴロゴロとくつろいでいた。気がついたら朝日はもう昇っていた。昨日の爆破事件は、表向きは事故として扱われたらしく、テレビのニュースで2人が重症を負って現在も治療をしているとあった。
此処にいるのは、俺・ソニック、シルバー、シェイド、ウォイスの四人。ウォイスは紅月一味が此処を去った為、脅迫の意味を失ったので此処には問題なく入れたし、妨害する事は無くなったので安全だ。シャドウとルージュはGUNにその事件の処理をお願いする為に、今日一日は行けないらしい。その後は、シャドウは俺達と共にカオスエメラルドを、ルージュは情報を探り始めるとの事だ。シルフィとシェイドはエメラルドを託した後は、俺達とは違う方向へ向かっていくのらしい。カオスエメラルドには触れずに、ガナールの言っていた『闇の住民』を調査するとの事だ。
皆が偶然バッタリってなってしまったけれども、この事件は皆が取り掛からなければ、絶対に解決しない事を皆はきっと知っている。だから、今すぐにでも出発して、解決したかったのだが・・・。
「今日はシャドウの合流があるから出来ないだろう」
ウォイスがそう言って、キッパリと断った。
「それにな、今移動した所で、昨日の疲れや怪我で維持が出来なくなるぞ。それは一番やってはいけないのは、お前も分かっている筈だ」
「でも・・・」
「うーん、流石に今回はウォイスさんの言うとおりだと思いますよ。僕もうクタクタですもん・・・」
そう言うとシェイドは伸びをする。シルバーも同様らしく、ゆっくりしている。
「同感だな、この様子だと結構時間掛かりそうだしな。1~2日休んでから出発しようぜ?」
「お前ら少しは危機感を持てよ!!」
「まあまあ、とりあえずゆっくりしましょうよ・・・」
シェイドとシルバーはそんな感じで、ゆっくりとしていた。俺は苛立って行くべきだって言い張るのだが、ウォイスが抑えてくるので、諦めるしかない。お願いを聞いて貰いたいのだが、今回は諦めるしかないのだろう。


「ところでさ、ガナールはどうしたのだ?」
不意にガナールの所在が気になった。普通ならこんなに気にする事は無かったのだが、どうもこの状況で放置するのはいささか不安を伴う。いつぞやの笑みを浮べて、また俺達に襲いかかったとしたら―そんな考えが止んでやまない。
「ガナールなら、自由に行動して貰っている。自由に行動したい、って言い出してな」
「・・・え?自由に行動ってマズイんじゃないか?こんな時に行動したら、最悪俺達の首を絞める結果になるんじゃ・・・」
「自己責任でやれって注意したから、考慮はするだろう。切り落とす事はまず無いから安心しろ」
「お前は結構抜け目無い様に見えて荒い時があるよな・・・」
「そうか?不完全要素は普通あるものだぞ?」
・・・不完全要素はなるべく取っておけるのはウォイスだけだろうが。なんて言いたい気持ちを抑え、俺は近くにあったお菓子を食べた。・・・この場には似合わない、とてもとても甘く、美味しいもの。ああ、こんなに簡単であればまだ良かったのかもしれない。

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「申し訳ありませんでした、紅月様」
そう言って跪くと紅月様は振り返って笑っている。
「仕方ない事だ。ガナールとの接触が出来ただけまだ良かったと言えるだろう。主従関係では済まされない関係・・・か」
「知りませんよ、そんな関係。というよりガナールは一体何者かも・・・」
「・・・・・・それについてなんだが」
「?」
「天気異変は知っているか?」
「?え、ええ。我が宿敵ウォイス・アイラスが起こした、人によって天気が異なってしまう事件・・・でしたよね。紅月様が干渉しなかったあの・・・」
「そうだ。ガナールはその時からいる事になる。・・・我が考えた可能性は3つだ。1つは、単純に我らが見過ごしていた他人の存在が何らかの方法でガナールとして活動を始めた事。2つは、ウォイスが作り出した木偶人形。3つ、そもそもガナールの存在自体が無い」
「・・・存在自体が無い・・・?」
「例えば、ウォイスや我ですらも簡単に欺けてしまう様な幻術で存在している様に見せかけている、とかな。本人が気づいているかは分からないが」
「で、ですが・・・私が見たガナールはどう見ても人間のそれでした。時々無意識起こる癖もあったのですよ?」
「・・・我にもよく分からない。根拠もあまり無いものだ。気にしない方が良い。殺してしまうのが、一番なのだろうが・・・」
「殺せる自信が無いのですか?」
「・・・・・・正直に言うとだな、ウォイスを殺すよりもガナールを殺す方が難しい気がする。化けの皮を剥がさない限り、どう攻めれば良いかも分からん」
「あと、帽子が無ければ存在意義が消えてしまう、なんて事も言っておりました」
「何だと?」
「意味が分からないですよね、それ」
「紅月様―!!大変だ!!」
私と紅月様の間に緑色の竜が入ってきた。近くには鷲がいるのが確認出来た。彼は息を切らしていたが、息を整えると、叫んだ。
「大変です、幹部の一人が殺されました!!犯人はガナールだと思われます!!」
「・・・!?」

~中間~

現場を見てみると、其処には幹部の者が殺されていた。腹部辺にナイフの刺し口があり、其処から大量出血をして死亡したと見られている。心臓部分はどうやら刺されていなかったのが少々疑問に思ったのだが・・・
「―どういう事だ?スコール」
「・・・ウサギをこれを知らせて、行ってみたら殺されていたよ。どうやら、夜歩いている最中に襲われたらしい。寝ぼけ眼で見ていたらしいから詳しい情報は分からないが、こんな場所で殺されるのは明らかに変だと思うぞ」
今までガナールが起こした事件は計り知れない。ウォイスの従者であると同時に殺人鬼でもあるガナールは、ウォイスが脅威だと感じた奴を排除する事は愚か、何も命じていなくとも全く関係の無いと思われる人物が奴の手によって殺されている所もあるらしく、普通に捕まれば終身刑・死刑はきっと免れないだろう。にも関わらず、こうして尻尾を掴まれる事なく、普通に過ごせているのは、ほかならぬウォイスが一部を隠しているからだ。但し、それだけで済むと思ったら大間違いだ。何もかもがメチャクチャにされる。こうして、まるで普通の様に振る舞えるのは、能力が働いている事への証明へと繋がると思うのだ。事実、奴は幻術を得意としている。
「これでは、いつまで私達の命が持つか分かりませんね。気をつけなければ」
「ああ、そうだな・・・・・・ところで、だ。ガナール、何故見ている?」
「え・・・?」
「滑稽だね、うん。とっても滑稽だよ」
ハッとなって死体を見ると、笑いながら死体をいじっているガナールの姿が見られた。神出鬼没というのはまさにこういう事か・・・ガナールは笑い続ける。
「未だに気付いてないんだ?私はいつでも貴方達を見ているよ?キャハハ」
今までの大人の雰囲気とは全然違う、子どもの様な言い方。ますます意味が分からない。
「貴様!!」
「おっと」
懐からナイフを取り出して振ってみるのだが、ガナールは易々とそれをかわした。
「宣戦布告って事?幾ら何でも早すぎじゃない?それとも・・・やられたい?あの子の様に」
「!!」
そう言うと、ガナールの周辺に闇が覆った。闇が晴れた時、もう既にガナールはいなかった。
『・・・フフフ、驚いた?これはね、幻術なの。気付けなかったでしょう?死体を見たら発動する様にしといたんだ~♪ああ、もう時間だ。やっぱり設置型は面倒くさいなぁ・・・』
それ以後、ガナールの声は消えたし、姿も勿論現れなかった。その声を聞く限りだと、本物だろう。紅月は怒りを露にしていた。
「あ、紅月様・・・?」
「幻術を、見通せなかっただと?そんな馬鹿な。非現実的な出来事だったのにか・・・?侮辱したな・・・許せぬ・・・・・・」
見通せなかった事がどれほど屈辱に感じているのかは私にはよく分からないのだが、上には上がいるっていう事だろうか。敵ではあるのだが、あの騙しは怒りを通り越して敬意を払いたくなる位のレベルであったが、あの方は・・・。
(完璧だと思っていれば、侮辱と思われるのか)
勿論この事は口にしない。口にすればきっと半殺しにされる。それでも、苛立って乱れたらそれこそ相手の思うツボだ。そう告げると、あの方は冷静を取り戻した。・・・装っているだけかもしれないが。
「・・・そう、だな」
なるべく感情的にさせない様に仕組まなければ・・・スコールに目配せをすると、彼も頷いた。

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「ぷはー、死ぬかと思った。奇襲だけでどうにかなるかな~って思った私が馬鹿だったか。・・・でもまあ、これは尻尾に過ぎないか」
返り血を浴びたので、服を洗わざるを得ない状況になっていた。服の漂白をすれば、黒が薄れてしまう。これでもちゃんと管理をしている方だ。何度も洗う内に、自分のスキルも若干伸びた様な気がする。これのお陰で、洗濯も簡単に出来るのだが・・・。
「・・・あの子を守らなくては」
奴の毒牙に引っかかるその前に、薄汚れたその手で私はあの子を守る。あの子はそれを望まなくても、エゴを通し続ける。あの子は多分この事を知らなくても・・・。


結果を言えば、それは失敗した。私は守ったけれども、私一人に出来る事には限界があったという訳だ。ボロボロになって、私だけではどうしようもない。きっと戻ったとしても、もうあの時の姿ではない別の存在になっている事だろう。別の存在とは何か、それは私達にでも知りえない情報だし、誰も知らないだろう。そう、誰もだ。もしかしたらあの子は慈悲深い女神様を気取っているのかもしれない。愛情しか知らないあの子ならば。


鍵は今、私の手の平に。

 

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続く。
next 2-02章 Floating

上記の通り、エメラルドの個数に問題がありました。すみませんでした。現在ソニック達が持っているエメラルドの数は2個です。

『ε、製造データ5』

Heroes calendar 54 years~

「転生って面倒だよ、だって術を用意しなきゃいけないんでしょ?しかも、その転生後の記憶もあやふやでさ。もしその後の子が嫌だって思ってしまえば、御終いだし。それでも、転生するの?」

老いぼれの女性にそう尋ねてみると、彼女は微笑んで、私を見る。

「私はねぇ・・・そうさね、祈る事しか出来ないのですよ。貴方の様な人であれば、きっと運命等を変える事が出来る程度の力はあるのだけれども、そんな力は私達には無い。ある人は本当にひと握りの人だけなのですよ。意図的にね」

力なく微笑んでいるその姿は、結界を貼った時の笑顔とは程遠い、優しく包み込む様な。そんな感じだった。ひと握りの人だけだって言ってはいるけれども、貴方は立派に成長し、幼さが残る年齢で、英雄と名乗れる程の名誉を手に入れた。私はあの時はその場に立ち会っていなかったとは思うけれども、それでもそれはとても素晴らしく、誇らしげに威張っていただろう。それが可愛らしくて。

「転生が面倒なのは、まあ、面倒でしたよ。ただ、守護者を引き継ぐ時には、他の人を頼むのはちょっとねぇ。なら、まだ私の生まれ変わりを捧げた方がまだ良い様な気がしてねぇ。それに、裏切ってしまう可能性も無くはないし。貴方みたいに感情が欠けていて、忠誠を完全に誓う様な人であれば、問題無いのだけども、この世界は残念ながら、そんな人間はいないからねぇ・・・」

「私は感情は抜けておりませんよ。・・・それに、とっくのとうに私が何者かなんて、察しているのでしょう?貴方はそういうお方だ。そして、私の秘密を誰にも言わなかった。本当にありがとう」

「お互い様かな。貴方の立場はとても薄汚い様なモノではあったけれども、逆に言えば、『守護者の汚れ仕事』を簡単に任せられる。その名前付けで良かったのかい?」

「ええ、十分に。むしろこういったドロドロした様な出来事は大好きですから。読みがいがあって」

「そんな性格も結構丸くなったけどねぇ。やっぱりシルバーがいるお陰かい?シャドウだと逆に・・・」

「どっちもです。ウォイス様は、まあ別件ですけど。そもそもあの方は・・・私ですらも少々分からない事がありまして。まだ調べている最中です。勿論、内緒で」

「分からないねぇ・・・年齢的にもあの悲劇を知っている人で身近にいる人は減ってきている。もし聞くなら早めにしなさい」

「そんな事は言われなくともご承知です。貴方もやり残した事があればお早めに。もうあと3日程なのでしょう?転生日。私は転生についてはよくは知らないので。それに、私はそういった事に興味なんて持ちませんし、今後も持たないでしょう。」

「まあ貴方は存在そのものがイレギュラーだからねぇ。転生以前の問題でしょう?」

「否、生命があるかどうかすら怪しいです。ただ、死ぬ事に恐怖を抱くのは、生命全てに共通する事なのでしょうか?私にはよく分かりません」

「死ぬ事に恐怖を・・・まあ私には答える権利はありませんねぇ」

そう言うや否や、彼女はホットミルクを音を立てながら啜る。

「ですよね。・・・さて、私はそろそろ出かけなくては。いつまでも貴方の世話をする訳にはいかないのですよ」

「ああ、新しい守護者さんの紹介かい?」

「まあ、そんな所です。何でもシルバーと共に活動するのだとか。結構長生きしているらしいですよ。その割には外見年齢が若いですし」

「一つのエメラルドを二人でかい?ウォイスも結構慎重だねぇ」

「万が一に備えてでは無いでしょうか?仮にどちらかが壊れたら、もう片方は結界の守護に回らないといけないのですから」

「カオスコントロールを扱えるシルバーにはキツいかもねぇ・・・ああ、という事はシャドウも?」

「いつかは配置されるでしょうね。でもまあ私には関係の無いことですよ。私は『守護者ではない』、ただのウォイス様の従者ですから」

「ああ、そうだったね。貴方は脅威の排除が目的ですからねぇ。やりすぎには注意してくださいね?たまに貴方って気性が荒くなる時ってあるから。あれは何故かしら?」

「・・・・・・・・・憤りですかね。では、転生日の前夜にまたお会いしましょう。よろしくお願いしますね、シアンさん」

そう言って、私は彼女の家を後にした。彼女ももう63歳だ。あの魔女は今ではおばあちゃんになって、子ども達の面倒を見る人になっていた。そんな日ももうすぐ終わる。

 

「お元気で」

 

そう言って、私は微笑んでいた。

幻想の赤月 1-06章 improvement

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「あとどれくらいだ?」
「500m、400、300、200・・・もうすぐで100mになるぜ」
「皆が無事だといいんですけど・・・」
不安気になっていたシェイドを横に、前に進む。報告が正しければ、僕達以外の相手は殆ど機能していないと思われる。急がねば。
「―見えたぞ、出口だ!」
そう叫んでシルバーは地上へ繋がる階段、僕が入ったあの階段をぶち破った。その後、威嚇しながら前に進む・・・其処までは想定内だったのだが、ピタリと止まってしまった。目の前の光景に目を疑っているのだろうか。だとすれば・・・!!
「もしかして、やられてしまいました?」
「・・・ガナール!?」
唖然とした態度に、僕達は逆に首を傾げる事となった。
「えっと、シルバーさん?何が・・・」
「駆けつける意味は無かったなこりゃ。見てみな」
促されて見てみると、其処にはあの黒い奴らが横に倒れている様子が見られた。ピクピクと動いている奴らも見られたが、犯行する程余裕は無いのだろう。
その様子を見ていた僕とシェイドだったのだが、気がかりというと、シェイドがガナールを見て驚いていた事であろうか。
「・・・!!」
「どうしたんだ?ガナールを見て驚いて」
「え、だってあの時・・・」
ハッとした顔で取り繕う様に「な、何でもないです!!」と言っているのだが、正直この言葉に意味をなしてない様な気がする。その顔をしたのに気付いたガナールは微笑んで近寄ってきた。
「・・・黙ってて欲しいって言ったのにな。まあ、ウォイス様が来ていなかっただけまだ良しとしますか」
「どういう意味ですか、それ」
「単純に私と貴方の接触を極端に嫌ってますし、まあ私が何者かだけ考えれば、そうなるんでしょうが・・・」
確かに、とても純粋で礼儀正しいシェイドと殺人鬼であるガナールと共にいてしまったら、考え方がそちらの方に染まってしまいそうだ。まあウォイスもかなり血塗られてはいるけれども、あちらは加減したり覆い隠すタイプだから問題はない・・・だろうか?そこらは分からないが、まあ一緒にするのであれば、常識人組のテイルスやクリーム、シルバー辺が良いのだろう。シルバーは若干世間知らずの部分があるが。
「まあ、そんな所は置いといて・・・ソニックさん達と一緒にお話しなければいけませんね。色々と分かった事があるので。ウォイス様とは別々に報告しておいた方が良いでしょう。お祭り騒ぎはその後で・・・良いでしょ?」
「え、ええ・・・構いませんが」
「そういう訳で、私は此処で待ってますね。シルフィさん達にもお話しなくては」
そういうと『ネイト南西の道の真ん中にあるカフェで』と書かれたメモを渡された。なんか色々と大変なんだな・・・と直々に感じながらも、シルフィ自体に疑問を感じた。
「シルフィも来ているのか?」
「いますよ。ホラ、あそこに。事情徴収されているらしいですね」
ガナールが指差した方向には、GUNの人や警官の人が囲まれている様子が伺えた。あまりの数でシルフィが見えないのだが、いるとしたら多分相当参っているだろう。僕はそのままその群がりの方に近づいてみる。

「で、ですから・・・助けないといけないと思ったので助けただけですってば」
「いやはや!!ただですらあの状況で一般人は入れない状況の中でどうやってそれを切り抜けたのか知りたいのです」
「それは何度も言っているだろ・・・空を飛んできたんだって。アファレイドでは割とよくある事だぜ?」
「魔導王国だからこそ出来る行為でございます!!それに飛んでいる様子を見られたら街中大パニックになることであろう!!」
「騒ぎになったらそんな事気にしている場合じゃないだろ・・・!!」
「―何をしているのだ、貴様らは」
若干茶番の様に見えた状況の中、僕が其処に来た事は彼女らからすれば地獄の最中に仏様の手が天から舞い降りてきたという様な出来事だったらしく、すぐに食いついてきた。
「シャドウ!!お願いだから彼らを説得してやって!!貴方それでもGUNのお仲間さんでしょ?」
「・・・イレギュラーというのは貴様らのことだったんだな。とはいえ、礼を言うぞ。お前らがいなければ、犠牲者はもっと増えていた」
「お前そういう所はいつも通りなんだな」
「・・・どうだか。とりあえず、その事はネイト内の出来事としてくれ。『火災の事故』として扱っておく。マスコミにそう伝えとけ。下手にやったら面倒な事になるぞ」
「はっ」
此処で下手に勘付かれる様な行為をしてしまえば、大変な事になる。まずは、彼女らを放火の容疑者として扱われない様に適当に小細工をしておく。世の中はそんな物だ。

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「酷いったらありゃしないぜ全く!!俺を置いてけぼりにするんだぜ、コイツらは!!」
「ごめんな、お願いだからそんなに騒がないでくれ・・・」
「ごめんなさい・・・完全に忘れてました。で、ですがそのお陰で彼処まで持ちこたえられたのですからイーブンですよ」
「暇になるのはまっぴらゴメンだな。俺は走り続けていたいんだ」
ソニックに処理や面倒な事を押し付けるのはやっぱり無謀だったという事か。なるべく暇にさせない様にさせるべきなんだと改めて感じた俺は、彼の怒りを静ませながらも、シャドウが命じられていたカフェに向かってガナールの話を聞こうとしている。とはいえ、こんな大人数で来られても向こうは逆に迷惑ではなかろうか・・・と思っていると、シャドウはとある提案をした。
『重要な人物だけでお話するのはどうか』
これに反論する人はいなかった。確かに大人数でやれば騒ぐ事になりかねないだろうし、密談の方がよさげである。という訳で、ガナールの呼び出しに応じたのはソニック、シャドウ、シルフィ、俺の四人にしておいた。ルージュやシャック、シェイドは周りの反応を静かにしておく事に専念して貰う事にした。
「貴方達はもう少し静かにして貰った方が良いんじゃない?」
「同感だな、ある程度時間が経ったとはいえ、まだ緊張している筈だ。ただ、カフェなんて開いているのか?」
「悪かったな・・・あと、カフェなら彼処に」
ソニックが指差した方向にはパリの雰囲気を漂わせるカフェがあった。Openと書かれた看板には黒猫が座っているデザインが見られる。そのカフェのガラス越しにはガナールがいて、手を振っている。どうやら此処が目的地だったらしい。
「という訳だ、行こうぜ」
カラランと音と共に、緊張感を高めていき、ガナールの元へ。

「わざわざ指定の場所まで来ていただき、ありがとうございます。おかけになってください」
そう言うと、俺達四人は席に座る。ご親切に席に座った先には俺達が好む飲み物がきちんと置かれていた。
「まずは、ご苦労様でした。貴方様のお好きなお飲み物を頼んでおいたのですが、問題ないですか?」
「ああ、問題ない」
「それは良かったです」
好き好みをきちんと理解出来る辺、ポイント高そうだな。とはいえ、四人は彼がどんな人物かを知っているので油断はしきれてなかった。ガナールはその様子を見て「もう少しリラックスして良いんですよ?」と言うのだが、どうしても緊張してしまうのだ。
「・・・これから話す事はウォイス様にご内密にしておいてください。下手に過去を振り返す事をすると彼怒ってしまいますから」
「ああ、約束しよう」
とりあえず、飲み物を飲んで一息ついた所から、ガナールの話は始まった。
「まず、あの化物について話しておきましょうか。あの化物は昔『闇の住民』と呼ばれ、悪魔やそれに仕えている者、呪術者といった人が操っていたと言われる者です。形こそはあんな黒くて四つん這いになっていますが、実際に戦ってみると、魔法使い以上のランクを持つ魔導師さんではない人では苦戦してしまいます。何せ、あの化物は形があるようでないような物ですから。とはいえ、魔法使い以上の人ならば、光や聖なる器具を使えば割とあっさりと倒せてしまうのですけれど。後者であれば脳筋タイプの人も倒せますしね。其処から考えてみれば、魔導王国に近ければ近い程、あの化物である闇の住民は数が少なく、強力なものになる事が予測されます。また、知識もある程度は備わっているらしく、何かを持っていく・何処に集まって行動するといった簡単な命令であれば、それをこなす事も可能です。其処から考えられるのは、紅月やその周辺の人は闇の住民を操って戦う可能性が非常に高いって事でしょう」
「・・・?これの何処がウォイスに言っちゃいけないんだ?あとその情報は何処から?」
ソニックがそう尋ねると一瞬答えるか迷ったかの様な反応を見せた。そして3秒くらい考えた後に、こう言った。
「・・・本来ならば、その情報はアファレイドの古い書物にあるのですが、時間が無かったもので、ウォイス様の倉庫を勝手に拝借させていただきました。ああいった品物は倉庫や書斎を見た方が早い場合があるんですよ。で、その倉庫が私にも公開されてない情報なので・・・」
「ああ、何となく把握したよ・・・。アイツならやりかねないしな」
普通に良好に見える主従関係は根がかなり深いものの様だ。それが何処までのものかは、俺には想像しきれない物ではあるが、多分相当凄い事になっているのだろう。

「では、次に移りますよ。紅月についてです」
「ああ、それは俺も気になっていたんだ。結局、アイツは一体何者なんだ?」
「・・・紅月の始罪についてはご存知で?」
「?ああ、知っているが」
「あれは、8年前の出来事ですね。多分このニュースを当時リアルタイムで聞いていられたのはソニックのみでしょう。そして、私含む此処にいる人四人は皆干渉どころか此処にいる事ですらいられませんでしたね。・・・ソニックさん、王宮に起きた事件である事も、その影響で王族が絶たれるきっかけを作ってしまった事もご存知で?」
「それも知っている。7歳前後だったからあまり内容は覚えてないが、かなり大騒ぎになっていたのは覚えているぜ・・・ああ怖い怖い」
ソニック曰く、アファレイド以外でも目にも当たられない位の騒ぎだったらしい。父親や母親がウォイスの名前が出た時はある程度安心したらしいが・・・
「でも、確か1ヶ月後に行方不明になったんだよな?俺達の前に姿を現すその時までは」
「ええ、間違っていないですね。確かにウォイス様はその一ヶ月後に行方不明になってます。ついでに言うと、王子も行方不明になってます。今現在のアファレイドは代理の人が代わりに行ってますね・・・ただ、不可解だと思いません?」
「・・・What?」
「―8年間なんですよ?その後で姿を見せるのも何処か不可解だと思いませんか?裏世界でシャック達と戦ったあの時、貴方達の身に何か変化があった筈でしょう?最も、その時期はまだ私は生まれていないので詳しい事は分からないのですが・・・」
「僕達が彼に会って以来、相当大きな事件に巻き込まれた。夏には天気異変、秋には襲撃事件か・・・まあ僕は襲撃事件に関しては直接見た訳でもない、それはソニックとシルバーが知っている」
「・・・・・・それがどうかしたのか?」
「結論から言いますと、その紅月はその王宮に仕えていました。詳しい情報はあまり分からないのですけど、どうやらウォイス様の弟子の様でして・・・シェイドの兄弟子と呼ぶべきでしょうか。・・・ウォイス様の性格からして、基本よっぽどの事が無い限り、関係を結ぶ事は無いんですよね」
「10年間程の間に2人の弟子と1人の従者、そして俺達・・・これは異常なのか?」
「これがただの友達ならば良いですけど、1人の弟子は王宮に仕えている人で、私は特殊な形で生まれて、貴方達の出会いは本来いる筈のない世界で友達になったんですよ?現実味が無さすぎですよ。私が生まれたその意図も完全に明らかになった訳じゃないですし・・・しかも紅月の名が出ただけで彼は不愉快になるし・・・。あらかじめこうなる事を分かっていた様にも思えます。紅月の行動パターンをあの悲劇以降のそれを完全に把握していた可能性も」
「・・・おいおい、幾ら何でもそれはありえなくないか?襲撃事件のそれはタイミングの問題じゃないか?」
「其処は否定しきれないですけど、私の生まれた意味にそういった事をあげてもいいんじゃないですか?・・・シェイドさんのその弟子も少々疑わしいです。年齢的に15歳前後なのでしょう?当時は弟子がウォイス様の意図を理解出来ない年齢ですし、絶好の的であったのでは?」
「紅月を倒す為か・・・?年齢のそれは偶然にしても、それを利用するってか?」
「・・・・・・話が逸れましたね。えっと、紅月はウォイス様の弟子であったのは間違いないですね。そしてその紅月の以前の名前は・・・」
「・・・?」
「『ラヌメット・アファロウス』と呼ばれている人物ですね。あと調べてみたらとある年以前の過去が不明になっております。現在は38歳で、外見年齢だけ見ればウォイス様の方が弟子に見える位のものですね。・・・例えどんなに鍛えたとしても、肉弾戦に持ち込めば十分に倒れる相手です」
「38歳か・・・という事はあの悲劇の時点で30か。よく師匠を敵に回せるな」
「・・・肉弾戦ならばの話ですよ。実際は魔術の研究及び禁忌魔術の使用等である程度の若さを取り戻していますし、何しろ魔力の秘めた量及びその威力はウォイス様の魔術よりも上です。但し、実力及び魔術の利用の仕方といった細かな所はその力でどうにかしている部分がありますので、ウォイス様の方が上ですが」
「一つ良いかしら?貴方とその紅月と戦ったらどうなるのかしら??」
「幾ら歳を重ねているとはいえ、多分肉弾戦では無理ですね。それに、私そもそもまともに戦う事が苦手なので卑怯な手を使わなければいけない駄目な人なんですよ。―でもまあ、裏であるのなら手の平で踊っていられるでしょうね。少なくとも私の正体を自力で暴くのは100%無理ですね。誰かに助けて貰わねば」
「なるほど・・・互角同士を何人かで挑めばきっと倒せると踏んだんでしょうね。或いは殺すしかないと思っているのか・・・」
「殺す!?それだけは駄目だろ!!だって弟子であったんだろ・・・!?」
「その弟子が指名手配レベルまでなってしまったのだ。自責の為に罪を償おうとしたでも十分通じる」
「だが・・・」
「腹をくくる位の覚悟は出来ている筈だぞ。実際、貴様はあの言葉を直に聞いた筈だぞ?」

『・・・これでハッキリした。―お前をやれば良いのだろう?』

その言葉。『やれば良い』というのはきっと殺さなければならないと確信した時の言葉だったのだろう。言われなくても気付いてはいたが、状況が色々と大変であったし、あまり信じたくはなかったのだが・・・
「・・・。」
「Don't worry!!俺達でどうにかしてやるからさ!!」
「ソニック・・・そうだな、彼を説得しなければな!!」
「待って!!」
ガナールは叫ぶ。カフェに数名の客が一気にガナールに視線がいく。見られているのが気付いたガナールは、徐々に頬が赤くなっていき、最終的にマフラー(?)の中に顔をうずめ、何かを言おうとしたその勢いは何処へやらに消えてしまった。こんな時に聞き出せる能力があれば・・・あれば・・・
(~~~!!)
ノイズだ。ガナールがいつもやっている心理学を真似して見ても思考はいつもエラーを吐き出すばかりだ。どうも自分にはそういった類のことは苦手の様だ。
「・・・ガナール、お願いだから何で止めたか教えてくれないか?メモ書きでも良いからさ」
そう言ってメモとペンを差し出す。すると、ガナールは顔を埋めているのにも関わらずスラスラと達者な文字を書いて渡した。
『この事は「ウォイス様には知られてはいけない」。後は分かるよね?』
「・・・黙っていろって事か。ただ、こんな機会があったのは他ならぬあの門番が言っていたあの脅迫だからな・・・いつ言えるのかよく分からないぞ」
ソニックの会話に続いて、次はこんなメモを渡してきた。
『貴方達が同じ時刻に寝てたら催眠術でも掛けて作戦会議が出来るからその時に』
メモ書きしている時だけ何故か口調が変わっている様な気がするが・・・気のせいか?
「あの~いつになったらそのメモ書き止めるのかしら・・・?見苦しいわよ」
シルフィの一言には
『・・・・・・・・・・眠いからこれが終わったら眠る』
と謎の言葉を残していた。会話が完全に別の方向に飛んでしまっている。眠いから聞き間違えたのか?とはいえ、もう既に深夜だ。眠くなっても可笑しくない。
「分かった分かった。俺が肩背負うから暴れるなよ?というか恥ずかしい・・・」
『ありがとう』
と書いて、むくりと起き上がると俺の肩に腕を掛けた。少々疲れているのか、フラフラしていたのだが、それは俺のカバーでどうにかなった。
こうして、ネイトの一夜の騒動は終わりを告げたのである・・・。

カオスエメラルドも一個手に入り、コアの破壊にも成功。心残りがあるのはあの暴走により傷を負った兵士達と、あの地下にいたあのロボット。結局気絶したと判断した後は何もしなかったけど、問題無かったのだろうか・・・?

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『2日目~In the first incident
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どうやら最初の事件が起きた様だ。今回の事件はネイトの街で起きた放火事件。しかし、その放火の実行犯は紅月側でも、ウォイス側でもない、第三者の実行犯であった。とはいえ、あくまでも第三者に過ぎないのだ、いずれ敵になる時が来るであろう。が、その逆も然りである。奴らについては後で考える事としよう。

今回の事件は比較的早かった様に思える。まだ始まってまもないのに、もう既にカオスエメラルドの所在が一個明らかになっている。ソニックらからすればこれは普通の様に思えるかもしれないが、今回はこの大陸内を探さねばならないのだ。残り33日・・・いや、日記を書いている時点で32日となると思うのだが、とにかく5日に1個見つけるペースに持ち込めたのはかなり大きいと思う。それでもまだ遅い。もっともっと早く、早く見つけて対策を練らなければ。どうにかすればいけない。最悪、私が伸ばすしかないのだろう。しかし、カオスコントロール等が出来ない私はそれを上手に成し遂げられるのだろうか・・・??

さて、今日は色々と用事があったせいで、あの子との接触は出来なかった。あの子は私との約束をきちんと果たしてくれるのだろうか。あの人が言っていた通り、ノリが良くて少々お調子者だ。きっとウォイスも骨が折れていたのだろう。とはいえ、ムードメーカーだったのだ、とても可愛らしいし、何より周りが明るくなれるそんな雰囲気は士気を上げるにはうってつけと言っていいかもしれない。病は気からとは言うが、その気次第では何でも出来るのではないだろうか?・・・いやはや、考えすぎかもしれないし、過大評価かもしれないが。まあ、私としてもそれは喜ばしい事なので、そういう事にしておくとしよう。

もうあと4日程で満月だ。明後日を迎えれば、ウォイスはきっと牙をむく筈だ。数少ない日数の中、夜中暴れられるのは一番大きい事だろう。ただ・・・私が一番危惧しているのはウォイスの弟子・・・シェイドとかいう人物はその姿を見られる事だ。きっとウォイスは無理矢理にでも彼に姿を見せようとしないだろう。
ガナールからすればそれはチャンスの様に見えるだろう。なにせ、夜中に牙を隠す為には自分らのグループから一旦離れなくてはならないのだから。従者の裏切り・・・とまでは行かないだろうが、少々動きが変の様な気がする。まるで『他の人が演じているかの様な』感じがするのだ。あれは一体どういう意味だろう?誰か教えて欲しい。

・・・・・・少々眠くなってきた。今日は少々無理をしたのかもしれない。ゆっくり休んで、また次の災難に備えなければ。全てはあの子の為に。

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続く
next 2-01章 Justice is sometimes become evil

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幻想の赤月 1-05章 Manifestation of madness

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発砲というと、身を守る為に撃ったか、或いは何を壊す為に撃ったかの二択になるだろう。 
それどころか、それは何に対しても同じなのではなかろうか。例えば、その嘘が身の周りにどう影響及ぼすのだろうか、と考えたとしたら。もしかしたら、守りたい人の危機を結果的にではあるが助かる事も出来るし、結果的に人を殺してしまうきっかけになってしまうかもしれない。物は考えによるものだ。その考えは皆が同じという訳でもないので、自分からすればそれは正義だと思っても、相手からすれば只の人殺しの可能性だってある。無自覚の場合すらあるという事か。
今の状況もそんな感じなのだろう。
笑いながら私は彼の元を離れる。これは守る行為でもあれば、攻める行為でもある。何故ならば、この行動は真意を考えさせる内容なのだから。
前に行った所に戻ってみると、仮面を被り、全身をローブで隠す二人の姿が見えた。私の姿を見つけると、その人達は仮面を外してニコニコと微笑んでいた。
「シルバー達が今地下で戦っているんだってね」
仮面を外した女性は、先程言ったシルバーととても似ている。まあ私は見ていたので分かるのだが、他の人からすれば分からないのだろう。彼女が外したのを見たもう一人の男性は、同じように仮面を外す。こちらはソニック似だ。男女の体格差や、目の色が少々異なるといった事を除けば、殆ど分からない。最悪すり替えても問題無いだろう。
「ええ、確かに戦ってますね。下のコアを壊す目的でやっているのでしょう」
「・・・壊して大丈夫か?」
今まで男性の方はあまり喋らなかったのだが、今回はちゃんと出してくれた様だ。隣の女性がチラリと彼を覗くと、彼はおどおどして顔を伏せた。どうやら女性の小間使いにされているらしく、彼からすれば彼女の存在はとても恐ろしいものらしい。
とはいえ、その不安の声はちゃんと拾っておかなければ、後々大変な出来事が待っている可能性がある。私は彼に優しく語りかける?
「おや、それは一体何なのですか?知りたいですね」
「・・・えっとな・・・・・・このままコア自体の破壊をやったら何か変な事起こるんじゃないか?なんかこう―コントロールする様な感じなのだったらさ、むしろ壊さない方が良いかもしれないんじゃないか?」
「コントロール?」
「例えばさ、何かニュースになっている黒い連中とか」
そう言っている時、女性は冷たい声で言い放った。折角取り繕っていた話が・・・
「・・・確証が出来ない以上難しいと思うわよ」
「で、でもさ!!万が一の事も考えたら・・・」
「コントロール出来る出来ないの問題じゃないの。このまま放置したら異変に関連する可能性も否定出来ないんでしょ。なら壊さなきゃ」
「しかしだな・・・」
そうこう口論していて所を見てただ苦笑いをしている私だが、それを一瞬で止める大きな出来事があった。それは・・・
「・・・・・・成程、貴方達だったのですね。建物に爆弾を仕掛けたあの仮面の正体は」
「・・・!!」
思わず背筋が凍った。私は無関係だが、目の前の相手が大物であったので、うろたえてしまう。・・・正直に言おう、能力を見れば私の天敵だ。
彼女はくすりと笑っているだけだったが、内心は動揺している筈だ。
「ああ、天国か地獄か決める所の裁判長のフィートさんじゃないですか。私に何か御用で?」
彼女はそう言うのだが、内心少々動揺しているのだろう。手を震えからそれが読み取れる。
「全く、私の監視も働かないでくれたのは貴方が工作したからですね?シャックさんだけでは行動は不可能ですしね。で、ウォイスの従者である貴方様は何故此処に?主人のご命令を破棄すると?」
「アハハ、私はウォイス様には自由行動を命じております故、この行動には何も問題もありませんよ?」
口こそ達者ではあるが、全体は静寂と冷たい空気が広がっている。少々呑気であるソニック似の彼は空気を読めずにいた。

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視界に捉えたモップ(という名の刀)は僕に向けて放ってくる。どうにかしてコアに当たる事が出来れば、まだ楽になれる気がする。距離は10m程だろうか。後ろを見ながら、前の気配を探りながらで大変だ。かと言ってあんな鋭利な物を胸元に当たれば死ぬ事はなくても治療に時間が掛かる。制限時間が決まっている以上、気絶するのだけは絶対に許されない。
「避けまくっても意味があるか!!」
敵がいないお陰なのだろう、振りまわしている。一応予備を持っている可能性を考慮して、近づく事はしていない。
コンッ、という音が足元から発せられた。どうやらコアまで辿り着けた様だ。僕はそのまま立っている。この時、油断していた訳ではないのだが、奥に白いハリネズミの姿が見られた。僕達の雰囲気で行動出来ないのか、僕のやろうとしている事を察して行動していないのかは分からないが、構えた状態で待機している。
「ハァッ!!」
「はっ、甘いな」
相手が機械のお陰で、僕の策略は見事に成功した。僕は上に跳び、奴が狙いすまして放ったモップはコアの中心を見事に貫いた。瞬間、赤く滲んだそのコアは光の筋を次々と数を増やし、やがて僕達の視界が見えない位の明るさとなった。それは奥にいた彼らにも同様らしく、手で目を覆い隠していた。後ろで光っているとはいえ、目くらまし出来る位の光を背後で受けると少々を熱を感じさせる。そして、真っ白になった時にピシッとガラスにヒビが入ったあの音が聞こえ、数秒もしない内にあの発していたあの光は、闇を光で照らす時間よりも早く、闇に包み込まれてしまった。
その間、奴は僕の目の前まで飛んできて殴り掛かろうとしていた。明暗の差で奴が目の前にいる事はすぐに分かったのだが、どの様な態勢で戦っているかは検討もつかず、どうやっても駄目だ。だが、心配は無用だ。
「シャドウに傷付けるな!!」
「!!」
視界が完全に回復していない状況の中で、サイコキネシスを使って奴の攻撃を封じ込めるのはお見事と言いたい。とはいえ、正確に掴み取れているかというとそうではない。あくまで『大きな塊』として操っているので、例えば今殴りかかっているその腕をへし折ると言った事は出来ない。まあ、機械なので難しいのだろうけど。
「シルバー、大丈夫か?!」
大声でそう叫ぶと、彼はパッと能力を使わなくなり、それと同時に奴は地面に吸い寄せられ激突した。
「大丈夫だ・・・悪い、なんか入りづらかった」
「そもそもお前肉弾戦其処まで強くないだろ」
「はぁ、まあ、そうだけどさ・・・」
「シャドウさ~ん、シルバーさ~ん、僕を忘れないでくださいよ~・・・」
そう言うと、しゃがみこんでいたシェイドがひょこと出てきて、僕達の所へ。
「これでコアは撃破できたか?」
シルバーはそう言うと、コアだった物をサイコキネシスで浮かばせる。シルバーから発している緑の光以外に輝いている様子はなく、ルビーの様な赤黒い色をしているただの石の様だった。この様子から見ても、もうこのコアはただの石になったのだろう。
「・・・出来た様だな」
「やった~!!とりあえずは任務完了ですね!!」

・・・いや、これで終わったとは考えにくい。確かにGUNの任務である『コアの調査及び破壊』は成功した。だが、肝心のカオスエメラルドが見当たらない。おかしいのだ、大抵この様な事件に携わった時はいつも関連していたのだが・・・
突然通信機からルージュの声が聞こえる。とてもとても焦っている様な声をしている。
『シャドウ、シャドウ!!』
「・・・聞こえている」
『ああ、ようやく繋がったわ。今すぐ入口まで戻って!!あの黒い連中が急に暴れだしたのよ!!急いで!!』
「・・・!?」

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???にて

久々にこの部屋に戻った様な気がする。埃もそれなりに溜まっている事だろう。そろそろ掃除をしなければならないのかもしれない。
古ぼけた手帳には、昔俺がこなしていたスケジュールがビッチリ詰まっている。『王女の誕生祭』、『出張会議』・・・数々のスケジュールとは少々異なるものもあったが、今となってはもうそれは俺の思い出となって色鮮やかに描かれている。
「・・・さて、様子を見るか」
普段鍵を閉めている部屋に入ってみる。此処は正直見てはいけない物が沢山ある。今は見せない方が良い物なんかもある。なので、こういった物は誰にも悟られない様に保管しておく必要がある。この鍵の掛かった部屋は、そんな目的で置いてあるのだ。
目の前には俺が一番大切にしている『アレ』があるのだ。あるのだ。・・・ある筈なのだ。
「無い・・・無い!?」
一瞬遂に自分にも老眼が来たのかと思ったのだが、そうではない。私がいつも大切にしている『アレ』が無い。無い。無い・・・?
(だが、俺はこの部屋を教えた事は無いんだぞ!?ガナールやラヌメットですら教えた事は無い、なら何故・・・)
ど忘れ、という言葉で済んでしまえばそれまでだが、今回ばかりはそういう訳にもいかない。身分が取られる上、謎が謎を呼んでしまう。
「どういう事だか、説明して貰う必要がありそうだな・・・」
友人だろうが何だろうが関係無い。駄目だ。潰すしかない。いや圧迫が良いのか?または絞殺か?いや、ここは・・・・・・・
『記憶消去か』
それしかあるまい。見られては困るのだ、そうするしか無い。副作用がどうこうなんて言っている余裕等ない。消さなくては。これを行った張本人を・・・!!
味方であろうが敵であろうが関係無い。敵だったら潰せば良いだけの事。所詮奴らなど取るに足らないのだ。

「さあ、犯人は誰だ?」

そんな声が脳裏に囁き、赤い景色が思い浮かんだ。

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「何だ、コイツら!?」
「驚く暇があったらさっさと撃て!!・・・!!グワッ」
「隊長!?」
「落ち着いて!!誰かアファレイド出身の人はいないの!?」
ルージュも少々キレ気味のご様子で、撃退させろとは命じているが、むしろこちらの方が劣勢でありそのまま俺達に襲いかかってくる。当然GUNの人達もそれに対抗するのだが、銃では中々攻撃が通じない。形がなさそうである様な存在だからであろうか。魔術を扱える者が対抗出来るであろうと判断したのは立派なのだが、場所がネイトである為に、扱える人が見当たらない。アファレイドに近い所であれば或いは・・・
「ウォイスが来るまで対抗するんだ、OK?」
ホーミングアタックを試みてもキリが無い。どうやっても難しそうだ・・・と思っていた矢先。
「キシァアアアア!!」
悲鳴があがった。人の叫び声ににも似たその悲鳴は、化物からだった。振り返ってみると、声の主と思われるその化物には白い槍がお腹に深く刺さっていた。と、同時に刺さっていた所から徐々に周りの背景から同化するかの様に消えていく。そして、その槍の先にいたのは・・・
「What!?ガナール!?シルフィやシャックもいるじゃないか!!でも一体何故・・・?」
驚きの声を出している間にもその槍は全体に刺さっていく。巻き込まれるのかと不安の表情をしているGUNの人もいたが、魔術の扱いには慣れている者なので当たる事もせず、化物にだけ刺さっているのが見えた。槍以外にも文字が刻まれているナイフがあったり、鎖があったりしている。まあその道具の多方はガナールの持ち物なのだが。そして、シルフィの手持ちにはカオスエメラルドが・・・
「一体、何が起きているんだ・・・?」

唖然としている間にガナールが俺の所まで寄って来た。色々と混乱している中、ガナールは察したのか、耳元で囁く。
「混乱しているのでしょうけれど、とりあえずはこの問題が解決してからです。貴方達が壊そうとしたコアは、壊す事が出来ました。が、そのコアは大地の震えをさせる補助の道具である同時に、あの黒い奴らの制御装置でもあったらしく、今現在はこの有様です。・・・何故此処にいるのか疑問にあるのでしょうけれど、それも後の話にしてください。・・・私は『本物の』ガナールですので大丈夫ですよ」
早口ではあったが、ガナールの言う疑問はどれも的中している様に思えた。
「あの騒動はお前達が起こしたのか!?」
「その話は終わった後で・・・このままだと死人出ますよ」
俺の話を無視され、そのまま化物をやっつける為にナイフを投げる。悲鳴を上げるや否や、刺さった化物は消え去る。三人共弱点を既に把握しているらしく、三人が現れてからは一気に形勢逆転し、10分を経つ頃には多方いなくなっていた。
「フフ、結構呆気なかったわね。魔術使えてなかったらどれほど時間が掛かることやら」
クスクスと笑うシルフィ。
「俺達が来なかったら大変な事になってたな。・・・アイツらはどうしたんだよ?」
胸を撫で下ろす様子が伺えるシャック。
「・・・アイツらなら、此処に」
階段先を見つめているガナール。
問題は山積みである。ガナールはまだしも、シャック達が来るのは正直意外だ。色々と問い詰めなければなるまい。とは言うものの、とりあえずは礼を言う。
「助かったぜ・・・、残りはGUNの奴らがどうにかしてくれるだろうな。で、色々と質問があるのだが」
「―ウォイス様の書物に行ったんです。それを行う道中でシルフィさん達と会いましたよ。『カオスエメラルド』が目的だったらしく、最終的には目的が一致するので、一緒に行動していた訳ですよ。・・・これから先はアイツらが来た時にでも」
「あ、ああ・・・・・・あ、これだけは聞いていいか?」
「何でしょうか」
「ウォイスにこの話はしてあるのか?」
「してる訳ないじゃないですか。感づかれたら私が消される可能性があるので」
「・・・?」
「まあ、そこも後でかいつまんで説明しますから・・・」
そう言って微笑んでいる姿は比較的温かな感じだった。まあそれが偽物の可能性もあるだろうけれど・・・ガナールだし。

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続く

next 1-06章  improvement

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そろそろネイト編が終わるのだけれど、長いよ・・・w 結末まで行ける様に頑張ります。

様々な事件が沢山続き、遂には心髄にまで及んで行って、己の中でそれを重く、鋭く貫くのだ。 嘘だらけの世界で信じる事が出来るのは、己自身ただ一人。痛い思いとかしても良いんだ、嘘をつくのはもうこれで最後にしよう。だからお願い。早ク逃ゲテ。